８月１日（木）

　昨夜も寝苦しかった。
　思わず、夜中にＮＨＫの『ＢＳ漫画夜話』の再放送を２本続けてみてしまった
よ。手塚治虫さんの『ブラックジャック』に、『マキバオー』だ。
　２０年前ぐらいに、私はいしかわじゅんサンと夏目房之介さんとなかよしで、
３人のうちで、私だけが当時、漫画評論家だった。
　それが今、いしかわじゅんサンと夏目房之介さんが、漫画評論家になっていて、
私がゲーム作家になっているのだから、時の移り変わりとは、不思議だ。

　でも私の持論は、当時から、プロ野球選手のように、漫画評論は、漫画家がや
るべきだと思っていたのだから、いしかわじゅんサンと夏目房之介さんの今の形
は理想形だ。

　午前９時。『桃太郎電鉄１１（仮）』の手直し作業。
　新聞を取りに、玄関を開けただけで、むうわわわわ〜〜〜ッと熱風が入り込ん
でくる。まるで熱の塊の形が見えるような暑さだ。
　どうやって、築地のハドソンまで、炎天下を歩かずにすむかを必死にシミュレ
ーションする。

　午後１２時。嫁と、築地のハドソン裏の「わさび庵」へ。
　芝えびのかき揚げそば。

　午後１２時３０分。築地のハドソンへ。
　石崎仁英くんが、会議室に入ってきて「うわ、びっくりした！　さくまサン、
もう来てたんですか？　テスト・プレイは、午後１時からですよね？」。
「そうだよ、午後１時で間違ってないよ！」
「どうしたんですか？」
「いや。ご飯を食べ終わったんで、コーヒーを飲もうと思ったんだけど、この炎
天下で、喫茶店を探す苦労のほうが、つらいので、早く来て、仕事していようと
思ったのだ！」。
「はっはっは。暑いッスよねえ！」

　午後１時。きょうのテスト・プレイ・メンバーズが、続々到着！
『桃太郎電鉄』シリーズの音楽担当の宮路一昭くんと、宮路一昭くんの仕事仲間
ミキサーの受川朋弘くん。
　パナソニックep事業部の高田直幸さん。
　放送作家の清正まなつチャン。

 


　土居ちゃん（土居孝幸）も来たけど、土居ちゃんの戦法は、一般人とかけ離れ
たやり方で、テスト・プレイとして、ニュートラルなデータにならないので、参
加させてもらえないことになっている。
　土居ちゃんは自分が描いたイラストのチェック。
　ハドソン宣伝部の梶野竜太郎くんと、私は観客。

　受川朋弘くんは、『桃太郎電鉄Ｘ（ばってん）』をやりまくっていて、新しい
カードが登場すると、「これはどういう風につかえばいいんだ？」と、もうシミ
ュレーションを始めている。このロムはまだテスト・ロムなんで、数値が変わる
こともあるんだけどなあ…。
　『Ｘ』にない目的地が登場しても「おお！　これは新しいぞ！　どこだ、どの
辺だ！」と叫ぶ。

　そんなに受川朋弘くんに、１年目貧乏神がついた。
　貧乏神が、あのキングボンビーに変身しようとする。
「ははは。ミニボンビーだ。今の時期は、キングボンビーに変身しないから…え
っ？　何、あれ？」
　は〜〜〜っはっはっは！
　大爆笑の渦だ。
　ゲスト怪獣が、登場したのだ。
「うそ〜〜〜！　１年目からあ？　えっ？　何するの？　何？」
「ごめん、反応が知りたいので、一切答えられないのだ！」
「うぎゃあああああっ！」
　そうか。やっぱり、想像以上の反応だなあ。ふむふむ。

　午後３時。柴尾英令くんが到着。

 


　午後４時。清正まなつチャンが、次の仕事があるので、最下位のまま退席。
　清正まなつチャンのデータをそのまま、柴尾英令くんが引き継いでやることに
なった。
「はっはっは。ボクにとっては、ちょうどいいぐらいのハンデだな！」と、高笑
いして、ブルドーザーのように、ガツガツ、目的地に入りまくる！
「ほ〜〜〜ら、４連続で、目的地に到着だ！」
　まったく、近鉄のローズのようだ。ぶるんぶるんバットを振り回して、けっき
ょくホームランを打ってしまうようなゲーム展開だ。

　柴尾英令くんは、わずか３年で、トップに立ってしまった。

　午後５時３０分。成沢大輔くんが到着。私と現在進行中のお仕事の打ち合わせ。
初めて『桃太郎電鉄１１（仮）』の画面を見た、成沢大輔くんが「これは、テン
ポのいいゲームだ！　字が読みやすい！」と、うれしいことをいってくれる。
　本当に今回の『桃太郎電鉄１１（仮）』の文字は読みやすいんだよ！
　処理速度もびっくりするぐらい速いんだよ。

　その後も、「かんらからから！」と、柴尾英令くんの高笑いが続く。
　柴尾英令くんの毒気を浴びた、宮路一昭くんと、受川朋弘くんは、すっかり寡
黙になる。７年目まで首位をキープしていた高田直幸さんは、もくもくと物件を
買い、カードを買い、慎重な試合運びで、ひたすら柴尾英令くんを追う。
　それでも柴尾英令くんの猛威は衰えるどころか、ますます拍車がかかる。
　もはやゲームは、柴尾英令くんの独走態勢に入った。

　しかし、『桃太郎電鉄』は、作者の私がいうのも何だけど、意外なことが起き
る！　宮路一昭くんが、物件２００件目を買った記念で仙人から、ゴールドカー
ドをもらった！　
　しかし、宮路一昭くんは、持ち金が少なくて、つかうことができない。
　そこへ刀狩りカードだったか、カード交換カードだったか、高田直幸さんが、
宮路一昭くんから、ゴールドカードを奪い、４５億円の物件を、わずか４億５０
０万円で購入したのだ！

　１０年モードの、９年目の出来事である。

　この時期で、４５億円の物件を持っているのは強い！
　柴尾英令くん、必死にその後も、目的地に入りまくり、応戦するが、さすがに
高田直幸さん、４５億円の物件が効いて、首位で、ゴール！
「ああ！　悔しい！　ああ！　悔しい！」
　何度も、柴尾英令くんが「悔しい！」を連発する。　

　エンディング！
「は〜っはっはっは」
「わっはっはっは！」
「笑えるエンディングなんて、『桃太郎電鉄』シリーズで初めてだよ！」
　そうなのよ、そうなのよ。
　今回のエンディング・グラフィックは、笑えるのよ！
　これ以上はいえないけど、ほんと、笑えまっせ！

　終了時間、実に午後８時。
「え？　７時間もやっていたの？　全然気づかなかった！」
「いやあ！　後ろから見ているだけで、こんなに楽しいのはなぜなんだろう！」
「この時期で、ここまで出来ているなんて、信じられないですね！」
　これだけ受けると、ちょっと油断しちゃいそうだよ。
　でもそのいくらい、反応がいい！

「『桃太郎電鉄X（ばってん）』とは、まったく違いますね！」
「家に帰ったら、ぜひ『桃太郎電鉄X（ばってん）』を見てくださいよ！　もっ
と驚けますよ！」

　柴尾英令くん、高田直幸さん、私、嫁の４人で、築地の「アムール・レスィ
プロク」へ。食事をしながら、高田直幸さんの最近の仕事について聞き、いろ
いろみんなでアイデアを考える。

　午後１１時。ひ〜、自宅についたのが、こんな時間。
　
　明日も築地のハドソンで、テスト・プレイ！