11月21日(水)

 午後12時。きょうはひとりで品川駅。品川駅って不思議だ。駅構内に、
本屋さん、CD屋さん、パン屋さん、駅そば屋さん、バーガーショップ、
コンビニまである。しかもプラットホームを東京駅側から上って行くと、
この商店街のほうに出ることができないのだ。
 便利なのか、不便なのか、よくわからない。
 とりあえあず、きょうは駅そば。ここの駅そばは美味しくて、いつも超
満員だ。駅そばは、イカ天そばだ。

 午後12時17分。横須賀線で鎌倉へ。鎌倉長谷の家に仕事の資料を取
りに行く。原宿の家は、現在進行形の仕事の資料だけ置いてあるので、新
しい仕事を始めるとなると、こうして取りに行くことになる。

 午後1時30分。鎌倉長谷の家。本棚から何冊かカバンに詰める。
 ついでに、本棚を眺めて、暗記する。どんな本があるかということを覚
えておかないと、取りにくる発想も出ない。

 午後2時。北鎌倉の円覚(えんがく)寺へ。
 わざわざ鎌倉まで行って、本だけ持って帰るのも淋しいので、この季節
に来たことのない円覚寺へ。
 円覚寺は北条時宗が、蒙古来襲で殉じた兵士たちの菩提を弔うために建
立した寺だ。今年の大河ドラマになっているだけに、ポスターやらグッズ
やら、たくさんあるのかと思いきや、まったく何もない。いつもの静寂な
空気が流れているだけだった。
 紅葉がきれいな寺と聞いていたのだけど、もうそろそろ紅葉は終わりそ うな感じ。でもお寺の人に聞いたら、いまがピークで、この連休もまだま だ行けますとのことだ。ってことは、紅葉する木が少ないんだ。  先日の平泉、毎年見ている京都の紅葉に比べると、圧倒的に少ない。や っぱり見劣りする。私はとうとう食い道楽同様、紅葉まで口奢(くちおご) り状態になってしまったようだ。    そのせいか、松嶺(しょうれい)院って読むのかなあ。名前の読み方も 知らないんだけど、松嶺院というところがよかった。  円覚寺に入って、すぐ左のところにある塔頭(たっちゅう)で、お寺の 80%が花で囲まれている。境内に入ると、舗装された小径が「遍路みち」 という表示になっていていて、両側にとにかくたくさんの花が植えられて いる。  私は花の名前に疎いので、名札にあった花の名前を並べてみる。  ナツツバキ、ダンキク、花遊、かいの木、かきつばた、江戸しぼり萩、 うんなん萩、紫しきぶ、あすかの萩、たぬき豆…。  すごいんだか、すごくないんだか、どれがいま旬の花なのかもわからな いけど、とにかく花がたくさん植わっていたのよ。  そんな回廊になった「遍路みち」を歩いて行くと、お墓にたどりつく仕 掛けになっている。けっこう有名なお墓がたくさんある。  女優の田中絹代さん。作家の開高健さん。  あのオウム事件の犠牲者・坂本弁護士の墓もあった。
 円覚寺の紅葉には、満足できなかったけど、一ヶ所、目を見張るように 花の美しい場所があった。仏殿の裏だったかなあ。  一面にピンク色というか、紫色というか、美しく群れて咲いていたヒメ ツルソバという花がきれいだった。  はっきりいって、紅葉よりきれいだった。
 ヒメツルソバについて、ちょっと調べてみた。  ふ〜ん。ヒメツルソバって、ヒマラヤ産なの? 地面を這うようににし て、マット状に広がります…、そうそう。地面を這うようにして咲いてい た。マット状というより、ラベンダー状に広がっていたな。えっ? 秋に は真っ赤に紅葉するの? 全然そんな気配すらなかったな。  やっぱり花のことは、よくわからん。知識不足。  午後3時30分。北鎌倉駅から、バスで鶴岡八幡宮に出て、わらび餅の 「こ寿々」でひと休み。  午後5時。鎌倉駅から、横須賀線で、新橋駅へ。  このあと六本木で仕事があるので、たぶん新橋駅から路線バスが出てい るだろと、新橋駅のまわりを探し回って、へばる。都内のバスって、便利 なわりに、どこから乗れるのかがわからなくて、利用しないことが多い。  午後6時。なんとかバス路線を見つけて、六本木へ。  都内のバスを乗りまくってやろうかな。バスは高い位置から景色を眺め られるので楽しい。ローステップバスは、視点が低くなるのでつまらない。  あおい書店で、嫁と待ち合わせ。  午後7時。六本木のフレパーネットワークスさんへ。  最近「新しい仕事がした〜〜〜い!」と叫んでいるもんだから、ぽつぽ つと新しい仕事が舞い込み始めた。  