11月18日(日)

 午後12時。嫁と、新宿駅へ。
「H」という飛騨高山系のラーメン店へ。「H」とイニシャルで書くだけ
あって、私たちの口には合わなかった。醤油ベースなのに、食用油が浮い
ていて、油の臭いが強すぎる。
 でもこの場所で、30年近く続いているのだから、それなりのお客さん
はいるのだろう。本場飛騨高山に行きたくなる。

 午後1時。新宿駅から、東京駅へ。いまから飛騨高山に…は行かない。
そうそう毎回突飛な旅行はできないよ。
 東京駅から京浜東北線で、鶴見駅へ。
 鶴見って、こんなに大きな街だっったけ? ビルが大きい。道が広い。 仙台に匹敵する規模だ。  鶴見って、もっとゴミゴミした汚い街の印象のほうが強かったのになあ。  そんな鶴見駅から、鶴見川に向って歩いて行く。  京急鶴見駅を越える。なかなか鶴見川にぶち当たらない。  きょうこれから行く場所は、実はうろ覚え。この辺だろうと思ったと ころは、鶴見市役所と警察署が並んでいた。鶴見警察署でおまわりさん に聞く。 「あの〜、この辺で、沖縄のお店がけっこう集まっている場所ってあり ませんか?」 「ああ! 潮田(うしおだ)ね。川を渡ったところ。歩いて行くとけっ こう遠いね。10分、15分、20分かな?」  おいおい、時そばじゃないんだから、時間増やして行かないでよ。  でも人のいい親切なおまわりさんだった。  というわけで、タクシーで、潮田3丁目の仲町商店街へ。  あとで調べたら、潰れてしまった「ワイルドブルー・ヨコハマ」が近 いようだ。 さっき警察で聞いたように、沖縄のお店が集まっている場 所があると聞いたので、これは一見の価値有りと来てみたのだ。
 なるほど、ぽつん、ぽつんと、「沖縄そば」という、のれんや看板が ある。  でも、びっしり集まっているというほどではない。  あっ! 「おきなわ物産センター」の文字が。  こういうお店を期待していたのよ。
 ありゃ? 物産センターという名前なのに、コンビニみたいだぞ。と にかく入ってみよう。  うわっ。すごいぞ。お客さんでいっぱいだ。
 それより驚くのは、本当にコンビニより小さな広さしか無いのに、沖 縄の物産だけがびっしり陳列されている!  シークワーサー。沖縄そば。ウコン茶。ゴーヤ。さんぴん茶。黄金ご ま入りドリンク。サーターアンダーギー。ランチョンミート。肉みそ。 ソーキ骨。ジーマーミー。てびち。島バナナ。何でもある。  いちばん驚いたのは、沖縄の人用の「みとめ印鑑」を売っていること。  比嘉さんとか、島袋さん、新垣さん、平良さんといった、沖縄特有の 名前はたしかに、首都圏で印鑑が旧に必要なときに困るだろう。  別に私は沖縄の人間ではないけど、この珍しい沖縄名前の印鑑は欲し くなってしまった。  しかし、このお店は沖縄フリークの人には、応えられないお店だね。  嫁はけっこう沖縄マニアなので、興奮して次から次へと、買い物かご に棚の品物を突っ込んでいる。レトルトのゴーヤカレーまで入れているぞ。  お店の人に聞いたら、このあたりは沖縄出身の人が多いそうだ。  おきなわ物産センターでたくさん買い物して、お店の前のベンチで、 出来立てのサーターアンダーギーを食べる。美味いよ〜! 黄金ゴマ入 りドリンクというわけのわからない飲み物を飲む。う〜ん。何だか、強 い子のミロを薄味にしたような感じ。決して美味しくはないが、飲める。 麦ベース・ドリンクとのこと。
 おきなわ物産センターの隣りは、「ヘルシー沖縄料理おきなわ亭」。  ああ! 新宿でまずいラーメン食わずに、ここでラフティそばを食べ ればよかった。タコライスもあるのかあ。ますます残念。  この一区画に来るだけでも、沖縄を満喫できる。  鶴見駅から歩いて、20分ぐらいかかるけど、ここは絶対お勧め。  物産の町を作るのが夢だった私の理想に近い!  あとは沖縄の洋服を売るお店があってもいいな。沖縄はTシャツの専 門店も多いから、夏なんかここに買いに来るようになったら、おもしろ い。スキューバ・ダイビング関係のお店があってもいい。ついでに旅行 の予約もできるようにしてね。 「おきなわ物産センター」の2Fには、沖縄三味線の教室もあるようだ。 こういうお店があと何軒かあったら、見事な沖縄村だ。  すごいね。おきなわ物産センターの10メートル先には、沖縄ドリン ク専門の自動販売機があった!
