6月25日(月) ハウステンボスは朝から雨。 午前8時。ホテル・ヨーロッパの1F「アドミラル」で朝食。 天井までがガラスの窓に、滝の流れるような雨が容赦なく降り続ける。 「どうしようかあ?」 「どうしましょう」 「この雨じゃねえ!」 「でもせっかく来たことだし、何も見ないで帰るのももったいないねえ!」 「もう一泊したかったですねえ!」 「うん。この広大な土地を歩いて、へばったら、ホテル戻って仮眠する。 少し寝たら、また外へ! これを繰り返したいね!」 「チェック・アウトが午前11時だと、それもできないですよねえ!」 「先にチェック・アウトして、少しでもショッピングするなり、遊んで 行くか!」 午前10時。ホテルをチェック・アウト。 ホテルに荷物を置き、外に出る。 うひょ〜〜〜、豪雨なんてもんじゃない! 傘なんかいらないぐらいの 横殴りの雨だ! ひ〜〜〜、風雨に身体を押されてしまうよ〜! ズボンがびしょびしょ。 足にまとわりつく。必死に、パーティクルーザーの船着場まで、うちの家族3人と柴尾英令 くんは雨のなか、いや台風のなかを、のろのろ歩く。 昨日、柴尾英令くんがおもしろいものを見つけていた。 この先の船着場から、園内を一周する「カナル・カフェ・クルーズ」と いうのが出ているそうなのだ。 コーヒーとケーキを食べながら、園内を回ってくれるというではないか。 大雨だろうと、このメンバーは間違いなく、コーヒーとケーキを選ぶ。 さっさと、このクルーズを予約。 欠航はないようだ。 午前10時30分。カナル・カフェ・クルーズがしずしずと動き出す。 こんな天気なので、船のお客さんは、4人。 うちの家族と、柴尾英令くんだけ。要するに貸切状態。 しかも船が動き出すと、雨は泣きはらした赤ん坊のように、ピタッと止 まった。 晴れたのだ。 ときどき恨めしくなるくらい、私の運は奇跡を呼ぶ。 たぶん、一昨日のスペースワールドで会った、加藤善久さんのせいだろ う。 船に乗るのを待っていたかのように、加藤善久さんが、わざわざ嫁の携 帯に、先日のお礼を言って来てくれたのだ。しばらくすると、今度は柴尾 英令くんの携帯が鳴る。加藤善久さんだ! 立派だなあ。月曜日に出勤してきて、いちばんに電話をかけてくれたの だろう。 こういう人がいる会社は応援したくなる。 私の脳裏にスイッチが入って、仕事モードが発動して、雨があがったの かも。 クルーズは、白鳥が泳ぐ脇を進む。 コーヒーとケーキを飲みながらのクルージングは最高に気持ちがいい! 気持ちよすぎて、この船の後から、犬かき泳法でついて行きたい気分に かられる。変かな。変だな。 私のかきは、早いと定評なんだよ。 アヒルの脇も、船は進む。 見上げればオランダ風の建物が並ぶ。 外国にうとい私は、ほとんどオランダを観て来たような気分。知ったか ぶりできそうなくらいの思い込みだ。 そういえば、このクルーズは「水門コース」といっていたけど、何のこ とだろう。おおっ! 跳ね橋が上がるぞ! これが水門かな。 跳ね橋の下を通れるだけでもうれしいぞ。 船長さんが「船のへさきで景色を見たらどうですか?」と勧めてくれる。 ちょうど4人分ぐらいのスペースがあった。 水門は、パナマ運河のようになっていて、跳ね橋を越えると、船は停止 して、水面が少しずつ上がって行く。向こうの水位と合わせるようだ。 なんだか豪華なイベントだ。 ぐんぐん天気がよくなって行く。 陽射しさえ見え隠れするようになって来た。 おお! もうひとつの水門が開いた。 すごい! すごい! 大村湾に出て行く趣向か。豪勢だなあ! タイタニックのへさきポーズができちゃうような開放感。 しばらくして、船が左旋回すると、ちょうどハウステンボスの全景が一 望できる。これは気持ちよすぎる。 パノラマ写真で撮りたかったなあ! 下船後、ショッピング街を歩く。 パサージュ館で、私にぴったりのブランドを発見! 何たって、名前が「べイ・ウォッチャー」! これは買うっきゃないでしょ。 デザインも好きだ。 勝手に「横浜ベイスターズ・ウォッチャー」。略して「べイ・ウォッチ ャー」と思い込む。店員さんは何でこのブランド名に狂喜しているのかわ からなかっただろうなあ。 うちの嫁と娘が、写真館でオランダ娘の格好をして、写真を撮ったり、 シーボルト出島蘭館で、シーボルト・ロボットを見たり、チーズ・フォン デュのお店「フリーシアン」で、チーズ・フォンデュを食べたり、高さ2 mほどのチョコレートの滝に、驚いたり、とても全部は回りきれない。 ハウステンボス、気に入った。 これは素晴らしい空間だよ。 問題は交通アクセスのみだろうなあ。 近隣から、ほいっ!と遊びに来れないもんなあ。 八幡のスペースワールドの隣りに、このハウステンボスがあったら、東 京ディズニーランドに匹敵するテーマパークになったとおもうなあ。 今度は、2〜3日、ゆっくり、のんびりするために来るべきだろうなあ。 