1月27日(日)

 深夜、心臓が苦しくて、目が覚める。
 昨夜見たDVD『悪魔のようなあいつ』で、主人公の沢田研二さんが、
余命半年で苦しむシーンばかり見たせいだろう。

 やっと寝付けたのは、午前6時近く。

 午前9時52分。はっ! やばい! 寝すぎた!
 きょうは、新宿ALTAに、午前10時30分入りだ! あと30分し
かない! ピ〜〜〜ンチ!
 あわてて着替えて、タクシーで新宿へ。
 きょうは日曜日。雨で高島屋渋滞もなかったせいで、10分で新宿に着
く。
 午前10時15分には、新宿ALTAスタジオに到着してしまった。ひ
ょっとして、自分は消防士かと思った。目が覚めてから20分以内に新宿
到着は我ながら見事なり。

 午前10時30分。新宿ALTAスタジオの控え室。
 ハドソンの石崎仁英くんが入って来る。
「あれ? さくまサン、具合悪いんですか? 顔色よくないですよ!」
「いや。まだ目が開いてないんだ!」
「ど、ど、どういうことです?」
「目を開けてから、まだ30分たっていない…。眠い!」

 土居ちゃん(土居孝幸)、柴尾英令くんが到着。宮路一昭くんは午後1
時に到着予定。
 少し目が開いて来たので、きょう出演のタレントさんたちにご挨拶に行
く。
 浅草キッドのふたり、桃鉄大好きの穴井夕子ちゃん、アイドルの小向美 奈子ちゃん。    『桃太郎電鉄』の大会に出演というと、ゲスト・コメンテーターとして 呼ばれるものだが、きょうは、なんと全員、予選大会を勝ち抜いて来た強 豪たちと、いきなり準決勝から、プレイヤーとして出場する。  本来なら、総合司会の席に座るべき、浅草キッドのふたりも、穴井夕子 さんも、小向美奈子ちゃんも、一切やらせ無しで、くじびきを引いて、準 決勝出場の16人のうちのひとりとして出場することになっている。  くじびき次第では、4人全員が芸能人卓を囲んでしまうかもしれない。  こういう危険をむしろ楽しんでしまうハドソンの梶野竜太郎くんらしい 企画だ。  幸いにも、桃太郎卓に小向美奈子ちゃん、金太郎卓に水道橋博士、浦島 卓は素人さんのみ、夜叉姫卓に、穴井夕子さんと、玉袋筋太郎くんという きれいにバラけた美しい枠順となった。  プレイヤー名「はかせ博士」には、笑った。  午前11時。新宿ALTA7Fのスタジオで「桃太郎電鉄 ジャパンカ ップ2002」スタート!  あの『笑っていいとも』を毎日やっているあのスタジオが会場だ。  TVで見るより、はるかに小さい。  私と土居ちゃん(土居孝幸)の登場シーンは、あのタモリさんが登場す る場所からだ。妙にうれしいぞ。  楽屋マニアとしては、『笑っていいとも』につかうセットが無造作に転 がっている雑然とした雰囲気も、楽しかった。
 そのまま、審査員席に座って、準決勝を観戦。  各卓からひとりずつしか、決勝大会に進出することができない。  私の予想では水道橋博士が決勝に進むと思っていたのだが、東京で、大 阪で、高松で、福岡で予選大会を勝ち抜いて来た精鋭たちだけのことはあ る。  まあ、見事な戦いっぷりだ。
 絶対にひとりだけで、目的地をめざさない。  うっかり目的地に入って、次の目的地が残りの3人が固まっている場所 だったら、取り返しのつかない目に会うことを熟知しているのだ。だから もう、牽制しまくり。アントニオ猪木が、ムハメド・アリ戦で、アリ・キ ックを多用したように、意外と地味な展開になる。  上手い人同士だから、のん気に寄り道して、☆印カード売り場でカード を買って行こうなどという戦法が取れないのだ。  全員が、ほかのプレイヤーがいま、どのカードを持っているかを暗記し ていて、何手先でそのカードをつかうかを予測し合っている。  だいたい「いけるかな?」のコマンドをつかわなくても、彼らはサイコ ロでいくつ出たら、どこと、どこに止まれるかわかっているのだから、す ごい。「いけるかな?」をつかっているのは、単に時間短縮、テンポよく ゲームを進めたいだけというのが、恐れ入った。  正直言って、私は絶対、彼らに勝てないな! はっはっは。  本当に緊迫の真剣勝負なのよ。  漫画の『バカボンド』を読んでいるような、空気が漂っている。  水道橋博士が、銀河鉄道カードで、目的地に入り、次の目的地の出雲が 近い! さあ、ここで一挙に波に乗るかと思った瞬間、ばちあたりカード で、目的地の出雲を殿様うんちで封鎖される。  こういう高等テクニックの連続なのだ。  さすがの水道橋博士も打つ手が無い。
