8月17日(金)

 午前8時。iモードゲームの毎月原稿を書き始める。
『さくま式東海道五十三次』、『さくま式奥の細道』、『さくま式
西遊記』と、毎月3本のエッセイを書くのはけっこう大変だ。
 でも旅について、文章が書けるのは、ここだけなので、仕事自体は
大好き。

 午前11時30分。嫁と原宿2丁目商店街で待ち合わせる。
 きょうもどのお店も夏休みに入っていて、お目当てのお店は、夏季
休業中。
 表参道に出ると、最近建ったばかりのおしゃれな青山ダイヤモンド
ホールという結婚式場のところに「お昼のランチ 1000円」と書
いてある。

 帝国ホテルというか、センチュリーホテルというか、そんな雰囲気
のホテルのようなところで、1000円でランチを出すか? そう思
いながらも、お盆休み難民なので、入ってみることに。
 入ってみてまた驚いた。
 本当に瀟洒な、最新型の豪華ホテルなのだ、ロビーもフロアも。

 地下のレストランで、1000円の牛肉焼きそば。
 さぞや凡庸なる味と思いきや、う、う、うまい! これは! 一流
ホテルの味ではないか!
 しかし、こんな豪華ホテル風のお店が、1000円のランチを売ら
ないといけない時代なのかあ。不景気もここに極まれりだなあ。
 味がいいだけに、穴場中の穴場だ。

 午後12時30分。青山三丁目を左折、外苑西通りへ。
 ええっ!? あの、ゴージャスなハンバーガーでおなじみの「ホー
ムワークス」が、夏休みではなく、閉店!? がび〜ん! いちばん
好きなハンバーガー屋さんだったのに〜。
 不景気はさらに極まれり。

 外苑西通りの喫茶店「うたた」でコーヒー。
 このお店は小さいけど、非常に雰囲気がいい。コーヒーも美味しい。
 ここはチェックだ。いつもこのあたりの帰り道にいい喫茶店が無か
ったので、うれしい。

