6月19日(水) 午前4時30分に目が覚めた。 起きたのを幸い、きょうこれから行く場所の時刻表を「JRおでかけ ネット」で調べる。 げっ。調べて、愕然とした。 電車がない。全然無い。 まいったなあ。 ちょっと怠けたくなる。 先週、姫路→龍野→佐用→津山のコースで、列車の接続が悪いのに苦 しんだので、きょうは朝早くでかけるぞ!と思ってはいたが、ちょっと 早過ぎ。 午前7時18分。京都駅からまず、のぞみ33号に乗って、岡山をめ ざす。 こんなに朝早くでかけたのなんて、30年ぶりぐらいだよ。 ふわああ…、眠い。 それにしても、いい天気だ。 私が取材をする日は、いつも快晴。たまに快晴すぎて、苦しんでしま うけど、まだまだ私の身体は雨の湿気に弱いので、ピーカンは大歓迎だ。 午後8時20分。岡山駅着。 向かい側のホームに、入線してくる、ひかりレールスター357号に 乗り換える。 午後8時30分。ひかりレールスター357号は、岡山駅を発車する。 午後8時46分。福山駅着。ちなみに、福山駅は、広島県である。 岡山駅で新幹線を乗り継いだし、岡山と福山と名前が似ているので、 福山は岡山県と思いがちだけど、広島県。 そう思うと、遠くに来た気分になる。 京都から4つの県をまたいだ。 もちろん何度もこの駅には来ている。 駅の向かい側に福山城がそびえ立っている。 福山駅って、駅前が見るたびに、大きくなってるなあ。 不景気だっていうのに、よく発展している。 近いうちに、近隣を併合して行って、50万都市にまで膨れ上がるそ うだ。 さあ! ここから、きょうの本格的な旅が始まる。 まず! 新幹線の福山駅に到着してからから、在来線に乗り換えて列 車が発車するまでの時間が、20分間。 はっはっは。まだ序の口、序の口。 なんの、これしき! めげてるけど、この先のことを考えると、萎えていられない。 福塩(ふくえん)線に乗る。 いきなり、構内の看板に「福塩線の電車は、一部トイレがございません ので、予めトイレを済ませてご乗車ください」と書かれてある。 確かに、これから40分以上乗るからね。 8番線ホームに行くと、列車はもう来ていた。 ワンマンカー2両編成。 黄色いので、東京の西武新宿線のようだ。 午後9時7分。福山駅を発車。 沿線もまた、西武新宿線に似ている。 住宅と水田のくりかえし。 天気がいいので、水田の新緑が美しい。 空が映り込んでいる。 駅の数が多いのまで、西武新宿線にそっくりだ。 ぶい〜〜〜ん!と、加速したとたん、ひゅうううぅぅんと速度が落ちて、 駅に着いてしまう。もちろん、各駅停車。 急行、快速などというものは、ハナからない。 以前はあったらしいけど、いつのまにか消えたと地元の人がいっていた。 朝早かったせいで、眠い。 景色も凡庸なので、よけい眠い。 終点まで行くので、余裕で眠い。 少しうとうと…。 電車に乗るとアイデアが出るのご利益もない。 午前9時49分。府中駅に到着。 意外と大きな町だ。 府中市は、家具の町として有名なので、町のあちこちに、大きな家具屋 さんの看板が目立つ。府中市は、人口4万ちょっとの町なのに、リョービ の本社があったり、北川鉄工グループの本拠地だったり、今は本社を福山 に移してしまったけど、紳士服の青山もここが発祥地だったそうだ。 大きな町なのはいいんだけど、食べ物屋さんがないのよ。 駅前にコンビニはあったんだけど。 いきなり駅の立ち食いそばというのもねえ。 まだ午前10時になったばかりだから、食べ物屋さんが開いていないの ではない。本屋さんとかはある。銀行も多い。 でも、ご飯屋さんがない。 食べさせてくれ。 私はきょう、まだ何も食べていないのだ。 この府中駅の近くに食べ物屋さんがないと困るのだ。 だって、だって、だって、だって…そろそろ、みなさん、「ええ〜〜〜 〜っ!」と驚く準備はよろしいですか? 行きますよ! だって、だって、次の列車の発車は、2時間後なんだも〜〜〜ん! はっはっは。笑って! 笑って! いっしょに笑って! あはあは。 福山駅から福塩線に乗って、府中駅まで来た。 