5月20日(月) はっきりしない天気だなあ…。 雨音がしていると思ったら、新聞を取りに外に出ると、晴れている。 このところ、旅に出ていないので、うずうずしている。 午前10時30分。近所の「らぴす」サンのモーニング・セットを食べ に行こうとしたら、雨が降っている。 コーヒーを飲んでいるうちに、雨が上がった。 午前11時32分。嫁と、東京駅から、やまびこ123号に乗る。 ちょいと、日帰り小旅行にでかける。 このまま雨は上がりそうだ。 午後12時26分。宇都宮駅着。宇都宮というと、いつもここから乗り換えて、どこかへでかける駅なん だけど、きょうの主役は、宇都宮! 宇都宮といえば、餃子の町である。…なのだが、数年前も、宇都宮まで 来て、餃子屋さん街を見つけることができずに、戻ってしまったことがあ る。 きょうは、ようやく、その雪辱戦である。 ところが、餃子屋さんが見当たらない。 宇都宮駅の東口を降りると、餃子の像があった。 デザイン的に、餃子に見えない。 駅構内には、あれだけ「ギョーザの町」という張り紙がたくさんあるの に、外に出たとたん、まるで幽霊屋敷から逃げ切れたかのように、「ギョ ーザの町」の張り紙が消えた。 町を少し、歩く。餃子の気配がない。 仕方なく、お漬物屋さんで聞き込みをする。 「宇都宮に、餃子屋さんがたくさん集まっている場所は、どの辺ですか?」 「そうですねえ。餃子屋さんが集まっているところって、聞いたことがな いですねえ!」 「えっ。でも、宇都宮に、餃子屋さんが、60軒以上あるって、聞いたん ですけど…」 「たしかに多いですけど、集まっているというのはないですねえ…」 とうとう、コンビニで『まっぷる』を買う。 なるほど、餃子の町だけど、市内のあちこちに餃子屋さんは広がってい て、どこが餃子の繁華街という風には無いようだ。 私は、てっきり、餃子通りというのがあって、両側に餃子の石像が、何 10体も並んでいて、餃子屋さんが20軒ぐらいずらりと並んでいて、に んにくの匂いがぷんぷんするストリートがあるのだと思っていた。 午後1時30分。とりあえず、宇都宮でいちばん最初に餃子屋さんを始 めたといわれている「みんみん」の本店に行く。 物の本によれば、宇都宮が餃子の町になったきっかけは、明治時代にま で遡る。 明治4年。宇都宮には、帝国陸軍の第14師団が置かれていて、ここか ら中国大陸へ多くの兵士たちが、出兵して行った。 で、中国から帰って来た兵士たちは、大陸で食べた餃子の味が忘れられ なくて餃子を再現して、広まって行ったそうだ。 また宇都宮には、餃子に適した素材が多くあったことも、餃子が普及す るのに一役買ったようだ。 まず、小麦粉の生産が盛んだから、餃子の皮が作りやすい。 ニラ、ネギ、白菜の畑も多い。養豚なら那須高原だ。 冬の寒さが、満州に似ていたせいもあるらしい。 「意味無くヒットするものはない!」の鉄則通りだね。 午後1時を過ぎたというのに、「みんみん」は満員。 しばらく外で待つ。 メニューは、焼き餃子、水餃子、揚げ餃子の3種類。 いずれも、220円。 もちろん、3種類とも注文する。 私にとっては、取材だ。 焼き餃子が来た。 あぢっ。わかっちゃいるけど、あぢぢ…。 ん? んまいっ。 皮がぱりっとしていて、美味しい。これは、いいぞ。 揚げ餃子も、皮がさくさくっとしていて、うま〜い! ちっとも脂っぽくない。 でも、あぢぢ…。 水餃子。これには、驚いた。 口のなかに、ちゅるるん! すぽっ!と吸い込まれて行く。 この食感がなんともいえず、いい。 妙に皮がつるつるしているのだ。 「みんみん」は、宇都宮でいちばん最初に餃子を作り始めてなお、味の評 判もいちばんいいのが、よくわかった。 こんなお店が家の近くにあったら、しょっちゅう通ってしまうなあ。 でも、ふたりで片道9600円つかって、新幹線で通ってくるのはなあ。 ははは。考えない、考えない。 そのくらい、美味しいよ、ここの餃子。 食後、町を少し歩く。 気にして町を見ると、たしかに餃子屋さんは多い。 どうも二荒山(ふたらさん)神社の入口にある「来(き)らっせ」とい うお店が、日替わりでいろんなお店の餃子を食べさせてくれるお店のよう だ。 観光客は、まずここに来いということらしい。 でも、きょうは休業日であった。 観光客向けなら、休んじゃあいけないよなあ。 このあと、東武宇都宮線から、栃木市のほうに行く予定だったのだが、 また雨が降って来た。 このままおとなしく帰るか? でもなあ。このまま帰ったら、餃子を食べに来ただけになってしまう。 餃子660円。交通費1万9200円は、ちょっと無駄遣いにもほどが ある。 雨かあ…。 あそこなら、雨が降っても、関係ないなあ。 前から行こうと思っていた場所を思い出した。 