 ゴーヤ茶、ミキ、グアバ茶、ハイサイさんぴん茶、うっちん茶、黒糖 玄米ドリンク、クワーサー・ドリンク、グアバ・ジュース、インカ・コ ーラ、サンソン・クリームソーダ、ルートビール。  沖縄好きの「うおおおっ!」という叫び声が聞こえてきそうだ。    あまりにもおもしろい町なので、しばらく商店街を歩く。  ご多分に漏れず、けっこう閉店してしまっているお店が多い。それだ けに沖縄料理のお店が目立つ。  古い潰れそうなCD屋さんには、桑田佳祐くんの『白い恋人達』のポ スターが貼ってあったけど、このポスター見たら、ここで買わずに、横 浜に出て買うんだろうなあと思ってしまう。そんな商店街だ。だったら、 もっと町じゅう沖縄ムード満点にして、沖縄音楽専門店になったほうが、 よっぽど需要があるような気がしてならない。  そうだ。沖縄音楽専門店というより、沖縄出身のアーティスト、タレ ント、スポーツ選手、女優さんたちの専門店があったらいいよねえ。  そんなことを思いながら歩いていたら、しこたまへばってしまった。  シャッター商店街なので、喫茶店がない。  どうにも足が上がらなくなった。  タクシーに乗る。 「ランドマークタワーまで!」  これでしばらく足を休めることができる。喫茶店代わりだ。  車は第一国道をひた走る。  おお! 鉄道マニアならよく知っている、国道駅だ。駅の名前なのに、 国道とはこれいかに!ってやつだ。生麦事件の生麦町が見えて来たぞ。 第一国道だけあって、景色が楽しい。  ああ! もう桜木町に着いてしまった。  あれれ? おいおい。車は桜木町を通り過ぎるぞ。 「運転手さん、運転手さん! 道間違ってない?」 「いや、こっちですよ!」 「ふつう桜木町を曲がらない?」 「こっちですよ。タワーでしょ。すうっと細くて展望台のある…」 「運転手さん、それ、横浜マリンタワーだよ!」 「えっ。そこじゃないんですか?」 「ランドマークタワー!」 「ええ? マリンタワーだと思ってました!」 「ふつうランドマークタワーとマリンタワーを間違えるかい!? いい から、そこを曲がって! 曲がって!」 「はい。ランドマークタワーならわかりますよ!」  そりゃそうだろ。タクシー運転手でなくても、神奈川県で免許取った 人なら、誰でも知ってるだろうが!  でもどうも、このおっさん、怪しいなあ。  まあ、もうちょいだからガマンするか…。まったくもう…。  あれあれ? 今度はランドマークタワーを過ぎようとしてるぞ! 「運転手さん! あんた本当にランドマークタワー知っての?」 「知ってますよ〜! あそこでしょ?」  ええっ!? あそこって? あの6Pチーズみたいな建物はパシフィ コ横浜でしょ。 「もういいよ! とにかくここで降ろしてくれ!」 「もうちょっとですよ、お客さん!」 「いいから降ろしてくれ!」  降りるとき、言ってやったよ! 「知ったかぶりはやめたほうがいいよ!」    よっぽど、この日記にH交通という、「H」の部分を実名で書いてや ろうかと思った。ちゃんとタクシー番号も名前もメモしておいたし。 ところが嫁の話を聞いて、やめた。  鶴見からここまで、料金は2500円だったそうだ。で、嫁は5千札 を出して、3500円おつりをもらったそうだ。ってことは、料金15 00円になっちゃったんじゃないの! わっはっはっは! あの運転手!  道も知らなきゃ、お金も計算もできないのか! そいつは気持ちいい!  天罰が下りましたな!   午後2時。ランドマークタワー。ランドセルタワーではない。『桃太 郎電鉄』ファンの人にだけわかるネタ。  しばらくタワーのなかを歩く。
 ここの新星堂は、やけにカズ坊(関口和之)の絶賛発売中!である 『ワールド・ヒッツ!?/関口和之&砂山オールスターズ』のポスター や宣伝用の大きな看板が貼ってあってすごいなあ。  と思ったら、そうだ。横浜はサザンオールスターズの地元だったじゃ ないか。このくらいは当然であった。  午後4時。しばらく、タワーで買い物したり、お茶したりしたあと、 「永坂更科」で、生粉打ちそば。甘口のおつゆが美味しい。  午後5時。ランドマークタワーから、横浜方面に歩いて行く。  見えて来ました、大きなテントが。  実はきょうのメイン・イベントはこれから!  横浜ビッグトップ! 「サルティンバンコ2000 横浜公演」のテントだ!