 午後1時。自宅に戻る。
 宮路一昭くん、井沢どんすけが来て、きょうは自宅で『桃太郎電鉄
X(仮)』のテスト・プレイ!
 スーパー・テスト・プレイヤーの称号を持つ、井沢どんすけは、 『桃太郎電鉄X(仮)』のいろんな部分に厳しいチェックを入れる。 「ここのデザインはひどすぎますねえ! 変えたほうがいいですね!」 「このイベントは意味無いからいらないですね!」  厳しい! 実に厳しい!  しかし、もっと厳しいのは、井沢どんすけのゲーム展開である。  私が総資産10数億円。  宮路一昭くんが、およそ5億円。  井沢どんすけが、およそー6億円である。 「えへえへえへっ!」 「井沢くん、何が可笑しいの?」 「あまりにも自分に、−(マイナス)が多いんで、可笑しくなっちゃ いました!」  歴史上の英傑というのは、彼のことを言うのであろうか?  井沢どんすけ。やはり、敵に回すと、恐いが、味方にすると、もっ と恐い男である。  ちなみに、井沢どんすけはきょうのゲーム開始以来、ずっと貧乏神 となかよしである。目的地に私か宮路一昭くんが着いたときは、今回、 貧乏神がついてしまうのは…、どんすけ社長です!  こればっかりだ。
 井沢どんすけからは、いつも『桃太郎電鉄』に対して、本当に役に 立つ指摘をしてくれるのだが、どういうわけか、ゲーム自体は下手で ある。 「井沢くん、こんなによく負けるのに、何でやるの? 作者としては うれしいんだけど…」 「いやあ、あそこで虎につばさカードが自分に入っていればとか、あ の場面で目的地に入っていれば、勝ってたのにと思えるんですよねえ、 『桃鉄』は…」。 「まあ、目的地まであと5マスというときに、5進めるカードを持っ ているのに、早く入りたい一心で、思わずサイコロ振っちゃう人だか らねえ!」 「そうなんですよねえ。えへえへえへっ!」  どうして、この男、自分のヘマを笑い飛ばせるのだろう。  ひょっとして、坂本竜馬のように器量の大きな男?  いや、坂本桂馬ぐらいだろう。  午後7時30分。嫁と、渋谷の居酒屋「VIN(ヴァン)」へ。  きょうはここで何やら、怪しげな集まりがあるというので来たのだ が、誰もいない。どうやら、あの遅刻アーティストの成沢大輔くんが、 野安ゆきおクンに「なぁ、野安よぉ!」と語りかけて開催が決まった 会らしいので、そりゃあ、時間どおりに始まるわけが無い。  けっきょく、予定通り、遅刻帝王・成沢大輔くんが、わずか19分 遅れと、ふがいない記録で現れて、全員が揃い、宴会が始まる。  きょうは、初めて会う人が多いので、順不同で、紹介。  静岡大学情報学部助教授の赤尾晃一さん。ゲーム雑誌『コンテニュー』 の多根(たね)清史さん。ゲームライターの元宮秀介さん。スクエアの プランナー・松村靖さん。ゲームの仕入れをする会社の人・今(いま) 浩之さん。『超クソゲー』の作者・阿部さん。ゲームデザイナーのとみ さわ昭仁くん。  とみさわ昭仁くんは、『ファミコン神拳』のカルロスといったほうが、 うちの日記を読んでる人には「おお〜〜〜っ!」かな。  そして、成沢大輔くんに、野安ゆきおクン。  おっと、忘れてた。お下劣話製造マシーンの柴尾英令くんがいた。  しかし、柴尾英令という男。宴会の席には、必ずいる男だ。  彼の人形を作って、「まねき柴尾猫」として売り出せば、飲み屋さん は大いに繁盛することだろう。
 しかしまあ。ゲーム関係者がこれほど揃うと、私はほとんど初対面の 人ばかりというのが、本当に私はゲーム作家かなあと思ってしまう。  おまけに、元宮秀介さんは『HIPPONスーパー』という雑誌のと きに、取材に来たことがあるそうだ。覚えていなくて申し訳ない。  ゲームがヒットしたとき、私はいずれ自分は出版業界に戻る人間だか らと、ほとんどゲーム雑誌の人とか、ゲーム業界の人を覚えなかったか らなあ。まさかここまで本業になると思っていなかった。  成沢大輔くんいわく、きょうのこの集まりは、呉越同舟で、こんなメ ンバーが一堂に介すこと自体が、非常に画期的なのだそうだ。 『ファイナルファンタジー』のスクエアの松村さん。『超くそゲー』の 阿部さん。私。赤尾晃一さん。  この四角形は、菱形なくらい、それぞれの位置が遠くて、一点に集ま るのが、想像がつかないようなことなのだそうだ。  しかし、ふ〜〜〜ん。そうなのかあ…と、よくわかっていない私であ った。  むしろ、ふだん、あまりゲームの話をすることの少ない私としては、 ひさしぶりに脳みそのつかっていない場所をつかったようで、心地いい。  とみさわ昭仁くんとの、几帳面問答はおもしろかったし、野安ゆきお クンと初めてちゃんとゲーム業界、出版業界のことが話せたし、松村靖 さんの神業のようなルービック・キューブも見ることができたし、大学 の助教授さんであるからして、私より年上だと思っていたのに、私のほ うが年上だったり、不思議な夜である。最近、私より年上の人と初対面 になることが無くなって来たなあ。  さすがに、きょうのテスト・プレイの疲れが残っている…と言っても、 井沢どんすけのあまりにヘタッピなプレイっぷりに笑い転げて、疲れた だけなんだけど、午後11時ぐらいで先に帰らせてもらう。    午後11時30分。帰宅。  横浜対阪神。0対7! ええっ!  いったい何試合連続0点なの!? 36イニング連続? とほほ…。  おいおい、9連勝した勢いはどこに行ってしまったんだよ〜!  やばいじゃないかあ!   中日が近づいて来たあ! 違う。こっちから寄って行っているんだあ。
 

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