2月27日(水)

 しかし、午前10時〜12時の間に来ることになっているのだが、

 曇り空だが、でかける。
 今回の京都滞在は、以前から行こうと思っていて、行けなかった近
隣諸国を塗りつぶすのが主目的。
 関、亀山、インスタントラーメン発明記念館と、順調にこなして、
きょうは、丹波篠山(たんばささやま)に向う。

 午前10時2分。嫁と京都駅から新快速に乗って、大阪に向う。

 午前10時30分。大阪駅に着く。
 次の発車まで20分以上あるので、駅構内の喫茶店で、コーヒーを
飲んで待つ。
 喫茶店でスポーツ紙を読むのが、関西の慣わし。
 おっ。横浜ベイスターズ今年最大の補強・2メートル8センチの
ターマン投手(愛称:巨大ミミズ)が、オープン戦で好投したようだ。
でかいというだけで、スポーツ紙ネタになるのだから、数値というも
のは大切なものなのだな。
 それにしても、巨大ミミズという愛称は、情けない。

 午前10時55分。大阪駅から福知山線に乗る。
 尼崎駅、伊丹駅、宝塚駅、三田(さんだ)駅と、耳なれた駅名が続
く。
 宝塚を過ぎると、山の稜線が見えて来て、急に景色がよくなる。

