4月16日(火)

 午前中、DVDで『太陽を盗んだ男』を見る。
 70年代の日本映画は、今見ると、恥ずかしいだけだね。
 セリフのひとつひとつが力んじゃっていて、聞いているこっちの背中が、
ぞわぞわ、むずむず、ぐずぐずしてしまう。
 1950年代の日本映画のほうが、素晴らしい。
 
 午前11時30分。嫁と、新宿高島屋7Fの「パパスカフェ」へ。
 フォッカッチャのサラダに、コーヒー。
 食後、高島屋の「HMV」で、バスター・キートンのDVDを3枚ほど
買う。
 
 午後1時。佐藤志靖さんの美容室『レ・ザンジュ』へ。
 旅から旅へ、仕事から仕事への毎日なので、ちょっとでも時間が空いた
ときに、美容室に行っておかないと、すぐ髪が伸びてしまう。伸びると、
イライラするので、行く回数が増える。このくりかえし。

 午後3時30分。柴尾英令くんがやって来て、いっしょに『桃太郎電鉄
11(仮)』の手直し。
 
 今年の2月から、ハドソン札幌とのやりとりを、サーバーをつかってや
るようになった。
 なったのは、いのだが、私にはどうもまだ使い勝手が悪い。
 というより、もともとローテク主義者だから、コンピュータ臭いことは
本来、大嫌いだ。

 しかも、ただでさえ『桃太郎電鉄』シリーズは、仕様が細かくて、イレ
ギュラーな処理の山だから、文章でお互いの検討事項を伝えることからし
て、難しい。
 早い話、札幌のスタッフは、コンピュータっぽい文章を書いて来る。
 コンピュータっぽい文章だと、私が読めない。
 そこで、柴尾英令くんという通訳さんに、翻訳してもらう。
 柴尾くんの翻訳文を私が聞いて、柴尾英令くんと内容を検討して、仕様
書を書き直す。
 書き直した文章をそのまま、札幌のスタッフに送ると、私の文章は曖昧
な部分が多いので、コンピュータの指示書きには適さない。そこで、また
また柴尾英令くんに、書き方、答え方を教えてもらって、返事を書く。

 こういう面倒なことを繰り返しているのだ。
 まるで、アフリカ奥地のブッシュマンとしゃべるときに、日本語→フラ
ンス語→現地の言葉。現地の言葉→フランス語→日本語と、変換している
ようだ。

 おまけに、私の仕様書は、秘伝のたれが入った、一子相伝の壺なので、
コンピュータでは、割り切れないものが多い。
『桃太郎電鉄』で、急行系カードといったら、何を思い浮かべるだろうか?
 まず急行カードだよね。特急カードもそうだよね。オレンジカード、新
幹線カード、のぞみカードもそうだよね。いずれも、サイコロを2個以上
振って、進むカードだからね。
 では、リニアカードは?
 リニアカードは、サイコロを振らず、30マス進めるカードだ。
 でも名称からして「急行系」と言ってもいいよね。
 それでは、「レッツ5カード」は?
 ちょっと違うような気がして来た。
 1進めるカードは? スペシャルカードは? 特急周遊カードは? 
スピードカードは? ぶっとびカードは?
「急行系」カードと、「進行系」カードは違うのか?
 たぶん、違うけど、一部はおなじだ。
 一部はおなじだけど、全部ではない…ああ〜〜〜ッ!

 きりきりきりッ、ぎりぎりぎりッ!
 どんどん私の頭が痛くなってくる。

 きりきりきりッ、ぎりぎりぎりッ!
 痛くなったら、すぐセデスがほしいくらいだ。

 きりきりきりッ、ぎりぎりぎりッ!
 因数分解を解くより、複雑だ。

 ぐががががッ!
 ちょ、ちょ、ちょっと、柴尾くん、休ませて!
 ひ〜〜〜ッ! はッはッはッは〜ッ! 酸欠! 酸欠!
 きっついよ〜〜〜!
 毎回、毎回、『桃太郎電鉄』は複雑になる一方だから、こういうひとつ にまとめる言葉がだんだん少なくなっているのだ。  都道府県を、47県ですませてしまえばいいのに、一都一道二府43県 になって行くようなものだ。  おまけに、デビル系カードと書けば、昔から、リトルデビルカード、 デビルカード、キングデビルカードと決まっていた。  でも最近は、似た用途として、ウィルスカード、幸福な王子カードと、 デビル系カードと、言い切れないカードが出て来ている。  これをどうやって、ジャンル分けして行ったら、いいのか?  正しいルールを決めるのは、まだ大変ではない。  大変なのは、決まったルールを、自分の仕様書のなかに、反映して、書 き直す作業が死ぬほど大変だ。  今度、柴尾英令くんが、一律変換ソフトを持っているようなので、いっ しょに文章を直すことになった。    この時点で、みなさん「もし柴尾さんがいなかったら、さくまサン、ど 〜するんですか?」と思っていることだろう。  やめるのだよ。  何を?  ゲーム作りを。  ええっ? ってことは、『桃太郎電鉄』をやめちゃうってこと?  その通り!  柴尾英令くんに代わる人でもいれば別だけど、いないなら、ゲーム作り のほうをやめちゃうな! もしくは、カード無し、イベントほとんど無し の『桃太郎電鉄』を作るしかない。でもそんなゲームはおもしろくならな いから、やめちゃったほうがいい。  午後5時。あまりにも、つらい作業の連続なので、喫茶店「らぴす」さ んで、頭を冷却する。  冷却ののち、近所の「初花(はつはな)」のうな重を食べて、パワ〜〜 〜アップ!再挑戦だあ!  …と、思ったのもつかのま、簡単にエンジンは焼き切れる。  ♪私の頭は〜、焼き玉機関〜、ピヨピヨ〜。 「柴尾くん、日を改めて、この続きをやろう!」 「はっはっは。そうしたほうが、よさそうですね!」
アイスでお疲れさま〜〜〜!
 午後10時。会議終了。  う〜ん。今週末にも、また取材旅行にでかけようと思っていたんだけど、 とてもそんな余裕なくなりそうだなあ…。おちょほほほ…。
 

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