2月16日(土) 午前8時。iモード・ゲームの毎月エッセイ「iさくまにあ」の原稿を 書き始める。まずは『さくま式東海道五十三次』の原稿から。今月は、昨 年の10月に旅した島田宿。インターネットや、東海道五十三次の資料を 調べて、データを加えながら、改稿していく。 午前11時30分。嫁と、渋谷のマークシティ4Fの「αCARMEL」 へ。 「αCARMEL」って、スペルなら、「アルファ・キャメル」って、読 むよね。でも正しい読みは「アルファ・カーメル」なんだって。 何でも、カーメルっていうのは、アメリカのサンフランシコから、南に 200キロぐらい行った、モントレー半島に位置する人口5千人ぐらいの 小さな町の名前だそうだ。 何でまた、そんな小さな町の名前をと思ったら、あの映画俳優のクリン ト・イーストウッドが市長になったことで、有名な町なのだそうだ。この 町だったのか、市長になったのは。 でも市で、5千人というのは、あまりにも小さな規模だなあ。 5千人ぐらいの町なら、私も市長になってみたいぞ。 わがまま放題の市制を敷きまくりたい。 おっと。この「アルファ・カーメル」の話だった。 デザート・カフェというジャンルのお店らしい。スターバックス・コー ヒーよりもケーキとか、料理の度合いが高いお店かな。 クリント・イーストウッドの町にちなんだわりに、私と嫁が選んだメニ ューの名前は、鴨と京ネギのサンド。思い切り和風ではござらぬか。 でも、鴨の脂たっぷりで、美味しかった。食後、マークシティタワー内を散歩。 何回か来たことはあるけど、マークシティタワーを隅から隅まで、しっ かり見たことがなかった。 けっこう美味しそうなお店が多い。 あれ? マークシティタワーの4Fを奥までずっと歩いて行くと、あれ ま! まるで騙(だま)し絵みたいだなあ。 4Fなのに、そのまま道玄坂の道路に出てしまう。平地だ。 そうか。渋谷駅から道玄坂を登って行くと、落差がちょうど4階分なわ けだ。 何だか不思議だなあ。 再びマークシティタワーの4Fに戻ったり、2F、1Fまで行ってみたり。 いくつか今後入ってみたい食べ物屋さんをチェック! さて、きょうの本来の目的である、井の頭線に乗ろうとすると、これが ダンジョンのようで、よくわからない。どうも3Fが井の頭線らしいのだ が、マークシティに3Fが無い。 2Fから上がろうとすると、これが井の頭線に繋がっていない。よくわ からんなあ。下手くそなRPGのように、ただ難易度が高いだけのダンジ ョンみたいだ。 けっきょく4Fの井の頭線の入口から入った。ところがこれがまた階段 を降りて行かないといけない。プラットホームにいきなり出た。う〜む。 どうも井の頭線とマークシティタワーは、うまく融合していないなあ。 午後1時30分。井の頭線で、吉祥寺駅へ。 駅前のタクシーに「三鷹の森まで!」というと、運転手さんが「モリジ ブですね!」というではないか。 「はっ?」。 モルジブという国名は聞いたことがあるけど、モリジブっていうのは知 らないなあ。あっ! そうか。「三鷹の森ジブリの森美術館」の略だから、 「モリジブ」なのか! あっはっは。すごいなあ。 というわけで、あの話題の「三鷹の森ジブリの森美術館」に行くのですよ。 宮崎駿ワールドですよ! たまたまインターネットでチケットを手に入れたら、きょうだったので すよ。何たって、予約制の美術館だからね。 あれ? タクシーに乗って、5分もしたら、到着してしまった。何だ。 ここは井の頭公園のすぐ先じゃないか。まったく三鷹ではないぞ! しか し、何で「三鷹の森ジブリの森美術館」なんだ? しかもチケットにも、 ホームページにも、JR三鷹駅より15分とばかり書いてある。 吉祥からのほうが近いでしょう! タクシー1メーターだったよ。 と思ったら、こには三鷹市が、井の頭恩賜公園に文化施設建設を条件と して使用することを東京都と合意したことが発端となったからなのか。三 鷹市も一部を負担したりしてるんだね。それで、ことさら三鷹駅から、徒 歩15分なわけね。 そういう事情じゃ、しょうがないでしょう。スポンサーさんは大事です からね。 チケットに指定された時刻は、午後2時。 まだ20分ほど間がある。どこで時間を潰そうか。 いきなり巨大なトトロが出迎えてくれたが、「ほんとの受付はあっち」 の案内板がある。 矢印に従って、入口まで行くと「午後2時からのチケットも受け付けて おりま〜す!」という呼び込みが。これは運がいい。さっそく入ることが できた。 いやあ! 「三鷹の森ジブリの森美術館」の内部の凝っていること、凝 っていること。ヨーロッパの建築様式を意識した、きめ細かい建物だ。 しかも、もっと「子どもだまし」の色合いが強い施設だと思っていたけ ど、密かにマニアックじゃないの? アニメーションの歴史から、アニメ ーションの原理まで、ジブリのキャラクターをつかって、やさしく、抵抗 無く、学ぶことができてしまう。 まさに宮崎駿さんが、アニメ製作とおなじぐらいのパワーで作った、ひ とつの宮崎駿ワールドだ。 15分間のオリジナル短編アニメーション「コロの大さんぽ」は、まあ まあだったけど、1Fの「宮崎アニメが出来るまで」の展示物には、圧倒 された。