 三田(さんだ)駅から、先は各駅停車。
 毎年、秋恒例の松茸ツアーを思い出す。

 どんどん駅が小さくなって行く。

 午前11時56分。篠山口(ささやまぐち)駅に着く。
 この駅だけ、大きい。
 でも、丹波篠山(たんばささやま)の中心地は、ここから歩いて 1時間かかるという。まずは駅の観光案内で、下調べをしようとする と、案内所のおじさんが咳き込むように話しかけてくる。 「お客さん! どこ行くの?」 「篠山で、いのしし鍋でも食べようと思って…」 「それならこの下のバスが、12時8分に出るから、早く行ったほう がいい!」 「いのしし鍋の美味しいお店ってどこですか?」 「どのお店もおなじようなもんだ! この下のバスが、12時8分に 出るから、早く行ったほうがいい!」 「老舗のいのしし鍋のお店…」 「この下のバスが、12時8分に出るから、早く行ったほうがいい!」  どうしても、このおじさんは、私たちをバスに乗せたいようだ。   「バスなら、15分だけど、タクシーだと、1800円ぐらいかかっ ちゃうよ! この下のバスが、12時8分に出るから、早く行ったほ うがいい!」  本当に、この言葉を4〜5回くりかえした。  午後12時8分。あそこまで言われると乗ってあげないといけない ような気がして、バスに乗る。  バスは、平凡な道をのろのろ走る。  午後12時25分。町の中心地、二階(にかい)町で下車。  青山通りとある。東京の国道246号線とおなじ名前である。  江戸時代、ここを治めていたのが、徳川幕府の譜代大名・青山さん。 東京の青山一帯すべてを所有していたといわれる、あの青山さんであ る。  妙なところで、地元のお殿様に出くわしたものだ。  ぼたん(いのしし)鍋は、どこでもいっしょという観光案内のおじ さんに従って、バス停の近くの「懐(かい)」という丹波篠山郷土料 理のお店に入る。  丹波篠山というと、とにかく美味しい物の宝庫だ。    ・松茸    ・ぼたん鍋    ・栗    ・黒豆    ・山芋    ・鴨鍋    ・丹波牛  もうこんなに並んじゃうと、入れ食い状態である。  別に釣りをして、魚が入れ食いになるわけじゃない。私たちが、入 れ食い状態になってしまうだけである。  ぼたん鍋を特上ロース肉で!  黒豆蜜煮も注文する。  こっちでは、山芋のことを、「山の芋」と呼ぶ。山の芋とろろ短冊 (たんざく)も注文する。
 ぼたん鍋は、味噌風味なので、どことなく、名古屋の味噌煮込みう どんを食べているような気分。いのしし肉は、脂身の部分のほうが、 肉の部分より多いんだけど、この脂身の部分が美味しい。肉の臭みを 消すために、お味噌をつかっているらしいけど、まったく臭みは感じ ないし、実にやわらかい。  野菜がまたうまい! 白菜、タマネギ、ゴボウ、椎茸、山の芋、ニ ンジン、長ネギ、お豆腐、何でもうまい! 味噌味に合う!  はっはっは。気に入っちゃったよ、ぼたん(いのしし)鍋!  食後、篠山城址に向う。  この町は、本当にいのししの町なんだねえ!  ぼたん鍋のお店の前には、いのししの剥製を置いてあるお店が多く、 お店の建物の屋上には、巨大ないのししの像が置かれている! いの ししの看板もごくふつうにある。もちろん橋の欄干のところには、い のししの石像。
 これだけ、いのししを訴えたいなら、そこらじゅうで勝手にいのし しの像を建てるのではなく、ひとつの通りを決めて、道の両側にいの ししの石像を並べてしまうばいいのにと思う。  もうちょっと作戦はないものか。 「大正ロマン館」という物産館があった。  篠山の特産品を売っている。  今度は、黒豆ずくしである。  黒豆は大好き! 黒豆蜜煮も美味しかった。  こんなお店に入ったら、物欲魂、大爆発!  黒豆あられに、黒豆レトルトカレー、黒豆ぱん、手当たり次第に買 いまくる!
 これが秋に来たら、栗づくしに変わるんだろうなあ! 「たんば田園交響ホール」は、蔵をモチーフにした巨大なコンサート ホールだ。
 篠山城を中心に、そのすぐそばに、このホールと、大正ロマン館と いう配置は、観光地としては美しい並びだ。   ただ先日の関(せき)宿のような計画性がまったくないのが、もっ たいない。  何といっても、味の宝庫なのだから、リピーター客はいくらでも来 ると思う。大阪からわずか1時間という好立地は有利だ。  いい政治家がいないんだろうなあ。  実に惜しい。  午後1時30分。篠山城址。  お堀があって、きれいな真四角で、町の中心にある美しいお城だ。  春の桜の頃に来たら、さぞやきれいだろうなあ。
 天守閣がないのが、残念とおもったら、築城当時も、天守閣は作ら なかったそうだ。関が原の戦いのあとに、豊臣秀吉ご恩顧の西国大名 を見張るためのお城だったから、天守閣などいらないと徳川家康が言 って、作らせなかったそうだ。  いかにも実際に役立たないものは、いらないという徳川家康ならで はの発想だ。  お城の城壁が美しいカーブを描いているなあと思ったら、またして も築城の名人・藤堂高虎(とうどう・たかとら)のお城であった。  この人は、本当にお城を作るのが上手い。  愛媛県・大洲城、今治城、宇和島城、三重県・伊賀上野城といった お城が、藤堂高虎が建てたお城だ。  しかもこのお城の城壁は、穴太(あのう)衆という当時、いちばん 腕のいい職人さんたちが、石を積み上げている。  要するに、最高のゲーム・デザイナーに、最高のプログラマーが組 んで作ったゲームのようなものだ。美しいのもあたりまえ。それだけ 徳川家康が重要視したお城ということなのだろう。    大書院に入る。ずいぶん柱の匂いも新しいピカピカの史料館だなあ と思ったら、2年前にできたばかりだそうだ。  それで、ビデオ・シアターも充実していたし、展示物も出来がいい のか。  大書院の裏には、いまも復元の工事が続いていた。
 これだけでも、もう一度訪れたくなる要因にはなりそうだ。  それより、桜も、栗も、松茸も待っている場所というのは、ポイン トが高い。
 午後2時30分。篠山口駅まで戻る。  ここから、今度は福知山駅まで北近畿9号で行き、福知山駅から山 陰本線で、京都まで戻ろうと目論んでいる。ちょうど逆Vの字形に進 もうと思っている。『桃太郎電鉄』のローカル版でこの辺が登場した ときの、実体験をしてみようと思ったのだ。  ところが現実のほうが厳しい!  福知山駅までは、40分ほどで着くが、そのあと、京都行きの特急 は、1時間40分来ないというではないか。それはきつい!    駅員さんは「尼崎まで戻って、新快速に乗り換えたほうが速いです よ!」と教えてくれた。おなじ道を帰るのは、良しとしたくないのだ が、福知山駅で、1時間40分待ちは嫌だ。 『桃太郎電鉄』ローカル版では、福知山駅経由のほうが、京都まで近 いMAPにしてやろう! 『桃太郎電鉄』はあくまでもフィクション である。  午後3時8分。篠山口駅から、丹波路快速に乗る。  車中、西村京太郎さんの最新作『風の殺意・おわら風の盆』を読み 始める。  これはひさびさの傑作だ!  デビュー当時の、たたみかけるようなハラハラ・ドキドキ感と、言 い知れない絶望感に満ちた内容は、ページをめくるのももどかしい。  午後4時44分。なるほど、尼崎駅で、向かい側のホームに到着し た京都方面行きの新快速に乗り換えたら、1時間36分で、京都駅に たどり着いてしまった。  時間が余ったので、伊勢丹デパートで、買い物したり、お茶を飲ん だり。  午後6時。2日前、ひとりで行く勇気がなくて入れなかった、清水 二年坂の洋食屋に行くも、定休日。何てこったい。  2日前とおなじように、とぼとぼ祇園に向って歩く。
 2日前には、お休みだったお豆腐の「豆水楼(とうすいろう)」が 開いていたので、あてつけで入る。誰に対するあてつけなのか、不明 だが…。  おぼろ豆腐に、湯葉ぞうすいなどで、ヘルシーに食事をすます。
 午後9時。祇園界隈を散歩がてら歩いて、京都のマンションに戻る。  丹波篠山日帰り小旅行の反省を始める。  私の場合、「反省」といっても、『桃太郎電鉄』用の軌道修正であ る。  これだけ美味しい物の宝庫・丹波篠山駅を、全国編に登場させたく なったのだが、路線が無い。新設できないかという検討に入る。ロー カル版なら、用意に線路を引けるのだが、全国編はもう用地がない。  いずれにしても、すでに『桃太郎電鉄11(仮)』には間に合わな いので、何年後の登場になることやら…。  篠山口(ささやまぐち)駅という名称も、丹波篠山駅に変更したい な。  問題は、美味しいものオンパレードの物件を何にするかだ。    ・ぼたん鍋料理屋    ・ぼたん鍋料理屋    ・和菓子屋    ・黒豆畑    ・黒豆畑    ・松茸料理屋     ・松茸料理屋    ・松茸山  これだと、丹波栗が入らなくなってしまう。『桃太郎電鉄』全国編 の物件最大数は8つまでだ。かといって、重複する物件が無くなると、 焦点がボケて、特徴のない駅になってしまう。      ・ぼたん鍋料理屋    ・和菓子屋    ・山芋畑    ・丹波栗林    ・黒豆畑    ・丹波焼き物工房    ・丹波牛屋    ・松茸料理屋   ねっ! 漠然としちゃうでしょ?  いつもこんなことを考えいるわけですよ、私は。  とにかく、丹波篠山、気に入った!
 

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