11月16日(金)

 NHK大河ドラマ『炎立つ』の総集編を見始めた。
 先日行った、平泉の「夢館(ゆめやかた)」のロウ人形で見た、前九年
の役のシーンが出てきた。歴史は繰り返し学習ですな。

 さて、きょうから連日、小刻みに忙しい日が続く。

 午前11時30分。嫁と飯田橋駅へ。
 珍しく私が嫁を叱る。
「遅刻アーティストの成沢大輔くんと、改札口で待ち合わせなんて、無謀
な約束するなよなあ!」
 とはいうものの、一方でせっかく成沢大輔くんと改札口で待ち合わせす
るなら、大幅に遅れて来てくれたほうが、日記で罵倒できていいなという
気分もある。
 そんなわけで、私と嫁はさっさと、「カフェ・ド・エドモント」という
コーヒー・スタンドで待つ。
 
 ありゃ。遅刻アーティストの成沢大輔くんが、時間通りに来てしまった。
まだコーヒー飲み終ってないよ〜。遅刻アーティストなんだから、コーヒ
ーの2杯目を注文した頃に来てくれなくちゃ。そなアホな。

 午後12時。神楽坂のフランス料理のお店「Le Mange−Tout」で、
成沢大輔くんにランチをごちそうになりながら、いろいろ仕事の打ち合わ
せ。
 このお店、住宅街の隠れ家的お店で、決して立地条件がいいわけではな
いのだが、開店と同時にあっというまに満員。料理店は、美味しければ場
所が悪くても繁盛する典型だ。

 食後、喫茶店でお茶したのち、市谷の豪邸街を散歩する。
 刑事ドラマで、豪邸がゆえに、子どもを誘拐されて、身代金を3億円ぐ
らい要求されちゃうような家ばかり並んでいるエリアだ。どの家も人間の
2倍以上の塀の高さ。すごいねえ! 森林浴のように、豪邸浴はすべきだ
と、Dr.コパさんが言っていたけど、まさにそんな感じ。
 歩いているうちに、「細かいこと考えたって、しょうがないなあ!」と
いう気分にになってくる。

 午後3時。自宅の近所で、土居ちゃん(土居孝幸)、ハドソン桃太郎事
業部の梶野竜太郎くんと、あれこれ打ち合わせ。
 雑談程度にするつもりが、けっこう真剣な話に。
 桃太郎シリーズをやめる気はないが、クリエイターという種族は、とき
おり発情期のように、新しい仕事に挑戦したい時期がある。
 私はいまちょうどそのエアポケットにすっかりはまってしまっているの
で、桃太郎シリーズの今後を考えるのが非常に難しくなっている。

