6月16日(日)

 しかし、何だね。
 W杯の開幕式で、NHKがとんちんかんな中継をしたときは、このまま
W杯カップは盛り上がらないまま終わっちゃうかと心配したけど、まるで
違う国になってしまったのかと思えるほど、盛り上がったねえ。

 でも、そうなったのも、やっぱり日本が勝ち進んだせいだろうね。
 ベルギー戦で引き分けたのも、妙に未来を感じさせたしね。
「勝ち星が何よりの特効薬」というスポーツ格言そのものだ。

 しかも、こう毎日、サッカーばかり見ていると、サッカーの45分ハー
フのテンポに身体が馴れてしまって、プロ野球を見ると、テンポが遅くて
まいっちゃうね。横浜ベイスターズの投手の球が遅いせいじゃないよ! 
横浜ベイスターズは攻撃終了までのテンポは速いんだから…って、自虐的
なギャグを言わせないでくれ!

 プロ野球は、9回で終了ではなくて、5回で終了でもいいね。7回まで
でもいいけど、5回のほうが、全力と全力のぶつかり合いになって、おも
しろくなると思う。
 5回なら、TV中継に収まるしね。
 それか、2ストライクで、1アウト。3ボール目でで、ファア・ボール
がいい。
 延長はやり放題やればいい。

