7月1日(日)

 午前9時30分。何度寝めかを、間違い電話で起こされたあと、由比
ヶ浜の海岸へ。すでに嫁が浜辺で日光浴している。娘は家でまだ寝てい
るそうだ。
 うちの家族は、個人主義がはっきりしているので、勝手に行動する。
美味しい物を食べるときはいっしょに。それ以外のときは、好き勝手だ。

 きょうは昨日と打って変わって、暑い。
 暑いなんてもんじゃない! 熱い!
 まるでサウナだ。
 10分ぐらいで、しっかり汗が出てくる。

 ジェットスキーって格好いいけど、ガソリン臭いなあ。
 ウインド・サーフィンの人たちが一生懸命、ウインドを広げようと
している。
 思ったより時間がかかるんだなあ。
 でもやっぱり海はいいなあ。
 海を見ているだけで、身体から毒素が消えて行くような気分になる。
 30分後。あぢぢ…。あぢぢ…。  嫁は日焼けが趣味だからいいけど、私にはこの暑さは耐えられない。  午前11時30分。娘はまだ寝ている。  嫁とふたりで、長谷駅の定食屋「芳乃(よしの)」へ。  ショウケースの「お好み丼」というのを見ていたら、無性に食べたく なった。  ステーキ、スタミナ(とろろ、オクラ、ねぎとろ)、まぐろのづけ、 まぐろの4種類の小鉢から2種類選べる。
 スタミナ小鉢が気になったので、ステーキ小鉢と組み合わせる。  オクラの食感が気持ちいい。  醤油をかけて、かき混ぜるというのが、日本的でいいんだなあ。  朝から偶然に入ったお店が美味しいと、得した気分。  午後12時。鎌倉雪ノ下1丁目。  前回見つけて目星をつけていた住宅地の隠れ家のようにして建つ和菓 子屋さん「美鈴(みすず)」へ。一戸建ての家の玄関で販売だけのお商 売。優雅なものだ。
 こういう風情のお店はよほど実力がないとできないから、かえって味 に信用度が高い。  今月の和菓子のなかから、6種類買う。  このお店から、鎌倉の切通しのほうに向って散歩する。  地形に明るいわけでない。  実戒(じっかい)寺の裏に出たから、この道はどこかに続くだろう。  あぢぢ…。あぢぢ…。  むせ返るほど暑い。  またデブにとっては、水泳のような夏が来た。  適度にクーラーのきいた部屋に入らないと、爆死してしまう。  立派な欄干の豪奢な橋を渡る。  崖に、防空壕のようなものが。  へ〜、代々、北条家の執権の墓があったとされているのか?  まだ紫陽花が少し残っている。    あぢぢ…。あぢぢ…。  あれ? 駐車場があるだけで、道が無いぞ!  まさか、行き止まり?  行き止まりのようだ。  思い切り脱力。  わずか10数軒の家のために、あんな豪華な橋が架かっているのか?  道も広いのに。  もう少し早い場所で、「この先、個人宅だけの行き止まりです」と 看板ひとつ出すだけですむではないか。きえ〜〜〜、あんなに暑いな か歩いて来た道を引き返すのかあ…。あぢぢ…。あぢぢ…。  午後1時。眩暈(めまい)がして来た。  過去、沖縄で二度も日射病で病院に直行したことがあるから、私は 暑さに滅法弱い。  雪ノ下1丁目の「メーカーズシャツ」というお店の「カフェ鎌倉」 に入る。  シャツを専門に売っているお店で、関東に5〜6件店舗を持つチェ ーン店のようだ。喫茶店「カフェ鎌倉」が併設されているので、私は こっちに一直線!
 コーヒーにアイスクリームを注文。  金魚が口をぱくぱくさせるように、冷気を吸いまくる。  アイスクリームを食べて、息を吹き返す。  元気が出たので、鶴岡八幡宮から、小町通りを南下する。  鎌倉駅前の不二家で、ペコちゃんクリスタル・フィギュアのきょう から発売分を買う。15日置きぐらいで立て続けに新作が出る。安易 な戦略に自分から突っ込んでいく私であった。  午後2時。鎌倉長谷の家に戻る。  家族揃って、再び由比ヶ浜へ。  今年というより、病気してからだから、6〜7年ぶりに泳ぐかと意 気込んだが、海草に足を取られて、泳ぐことできず。  水も汚い。無理に泳ぐことないな。まだ手足が不自由なので、ちゃ んと泳げるかどうかわからないし。  またしても私だけ暑さに弱いので、家に戻る。    午後4時。柴尾英令くんから電話が入って、長谷の海に到着したけ ど、嫁と娘が見当たらないというではないか? どこに行ったんだ?  なんのことはない。ふたりとも海中にいたので、柴尾英令くんが気 づかなかっただけのようだ。  午後4時30分。柴尾英令くんと、ハンドル名・イエネコ・アンジ ーさんが家に来る。イエネコ・アンジーさんが以前からずっと鎌倉が 大好きだというので、鎌倉に家を購入することを勧める。 「何でそんなに、さくまサン、家を買うのを勧めるんですか?」 「そりゃあ、柴尾英令くんが家を買えば、たくさん仕事をしなければ いけなくなる。私のゲームの手伝いが増える。柴尾英令くんの収入が 増える。私のゲーム本数が増える。私の収入が増える。風が吹けば、 桶屋が儲かるんだよ!」 「そういうことか!」 「できれば、柴尾英令くんだけ働いて、私の収入だけ増えるのが理想 だなあ!」  みんなで「美鈴(みすず)」の和菓子を食べる。  美味しい! やっぱり美味しい!  いかん! 病み付きのお店がまた一軒増えてしまった。  午後6時30分。江ノ電で鎌倉に出て、「やなせ」へ。鎌倉の地の ものの魚が食べられるお店だ。鎌倉海老という名前が気になるので、 みんなで食べる。  お店の人が「伊勢海老よりも美味しいですよ!」というだけあった、 旨い! ただ値段が高くて、量が少ないのが難点。
 午後8時。うちの嫁、娘、柴尾英令くん夫婦は、横須賀線で東京へ。 早い話、私だけまだ鎌倉に残るのだ。もう一日海を見てから帰りたい。 できれば1週間ぐらいずっと鎌倉で、だらだらしたい。  午後8時30分。長谷の家に戻る。  本を読んだり、ビデオを見たり。  本格的な『桃太郎電鉄X(仮)』のテスト・プレイが始まる前の ちょっとした凪(なぎ)状態だ。こういうときに知識をたくさん身に 付けておかないと!
 

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