6月22日(土) 午前7時。iモード・ゲームの毎月エッセイを書き始める。 『さくま式奥の細道』は、門弟・曽良(そら)の秘密について。『さくま 式西遊記』は、荻窪ラーメンその2。『さくま式東海道五十三次』は、今 までの総まとめ。 実は、来月から毎月エッセイを、3作品でひとつのエッセイにしてもら って、「さくま旅行記」というのが始まる。 午前10時。原稿3本を書き上げる。 午前11時30分。嫁と、高島屋デパートの近くの「フレッシュネスバ ーガー」へ。 …と思ったら、入り口がふたつになっていて、もうひとつのお店が石焼 ビビンバ中心のファーストフードっぽいお店になっている。ちょうど昨日、日テレ『マネーの虎』で、新感覚の石焼ビビンバ・チェ ーンをやりたいという人が出ていたので、食べたいなあと思っていたので、 こっちの「デリカカフェ・M」に入る。略称ね。 私は、石焼きビビンバ。 嫁は、冷麺。 嫁が、お店の人に「これをお持ちくださいませ!」と言われて、MDウ ォークマンのようなスケルトンな板を持って来た。 隣りの席の人のところにも、この板はあった。 その先の女性ふたりの席は、テーブルいっぱいに石焼ビビンバが乗って いるので、このMDウォークマンのような板があるのか、どうなのかわか らない。 スケルトンの部分から、コンピュータの基板が見える。 何につかうのだろう? 勝手にお客さんが席に着くから、注文した料理をどこに運べばいいかわ かるGPSのように位置を示す板なのでは? いや、ひょっとして、この板で、石焼ビビンバを焼くのでは?と思った 瞬間、隣りの席の人の板が、ブズズズズッ!と振動した。 そのお客さんは、板を持って、レジのほうに向かった。 そうか。料理ができたから、取りに来いという合図なのか。 とうとう、取りに来いかあ…。 う〜ん。マクドナルドなら、時間のかかる料理は、お店の人が持って来 てくれるけどなあ…。 あまりにも、作り手側のとって、都合のいいシステム過ぎない? しかもこのあと、私は薬を飲まないといけないので、フリー・ドリンク のところに水を取りに行った。でもプラスティック・コップのふたはある んだけど、コップの部分がない。探してもないので、レジに行って、女の 子に「お水はどこでいただけるんですか?」と聞いた。 「中央の機械からです!」 また行ってみる。言われてみれば、「お水はここから」という蛇口のよ うなものと小さく書かれた紙切れが見つかった。でもやっぱりコップはな い。やめるかと思ったら、男子店員が、「これを!」といって、コップを 持って来た。 何だ。言わないとコップはもらえないのか。 どうもシステムが悪いなあ。 フリー・ドリンクの場所で、ホット・コーヒーから、アイス・コーヒー から、お水まで、一ヶ所で全部すまそうとするから、初めて来たお客さん にとっては、目が泳ぐだけで、最初にどこに目線を放ったらいいのかがわ からない。 「いいかげん」という言葉は「良い加減」という意味だったことを知らな い人が多いくらい「ほどよいサービス」が町から消えようとしている。 石焼きビビンバは、キムチを強調して、辛さを際立てただけの味。 ひさびさのハズレだ。 食後、高島屋デパートの東急ハンズで、TV用のターンテーブルと、木 製のお風呂イスを買う。木製のお風呂イスは、部屋で、iブックを乗せる ためにつかう。もうひとつ木製のお風呂イスがあって、そっちには旧型の VAIOを乗せている。 私の自宅の部屋の机は、ちょっとしたシンセサイザー部屋のようだ。 いろいろ試したけど、お風呂用の木製イスは、加湿器の台としてもつか っているほど、我が家では重宝している。 午後1時。自宅に戻って、NHK『利家とまつ』を見る。 先週録画に失敗した。 明日、いや来週の日曜日には、本能寺の変だな。 反町隆史の織田信長はなあ…。 最後まで、きばった怒号の演技のまま終わってしまうのか。 でも「まつがいないと、淋しいぞ!」と利家に向かっていうセリフは 笑えた。 午後2時。『桃太郎電鉄13(仮)〜地方編』の仕事を少しずつ。 午後4時。嫁と有楽町の「ビック・カメラ」へ。 小学館の大島誠くんと、ポニーキャニオン勤務の木村真人(けーむら) くんと待ち合わせ。 