8月8日(木)

 午前9時。自宅にて、ひとりで『桃太郎電鉄11(仮)』のテスト・プレイ。
 56年目。総資産は4兆円突破!
 いいかげん、人間と対決したいよ〜!

 午前11時。原宿の神宮前へ。
 並木道は、蝉の鳴き声が大きい。
 少し暑さが緩んでいるような気がするが、まだ午前中のせいだからだろう。
 嫁と、原宿の「ペルティエ」で待ち合わせ。
 若鶏のランチプレートにコーヒー。

 午後12時30分。築地のハドソンへ。

 午後1時。きょうのテスト・プレイのメンバーは、土居ちゃん(土居孝幸)、
作家の高瀬美恵さん、ハドソン宣伝部の石崎仁英くん、放送作家の福本岳史くん。 
放送席は、私、嫁、空気男爵・柴尾英令くん。

 ついにあの、本人は日本一『桃鉄』がうまいと思っているが、COMキャラ赤
鬼にボコ負けの福本岳史くんの登場である。
 しかし、きょうのメンバーは、福ちゃんにとっては、好都合な相手だった。

 なにしろ、ぶっとびカードを何枚もつかっては、ことごとく反対方向に飛ぶ石
崎仁英くん。
 目的地の近くでは、一発で入る強運だが、手が滑って、冬の赤マスに入ること
の多い高瀬美恵さん。
 目的地をめざさず、ひたすら貧乏神を人になすりつけることと、いじわる系の
カードをつかうことに燃える土居ちゃん(土居孝幸)である。
 要するに、きょうの試合は、無軌道プレイヤー対決なのだ。
 のっけから、乱戦が予想される。    いきなり1ターン目で、もう高瀬美恵さんが、「上野!」といいながら、右の 幕張駅に入る。さすが作家だ。キャラを守る。  最初の目的地・出雲をめざして、1年目が過ぎるが、誰もまだ出雲に入ってい ない。それどころか、高瀬美恵さんは、なぜ新潟の近くにいる!? 「手ぬるいなあ! みんな、手ぬるいぞ!」と、放送席の柴尾英令くんが、みん なを煽る。  ここ何回かのテスト・プレイでは、4人が揃って、抜きつ抜かれつの接戦が多 かった。しかも目的地の6マス以内で、熾烈な戦いが繰り広げられたのだが、き ょうはさすが無軌道プレイヤーズ!  日本中、バラバラな場所にいて、次の目的地が近い人が、目的地に入るという 無軌道ぶり。  そのうち、福ちゃんが、ゲスト怪獣、キングボンビーと並ぶ、もうひとつの隠 しキャラのせいで、優位に立つ! 「福ちゃん! 困るなあ! こいつの存在については日記に書けないんだよなあ 〜!」 「す、すみません!」 「ゲスト怪獣を話題の中心にしておいて、こっちについては隠し続けたかったん だよなあ!」 「す、すみません!」  土居ちゃんが、不調だ。  得意の地の果てまでも貧乏神をつれて、追いかける得意技が出ない。  貧乏神が着くでもなく、目的地に入るでもない。  それでも、サミットカード、豪速球カード、ばちあたりカード、冬眠カードは ちゃんと使った。  石崎仁英くんは、土居ちゃんの豪速球カードで、のぞみカードと、オレンジカ ードを失った。  高瀬美恵さんは、貧乏神をなすりつけられる人がいるのに、目の前を素通り。 あいかわらず、こまかいことにこだわらない性格を見せつける。  石崎仁英くんは、ぶっとびカードで3マス飛ぶとか、新幹線カードで出目が5 とか、目的地の目の前で、ほかの人に入られるという不幸を連発する。  石崎仁英くんが、ぶっとびに失敗して落胆したときのセリフ。 「何だ、それ…」  けっきょく、極端な失敗の少ない、福ちゃんが独走し始めてしまったのだ。 「手ぬるいなあ! オレが入れば、ここは草刈り場だ! わっはっはっはあ!」 と、放送席で挑発する柴尾英令くん。  仕方がない。きょうは無軌道プレイヤー対決なのだ。  私だって、喉まで出かかっている。 「な、なぜ、あそこで、あんな手を…」。  テスト・プレイ中は、とにかく私はまったく口を挟んでもいけないし、アドバ イスを送ってもいけないから、つらい。  でも作り手は、買ってくれたお客さんの家まで行って、アドバイスができるわ けではないのだから、目の前の作品がすべてなのだ。  目の前で、いくらこの4人が、滅茶苦茶なことをしたとしても、それがデータ で、それに対するフォローを作るのが、私の仕事なのだ。  私も人間と戦わせてくれい!  午後5時。8年目まで進んだところで、食事にでかけることに。  銀座の味噌串かつの美味しい居酒屋「舌呑(ぜっとん)」へ。  後半戦への戦いに、大いに英気を養う。  …というより、カロリーの高い味噌串かつを食べまくる!  午後6時30分。再び、築地のハドソンに戻り、10年モードを、15年モー ドに変更して、続きを始める! 「このまま福ちゃんに勝たれるのは、ちょっと!」 「今回の『桃鉄』のパターンが読めたんで、もう少し延長してもらえば、勝ちま すよ!」  いいねえ。こういう根拠のない自信にあふれた人たちって!  その後も、福ちゃんが独走…ではなく、ほかの3人が自滅を繰り返し、追撃の 態勢に入れない。  とくに土居ちゃんが、よくカード駅で、デビルカードや、ウィルスカードを引 いてしまう。  しかもいっこうに、貧乏神がキングボンビーに変身しないのだ。  あくまでも確率なのだから、99年間一度も貧乏神がキングボンビーに変身し ないころだって、無いとはいえない。  ゲスト怪獣は、出現したのだが、3人がゲスト怪獣に苦しめられている間、福 ちゃんは、とびちりカードのうんちに挟まれて、対岸の火事状態という運のよさ だ。  14年目。なんと! 福ちゃんが、レア中のレア・イベントを発生させてしま った! 獲得賞金、あっと驚く21億円!  この一発で首位が確定した。
「つまんねえなあ! 福ちゃんが優勝かよ〜!」 「ああ! エンディングで福ちゃんの名前出てくるの見たくないなあ!」 「キングボンビーが出ない試合で勝ってもなあ! 優勝の価値がないよなあ!  福ちゃんもうれしくないだろう」 「福ちゃんは、××××(守秘義務)××××が12回ついただけで勝ったよう なもんだよあ!」    見事なまでに、福本岳史くんの優勝は、祝福されない勝利となった。  午後10時30分。さすがに15年もやると、こんな時間になってしまった。  午後11時。帰宅。  これから、まだきょうのテスト・プレイで気づいたところを書いて、札幌に送 らないといけない。  でも、本当にちゃぶ台をひっくり返すような変更が発生しない。  きょうひとつだけ発生したが、それもあっという間に解決してしまった。  今回の『桃太郎電鉄11(仮)』には、ツキがある。  しかし、ツキは、あくまでもツキでしかない。  たったひとつのミスで、一気に流れが、悪いほうへ悪いほうへ、転がり落ちる ように、崩れていく場合もある。  心して、最後まで気を抜かないぞ!
 
さくまNEWS

●9月21日(土)午後7時開演 浜離宮朝日ホール(築地)全席指定6000円
アマデウス・アンサンブル東京--バッハを弾くよろこび、聴くたのしみ--」


※業界の方で鑑賞希望の方は、うちの嫁まで、8月31日(土)までにご連絡ください。
 メールはこちら→sakumacb@za2.so-net.ne.jp

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