5月12日(土)

 午前5時。「ルネッサンスリゾートナルト」は実に快適。でも旅先だと、
どうもすぐ目が覚めてしまう。
 VAIOを起動させるも、インターネットのほうがどうにも繋がらない。
 調べたいことがたくさんあるのに困る。
 景色のいいところほど、PHSのアンテナが遠いようだ。

 午前7時30分。家族揃って、2Fのバイキングへ。
 さすが大塚製薬のお膝元。バイキング料理のなかに、ポカリスエットが
入っている。すだちジュースがあるのも、徳島ならでは。
 真下が海のベランダで、食事する。隣りにドイツからの団体客がいて、 まるでエーゲ海の会員制ホテルにいるような気分だ。 「この席いいですか?」と言いながら、ショーン・コネリーか、ロジャー・ ムーアが話しかけてきそうだ。♪パラッパラ〜〜〜! デンデケデデーン デッデンデケデデーンデッ、チャラ〜〜〜!  ただ本当に映画007シリーズなら、海のほうからミサイルが飛んでき そうだ。  午前8時30分。チェックアウト。タクシーを呼んでもらうが、昨日に 続いて来ない! またかいっ!  昨日ぎりぎりの時間で肝を冷やしたから、きょうは早めに頼んだのに!  きょうのは本格的に来ない。  ホテルの従業員は、「遅れてすみません」のひとことも言いに来ない。  このホテル、設備は少々古いものの、快適さからいったら、過去のホテ ルのベストテンに楽々入れるくらい素晴らしいのに、従業員の対応の悪さ …いや、思慮のなさは、高校の文化祭レベルだ。  ずっと待たされる。30分過ぎた。  予定していた徳島駅始発の電車には、完全に乗れない時間になってしま った。  徳島駅から吉野川に沿って走る徳島ブルーラインの旅を満喫しようと思 っていたのに! 「タクシーが来ないから、乗るはずだった電車に乗れなくなってしまった じゃないか!」 「……………」  黙るだけかよ! 陳謝する回路はないのか!  ないようだ…。  無言は無敵だよなあ。  せっかく次に来るときは、3日間ぐらい逗留しようと思っていたのにな あ。    もはや、JR鳴門駅から、高松に向う電車すらなくなってしまった。  鈍行を乗りついで行く方法もあるが、土居ちゃん(土居孝幸)と石崎仁 英くんが飛行機で到着する時間にとても間に合わなくなる。  やっと来たタクシーの運転手さんに、高松まで行ってもらうことにする。  こうなりゃ、鳴門―高松間の取材に切り替える。  運転手さんも理解してくれたのか、さっそく四方見(しほみ)の展望台 に案内してくれた。まるで絵画のような穏やかな湾に、無数の釣り舟が点 在する不思議な景観だ。
 青空だらけの海岸沿いを車はかろやかに走る。  脳内BGMは、ドゥービー・ブラザーズにしてみた。 「浜の磯焼き」といった心そそられる看板がいくつも目に入る。  国道沿いの露天市場もけっこう多い。  午前10時。おおっ! あの「羽根さぬき」の看板は! 『桃太郎電鉄』シリーズ、高松の高収入物件・和三盆(わさんぼう)工場 でおなじみの、三谷(みたに)製糖さんではないか!  デパートの物産展で、この三谷製糖さんの羽根さぬきを買い求め、いつ か現地に行ってみたいと思っていた三谷製糖さんだ! こんなところで偶 然出くわすことができるなんて! なんたる神の裁き! ピンチのあとに チャンスありだな、こりゃ!