「とちぎ土産館」を物色後、タクシー乗り場へ。 午後2時30分。宇都宮駅から、9キロほど西に行った、大谷(おおや) へ行く。大谷石で有名な、あの大谷である。 明治時代の代表的建造物である、帝国ホテルも、大谷石で出来ていた。 ごくありふれた地方中都市の道路を通り、街道に大谷石材店という看板 がちょっと増えて来たなと思ったら、その先の景色は、異国だった。 まるで、中国の奥地の切り立った岩山のような景色だらけになったのだ。 思わずその奇観に、目の縮尺が狂う。 怪獣映画で、森の奥の研究所にたどり着く、そんなシーンをよく見たけ ど、そんな感じのところに、大谷資料館はあった。 受付けでお金を払って、坑内入口の石段をちょっとでも降りると、そこ はもう野球場のような広さの採掘場跡である。 『ドラゴンクエストV』で、奴隷になった場所というか、『猿の惑星』で、 連行されそうな場所というか、ゲーム『トゥーム・レイダース』の洞窟と いうか、とにかくちょっと想像がつかない広さの、幻想的な空間だ。 第2次世界大戦のときは、飛行機の倉庫として、利用したそうだ。 ミュージック・ビデオの撮影や、CMの撮影によくつかわれるというの が、よくわかる。 天井まで、20メートル以上。明かりは、30メートルおきぐらいに、 ぽつんと電球がぶら下がっているだけ。ぼ〜っとした光だ。 寒い。平均気温は、13度だそうだ。 「あッ〜〜〜!」。 声が反響する。 嫁と私のふたり以外、誰もお客さんはいない。 TVのサスペンス劇場なら、間違いなく殺されるような場面だ。殺人犯 が隠れるのにも、最適。ちょっと天然のクーラーが効きすぎだけど。 当たり前だけど、順路はすべて、石段。大谷石。 ぐるっと回るだけで、けっこう疲れる。 石段の連続だからね。 最後の石段を登り切るころには、お尻のほっぺが、メキメキ痛くなった。 ふうっ。登りきった。 わずか20分間ぐらいの見学だったけど、おもしろい! ここは今まで経験したことのないような場所だ。 しばらく、お土産物屋さんでコーヒーを飲む。 ジャズが流れ、民芸品があって、コーヒーは、キリマンジャロに、モカ にと、ちゃんとしたコーヒーを飲ませてくれる。そんなお店が似合う場所 なのだ、ここは。 帰りに、27メートルの高さがある、平和観音を見て行く。 有名な大谷観音の近くにあって、広場にすっくと立っているから、入場 無料で誰でも見ることができることから、いつしかこの平和観音のことを、 人々は、大谷観音というようになってしまっていると、タクシーの運転手 さんが教えてくれた。 この大谷は、町全体が大谷石でできていて、まったく土というものが無 いらしい。それで、こういった不思議な景観が、ふつうになってしまって いるらしい。 しかもこのあたりは、太古の時代、海だったそうで、その頃の岩盤が大 谷石として今でも残っているそうな。 石材屋さんの社屋も大谷石 午後4時。再び宇都宮駅まで戻る。 せっかく「餃子の町・宇都宮」に来たのだから、夕飯にはまだ早いのだ が、もう一軒、餃子を食べて行く。 いつもこの日記を読んでいる人から「いつも美味しいものばかり食べて いていいですね!」と言われるけど、こうして、わずか3時間の間に2回 も餃子を食べないといけないのですぞ。しかも種類たくさん。 宇都宮駅ポルタの1Fに「青源みらくる亭」というのがあるので、寄っ て行く。 このお店は、創業が江戸時代の寛永2年。お味噌の専門店が、その美味 しいお味噌汁をつかったスープ餃子を作って、評判になっているのだ。スープ餃子は、柚子の風味がする美味しい味。 ネギ味噌焼き餃子は、上に唐辛子が乗っていて、辛い! 美味しいけど、 ちと辛い。味噌を塗った甘いおにぎりといっしょに食べたら、ちょうどい い味だった。 夏季限定の「伴天連(ばてれん)餃子」には、驚いた。 ちょうど、夏の胡麻風味の冷やし中華に、冷たい餃子が乗ったようなも の。 この味は、意表をつかれた。 餃子を茹でたあと、冷やしたものが、こんなに美味しいとは思わなかっ たし、餃子が胡麻に合うというのも初めて知った。 ううっ。どれも本当に美味しいんだけど、さすがにお腹が苦しい! 午後5時9分。宇都宮駅から、MAXやまびこ136号に乗る。 ううっ。苦しい。 餃子ばっかで、胃がもたれる。 しばらくして、眠くなって来たら、もう「次は上野〜〜〜!」のアナウンス。 宇都宮は近すぎる。 午後6時。東京駅着。 大谷石の採掘場跡は、おもしろい場所だったなあ。 午後6時30分。帰宅。 きょうの取材をまとめる作業。 しっかり宇都宮駅で、お土産品もたくさん買って来ている。 餃子せんべいは、にんにく臭くて、美味しかった。 スープ餃子は、娘の夜食で食べさせよう。
-(c)2002/SAKUMA-