府中駅から先の路線も、引き続き福塩線を名乗るなら、5分後くらいで、 乗り継ぐもんでしょ。だいたいふつうは乗り換え用の列車がぽつんとホー ムで待っているものだ。 なのに、次の列車は、2時間後とは、どういうこっちゃい! 今乗って来た列車が、福山駅まで行って、また戻って来ても、1時間半 だぞ! そのまま先まで走れ! もっと楽しいデータを提供しよう。 この府中駅から発車する福塩線は、午前8時35分に1本ある。 この午前8時35分という時刻を覚えておいてくださいよ。 午前8時35分の次の列車の発車時刻が、午前11時58分。 3時間後である。 計算間違ってないよね? 60から、35分を引いて、25分…いいん だよな。間違ってたらゴメン。 とにかくこの午前11時56分の列車が今、私が待って乗るかどうか悩 んでいる列車である。 この午前11時58分発車の列車の次は、午後2時55分である。 また3時間後である。 ちなみに、私が乗るか悩んでいる列車は、第3日曜日には、運転を休止 するんだってさあ! 府中駅に着いて、駅の時刻表見て、初めて知ったよ〜! なんたる無気力時刻表! というわけで、しばらく府中駅前から街道まで歩いたのち、呆然とする。 早くも切り札をつかうしかない! タクシーだ。 駅前にタクシーは多い。 多いわけだよ。府中駅までたくさん列車があって、この先はまったく無 いんだから。 だいたい、姫路からの姫新線もそうだったけど、極端に本数減るなら、 鉄道名を変えてくれよ! 乗ったタクシーの運転手さんがよかった。 府中市とか、これから行く場所について、たくさん教えてくれた。 タクシーに乗ると、こういう現地の人の情報を手に入れられる場合も多 いんだけど、嘘をつかれる場合も多い。 どうして「それについては知りません!」と言えないのかねえ。 福山市の人口が近いうちに、50万人になることを教えてくれたのは、 この人だ。紳士服の青山の発祥地が、府中市だというのもね。 さて、ここから少し、楽しい話題に移る。 本来、きょうのメインの取材先は、三次(みよし)という町である。 けっこう大きな町で、歴史もある。 「広島の小京都」ともいわれ、鵜飼などの行事もある。 この三次近辺をインターネットで調べたり、時刻表を見たり、プロアト ラスで調べて行くうちに、妙な名前の駅が気になった。 そのうち行きたくて、行きたくて、仕方がなくなってしまったのだ。 その駅の名前は、上下駅! 「うえした」駅でも「かみしも」駅でもない。 そのままズバリ! 上下(じょうげ)駅である! 変な名前だよねえ! 『桃太郎電鉄』の作者としては、上下(じょうげ)駅という妙な名前の駅に は、行くしかないでしょ! たとえ駅前に1軒も家がなかったとしても、駅のホームが片側ひとつし かなかったとしても、無人駅だったとしても、駅に「上下(じょうげ)駅」 の表示があるかぎり、行って、愕然とすべきでしょう。 だから、こうして時刻表に列車がなくても、早起きしてわざわざ向かっ ているのですよ! 午前10時30分。上下(じょうげ)町に入る。 運転手さんが、翁橋のたもとまで送ってくれて「ここから先が、白壁の 町並み保存地区ですよ!」と最後までていねいに教えてくれた。 本当だ。 白い壁が続く。 「白壁の町並み」保存地区がある。 へ〜、なまこ壁の白い家がたくさんあるじゃないか! これは想像していたより、素晴らしい町だぞ。 おお! 「映画実演」とはまた、古い看板だ。 芝居小屋みたいな建物だな。 今でも年に数回、町の行事としてもつかえるらしく、毎週土日には、な かを見学できるそうだ。俳優の平幹二朗(ひらみきじろう)さんが、この 町の出身だそうで、舞台をやったりするそうだ。 故郷のある人っていいよなあ。 東京生まれの東京育ちの私には、錦を飾る故郷がない。 上下(じょうげ)町とう変わった名前の由来は、この町が分水嶺(ぶん すいれい)になっているからだ。 標高383メートルと、この上下(じょうげ)町は、福塩線のなかでも、 いちばん高い場所にあって、冬にはよく凍結するそうだ。 