午後4時30分。ビック・カメラ7Fの「よみうりホール」へ。 きょうはここで「五つの赤い風船とたくさんの仲間たちのコンサート」 がある。 つい最近、大島誠くんが熱狂的な五つの赤い風船ファンであることが わかって、ぜひ行きましょうと約束していた。チケットを4枚いただい ていたので、あとひとり分。でも、きょうはときならぬ、W杯「韓国× スペイン」戦のど真ん中。 なかなかいっしょに行ける人がいない。 私と同世代じゃないと、サッカーのTV観戦をやめてまで来てくれる わけがない。 …と思った瞬間、、前日鎌倉の仕事場で、けーむら君が私のレコード・ ライブラリーから高田渡さんの『自衛隊へ入ろう』を引っ張り出して、 聞いていたのを思い出した。 けーむら君は、37歳なのだが、どーも、来月50歳の私と何の違和 感もなく音楽の話が出来る不思議な人だ。 世の中、不思議な人は探せばいるもんだ!という典型だ。 というわけで、きょうになって、けーむら君に連絡。 運良く来ることができた。 何たって、きょうは五つの赤い風船に加えて、「たくさんの仲間たち」 のゲストがすごい。 怪人・高田渡さんに、関西フォークの創始者・中川五郎さん、「『走 れコウタロー』と『岬めぐり』だけで、30年!」と言い切る、山本コ ウタローさん。『葛飾にバッタを見た』というよりもタレントとして有 名な、なぎら健壱さん。『なごり雪』のイルカさん。 もうひとくせも、ふたくせもある人たちが、好き勝手に同窓会のよう な会話をしながら歌もうたうから、楽しくないはずがない。 「貸したお金を返してくれないから、電話をしたら、電話を止められて いた」とか「吉祥寺の駐輪場で自転車を盗んだ」とか時代を感じさせる 話題の連発! 高田渡さんなんか、とうとうみんなから「本当は死んでるんだけど、 本人はまだ気づいていない」とまで言われる始末。 どこかのTV局で「西岡たかし×高田渡ライブ」を1時間やらないか なあ? 若い人が見ても、ふたりのやりとりは、抱腹絶倒、いや、もう古今亭 志ん生の落語のようだよ。 とくに、高田渡さんは、明石家さんまさんが知り合いになったら、自 分の番組ぜんぶに出演させたくなるだろうなあ! いま、日本のエンタテインメント・ビジネスのなかで、いちばんおも しろいよ、高田渡さんは。 五つの赤い風船のライブは、驚くほど、グループとしてのバランスが 絶妙になって来た。私が何度も五つの赤い風船のコンサートを見に行っ ていることは、この日記を読んでいつ人なら知っていると思うけど、西 岡たかしサンの声がますます伸びのある声になっているのに、びっくり! 声量も昨年の倍以上! それにしても、会場は超満員だし、休憩時間のCD売り場には黒山の 人だかり。 ポニーキャニオンの営業である、けーむら君が「こういうCDは、レ コード屋さんでも売っているんですけどね〜」とぽつり。 40代、50代が、レコード屋さんに足を運ばないようなのだ。 でもこのCD売り場を見ると、決して、40歳以上がCDを買わない わけではないのだ。シルバー産業は、これから絶対隙間産業から重要な 産業になるはずだ。 午後8時。4人で「かごしま遊楽館」で、豚しゃぶを食べ、昔の音楽、 昔の汽車通学、けーむら君の朝顔栽培などの話題で、楽しくすごす。 午後9時57分。私と嫁は、東京駅から、横須賀線で、鎌倉へ。 午後11時。鎌倉長谷の仕事場へ。 韓国のPK戦勝利などを見て、すごす。 きょうのコンサートで、五つの赤い風船がアルバムのA面に曲を入れ、 B面に高田渡さんの曲を入れた自主制作レコードの話が何度も出て来た けど、あのアルバムを当時高校生だった私は、通信販売で買った。 思えば、あのレコードは、日本最初のインディーズだったわけだ。 あのとき買った1枚のアルバムがなければ、今日のさくまあきらはな い。 西岡たかしサンの美しい日本語に衝撃を受けて、文筆業をめざしたこ とが、克明に思い出された。なつかしの音楽は、自分の打撃フォームを 見直せるいい機会でもある。 何かなつかしい音楽が聞きたくなった。
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