10月13日(土)

 午後12時。恵比寿の「千疋屋(せんびきや)」で食事して、5Fの本屋
さんで資料用の本を買って来て、自宅で、熟読。
 でも慣れないジャンルの本は、すぐさま、うたた寝。zzz…。

 午後6時。銀座「三笠会館」で、小池一夫劇画村塾の同窓会。
『子連れ狼』の原作者である小池一夫さんが主宰した漫画家・漫画原作者育
成の学校が、第一期生から八期生まで続いた。一期生からのときから数える
と、今年で25周年になった。
 私はこの「小池一夫劇画村塾」の一期生だ。
 おまけに、私は同窓会の会長なのだそうだ。どうも私はなんだかんだ名前
だけでもいいと言われながら、けっきょくは神輿(みこし)の上に乗せられ
てしまう体質のようだ。地味な顔なのに、目立つのかなあ。

 きょうは、その集まり。
 ただ、年末に近いために、忙しい漫画家さんたちが多数欠席になってしま
った。
 きょう来ることができなかった漫画家さんたちの名前を羅列するだけでも、
小池一夫劇画村塾のすごさがわかるので、ちょっと紹介(敬称略)。

・高橋留美子 ・原哲夫  ・西村しのぶ ・中村真理子  ・工藤かずや
・山本貴嗣  ・狩撫麻礼 ・棟居仁   ・たなか亜希夫 ・菊池晃弘
・剣名舞   ・宮岡寛  ・山口貴由

 きょう集まったメンバーだけでも、やっぱりすごい!

・堀井雄二  ・梶研吾   ・とがしやすたか ・ビトウゴウ
・山本直樹  ・板垣恵介  ・斎藤あきら   ・石綿周一
・菅本順一  ・天野利二  ・田中丸葉子   ・こいでたく
・八木橋淳一 ・川田潮   ・三田邦裕    ・竹内海四郎
・神本和思  ・新山和男  ・浜田芳郎    ・鈴木祐二
・阿久沢俊一 ・早乙女正幸 ・石関秀行    ・島田真誠

 名前聞いても、ピンとこないという人でも『グラップラー刃牙』、『スプ
リガン』『環倫一郎』、『殺医・ドクター蘭丸』、『極めてかもしだ』、
『青春くん』、『ジゴロ』といった作品というと、「ああ!」とつぶやく人
も多いと思う。

 堀井雄二というのは、あの『ドラゴンクエスト』の堀井くんだ。間違いじ
ゃないよ。私が一期生で、堀井くんは三期生なのである。
 だから、小池一夫劇画村塾では、私のほうが先輩なのである。えっへん。

 そして、われらが小池一夫塾頭である。
 小池一夫劇画村塾なので、私たちは、小池一夫さんのことを「塾頭」と呼ぶ。
 25年たってもやっぱり「塾頭!」「塾頭!」だ。

 いまでこそ、『犬夜叉』、『ドラゴンクエスト』、『北斗の拳』を始めと
して、たくさんの作品を世の中に送り出した偉大なる村塾生たちだが、みん
なの心はひとつ。
「小池一夫さんに出会わなかったから、今ごろ自分はどうなっていたかわか
らなかったなあ!」というと、みんな「ほんと、ほんと!」
「いまだにプータローだったかもしれないなあ!」
「どこかで野たれ死んでかもしれないなあ!」
 みんなが大いにうなずく。
 
 それにしても、すごいのは、小池一夫塾頭。私に「さくま! 身体はどう
だ?顔色よくなったな!」とおっしゃってくださるが、きょう集まったメン
バーで、いちばん顔色がよくて、エネルギッシュなのは、小池一夫さんだ。
「オレが、こんなに元気なんだから、おまえらもがんばれよ!」
 いつも会うたびに、みんなを激励してくださる。
 いまでも連載6本に、エッセイを書いているという話に、全員呆れ返る。

 塾頭の挨拶に続き、一応、私が乾杯の音頭を!
 あの小説家・菊地秀行さんが劇画村塾一期生だったことを、みんなに報告
する。
 小池一夫塾頭も知らなかったようだ。
 劇画村塾のメンバーというのは、他業種で成功を収めた人も多い。
 フジテレビ『スケバン刑事』のプロデューサーになった人や、競馬評論家
として有名になった、故・高本公夫さんも村塾生だった。
 何より、堀井くん、私、宮岡寛+山本貴嗣(やまもとあつじ)、ビトウゴ
ウくん、石関秀行といったゲーム業界に実は多数、人材を送り込んでいる。

 あとはひとりずつ、近況を報告。
 漫画家さんたちだから、口下手な人も多い。
 それでも全員のスピーチが終ると、一期生から八期生まで、ほとんど初対
面も多いのだが、同門ということで、楽しく歓談。
 しかし、なんだね。劇画村塾も25周年ともなると、話題は、病気と老眼
の話題ばっかりだね。はっはっは。みんな若いまま、年齢だけ重ねている。
『グラップラー刃牙』の板垣恵介くんなって、もっと若いと思っていたんだ
けど、44歳だっていうしね。
 石綿周一くんは、私とおなじ脳内出血で倒れたというので、さっそく同病
談義。
「やだねまったく、みんな病気の話ばかりで…」という、とがしやすたかに
「オレが脳内出血で倒れたのは、いまのとがしの年齢だぞ!」と教えてあげる。
 そういえば、私が入院中、交通事故で亡くなった『聖少女』の原作者・
武田正敏くんのことを思い出した。

 あっというまに2時間以上過ぎる。
劇画村塾同窓会--画像をクリックすると別ページが開きます--
 最後に、全員で記念撮影!  このとき、石関秀行と梶研吾くんの発案による、きょうの日の記念品が全 員に配られた。  なんと、ハーシー・チョコに、横文字で「GEKIGA SONJYUK U」By Kazuo Koikeと印刷されている。わざわざアメリカに発注して、今回 のテロで到着が危ぶまれた逸品だそうだ。  そんなわけで、記念撮影でみんながこのチョコレートを持っていますが、 別にハーシー・チョコレートがきょうの会をスポンサーしているわけではあ りません。  メンバー的には、スポンサーがついてもおかしくない人たちだけどね。  午後9時。銀座の「ライオン」で、二次会。  15名ぐらいを予定していたのだが、25名、ようするに一次会に来た人 のほとんどが来たようで、あっちこっちで、漫画業界の情報交換をしたり、 昔話に花を咲かせる。  来年の4月にまた同窓会をやろうと約束して、二次会終了。   午後10時。三次会に行った人もいただろうけど、私はここで帰る。  全員スピーチのときに、「そろそろ漫画の原作を書きます!」と宣言して いる人が何人かいた。私もそのうちのひとりだ。そろそろ私という男を育て てくれた業界に恩返しする時期だと思う。
 

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