まさにハンマーで殴られたような衝撃だ。 美術設定の見事さ。絵コンテの緻密さ。 白眉は、ホテルのダブルベッドぐらいの大きさに、高さ1メートルぐら いにまで積み上げられた動画と、原画の山、山、山、山、山、山、山、山、 山、山、々、々、々、々、々、々、々、々、々、々、々、々…。 思わず「土居ちゃん! もっとラフ・スケッチ、枚数たくさん描けよっ!」 と叫んだほどだ。ははは。本当に、土居ちゃん(土居孝幸)をここに連れ て来て、1Fをしみじみ見せればよかった。 今年から、館内の写真撮影が禁止されちゃったから、土居ちゃんにデジ カメ画像で伝えることもできない。あっ。だから撮影禁止なのか。 とにかくここは、クリエーターたちの「反省房」だよ、まったく。 目から鱗が、3千枚ほど落ちて、300回ぐらい首がうなだれる。 おまけに展示物を眺める度に、背筋が伸びてしまう。 こんな走り書きにも、感動! アニメーションスタジオは、まだ見たことのない島をもとめて、 航海する船のようなものです。 乗組員がそれぞれ力を尽くして自分の仕事をしないと、船は波に 砕けます。 水や食料もしっかり積み込まねばなりません。 また船長が進路をあやまると、どこへも着かなくなります。 この船はいつもいつも船出をくり返さなければなりません。つな いだままの船はすぐ、くさりはじめ、ネズミだらけになってしま うのです。 へへ〜〜〜! 思わず、土下座でございまする〜〜〜! 土居ちゃんも 土下座するように! 案の定、グッズ売り場は、混雑の極み。 1日2400人限定で、チケットは発券されているようなんだけど、こ のグッズ売り場と、カフェは大渋滞だ。 正直言って、ディズニーシーと並ぶぐらいの幻想空間ですぞ、ここは! もしも予約制でなかったら?ということを考えるのが、恐ろしいくらいだ。 何回でも来てみたいよ! 自由業の特権をいかして、土居ちゃん、柴尾英令くん! 平日に来まし ょう! ハドソンの札幌スタッフもいっしょに連れて来たいな。 「三鷹の森ジブリの森美術館」のシンボルである、ロボット兵の場所がわ からない。なにしろ、B1、1F、2Fと迷宮になっていて、行けると思 ったところに行けず、行くつもりのなかったところに、ひょっこり出るこ ともできる。 そのくせ、トイレは豪華で広く数多く、景色に溶け込むデザインのサー ビスは、まさにディズニーランド並み。あっ。本当は宮崎駿さん、ディズ ニーランド並みの構想があったんじゃないだろうか? うひょっ。ロボット兵へは、巨大な猫バスで子どもたちが遊ぶ場所を抜 けた先の、螺旋階段を登って行くのか! おいおい! この螺旋階段、鉄 骨だけで、もろに下が見える、高所恐怖症泣かせの階段ではないか! ガクガクッ! ちょっと、うんと、とっても恐いよ〜〜〜ッ! でも、せっかくここまで来て、ロボット兵を見ずに帰るのもなあ! ひ〜〜〜! 意を決して登ったものの、帰りの心配が重くのしかかる。 おかげで、屋上に土を敷いた見事な演出を楽しむことも出来ず、帰り道 のことを考え、ドキドキする。 嫁が係りのお姉さんに「帰りは、ここ以外の階段無いんですか?」と聞 いてくれる。しかし答えは「ええ、ここだけです」。へにょへにょへにょ 〜〜〜! ええいっ、行くしかあるまい! 世間の人からすれば、たいした決意でも決心でも無いのは、じゅううじ ゅう承知! あれ? 思ったほど、下り階段はつらくない。 真中の緑色の支柱が太かったせいだろう。 午後3時。「三鷹の森ジブリの森美術館」を退場。 吉祥寺駅まで、けっこう近いことがわかったので、駅に向って歩き出す。 すぐ近くに「ラ・フォルテカフェ」という喫茶店があったので、とりあ えずピット・イン! 「三鷹の森ジブリの森美術館」の館内を歩き尽くめ だったからね。 いやあ! とにかく、素晴らしかったですよ!「三鷹の森ジブリの森美 術館」は! 『紅の豚』の飛行機の3万8000円もするフィギュアが売 り切れなのがちょっと悔しかったぐらいで、大満足の大反省だっ! 「三鷹の森ジブリの森美術館」は、感受性の強い中学生の時期にもれなく 訪れるべき場所だね。こんな素晴らしい施設で衝撃を受けた少年少女が、 10年後どんな素晴らしい娯楽作品を作るのか、楽しみだ。 自分の若いときに、こんな衝撃を受ける場所がほしかったなあ! お、こんなところにもトトロが! 午後5時。吉祥寺駅まで歩いて、東急百貨店でお弁当買って、中央線で、 千駄ヶ谷駅まで。さらに歩いて自宅まで。歩いた。歩いた! 午後6時。自宅にて、お弁当。 食後、何度も、何度も、「三鷹の森ジブリの森美術館」のパンフレット を読み返す。展示室にあった、ちびた鉛筆の山を思い出す。キャラ・デザ インの山を思い出す。「土居ちゃん、キングボンビーのデザインしたとき は、みんなで100枚ぐらいラフ・スケッチしたよなあ…。あの頃の努力 をもう一度やらんといかんということだなあ…」と、うわ言のようにつぶ やく。 ところで、明日からコンピュータを携帯せずに、旅行に出るので、日記 は2〜3日お休みです。歯が痛くて、2日間日記を休んだだけで、「心配 しました」のメールをたくさんいただきましたが、今度は単なる、しかも 骨休めの旅なので、ご心配なく! それじゃまた!
-(c)2002/SAKUMA-