12月2日(日) 昨夜からずっと、馬渕公介さんが送ってくださった『きょうはお遍路日 和』(双葉社)を読み続けている。 旅好きの私も、四国のお遍路さんだけは、眼中になかった。 また、怠け者揃いのマスコミ業界の人間が、まさかお遍路さんなどやる ものかと、高を括っていた。 ところが、業界の先輩で、御年55歳になる馬渕公介さんがチャレンジ するとは! 馬渕公介さんの名著『小さな江戸を歩く』(小学館文庫)で は、おなじ場所に4日も5日も滞在して、じっくりその町について書く書 き方をずいぶん羨ましいと感じた。だから、てっきり馬渕公介さんは、滞 在型の作家であって、塗りつぶし型の作家ではないと思っていたのだ。 四国八十八ヶ所1440キロメートルという数字は、東海道五十三次を 往復してなお、400キロメートルほど余る。 もうこの数字を聞いただけで、私などおじけづく。 なのに、この本を読めば、お遍路さんを1回だけでなく、何度も、何度 も繰り返す人が多いというのだ。極めつけは、85歳にして、240数回 という人がいるそうな。240回!? 馬渕公介さんも最初の頃こそ、つらそうな書き方をしていたものの、ペ ージをめくるごとに、旅そのものに余裕が出てきて、文章が軽快になって 行く。気がつけばいつものいろんな人との出会いを、馬渕公介さん独特の 筆致で描いている。 う〜む。5歳も年上の先輩に、こんなことされちゃうと、困っちゃうな。 何かで対抗したいものだが、とてもそんな根性がない。 とにかく「絶対、私はお遍路さんなんかしないぞ!」と思っている人は、 ぜひこの本を読んでいただきたいものである。私はかなり、お遍路さんや ってみようかと思って、必死に思い留まった。留まることないけど、私に は危険すぎる。 読み物としても、ビジネスホテルでオートロックでうっかり廊下に出て しまって、さあ大変といった笑える話も入っていて楽しい。私が今年の夏、 暑さに意識不明になりかけた愛媛県内子で、馬渕公介さんも8月の末の気 温36度を味わったようで、共感が持てる。 午後12時。嫁と、渋谷宮益坂上の渋谷郵便局へ。 このあと、元ナムコの岸本好弘さんに教わって何回か行った、広島風 お好み焼のお店に行こうとしたら、ない! お店がない! またしてもごひいきのお店が消滅してしまった。 今年に入ってから「食賓館」に掲載したお店の閉店が相次いでいる。 美味しいだけじゃ、いまの時代は生き抜けないのか。 国道246号を、青山骨董通りの入口まで歩く。 「オかまど飯・寅福」という今風の定食屋さんがあったので、入ってみる。 なるほど、これは定食屋で大成功した「大戸屋」をスターバックス化し たお店だな。最近のキーワードは、『大衆向けのスターバックス化』だ。 餃子の王将のスターバックス化が「宇明家」だし、駅そばのスターバッ クス化が「せいざん」とかいうお店だった。 次はたぶん、吉野家のスターバックス化だろう。 20年ほど前、赤坂に「吉野家」自体の高級店があって、牛肉が高級で あまり美味しくなかった。あっというまに潰れてしまった。たぶん時期尚 早だったんだろう。 そんなわけで、「寅福」で、コロッケ定食、900円。 味はけっこういい。ソースがけっこう病み付きになる味。 立地条件さえよければ、このお店は流行るだろう。 食後、青山三丁目を越えて、とうとう青山二丁目まで歩く。 神宮の銀杏並木に行きたかったのだ。 先週、タクシーのなかから見たとき、銀杏が満開だったので来たかった のだが、銀杏は落ち始めていた。2〜3日前に来ればよかった。それでも 日曜日なものだから、犬を連れた散歩客や、銀杏並木目当てで遠くから来 た観光客などで、たくさんの人出。不思議なのが、銀杏並木の入口に、焼き芋屋さんの屋台が、4軒も出て いたこと。何で焼き芋屋さんなんだろう。銀杏並木なんだから、焼き銀杏 屋さんをやってくれたらいいのに。 銀杏並木は焼き芋通り? といいながら、やっぱり焼き芋を買ってしまう私であった。 焼き芋が美味しい。でも水分無しで、焼き芋を食べると、むせる。ゴホ ッ、ゴホッ。繁盛する焼き芋屋さん。 銀杏並木は、途中から歩行者天国になっていた。 その先は、神宮外苑と神宮球場しかないのを知っているので、帰ること に。 銀杏並木の反対側の車道に、警察の装甲車が何台も並んでいた。 何のための警備なんだろう。午後3時30分。帰宅。疲れた。とても馬渕公介さんのように、お遍路 さんなんかできないなあ! 渋谷から、青山一丁目、さらに自宅までと、 よく歩いたと思うけど、お遍路さんの午前中の距離にもならん。 馬渕公介さんの『きょうはお遍路日和』の最後を読み終えたのち、足が じんじんしたまま、仮眠。 午後6時30分。嫁と麻布十番のひとくち餃子のお店「点天(てんてん)」へ。 初めて行くお店だけど、すでに以前から伊勢丹デパートなどでは買って 食べている。京都にも似たお店があるので想像がしやすい。 焼き餃子に、水餃子、じゃこ飯など、つい初めてのお店は、どのくらい の量が出てくるのかわからないので、注文過多になって、食べ過ぎる。 きょうも、じゃこ飯はふたりで一人前でじゅうぶんということを学習。 焼き餃子も一人前でいいな。 午後7時30分。帰宅。 今夜も、読書、読書、独唱! 歌って、ど〜する、読書、読書!
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