きょうの新しいお仕事は、ブロードバンド放送。アニメ・プロデューサ ーのひろたたけしがセッティングしてくれた。    どういうメディアなのかは、実はたったいま知ったんだけど、インター ネットによるTV放送とでも言ったらいいのだろうか。インターネット雑 誌といってもいいのかな。まあ、新しいメディアは、たとえようがないね。 新しいんだから。  そこでフレパーネットワークスの濱口太一さんと、稲味克弥さんに、 ブロードバンド放送について、レクチュアを受ける。  けっこうおもしろい。動画が高速で、音がいい。昨日のBSデータ放送 もそうだけど、けっこういま魅力的なメディアが誕生しつつあるんだねえ!  インターネットTVが進化した画像を遅れるというのが、いまのところ いちばんふさわしいようだ。  というよりも、きょうここで何をするかを言ったほうが早い。  月刊OUT編集長だった、大徳哲雄くん。『ドラゴンクエスト』の堀井 雄二。私の3人で、「懐かしの月刊OUT座談会」をやって、これをイン ターネット上で放送する。 『月刊OUT』と聞いただけで「お〜〜〜!」と、紅潮する人も多いだろ う。カルト的人気満点だった伝説の雑誌だ。  私も堀井くんも、長年この伝説的な雑誌『月刊OUT』で読者ページを やっていて、そのときの連載『私立さくま学園』が、『ジャンプ放送』へ と発展した。  堀井くんも、マイコンを買って、ゲームを作り始める過程をずっと連載 していて、「今度の『ドラゴンクエストIII』は、こうなる!」などと、 ゲーム雑誌が見たら、ひっくり返りそうな、いまでは考えられないような ことを書いていた!  …なんてことを、今だから話せるという形でべらべらしゃべってしまっ た座談会だ。
 最初のうち、3人とも『月刊OUT』が休刊になって、10数年になる ので、昔のことをよく思い出せなかったのだが、執筆者の名前や、担当編 集者の名前が出るたびに、芋づる式にどんどん思い出が蘇って、裏話がぼ ろぼろ出て来て、最後のほうは危険な話や、大爆笑話の連続になってしま った。  これは初めて語られる『月刊OUT史』かもしれない。  濃いアウシタンなら、泣いて喜ぶ話の連続だな。  ただ『月刊OUT』を読んだことのない人には、まったく何の話だかわ からない。はっはっは。  さて、このブロードバンド放送は、どうやったら見ることができるかと いうと、まず次のURLのところに繋ぐ。 http://www.frepar.tv/ ↑ここをクリックすると、まず入口のところまで行けるそうだ。そのあと、 会員になるんだったっけかな? iモード・ゲームの加入みたいなもんだ な。そのあと、11のエンターテインメントから『月刊OUT倶楽部』と いうところを選ぶと、私たちの座談会が聴けるけど、お金が必要になるら しい。  ふつうのコンテンツは、1時間聴いて、600円ぐらいになるらしいけ ど、私たちの座談会は、1時間聴いて、300円以下になるらしい。30 秒単位で、課金されていくので、2〜3分見るぐらいなら、10円以下な のかな? とにかく思ったほど高い料金ではないようだ。  反響次第では、続々、月刊OUT関係者、執筆陣などが登場するらしい ので、まあ、月刊OUTを懐かしいと思う人は聴いて、いや画像なんだか ら、見てくださいだな。  配信開始は、12月1日からを予定しているそうだ。  さすがIT産業だけに、速いね。  何でも来年は、月刊OUT誕生25周年らしいので、何かと月刊OUT のイベントが組まれるようだ。 『月刊OUT』という雑誌が、紙媒体で終了して、ブロードバンドで復活 するというのも、時代の趨勢なんだろうねえ。  午後10時。個別には会っていても、大徳哲雄、堀井雄二、私の3人で 会うなんて本当にひさしぶりなので、ひろたたけしも誘って、「バックス・ カフェ」へ。  店員がレースクイーンだらけのお店で、ミニスカートの丈が短いにもほ どがあるような衣装だ。六本木だねえ。  BSデータ放送に、ブロードバンド放送か。  当分、こういう新しいメディアの研究に時間をつかったほうがおもしろ そうだな。クリエイターは新しもの好きですけんね!  午前0時。散会。
 

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