3月23日(土)

 寒いね、どうも。
 この寒さが本来の温度なんだけろうけど。

 午前11時30分。家族3人、品川駅へ。
「品川駅開業130周年記念」とかで、ちょうどホームから、蒸気機関車
が走り出すところ。私は上から見たのだが、向かい側のホームには、人、
人、人の山。
 まだまだこういうイベントを組めば、いくらでも人が集まるということだ。
「ピヒョオオオオオオオオッ!」という汽笛が鳴った。
 びっくりするような大きい音で、物悲しい。
「シュッシュッシュッ!」
 蒸気機関車が動き出した。
「大きい!」と娘が驚く。
 初めて蒸気機関車を見た人は、必ずその大きさと背の高さに驚く。
 新幹線なんかよりはるかにノッポさんだからね。
 デジカメしようとしたら、煙りがすごくて、私たちのいる跨線橋から見
える景色がすべて真っ白になる。
 ああっ、懐かしい。蒸気機関車の煙の匂いだ。
 さすがの私も、ふつうに蒸気機関車に乗っていたのは、小学生も低学年
の頃までだから、記憶が薄い。でも今の若い人から見れば、私は「蒸気機
関車に乗った人」ということになるかもしれない。よく間違える人が多い
が、私は戦争経験者ではない。

 午前11時45分。品川駅から横須賀線に乗る。
 きょうはまず車窓から、桜見物。
 横須賀線は比較的、高所を走るので、遠くの桜の小山がよく見える。
 川沿いの桜も美しい。
 電車はまとめて各地の桜を見ることができるので、花見にはお勧めだ。