 奥から年配の和服の女性が出てきて、和三盆糖の作り方について、じっ くり教えてくれて、お茶にきれいにお盆に盛られた和三盆糖までサービス で出してくれた。実に丁寧な応対だ。  たぶんオーナーだろう。  このお店は、山のほうにサトウキビ畑を持っていて、製品作りにこだわ っているそうだ。それも自慢ではなく、美味しくなるからそうしているだ けという肩の力の抜けた考え方に感動する。  この謙虚さが、味に出ているんだろうなあ。 「このお店は、JRでいうとどこがいちばん近いんですか?」 「鈍行だと、相生(あいおい)駅ですけど、急行が止まる引田(ひけた) 駅で降りて電話していただければ、お迎えに行きますよ!」  こういう接客を見習え! ルネッサンスリゾートナルト! 「物作りとは、人間性を磨くこと」。  これ以外に抜け道はないのか!と叫びたくなるくらい、人間性を磨くこ とが王道のようだ。  三谷製糖さんの女性の方は、けっきょく私たちがタクシーに乗って走り 出すまで、ずっと私たちを見送ってくれた。一流料亭も、お客さんが帰る ときは、路地を曲がるまで、お辞儀を続ける。  午前10時30分。白鳥(しろとり)町。運転手さんの情報によれば、 この白鳥町は、手袋の生産日本一として有名なんだそうだ。  現在全国の90%以上の手袋をこの町で作っているそうだ。  ゴルフ手袋、スキー手袋、ドライブ手袋、縫手袋・編手袋・革手袋をは じめ、手袋の技術を応用したバッグ、ニットウェア、ルームソックスなど を生産して、世界的に有名になっている町だそうだ。 知らなかったなあ。  いわれてみると、国道沿いの看板や標識は、手袋の形をしているものが 多い。
 四国は、日本の生産高の大半を占める産業の多いところだな。  丸亀のうちわ、今治のタオル、この白鳥町の手袋。  妙に産業内容に統一感がある。  白鳥町は、『桃太郎電鉄』のローカル版になら、登場させることができ そうだ。  恒例のシミュレーション。 【白鳥】 烏骨鶏農場・・・・・・・・・・・3000万円………20%・・農林 烏骨鶏農場・・・・・・・・・・・3000万円………20%・・農林 手袋工場・・・・・・・・・・・・・・・1億円………10%・・工業 手袋工場・・・・・・・・・・・・・・・1億円………10%・・工業 手袋工場・・・・・・・・・・・・・・・1億円………10%・・工業  白鳥町は「烏骨鶏(うこっけい)の里」とも呼ばれているようだ。  烏骨鶏は、ふつうの卵の10倍の値段で、ふつうの卵よりも小さくて、 食べても何だか得した気分が味わえない卵なのだが、滋養とかビタミンと かいろいろ豊富な卵ということで、近年脚光を浴びている。  物の本によれば、烏骨鶏の卵にはカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛 などのミネラルはもちろん、リノール酸、リノレン酸を多く含んでいます。 さらにEPA、DHAを他の卵と比較して多く含んでいます。 このEPA、DHAには、コレステロールや血圧の低下、脳、視神経系の維 持改善、頭を良くするといった働きが確認されていますとのこと。  卵って、コレステロール増加最大の敵だったんじゃないの? どうもこ ういう効能って、うそ臭く思えてしまうのは、私だけかな。いいことだけ じゃなくて、食べ過ぎるとどうなるかも教えてほしい。  午前11時。高松駅着。
 高松駅でコーヒーを飲もうと思って、前回の高松シリーズで、土居ちゃ ん(土居孝幸)の大学時代の同級生・酒井秀樹くんとお茶を飲んだ駅構内 の喫茶店に入ろうとしたら、どのお店もただいま引越し中!  そりゃそうか! 明日から高松駅は、新しい駅舎に生まれ変わるから、 従来の駅構内というのは、消えてしまうのであった。
 こういう景色が見たくて、今回高松まで来た。  平成3年から始められたという高松駅再開発。その完成形が明日お目見 えする。まさに21世紀に向けて、最初の大開発になる。そんな歴史的瞬 間に立ち会えるのである。メイキング・マニアの心をそそる。  午後12時。南新町のFMマリノ・サテライトスタジオで、土居ちゃん (土居孝幸)、石崎仁英くん、FMマリノの酒井秀樹くんと待ち合わせ。  さっそく、昼ご飯。  近くの「うどん棒」へ。
 冷天(ひやてん)うどんを食べる。うまいっ! 本当に不思議なことに、 讃岐うどんは、お店の数だけ味がある。まったくおなじ味のお店がないの では。  700軒全部食べる塗りつぶしの旅を始めようかな。  午後1時。高松駅からふたつめの駅の、鬼無(きなし)駅へ。  鬼が無いことから「鬼無桃太郎駅」と呼ばれている。
 この駅をひそかに「桃太郎電鉄」駅に変貌させてしまうことはできない かと、悪巧みを考えている。いまの段階では私が勝手に夢想しているだけ だが。  想像していたより、プラットホームが長い。  空き地も多い。乗客もけっこういる。  ふむふむ。基本的に1時間に1本の電車。たまに2本走る。4両編成の 電車が来た。4両はちょっと近代的すぎるなあ。  いいロケーションだ。    午後1時14分。鬼無駅から、高松駅まで鈍行に乗る。  駅前のサンポート高松エリアでは、明日の開業に合わせて、イベントを 開催している。おっと、「恐るべきさぬきうどん」のブースまで出ている。  えっ! 連絡船うどん? 連絡船で売っていた讃岐うどんが食べられる ようだ。惜しいなあ。  さっきうどんを食べたばかりだからなあ。
 おいおい。土居ちゃんが連絡船うどんの行列に並んでるよ! 「食べるのか、土居ちゃん!」 「うん。美味しそうだよ!」  パワフルだなあ、土居ちゃんは!  嫁も食べるというので、ちょっとつまみ食い。おお! なるほど絶品と いわれた連絡船の甲板で売っていた讃岐うどんの味がする。竹ちくわの天 ぷらが、おいひいっぞ! まいりました!
