9月23日(日)

 午前9時15分。すぎやまこういち先生ご夫妻のマンションへ。
きょうも昨日に続き、洛星高校の文化祭にごいっしょさせていただく。
 昨日のリハーサルで、すぎやまこういち先生がわずか30分アドバイス
を送っただけで、別人のように上手くなったオーケストラが、きょうどう
なるのかを見届けてみたくなったのだ。

 午前9時45分。洛星高校の校長先生は、ゲェタン・ラバディさんと
いうカナダの方。きょうのこの講演の後援をしている朝日新聞社の真峯
茂さんとご挨拶。
 私はただの金魚の糞。すぎやまこういち先生ご夫妻が私のことを広大
広告してくださるので、学校側の人たちがしきりに気をつかってくださる。
 午前10時。講堂に移動して、すぎやまこういち先生の講演を客席から 見る。  講演というと、おしゃべりだけと決まっているのだが、きょうはすぎや まこういち先生のご挨拶のあと、後ろの幕がぱああっと上がって、洛星高 校交響楽団による、『ドラゴンクエストI〜序曲〜』をいきなり演奏する という趣向になっている。
 ♪パッパッパッパパパ〜、おなじみのあの『ドラクエ』のオープニング 曲だ。  昨日よりさらに上手くなっている。  思わず、隣りの奥様に「昨日、あれから一生懸命夜遅くまで練習したん でしょうね」というと、「練習していないはずですよ!」との返事。 「へ?」。キツネにつままれたような私。  何でも、昨日すぎやまこういち先生が指揮をされたから、そのあとに ほかの指揮者の方が間に入るということは、絶対無いのだそうだ。でない と、せっかく昨日すぎやまこういち先生が指揮して、作り上げたものが狂 ってしまうそうなのだ。  なるほど。これが指揮者で、楽団の演奏はガラッと変わるというやつか。  話には聞いていたけど、この目でその変わり様を見るのは、初めてだ。  でも、待てよ。  今朝、私はすぎやまこういち先生ご夫妻と、ヤサカタクシーの宮本さん 運転の車で同行させていただいている。  ってことは、きょうは一度もリハーサルしていないぞ。  なのに、なぜ昨日より上達しているのか。 「それが若さなんですよ」と、奥様。  若い人のほうが、昨日のわずか30分の指導で、見違えるように成長す るのだそうだ。へ〜、すごいなあ。  演奏後、すぎやまこういち先生の講演が始まる。  いかにして、すぎやまこういち先生が音楽の仕事に携わるようになった かという、中学生、高校生時代のお話。  中学生の頃、毎日、毎日、ベートーベンを繰り返し、繰り返し、聴いた という話は深く染み込んだ。 「広く、浅く」ではなく、「狭く、深く、さらに広く」が必要なんだな。  まるで、理科で習った石油の地層断面図みたいだな。  実際、中学生の頃に、見たり、聞いたりしたことが、生涯の仕事を決定 することは多い。ということは、20歳を越えてからでは遅すぎるという ことだ。  私が中学生の頃、いちばん影響を受けたのは、クレージーキャッツだも の。すぎやまこういち先生の言うとおりの人生になっている。  よかったような。もっと格調の高い趣味を持っていれば…と思ったり。  昨日のリハーサルで、すぎやまこういち先生から「気後れしてはいけな い!」という言葉を教わったが、きょうは「手遅れ!」という言葉も教わ ったような気がする。ははは。みなさん、自分の中学生時代を思い出しま しょうね。そのときの趣味があなたの天職です。
 午後12時。校長室で、すぎやまこういち先生とごいっしょに、お弁当 をいただいてしまう。ただついて来ただけで、あげくにお勉強までさせて もらって、さくまあきらは幸せ者でござる。  午後1時。『ドラゴンクエストI〜序曲〜』を演奏したオーケストラが、 クラシックを演奏するというので、またまたすぎやまこういち先生ご夫妻 にくっついて行って、見せていただく。  おなじみ、『ツァラツストラはかく語りき』、『くるみ割り人形』、ワ ーグナーの歌劇『リエンツィ』などを聴く。  またまたここでも、指揮者の性格が、演奏に如実に現れる様を見る。  私のようなクラシック素人でも、その差がわかるのは、何度も朝枝信彦 さんのコンサートを見せていただいたおかげだなあ。  陶器とおなじように、つねに超一流を見て、素人さんの作品を見るとい うことを繰り替えして行くと、物事の本質が見えてくる。  きょうの若者たちのように、わずか30分で成長をとげるようなことは、 まずないと思うが、きょうは私の脳のかつて一度も動いたことのない部分 が、ピクッと動いたような気がする。気のせいかもしれんが、ははは。  午後2時30分。「クレーム・デ・ラ・クレーム」で、すぎやまこうい ち先生ご夫妻、宮本さんと、コーヒーにシュークリーム。  このみなさんと、「プティ・ポワン」の北岡さんご夫妻といっしょのと きは、私が最年少なので、うれしいのだ。最近どこへ行っても、最年長に なってしまうので、どうも気持ちがアグレッシブになれなくなる。  昨日から、ずっとすぎやまこういち先生ご夫妻パワーを注入していただ いて、アグレッシブになれそうだ。  午後4時7分。のぞみ60号。 車中、『千と千尋の神隠し・ロマンアルバム』(徳間書店)、『サライ』 (小学館)、『マクドナルド市場独占戦略』(中山新一浪・ぱる出版)を 熟読。  午後6時28分。東京駅着。  午後7時。東京駅で買って来たお弁当を食べながら、巨人対ヤクルト戦。  優勝を争っている同士の死闘は美しいなあ。  こういう試合をいつもやっていれば、プロ野球人気の下火もなくなるの にねえ。  試合数が多くなって、薄味になっていたんじゃないのかなあ。大相撲み たいに、年4回優勝チーム決めたほうが、ファンとしては期待が大きく なっていいなあ。  これならわが横浜ベイスターズでも、4年に一度くらい、どさくさに 紛れて優勝できそうな気がする。
 

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