9月12日(水) 昨夜からずっと朝まで、米国同時多発テロ事件のニュースを見てしま った人は多いだろうなあ。私もちょうど『プロジェクトX』を見て、 またひさびさに姫路城に行きたいなあ…などと思ったのもつかのま、つ けっぱなしにしていたNHKから流れて来たのは、あのニュースだった。 てっきり、旅客機1機の事故だと思ったら、多くのテロリスト映画や、 小説に出てくるようなシーンが現実に起きているではないか。 これほどまでに歴史的な瞬間は、さすがに生まれてこの方、見たこと がない。 言っておくが、私は戦争経験者ではない。 米国のニュースで、パールハーバー以来という言葉が何度もつかわれ ていたが、その通りだろう。世界大戦ですら、本土に爆撃を喰らったこ とがない国としては、パールハーバー以上だろう。 この事件の影響で、今後世界がどう変わって行くのか、なかなか恐ろ しい。 午前11時30分。代々木駅前から新宿の高層ビルを見上げると、つ いつい米国同時多発テロ事件を思い出さずにいられない。午後12時。嫁、柴尾英令くんと3人、「代々木今半」で、ランチ。 牛たんのしゃぶしゃぶや、夢のようなすき焼きを食べさせてくれる お店がランチもやっていることに最近気づき、一度お昼に来てみようと 思っていた。 3人で、すき焼き丼、ソースかつ丼、今半丼。 みんなでそれぞれ、突つき合って、食べる。どれも天にも昇るように、 美味しい! う〜〜〜ん。すきやき丼が、いちばんかな? 極上のお肉 をつかった上で、コーヒー付きで1000円は、食べた人なら、絶対 「安い!」と叫ぶに違いない。 家から散歩にちょうどよい距離なので、病み付きになりそうだ。 午後1時。本日も、我が家にて、『桃太郎電鉄X(ばってん)〜九州 編もあるばい〜』のテスト・プレイ。 メンバーは、柴尾英令くん、井沢どんすけ。 特別ゲストに、元ナムコの岸本好弘(きっしい)さん。 岸本好弘さんには、前からゲーム作りについて、たくさん聞きたいこ とがあったので、ぜひ来てほしかった。 でもいきなり、岸本好弘さんから、「いまは2Dの絵を描ける人なん て、ほとんどいませんよ!」という言葉を聞いて、米国同時多発テロ事 件並みの衝撃を受ける。ががが〜〜〜ん! そ、そ、そうか、そうだっ たのかあ…。だから…。 う〜〜〜ん。それは、私にとって、末期ガンを宣告されたようなもの だあ…。 『桃太郎電鉄』シリーズは、土居ちゃん(土居孝幸)の絵抜きでは、考 えられない。でも土居ちゃんの絵は、2Dでなければ、魅力を発揮する ことができない。 ということは、『桃太郎電鉄』の存続も危ないということなのだ。 ゲーム業界の3D信仰が、2Dの描けるデザイナーたちを駆逐してし まったらしい。嫌な世の中だなあ。 まるで、いつのまにか『桃太郎電鉄』は、歴史的建造物になってしま って、いまや宮大工でなければ、作れない建物になってしまったような ものじゃないか。 何だか、とてつもなく、脱力…。 部分、部分に、3Dをつかうのはいいけど、全編3Dになるくらいな ら、『桃太郎電鉄』の製作はやめるしかないようなあ…。早ければ、今 回の作品が最後になる場合もあるかもしれないってことだもんなあ。 テスト・プレイのほうは、試合巧者の呼び声がかかり始めた柴尾英令 くんが、目を覆うような確率の悪さのドツボにはまり、目的地に一度も 入ることができないダメダメぶり。 なんと、ゲームは、初登場の岸本好弘さんの圧勝に終る。 柴尾英令くん、井沢どんすけに憤慨する、私! 「まったく、道場破りに、カンタンに負けてしまう、へっぽこ師範代み たいじゃないかあ! 柴尾英令くんなんか、酔いどれ用心棒で、刀を握 ったとたん主演の三船敏郎に袈裟掛けに斬られる素浪人みたいだぞ!」 「はっはっは」と喜ぶ、岸本好弘さん。 まあ、何たって岸本好弘さんは、『ファミスタ』の創始者だ。ゲーム 感と、確率運がムチャクチャいい! 柴尾英令くんも、確率運がよかったはずなのだが、どうしたわけだ。 でも私としては、強い人が勝つ確率が、6割。負ける確率が2割くら いになってくれるのが、このゲームの理想型なので、きょうの柴尾英令 くんの絶不調ぶりは、実はしめしめ…。 午後4時。土居ちゃん(土居孝幸)が到着。 『桃太郎電鉄X(ばってん)〜九州編もあるばい〜』について、岸本好 弘さんにいろいろアドバイスをいただく。 でもいちばんうれしかったのは、旅行大好きの岸本好弘さんの口から 「きょう九州編ゲームやってみて、知らない駅名がたくさんあったの くやしいなあ! 全部行ってみたいなあ!」という言葉が聞けたこと。 九州編の駅名のうち、1割くらいは、岸本好弘さんでも知らないよう な駅名をちりばめたかったのだ。ふっふっふ。 でも「2Dデザイナーは絶滅寸前」という言葉は重くのしかかる。 午後5時。売れっ子漫画原作者でもある、井沢どんすけが打ち合わせ のために、出版社へ。 午後7時。近所の「鶏味坐(とりみくら)」で食事。 「今後、もしさくまサンがこの先続けてゲームを作るには、柴尾さんが 北海道に住み着くしかないですねえ!」の言葉に、柴尾英令くんの大き な目が、さらに大きくなる。 「そ、そんな、酒飲みに、札幌ススキノなどという場所を与えられたら!!!」 「そうか。仕事しそうもないなあ!」 「冗談ですよ。その前に、うちの家庭の心配をしてくださいよ、みなさん!」 「あっ、そうか!」 午後9時。食後寄った「トゥー・ザ・ハーブス」で、解散。 自宅で、米国同時多発テロ事件の続報を見る。 ブッシュ大統領のコメントがまるで映画『ディープ・インパクト』の ラスト・シーンの大統領の演説のように、真にせまるものがあった。 もはや映画のなかの出来事が現実に起こりうる時代に突入したという 認識だけは持っていないといけないな。 きょうは岸本好弘さんの「いまは2Dの絵を描ける人なんて、ほとん どいませんよ!」と、ふたつもショックな出来事があって、めげる。 テスト・プレイの結果をまとめる仕事は明日にしよう…。
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