 準決勝まで勝ち抜いたプレイヤーたちは、戦術も見事だけど、サイコロ 運もいい! 目的地まで、1パット圏内に入ったかと思ったら、次のター ンで、入るもんなあ。  午後1時。けっきょく、芸能人4人は、総崩れ!  各卓では、予選を勝ち抜いて来たプレイヤーたちが優勝した。  お互い牽制の火花が激しいものだから、各卓の優勝総資産は、16億円 台。地味な金額に熱戦のほどがわかるでしょ?
 この緊迫した雰囲気をなごませてくれたのが、穴井夕子さん。  3年目の最後で、貧乏神がキングボンビーに変身。さらにボンビラス星 に行って、終了という、福岡大会で日本一有名な投稿者・錯乱坊主くんが 見せてくれた荒業を見事再現してくれた。  キングボンビーになった瞬間、会場から万雷の拍手が送られるというの も、妙な一体感だった。  小向美奈子ちゃんも、この強豪たちを相手に、マイナスにならずに終了。 今後モモラー・アイドルとして、名乗りをあげてくれそうだ。  午後1時。新宿ALTAのオーロラ・ビジョンに、この大会の様子が映 し出される。
 控え室で、お弁当を食べながら、休憩。  いやあ、4卓の対戦を一度に見るのは、疲れる。しかもみんなマッハの スピードでやっているから、早い、早い!  午後1時30分。いよいよ決勝大会。
穴井さんと小向さんからの熱烈応援が!
 この対戦は、見事だった。  わずか3年の間に、くるくる首位が入れ替わる。  だって、3年間で目的地に入ること、10回だからね!  しかもそれぞれ、目的地に入った回数が、3回、2回、3回、2回とほ ぼ同数。  2年目の初めに、トップだったプレイヤーが、3年目には最下位に沈ん だぐらいだからねえ。  この対戦は、ビデオに撮っておいて、発売すべきだという声が上がって いたけど、たしかにじっくり見直してみたいような鮮やかな戦いだった。  午後3時。ついに初代桃太郎電鉄名人が、誕生した。  大阪大会を勝ち抜いて来た、門真市のまあくん乃花(久保正明)くんが、 30総資産億円で優勝!  ガッツ・ポーズがさわやか。
 そういえば、準決勝まで残ったプレイヤーはみんな明るい人たちばかり で、うれしかった。敗退したプレイヤー同士で、決勝大会を外のモニター で、戦術談義を交えながら、熱く語っていたそうだ。
 それにしても、これだけ『桃太郎電鉄X(ばってん)』を一生懸命練習し て、独自の戦術を作り上げてくれるというのは、うれしいことだ。作者冥 利に尽きる。しかもこれほどまでの達人たちになると、今回私が納得いか なかった部分を、技で補ってくれている。こういう光景を見るにつけ、胸 が傷む。  いい勉強をさせてもらったけど、ますますゲーム作りが難しくなった。  午後4時。土居ちゃん(土居孝幸)、柴尾英令くん、宮路一昭くん、私、 嫁の5人でお茶を飲んで、散会。  午後5時。私と嫁は、伊勢丹デパートで、鴨鍋の食材を買い込む。  午後7時。帰宅後、家族3人で、京都のイチ押し割烹料理屋「M」の名 物料理・鴨鍋を食す。 「M」には無い、鴨のつみれを入れて、最後に、うどんを入れたら、美味 しかった。  私が外食ばかりしているのを、心配してくれる人は多いのだが、このよ うに、我が家で料理をすると、滅法カロリーの高いものを好きなだけ作っ てしまって、残るともったいないと、ひ〜ひ〜言いながら、大量に食べて しまうので、家庭で食べるほうが、実は身体によくないのだ。  繰り返し言うが、嫁は料理が上手い。外食が多いのは、嫁が料理下手だ からではなくて上手いから、食べ過ぎてしまうのだ。しかも嫁はほとんど 私の影武者のように働いているから、これで毎日料理まで作らせていたら、 罰が当たる。  午後8時。『利家とまつ』を観る。桶狭間の戦いが出てくると、俄然 おもしろくなるねえ! 歴史物はやっぱり、合戦が花形だ。  おっと。もうきょうの「桃太郎電鉄 ジャパンカップ2002」に出場 したプレイヤーからメールが届いた。掲載していいよね?  相模原市・田中鏡啓  初めまして。本日行われた桃鉄×JAPANCUP決勝大会に  出場したオガタクこと田中鏡啓と申します。  今日は、優勝された方と準決勝で同じ卓となり、僅かの差で負  けてしまいましたが、大会終了後、入賞者や大会出場者と共に  食事に行き、仲良くなることができました。  こんなすばらしい機会を与えていただいたさくまさんに感謝致  します。  これからも、お体に気を付けて楽しいゲームを私達に送り続け  ていただきたいと思います。  では、失礼致します。  おお! きょう出場したプレイヤー同士がなかよくなってくれるといい なあと思っていただけに、よかった、よかった。  彼らのためにも、今回出場できなかった人のためにも、いいゲームを作 らないといけないんだよなあ…。
 

-(c)2002/SAKUMA-