 午後5時。私と嫁と土居ちゃんの3人で、新橋の「牛かつのおか田」へ。
 この日記のグルメ・シリーズのなかでもいちばん反響の大きい、あのソ
ースかつ丼、マヨネーズがけのお店だ!
 このお店に入る前に、1Fのジュース・スタンドで、柿ジュースを飲む ことは忘れない。
 午後6時。そのまま築地の浜離宮朝日ホールへ。  おなじみ朝枝信彦さん率いる、「アマデウス・アンサンブル東京」のコ ンサートだ。そろそろ朝枝信彦さんのバイオリンの素晴らしさをみんなに も知ってもらおうと、今回、思いつきで40人ぐらいにメールを送った。 40人ぐらいに送れば、1割として、4〜5人は来てくれると思ったのだ。  ところが「行きたい! 行きたい!」「実はモーツッアルトの大ファン で…」「こういう風に誰かが背中押してくれたら、クラシックのコーンサ ートに行ってみたかった!」という人がけっこう多くて、な、な、な、な んと!  28人もの人が集まってしまったのだあっ!  これにはこっちが驚いた!  でも私だって、すぎやまこういち先生ご夫妻に誘われなかったら、朝枝 信彦さんの天にも昇るような演奏に出会えなかった。けっこうみんな背中 を押されたがってるんだな。  そんんわけでまるで、異業種交流会「笑止会」みたいになってしまった。  メンバーを覚えてるかぎり並べてみる。 『ポポロクロイス物語』の原作者・田森庸介さん。池毅(いけたけし)さ ん。元ナムコの岸本好弘さん。テンユウの杉沢義文さんご夫妻。柴尾英令 くん。ヤング・サンデー編集部の石川享くん。整体のお兄ちゃん・梅津実 くん。宮路一昭くん。ポニーキャニオン勤務のけーむらクン。漫画原作者 の梶研吾(かじけんご)くん。フリー編集者の鈴木真弓さん。漫画原作者 の石関秀行・はるみ夫妻、はるみサンのお母さん。インデックスの辻本裕 子さんとその友だち。ハートビートの小林千尋くん。ゲームライターの野 安ゆきおクン。ナムコ勤務の門田祥子。イラストレーターの高内優向。  うちの娘と、学校の先輩。うちの親戚「紬の橋爪」の佐々木君枝さんと お友だち…。  これで全員かなあ。書き漏らした人がいたら、ごめんなさい。声をかけ た人が、そのまた知り合いの人を連れて来てくれたりしたので、初めて ご挨拶の人も多かった。  そのうち、ひとりの若い男の子が挨拶に来た。  どこかで見かけた顔なのに、名前を思い出せない。でも間違いなく、知 ってる顔だ。あっ! あっ。いつも『ドラクエ』のコンサートで会う、わ ずか3歳にして『桃太郎伝説』をクリアしたという、現在高校生の上原悟 くんとその家族ではないか! 「さくまサン、きっと朝枝さんのコンサートに来ると思って来たんですよ!」 と、上原クン。  上原くんのように『ドラクエ』のコンサートで、朝枝信彦さんの素晴ら しさを知ってこうして来るようになった人は多い。 「上原くん、きょうは来て、大正解だよ! ほら、こっちを見てごらん!」 「あ、土居さんだ! うわ〜〜〜!」 「上原くん、その向こうは…」 「うわ〜〜〜、宮路さんだ! わ〜〜〜!」 「上原くん、『ポポロクロイス物語』って知っている?」 「はい、もちろん! 妹が大ファンなんです!」 「ほら、そっちに、田森庸介さんがいるよ!」  田森庸介さんの隣りにいる、柴尾英令くんも紹介してあげようと思った ら、「あ、柴尾さんですよね!」  上原くんは、どうも熱心に私の日記を読んでいるので顔を見ただけで誰 だかわかるそうだ。そういう意味ではきょうのメンバーは、上原くんにと ってはちょっと刺激が強すぎたかも。    何て話題の側では、まるで「笑止会」のように、あちこちで「ひさしぶ り〜!」 「ご無沙汰〜!」の挨拶大会が始まっている。 「宮路く〜ん。女の子、生まれたんだって〜? おめでとう!」  そうなのだ。ここ数日間、出産が伸びていた2番目の子がきょう生まれ た。おめでとう! 「きっしいサン、いつまで自由業続けているんですかあ!」  岸本好弘さんはきょう、北海道からここに直行! いつまで浪人生活を 続けるつもりだろう。 「田森さん、日記でアイデアが出る、出ないって書いてあるけど、『ポポ ロ』の3はいつ出るのよ!」 「あいたたたたっ!」  午後7時。会場へ。みんなで、すぎやまこういち先生ご夫妻とご挨拶。  そして、開演。  もう。本当にモーツァルトっていいねえと思えるようになって来た。 聴いていて、ほれぼれ、うっとりする。  しかもきょうのコンサートは、ホルン奏者の松崎裕さんという方がゲス トに。私はどの楽器よりもホルンが大好きなので、松崎裕さんが、眩いば かりの銀色に光り輝くホルンを持って登場しただけで、背中に電流が走っ てしまった。   私はいまだかつてこれほどまでに美しいホルンを見たことがない。  そのホルンから流れるやさしい音色は、いまだかつて聴いたことのない ような美しい音だ。  ホルンは目を閉じて、聴くにかぎる。  うわ〜〜〜、この音の広がりはいったい何なんだ。室内なのに、大草原 にいるみたいだ。    休憩時間。みんなが一様に驚いた顔や満足気な顔をしている。 「こんなに素晴らしいコンサートだと思ってなかったわ」「何だか自分が いい人に思えてきちゃいました!」「生で聴く音って全然違うんですねえ!」 「どれもCMなんかにつかわれている曲だから、聴き覚えがあったから、 よかった」「うん。、いいね、いいね。こういうの!」  そうだよ、そうだよ。私も最初はそうだったのよ。   CMでつかわれている曲も、一瞬違う曲かなと思えるほど、朝枝さんた ちの演奏は上品なんだよなあ。    午後9時。コンサート会場で、一応、解散。  今回本当に思いつきで、誘ってしまったので、次回、朝枝信彦さんのコ ンサート、背中を押されたいという人はいまのうちにメールをください。  まだ時間が大丈夫な人たちを募って、神宮前へ。  午後9時30分。神宮前3丁目の「ブルドッグ」へ。  二次会に残ったメンバー。  土居ちゃん、整体のお兄ちゃん、けーむらクン。梶研吾くん、鈴木真弓 さん、石関秀行、小林千尋くん。野安ゆきおクン。門田祥子。高内優向。    午後11時30分。きょうから3連荘で、おでかけがあるので、早めに 引き上げる。帰り際、原宿駅に向う、けーむらクン、野安ゆきおクンに 「それじゃ、また明日!」といってから、大笑い。学校の帰り道みたいで、 楽しかった。
 

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