 午前11時。嫁と代官山へ。
 以前、手ぬぐい屋さんのなかにあった、おにぎり屋さんが独立して、代
官山アドレスの向かい側のビルの2Fに入った。
 その「田田(でんでん)」に行く。
 油揚げとおかかのおにぎりと、青のりの佃煮のおにぎり。  おにぎりの種類は、選ぶことができる。  おにぎりセットの味噌汁や、小鉢も美味しい。  けっこう、ここはいいお店ですぞ。  食後、代官山の裏道をあちこち、けっこう歩く。  代官山は、住宅街にぽつんと、お店があったりするので、釣りをしてい るみたいだ。
 もうこの先には、お店は無いだろうと思っていると、まわりが全部個人 宅なのに、オープン・カフェがあったりする。  代官山と「山」というだけあって、階段も多くて、けっこう疲れる。  午後12時。代官山界隈を、ほぼ半周したあたりで、へばる。  並木橋の近くのフレンチ・レストランの「ラ・プティット・シェーズ」 で、コーヒー。 コーヒーだけでもOKだというので、入ったのだが、メ ニューを見ると「シェフおすすめ特大エクレア 600円」とあるではな いか! 「シェフおすすめ」で「特大エクレア」ですぞ、ご同輩!  食べるしか、ないでしょう!
 おお! でっけ〜!  嫁が特大エクレアを、ナイフで4等分しようとする。 「やめてくれっ!」 「えっ?」 「エクレアは、ガブッと食べてこそ、エクレアではないか!」  あありにも大きいので、半分に切ることは許したが、本当はどんなに大 きくても、口がチョコまみれになっても、ひとくちでガブッと行きたかっ た。  味は、クリームよりもチョコがメインで、上品な味。  またここで、この特大エクレアを食べる日が、また来ることだろう。  さらに、山手線の線路脇の道を通って、渋谷まで出る。
 途中、ダイバー用のお店に寄って、水中ノートを買う。  海中で、文字が書けるノートなのだが、私はお風呂でつかっている。  お風呂は気持ちがリラックスできるので、よくアイデアが出る。  ところが、いくつも浮かぶと、お風呂を出るころには、ひとつしか覚え ていないことが多い。最近では、ひとつしか出なかったアイデアすら忘れ る。  こういうときに、メモをしておくのだ。  便利だよ。お風呂から上がって読むと、ちっともいいアイデアではなか ったりして、冷静に判断ができる。  午後1時30分。渋谷の本屋さんに寄って、帰宅。  柴尾英令くんから、30分遅れそうだとの連絡が入ったので、映画『ゴ ジラ2000』のメイキング・ビデオを見ながら、仮眠してしまう。  ゴジラの造形をやっている人が、「キドゴジ」とか「デスゴジ」と略称 連発、スタッフの名前をばんばん出しながらしゃべるのを見て、ムッとす る。  お客さんのことを考えていないのが、ありあり。  映画も、そういう内容だ。  監督がよくても、脚本がよくても、スタッフの注意が、お客さんに向い ていない作品は結果が順当だ。。  午後2時30分。  柴尾英令くんが到着して、『桃太郎電鉄11(仮)』の手直し作業の続 き。  きょうはどの辺を手直ししたかは、内緒ね。  なぜかっていうと、昨年の『桃太郎電鉄X(ばってん)』で、もめる原 因になった部分だからね。  どこだったかを言ってしまうと、別に気にならなかった人でも、「そう か、そこはそんな風にひどかったのか!」という考え方を持ってしまうの で、作家としては、失敗した部分を言わないのが、お客さんに対するやさ しさだ。  本当は、言いたくて仕方がないんだけどね。  午後6時。うちの娘が、すき焼きが食べたいと言い出す。  デパートの食堂街のすき焼きでもいいという。  いいや。グルメ娘が、そんな場所で満足するわけがない。  代々木に1軒、いいお店があるのは、誰もが知っている。  でも、あのお店は、ついついご主人の甘言に乗せられて、食べ過ぎてし まうので、危険なのだ。  でも一度、あのお店が浮かんでしまったら、ほかのお店を想像できなく なってしまった。  というわけで、家族3人+柴尾英令くんの4人で、「代々木・今半(い まはん)」へ。 「あれ? きょうは、すき焼きだけ? 牛たんのしゃぶしゃぶも食べれば いいのに」 「ダメ、ダメ、あれ、美味しいから、ついつい食べちゃうから。きょうは、 みんなですき焼きだけにするぞと心に決めて来たんだから!」 「だったら、牛たん、ひとり2枚くらいにすればいいのに!」 「ダメ、ダメ! あれって、絶対2枚じゃ、すまない!」  とにかく、このお店のお肉はすごいのよ。  ご主人自ら「うちは、毒のようなお店だからね」というだけあって、美 味しさだけを追求する、恐ろしいお店なのだ。
 肉も、卵も、醤油も、とにかく超一流のものしかつかわない。  値段も桁外れに高いから、よい子のみんなは、決して真似しないように。  なにしろ、ご主人は「お客さんに美味しく食べてほしいから!」といっ て、すき焼きもほとんど、鍋奉行を担当してしまうのだ。 「うちのお肉はお刺身として食べられるようなお肉だから、裏返さないで ね〜!」 「しらたきは、たっぷりお肉の出汁がしみ込むまで、食べちゃダメよ!」 「はっはっは。もう食べちゃったよ!」と、私。  生卵もいいの使ってるのよ。  すき焼きのお肉を焼いて、溶いた生卵につけて、その上から、七味唐辛 子をパラパラかけると、有頂天まで飛んで行きそうだよ! 「ご飯は?」 「ダメ、ダメ! きょうは食べない!」 「卵をお肉の出汁で溶くんだけど、それをご飯の上にかけて、食べない?」 「ううっ。なんて美味しさが想像できるようなことを言うんだ!」 「お嬢ちゃん、食べる!」 「もちろん、食べる!」  くそ〜〜〜。娘が二念なく、返事するときは美味しいに決まっている。 「ああ〜〜〜、おひひいよォ〜〜〜!」  思わず、食べちゃいました。 「これで、もう終わりだからね!」 「デザートは?」 「いらない! いらない!」 「白桃のアイスクリームに、パンナコッタなんだけど。パンナコッタ、こ ってりしてるよ〜!」 「もうやめてくれいっ!」 「ああ〜〜〜、おひひいよォ〜〜〜!」  けっきょく、食べちゃいました。 「家まで歩いて帰ろうと思えば、帰れる距離だから、歩いて帰る?」 「お腹苦しくて、とても歩けない!」 「のど元まで、埋まっている感じ!」  午後8時。帰宅。  柴尾英令くんと『桃太郎電鉄11(仮)』の手直し作業の続き。    昨日、あれだけ順調だった作業が、きょうは昨年の悪夢を思い出させる ような部分なので、怒り再燃で、仕事進まず。  午後10時。根をつめ過ぎたので、頭がきりきり痛くなった。  もうダメ! タオル!  宿題が終わらなかった。  柴尾英令くんに、また明日来てもらうことに。もうしわけない。  本当に、今回柴尾英令くんという忍耐強い人がいなかったら、『桃太郎 電鉄』は終わっていたなあ。
 

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