この場所から、東南に瀬戸内海へ注ぎ込む川がひとつあって、もうひと つは西北に山陰を通って、日本海まで注ぎ込む川がある。水系を上下に分 かつ山の峰を持つ町、だから分水嶺の町だったのだ。 さらに、かつては江戸幕府の直轄領で、山陰と山陽を結ぶ石州(せきし ゅう)街道の宿場町としても大いに栄えた町だったのだ。 なんだ。由緒ある町だったのか。 だから、「白壁の町並み」を保存し、作り足すことが可能な町だったの だ。 石州街道は、別名、銀山街道と呼ばれていて、石見銀山で産出された銀 を運んだりした。今年の3月に旅行した、浜田ー江津ー石見銀山ー松江の コースが、いまこの町と偶然繋がった。 「白壁の町並み」は、トイレも古めかしく作ってあって、えらいなあ。 よっぽど、町の発展に尽力している人がいるんだろうなあ。 小説家・田山花袋(たやまかたい)の『蒲団(ふとん)』のモデルになっ た生家があったり、明治時代の警察を改造した食べ物があったりする。 それにしても、この上下町。 どうも「上下町」という名前を、町じゅうが茶目っ気たっぷりに自慢し ているように思える。やたらと「上下」という名前のついたお店が多いの だ。 美容室も、病院も、警察も、上下美容室に、上下病院に、上下警察。 あたりまえのことなんだけど、妙におもしろい。 上下画廊、上下交番、上下交通、上下製材、上下小学校、上下中学、 上下高校、上下教会。目についただけでも、こんなにあった。 最後の「上下教会」というのが、けっこうこの町のシンボルだったりす る。 建物が蔵で、屋根に櫓(やぐら)と、十字架が乗っている。 ちょっと道が狭いので、この上下キリスト教会の全身を写すことができ なかった。残念。 この町の人はとにかく親切。 「白壁の町並み」のなかにあるパン屋さん「増岡屋」も、古い町並みに合 わせた建物にしているけど、何やらこんな鄙(ひな)びた町にあるようなパ ン屋さんとは思えないようなおしゃれなパンが並んでいる。 お腹が空いているのと、あまりにもおいしそうなので、思わずここのパ ンを買ってしまった。3個300円。安い。 「どこから来たんですか?」 「東京からです…」 「ありゃまあ、遠いところから…」といって、おまけにおせんべいのよう に大きいビスケットを2枚もおまけにくれた。300円でこんなにたくさ んもらっちゃっていいのかなあ。 あっ。「白壁の町並み」の美しさに目を奪われて、すっかり忘れていた けど、この上下町の名産品といえば、あの何年か前に話題になった「つち のこ饅頭」なのですよ。 ほら。どこかの町が、ツチノコの写真を撮ったら、何万円、本物を捕獲 したら、何10万円出すとか言っていたでしょ。その町とは、この町のこ とだったのですよ。 さらに、クリスマスの頃になると、山に電飾で「○○! 愛してるよ〜!」 というメッセージをお金を出せば、飾ってくれる町ってあったでしょ。 それもこの町だったのですよ。おもしろい町だよねえ。 上下市という名前以上におもしろい町だ。 で、食事をしようとしたら、なんと、この町でいちばん美味しいお店 「岡田屋」さんが、定休日。和菓子屋のおばあちゃんに「それは残念だね え!」といわれ、また和菓子屋さんでもたった315円の天領まんじゅう 5個を買っただけなのに、おせんべいやら、ビスケットをもらってしまっ た。 けっきょく、食事処が定休日なので、さっきのパン屋さんで買ったパン を食べながら、町を歩く。 マロンパンが、やわらかくて、美味しい! 絶品だよ! うーん。絶品でも困るなあ。 この町のパンが美味しくても、買いに来れないよ! あとからすぐお客さんが、車を横付けにして、このお店のパンを買いに 来ていたから、有名なんだね。近くの人は買いに行ってね!って言っても、 この日記を読んでる人で、近くに住んでる人いるのかな? でもけっこう毎回、旅行に行くと、「そこは私の故郷なんです〜!」と か「おばあちゃんの家なんで、夏休みによく行きましたあ!」なんていう メールが来て驚かされる。 おお! 上下駅に出たぞ。 無人駅ではなかった。 