 午後12時30分。鎌倉駅下車。
 小町大路をてろてろと歩き、本覚寺の前のおにぎり専門店「谷口屋」へ。
 電車のなかで、鎌倉の美味しいお店みたいな本を1冊、娘に与えておい たら、ここを選んだ。なにしろうちの娘は、刑事犬のように、美味しいお 店を見つける能力を持っているから、便利だ。  その刑事犬としての能力通り、「谷口屋」のおにぎりは美味しかった。  おにぎり2個セット・600円というのがあって、ガラスケースからお にぎりを2種類選ぶことができる。  玄米のおにぎりが数種類あるのがいい。  玄米わかめと、おいなりさんにしてみた。
「美味しいね!」といいながら食べていた娘が、ガラスケースに新たに出 来上がったおにぎりが届いたので、見に行く。 「高菜と、昆布と…」  思わず、娘が美味しそうなおにぎりをつぶやき、お店の人は「はい!  高菜と、昆布ですね!」と注文したものと受け取ってしまった。 「あ、いや、違います!」とあわてる娘。 「美味しそうなら、みんなで食べれば」と、嫁。  かくして、3人で、昆布と高菜のおにぎりを分け合って食べる。ほほえ ましい家族? いや、食い意地の張った家族である。     玄米のおにぎりって、美味しいねえ。  ふつうのお米のおにぎりより、存在感がある。    お店の人が会計のときに、おにぎり3個セット・700円に変更してく れた。  こういうマニュアル通りでない心遣いができるお店は絶賛したい。  開店時間が、午前10時30分からというのもうれしい。鎌倉駅からそ んなに遠くない。水曜日定休か。鎌倉は何でも京都を真似ているから、水 曜日休みが多いな。  食後、さらに小町大路通りを南下。  VAIOを入れた旅行用カートを、ガ〜ラガラッ、ガ〜ラガラッ、引っ 張って歩いているので、けっこう疲れる。  大町四つ角まで歩いた。  この四つ角にある和菓子屋さん「大くに」を見るや、娘のセンサーが作 動したようで、寄って行くことに。  豆大福に、おはぎが実に美味しそうなので、まずこのふたつを買って、 このお店のオリジナル商品・波乗り饅頭も買う。  あとで食べたが、豆大福はかなり美味しい。豆大福ベストテンに入れて もいいくらいの味だ。ってことは、豆大福だけで、まだ上位に10店もあ るってことかい? はい、そうです。  このあと、娘が目星をつけた和菓子屋さんを探して、さらに南下するが、 しばらくして道を間違えていたことに気づく。さっきの大町四つ角を実は 左折であった。左折せずに、迷うことなく、和菓子屋さんに入ってしまっ たためのミスであった。わっはっは。  国道311号線。鎌倉葉山線という名の細い道路だが、やたらと交通量 が多い。  けっこう歩き続けているなあ。  名越(なごし)の交差点に出た。  名越(なごし)という名前は、昨年のNHK大河ドラマ『北条時宗』の ときによく出て来た、名越一族のことだ。鎌倉は当時の豪族の名前をつけ た町名が多い。 それぞれ、北条家に滅ぼされたにもかかわらず、名前が 残るというのも、不思議な気分だ。  あっ。あった、あった。 「立正堂」という和菓子屋さん。  娘はここの三色だんごに目をつけた。三色だんごというと、ふつう、黒 ―白―ピンクの三色だが、ここのは、緑―白―黒の順。微妙に珍しい。  しかし、このお店は販売のみ。  買ったはいいが、食べる場所がない。  すると、近くに「立正安国論寺」というお寺があった。  名前の通り、日蓮さんが『立正安国論寺』を書き上げたお寺だそうだ。  門前に座って、三色だんごを食べる。  おお! きめの細かい上品な餡子(あんこ)だ。  お餅のやわらかさもいい。  まったく娘の見立てに失敗はないなあ。  鎌倉美味しいものガイドの本は、写真ではなく、イラストなので、娘の センサーも狂うかとおもったのだが、無敵だ。  ついでに、立正安国論寺の境内で、桜や、ツツジなど眺めて行く。
 このお寺の裏に、妙法寺というのがあって、妙法桜という有名な桜もあ るらしいのだが、すっかり疲れてしまったので、鎌倉長谷の家に向うこと に。  午後2時30分。鎌倉長谷の家へ。  ひょっとすると、半年ぶりかも知れない、この家。昨年暮れに一度だけ 本を取りに来たことがあるけど、泊まらなかったし。  さっそく、嫁と娘が掃除開始。  私は足手まといなので、部屋で少し仕事を始めると、猛烈な睡魔に襲わ れる。  ベッドにひっくり返る。  何度か、ブレーカーが落ちるトラブルに、気づきはするものの、睡魔の 猛威は激しく、午後5時半過ぎまで熟睡してしまう。  そんなに疲れていたかなあ?  午後6時。家族3人で、近所のお寿司屋さん「以ず美(いずみ)」へ。  たしか昨年出来たばかりのお店だと思う。  オープンしたときから、気になっていたお店なので、いつか一度来てみ たいと思っていた。 でもなにしろ我が家のお寿司屋陣は、豊富なので、ローテーションが確立 されていて、なかなか新しいお店にチャレンジする余裕もない。  このところ、ちょっとお寿司屋さんの登板感覚が空いたので、運良くチ ャレンジすることができた。    出来たばかりのお店なので、カウンターなども小奇麗で、気分がいい。  イカもすだちにお塩で食べたり、イクラやウニも、海苔の軍艦巻きでは なく、モンゴル産の岩塩を振りかけて食べたりと、いろいろ工夫している。 穴子も品川沖の東京湾だけで取れる、築地でも少量しか入荷しないものだ そうだ。  お寿司屋さんの力量のバロメーターである、玉子焼きもうまい。  次第に娘が「ふにふに! ふにふに!」と、美味しいお店を見つけたと き特有の動作を始めたのだから、相当評価は高い。  最後にこっそり出してくれた、カステラ状の玉子は、真ん中だけプリン のような出来栄え。これはうまい!  娘はデザートに出た、黒胡麻のアイスクリームを絶賛。  しかも、このお店、たくさん食べたにしては、かなり値段が安い。  ドラフト1位投手にしては、やけに変化球の種類が多いなあという印象 のお店だ。しかも何より、家から30秒ぐらいの近さにあって、値段も安 いとなれば、鎌倉でのローテーション入りは、早くも決定である。  まだまだ鎌倉では、先発の柱になるようなお店がいまいち見つかってい ないので、このお店の登場は、今後うちの家族を鎌倉に向わす回数を増や してくれるだろう。どうも、わが家族はやっぱり食い物次第で移動してい るようだ。ゲルマン民族ならぬ、グルマン民族のようだ。  午後8時。帰宅。帰宅と同時に、宅急便のダンボールが、7箱届く。  読み終えた本、見終えたビデオ、DVDなどを原宿の自宅から送ったの だ。  今夜は、本とビデオ、DVDの棚の総入れ替え。  本屋さんの棚卸しみたいで、楽しいやら、へばるやら。  うっかり熟睡してしまったから、このくらいは運動しないと。
 

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