 ついでに私も「ノリといつまでも」という、珍奇なアイスクリームを買 って来て、食す。アイスクリームとして味はよかった。何も海苔など入れ なくてもよかったではないかと思うが、「海苔が入ってるの?」と思った から、買ったのだから、購買欲の点ではいいことなのだろう。プレーンな アイスも一品あればいいのに。  午後3時04分。FMマリノの番組にゲスト出演。
 もはやおなじみ、石崎仁英くん搭載のキングボンビーが、南新町商店街 を疾走する! 石崎仁英くんが奮闘しているのをいいことに、『桃太郎電 鉄X(仮)』の内容を土居ちゃんとベラベラしゃべりまくる! はっはっは。  わざわざきょうから来てくれた、大阪のさくまにあ・高木明光くんには、 やばい話を全部聞かれてしまったなあ! サービス! サービス!
じゃんけんゲームの賞品(携帯カバー)に桃太郎を描く土居ちゃん
 おおっ! 土居ちゃん(土居孝幸)がいなくなったなあ!と思ったら、 お店の隅っこで、女の子の背中に直接、桃太郎のサインをしているではな いか! むむむっ! これは衝撃スクープ写真だぞっ! かわいい子相手 に、土居ちゃんの顔がにやけていると思わないかい?
 午後4時。全日空クレメントホテル高松へ。  なんとこのホテルのオープンは、5月24日。まだオープン前のホテル に泊めていただけるのだ。この事態に、うちの娘が「さくちゃんって、い ったい何者なの?」と驚く。何者だろう?
 こういう日テレ『スーパーテレビ』で特集されるような、開店前のあわ ただしい雰囲気を見ることができるのは、メイキング・マニアとして、う れしいかぎり。  今回は見るだけでなく、参加することもできるのだ。  真新しい建物の14階に通される。  接客係の女性も、ただいま研修中で、緊張しているのがありありとして いて、新鮮。こういう雰囲気を味わいたかったのよ、メイキング・マニア としては。
 午後5時30分。ホテルロビーで、ついに「桃太郎電鉄人形焼」を試食 する。  前回高松に来たときに、私たちが強引に、白あんから、カスタード味に 変えてしまったので、完成がぎりぎりまで伸びてしまった。
 全員緊張の面持ちで食す。 「うまい!」 「これはいいぞ!」 「こ、これは1箱全部この場で食べられそうだなあ!」  よかった、よかった!   もしまあまあ程度の味だったら、どういうお世辞をいわなきゃいけない か必死に考えなきゃいけなくなるところだった。  楽だあ! これなら「ぷよまん」と対決できるかもしれないぞ。ゲーム ショウでも売ってほしいなあ。
ホテルのハリカさんの商品棚
 午後7時30分。酒井秀樹くん、石崎仁英くん、私、嫁の4人で、瓦町 のお寿司屋さん「恵介」へ。  瀬戸内海のせいもあるけど、お寿司好きの酒井秀樹くんが選んでくれた お店だけに、実に新鮮で美味しい!  すだちを垂らした青柳が美味。さよりもいい。  思い切り食べ過ぎる。ふうっ。
 午後9時30分。さすがにまだホテルはオープン前なので、冷蔵庫に飲 み物などが入っていないので、みんなでコンビニに寄って、お水など調達 する。  ここで、酒井秀樹くんが、さぬきうどんの名著『恐るべきさぬきうどん』 の著者・麺通団のひとり安藤芳樹さんと、ばったり。  ちょうどお子さんが『桃太郎電鉄』のファンだというので、ご挨拶。  少しずつ高松に知り合いが増えていくのが楽しい。  まるでRPGで新しい町にたどり着いたみたいだ。
 午後10時。ホテルに戻るも、本来まだ正しい宿泊客ではないので、守 衛室で、入館に思い切り手間取る。  そりゃあそうだろう。出入り業者でも、建設業者でもない。入館証もも らっていない。
 地下から、スタッフの部屋を通り、ようやく1階のロビーに出て、部屋 に戻る。ちょっと映画『ダイハード』を思い出す。  広いお風呂が快適。  部屋でTVをつけておくと、このお風呂でその音声を聞くことができる。 これならニュース番組のときなど、お風呂に入りながら聞けるから、時間 が短縮できていいなあ。
 明日はいよいよ、新高松駅のオープン。そして「桃太郎電鉄人形焼」の 発売日だ! 高松市郊外の「ゆめタウン」という巨大スーパーでは、人形 焼の実演販売もあるそうだ。その宣伝チラシが、地元新聞に13万枚折り 込まれたそうだ。なんだか本格的にすごいことになって来た。
 

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