小さな駅だけど、ちゃんとお土産品売り場を駅に併設している。 えらいなあ。1日片道8本しか停まらない駅なのに。 へ〜、ここから広島バスセンターまで、1日6往復、高速バスが出てい るのか。 最近地方は、本当にバスの時代だなあ。 本数多いし、鉄道より速くて、鉄道より値段が安いなら、バスが勝つに 決まっている。 まだ次の列車まで、1時間半以上もある。 もう一度、回ってみるか。 あまりにも、おもしろい町なので、私はこの町を2周してしまったよ。 暑いし、もうへとへと…。 でも人情といい、町並みといい、素晴らしい町だよ。 午前11時30分。喫茶店で休む。 喫茶店の名前をメモるのも忘れたくらい、疲れた。 暑い、暑い。 この時点で、なんと府中駅で私が乗るはずだった列車は、まだ府中駅を 出ていない。 午前11時58分の発車だからね。 推理小説のトリックみたいだ。 午後12時41分。上下駅から、再び福塩線に乗る。 今度は1両のワンマンカーだ。 車内のシートが、新しくてきれいだ。 列車の本数が少ないものだから、沿線の雑木林がレールの上にまでせり 出すように茂っている。その葉っぱを、かき分けるように、列車は疾走す る。ぷちぷち! ぷちぷち!と葉っぱが列車に当たる音がする。 途中の駅で、すれ違いのための待ち合わせの列車が停まっていない。 本数が少ない路線らしいなあ。 もはやローカル列車の範疇すら、逸脱している。 ん? ひらめいたぞ。 府中駅からの福塩線をつかって、『電車でGO!』の実写版をやればいい。 府中駅から、終点の三次(みよし)駅まで、15駅ある。 これを運転手立会いのもと、列車を運転してみたい人を、1区間5万円 で運転させてあげるのよ。仮免許練習中みたいに。 珍商売でしょ。 次の駅に着いたら、交代。 あなた、ひとり5万円で、15駅。 片道だけで、もう75万円の収入ですぞ。 往復すれば、なんと150万円。す、すごい! 鉄道マニアの鉄ちゃんたちを集めれば、15人程度の人数なんて楽勝で しょう。 順番待ちになると思うなあ。 1日4往復したら、600万円ですぞ。 安全性の問題とかあるだろうけど、よく新米運転手が日中、ふつうの路 線で練習してることを思えば、踏み切りは少ないし、単線だから、正面衝 突もなくていいと思うなあ。正直言って、地方で鉄道はもうきついよ。 電車の好きな私としては、鉄道が残ってほしいけど、中途半端にあるく らいなら、もう廃線にしてしまったほうがいい。通勤・通学用にマイクロ バスで代用すればいい。 その分そこそこ利用度の高い路線を、山形新幹線のようなミニ新幹線に 昇格させてしまったほうがいい。 その上で、先週行った姫新線みたいな路線は、思い切りノスタルジック 路線にする。 わざと駅舎を古めかしくして、駅員さんもおじいちゃんばっか。 1両の列車は、山と山の間を縫うように走る。 作家の吉川英治さんが『宮本武蔵』の故郷・岡山県大原を訪れたときに 「ふつう景色は空があて、山があるものだけど、このあたりは山があって、 それから空がある」と言ったそうだけど、本当に山のほうが多い。 また眠くなった…。 午後1時38分。終点の三次(みよし)駅に着いた。 上下町で、町を2周してしまったものだから、駅前の観光案内所で、三 次市のMAPをもらって、そのままのこのこ歩いて行ってしまった。 思ったより、遠い。 この三次市にも、古い町並みがあると聞いてきたので、上下町のような 「白壁の町並み」を想像して来たんだけど、全然無い。 暑いので、汗が水鉄砲のように吹き出る。 今回、東京からハンドタオルを何枚も持って来たのに、すべてキャリー バッグのなかに置き忘れてきた。くそっ。あぢぢ…。 鵜飼で有名な巴橋を渡っても、まだ町並みは現れない。 ダメだ。どうも地図の見方を間違えたようだな。 芸備タクシーの看板があったので、へろへろしながら、入って、タクシ ーを頼む。 「古い町並みをザッと回ってもらって、三次駅まで行ってください!」 「古い町並みねえ。こっちやけどね」 あれ? さっき通って来た道だぞ。 