でも、日本人には、ゆっくりするだけのためにお金は投じないってこと だろうなあ。 それにしても、旅はやっぱりいっしょに行く人によって、ずいぶんと印 象が変わるものだなあ。 梶野竜太郎くん、山本耕一夫妻、柴尾英令くん。 話題が豊富で、気配りができて、それでいて自分のペースを持っている 人との旅は楽チンで楽しい。 旅先で出会った人が素晴らしくても、その旅は一気に楽しい旅の印象に なってしまう。どこまで行っても、喜怒哀楽は人が作るってことかな。 午後2時。騙し絵でおなじみのエッシャーの3D映像を見る。 3Dメガネをかけて見る。 エッシャーの本質とはちょっとかけ離れたような映像だったけど、楽し めることは、楽しめた。 さて、ここで私はそろそろハウステンボスを後にしないといけない。 うちの家族と、柴尾英令くんは、今夜飛行機で帰るからいいけど、私は 陸路だ。 きょうじゅうに京都まで行くには、そろそろ電車に乗らないといけない。 午後2時30分。みんなと別れて、JRハウステンボス駅へ。 あれ? 発車時刻表に私が乗るはずのハウステンボス18号の文字が無 いぞ! 駅員さんにおもわず聞く。 「隣りの早岐(はいき)駅で乗っていただきます。佐世保に行ってもらっ て…ど うのこうの…」と、要領を得ない。 そのうちアナウンスが流れる。 今朝の豪雨のせいで、路線が一部分運休になっているそうだ。 でも何で南から、鈍行列車が来れるのに、おなじく南から来るはずのハ ウステンボス18号が運休なの? 運休といっておきながら、何で次の駅 から、ハウステンボス18号が出るの? 佐世保に行って…というのも、 意味がわからない。 佐世保に向ったら、博多より遠ざかってしまうではないか! 続々、ハウステンボス18号に乗るはずの人たちが集まって来て、次第 に混乱し始める。待合室にしかクーラーが無いので、待合室に乗客がごっ た返す。イスを立つと、ほかの人が座ってしまうので、トイレに行くこと もできない。席を立つのはイヤではないが、クーラーの無い場所で立ち続 けたら、私の場合、倒れる危険性がある。 待合室で、おっさんたちがスルメを食べ始めて、スルメの匂いが、待合 室に充満する。臭い。 そのうちクーラーまで利かなくなってきた。 午後3時26分。鈍行列車で、早岐(はいき)駅に向う。ちょっと心配。 午後3時18分に乗るはずだった特急が、8分遅れで発車して、隣りで乗 ることができても、博多駅で乗り換え予定ののぞみ号に間に合うとはおも えないのだが…。 午後3時37分。早岐(はいき)駅に着き、ホームの向かい側のハウス テンボス18号に乗り込む。 何だか車輌が多いなあとおもったら、例の「佐世保に行って…」の謎が 解けた。 佐世保に行ってではなく、佐世保から来た、特急みどりをこの早岐(は いき)駅で連結したということだったのだ。 これから博多まで、みどり+ハウステンボス18号の合体列車で向うと いうことのようだ。こういうレアなケースに遭遇できるのは、ちょっとう れしい。 最悪、博多にもう一泊するはめになっても、「河太郎」でまたイカが食 べられるやくらいにしかおもっていない私であった。 合体列車は快調に走り出した。 おっと、事態はもっと稀有な例に突入して行った。 なんと備前山口(びぜんやまぐち)駅で、長崎から来た、特急かもめ号 まで連結したのである。 ついにこの列車は「みどり+ハウステンボス+かもめ」と、何やらマク ロスだか、トランスフォーマーのような様相を呈して来た。 せっかくのこんなチャンスをデジカメしたかったのだが、デジカメは嫁 に持って帰ってもらってしまっていた。残念。 というわけで、「みどり+ハウステンボス+かもめ」は走る。 午後5時5分。博多駅に、5分遅れで到着。 これなら、のぞみ号への乗り換えにまったく支障をきたさない。 駅の売店で、柴尾英令くんに勧められた、東筑(とうちく)のかしわめ し弁当を探すが無い。仕方なく寿軒のかしわめし弁当を買う。 午後5時27分。のぞみ28号。 乗車後、さっそく、かしわめし弁当を食べる。 食べたあとは、気持ちよく寝る。 今回の旅は、楽しかったけど、豪雨あり、カンカン照りあり、過密スケ ジュールありで、ちょっと盛りだくさん過ぎた。 ただでさえ、スタートの京都で原因不明の震えが出たし、疲れていない わけがない。 午後8時9分。京都駅着。 午後8時30分。京都のマンションに到着。 このあと、何とお風呂に入ったあと、私は午後9時30分頃、どうやら TVを見ながら、そのままグーグー寝てしまったようなのだ。 しかも朝までずっと! だったら、あのまま、のぞみ28号で、東京まで戻ってしまえばよかっ たじゃないか! くそ〜〜〜! 見事なまでに、あとの祭り! しかも京都に寄った理由が、オードリー・ヘップバーンの『麗しのサブ リナ』と倉木麻衣のCDを東京に持ち帰るためだったりするから、よけい 情けなや!
-(c)2001/SAKUMA-