 思えば、家の近所の代々木公園でいつもテントを見ていた。あまりに もモーニング娘。が、宣伝しまくるので、食傷気味で見に行かなかった、 サルティンバンコ。そのうち見に行きたいと思うようになったけど、ど うせもうチケットなど無いと思っていたら、宴会大王の柴尾英令くんが、 「チケット2枚ありますよ!」というではないか! それは、行く、行 く!  というわけで、柴尾英令夫妻と、我が家の4人で、サルティンバンコ を見る。  いやああああああああああ、ほんとおおおおおおおおおおおに、すご おおおおおおおおおおいよ、サルティンバンコはあああああああああっ!  開いた口がふさがらないよおおおおおおおおおおおおっ!  とにかくさ! 「そこまでしなくていいよ!」と言いたくなるぐらい、 無茶するんだよ! もうじゅうぶんこっちは驚いているんだから、それ 以上すごい技をやらなくてもいいよ。そう思えてしまう。  だって、地上で演じても難しいようなことを、空中でやっちゃうんだよ!  いとも簡単な風に。笑顔を絶やさずに。  空中の綱渡りは、ロープの上でバック転しちゃうのよ!  さらにもう一回、バック転すると、段違い平行棒のように、下のロー プに着地しちゃうんだよ!  人間の肩に、人間が乗っちゃうのよ。その上にまた人間が乗っちゃう のよ。さらにその上に人間が乗っちゃうのよ。  もう二度と、出初式見れなくなっちゃうよ!  ブランコをこいで、人が飛ぶのよ! はるか彼方まで! ビルの3階 ぐらいまで飛んじゃうのよ! ぴゅ〜〜〜って!  プロレスラーの人は、これ見て反省したほうがいい。 「空中殺法」って言葉つかうの恥ずかしくなっちゃうよ!  山上たつひこサンの漫画の練馬変態倶楽部というか、江口寿史くんの 『寿五郎ショウ』というか、マッチョなふたりの男性が現れるのよ。そ んでね。片手でね、もうひとりの男の人の腕を握ってね、ゆ〜っくり、 ゆ〜っくり、持ち上げちゃうのよ。まったく弾(はず)みをつけないでさ!  大技のあとに、こういう力技を見せてくれる演出は見事だ。  まだまだあるよ。バンジー・ジャンプみたいに、ロープでぶんぶん上 下して、空中ブランコしちゃうのよ! もう人間CGなわけよ。  ゲーム業界の人間はすべからく、このサルティンバンコを見たほうが いい。私を含めて、サルティンバンコの何分の1の努力をしてる?  あまりにも凄すぎて、感動する前に、猛省しちゃったよ。  午後7時30分。サルティンバンコ終了。  いやあ。まいった。まいった。  サーカスというと、どうも私たちの世代には物悲しいイメージや、 「ちゃんとしないと、サーカスに売り飛ばすよ!」と脅されるイメージ が強い。  売り飛ばされて、勤まるような代物じゃないよ、サルティンバンコは!   しかしこの3日間。生身の人間の超人振りをいやというほど味わっち ゃったなあ!  朝枝信彦さんの演奏。  いっこく堂の腹話術。  サルティンバンコのアクロバット。  どれもこれも生身の人間が作り出す芸術だ。 「コンピュータは冷たい。人間が作り物は温かいね」っていう月並みが 言い方が脳裏をよぎってしまったけど、本当に人間の力は偉大だよ。  努力すれば、するほど、信じられない力を発揮する動物なんだね。  機械に頼っちゃいけない。サルティンバンコの人たちの10分の1ぐ らいの努力はしなくちゃね!  それにしても、人から勧められて行くものは、目から鱗が何枚も、何 枚も落ちていいね。自分で見つけて行くものは、どうしても傾向が似て しまうからね。  朝枝信彦さんを教えてくださった、すぎやまこういち先生ご夫妻。  いっこく堂を誘ってくれた、けーむらクン。  サルティンバンコを誘ってくれた、柴尾英令くん。  本当にありがとうございました!!  午後8時。横浜駅で、柴尾英令夫妻とお茶して、散会。  私と嫁は、東海道本線で、品川へ。  午後9時。帰宅。  しし座流星群は、このあたりで見るのは無理かな。
 

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