三次は、つい最近まで栄えていた町なので、古くなり方が中途半端なの だ。 なるほど、卯建(うだつ)が上がった豪商風の家もたまにあるけど、その 隣りが昭和っぽい商店なので、通りとしての統一感がまるでない。 このタクシー運転手さん、元広島カープ監督の達川さんのしゃべり方に よく似ている。語尾が上がる。 「静かでしょう!」 「さびれとるでしょう!」 「人のおるの見ることないけーのー!」 「全然人が、おらんでしょう!」 三次(みよし)市に、「プラザ」と「イズミ」とかいってたかな、ジャス コみたいな大型スーパーが出来たら、急に商店街が錆びれてしまったんだ そうだ。 なまじ、繁栄していたので、上下町のように、「白壁の町並み」として 整えることもできないうちに、衰退に加速度がついてしまったそうだ。 うーーん。『桃太郎電鉄』的におもしろいものといえば、和菓子屋さん の「乳団子」くらいのものか。ありふれたギュウヒの食べ物だ。 お土産屋さんはあっても、試食できるお店がひとつもない。 こういう町はやっぱり衰退しますなあ。 午後3時10分。三次駅から、急行みよし5号に乗る。 えっ。急行なのに、急行券を別に徴収するの? 乗車券1280円、急行券730円。 納得いかないよなあ。 特急じゃないのに。 これから、広島駅に向かう。 芸備(げいび)線だ。 さすが芸備線。本数も多いので、よく駅で待ち合わせの列車が停まって いる。 やっと、真っ当なローカル線に乗った気分だ。 どうも府中駅から、三次駅までの福塩線は、近い将来に廃線になるそう だ。 上下駅も無くなってしまうのかあ。 そう思うと、淋しいなあ。 午後4時21分。終点広島駅に着く。 朝早くでかけて来たおかげで、まだ夕方だ。 今回、タクシーを使った区間は、府中駅から、上下駅までだけだから、 上出来でしょ。電車だけで、このコースをたどったら、広島駅にはきょう じゅうに着けたんだろうか。 このまま新幹線で、京都まで戻る私ではない。 まだ行くところがある。 「新幹線口名店街」だ。 もみじ饅頭や広島菜、宮島しゃもじなどを売っているお土産屋さん街だ。 ここに「むさし」というおむすび専門店がある。 この「むさし」は、15年ほど前、全日空ホテルの近くにあったお店に よく食べに行った。当時は出版社を作って、本の営業で日本じゅうを回っ ていた。広島に来たときは、夜はお好み村、朝はこの「むさし」というの がお決まりのコースだった。 ふと、インターネットで広島のことを調べてみたら、新幹線口にもお店 があるというのがわかったので、もう一度来てみたいと思っていたのだ。 市内にもう10軒以上、チェーン店があるんだねえ。 うんうん。こういう田舎風の店内だった。なつかしい。 あれ? 15年ぶりに食べるから、当時どれを食べていたのか思い出せ ない。 「あの〜! おにぎりのセットで、キャベツがついているのありましたよ ね。それってどれですか?」 「あ〜、それなら、これとこれです」 「じゃあ、『広島方言』にしてください!」 これこれ! おにぎりに、キャベツがついているのが、ポイントなのよ。 無造作にちぎっただけのキャベツが何枚かついているんだけど、これが 妙におにぎりに合うんだなあ。お店の名前もメニューの名前も忘れていた けど、「おにぎり+キャベツ」で記憶していた。 『広島方言』は、おにぎり2個に、鶏を煮たものや、大きなレンコン、 枝豆などがついて、800円。 ふうっ。こんなに量が多かったかなあ。満腹。 午後5時32分。広島駅から、のぞみ26号に乗車。 午後7時8分。京都駅着。 午後8時。京都のマンションに戻る。 戻って、TVのスイッチをつけたとたん、横浜ベイスターズ対巨人戦が 流れていて、0対0。おおっ!と思う間もなく、ばたばたと3点取られる。 私が帰るのを待っていたかのようだ。気分悪い。 相当疲れていたようで、お風呂に入って、バタンキュー。 早朝出立は、1日が長すぎる。 こういう日帰り「大」旅行は、もうやめよう。
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