4月25日(水) ただでさえ長い、長いといわれる私の日記だが、きょう1日のことを克 明に書いたら、書き下ろし単行本1冊分になってしまいそうである。 なるべく手短に書きたいが、どうなることやら…。 午前5時。けっきょく昨夜、『桃太郎02(仮)』のメッセージ直しは、 完成しなかった。そのせいで、こうして旅先で、2日連続5時起きという 非常事態に陥っている。 午前7時すぎ。やったー! 奇跡的に『桃太郎02(仮)』のメッセー ジ直しが、完成する。ミラクル〜! さっそくゲーム・ディレクターの國 政修くんに送信して、フジ『とくダネ』を耳で聞きながら、まどろむ。 30分ほど仮眠。 小泉純一郎さんが、一発当選で、自民党総裁になっていた。 これからは変人の時代という風潮になってほしいなあ。ハドソン桃太郎 事業部の石崎仁英くんが、3%ほど小泉純一郎さんに似ているので、ぜひ 宴会芸では、顔真似をしてもらいたいものだ。薄い似かただ。 午前9時。ホテルをチェック・アウト。 商店街のアーケードを歩く。 さすがに市内に700軒のうどん屋さんがあるといわれるだけあって、 うどん屋さんだらけだ。しかもどのお店の看板にも「セルフ」という文字 が入っている。セルフ、セルフ、セルフ 文字通り、セルフ・サービスのお店で、お客さんは、お店に入ったら、 お盆を持って、トッピングのお惣菜やら、天ぷらを選んで、最後にお店の 人に、「1玉!」とか、「2玉!」といって、うどんを入れてもらう。そ ういう形式だ。 だから、うどんとお汁だけの、かけうどんを注文しようものなら、10 0円という安さなのである。100円である。冗談ではなく、100円だ。 東京の駅そばだって、350円くらいはする。 高松は、うどんの値段が安いことが、完全定着しているので、ご当地ラ ーメンの高松ラーメンという言葉を聞かないどころか、商店街にほとんど ラーメン屋さんが見当たらない。 いや、ラーメンは1杯500円以上するから、トッピングを乗せて、う どんを2玉にしても、500円に満たないセルフのうどんのせいで、流行 しないのだそうだ。 午前9時30分。喫茶店で、軽くモーニング・セット。 午前10時。タクシーで、2年ほど前に、すぎやまこういち先生ご夫妻 といしょに行った、志度町の「平賀源内遺品館」まで再び行く。 車中、運転手さんに、昨夜感じた高松市内の大繁栄について取材する。 「ええ、たしかに高松のアーケード商店街は、日本一の長さだといわれて いるし、人通りも多いですけど、誰も商品買わんのですよ。みんな歩いて いるだけ!」 「えっ!? そ、そうなんだ!」 「お客さんがいうてた、コトデンそごうね。この4月に潰れましたわ!」 「うそっ! あんなに新しいし、きれいじゃないですか!」 「開店して、4年目ですわ! かなわんですよ!」 「むむむっ。じゃあ、あの商店街の大繁栄は…」 「冷えとる! 冷えとる!」 なんでも香川県は、貯蓄率日本一とかで、とにかくお金をつかわないの が当たり前なのだそうだ。だから商店街に人がたくさんいても、お金をつ かわないし、讃岐うどんは、500円越えたら、誰も食べないから、ラー メン屋が繁盛しない。ましてや、そごうデパートで、高級品など買うわけ がないのだそうだ。ドトール・コーヒーが最近進出して来たらしいけど、 値段が高いと不評だそうだ。スターバックス・コーヒーにぜひ進出しても らって、どのくらい苦戦するのか見てみたいなあ。う〜む。恐るべし、高松! さて、再び訪れた「平賀源内遺品館」。 あれからちょっと新しくなったというので、チェックのために来た。 で、展示物が増えたわけでもないし…、「遺品館のほうが…」といわれて、 自宅のような母屋に行けば、以前、平賀源内さん関係の本を買った玄関が ちょっときれいになって、畳が新しく張り替えられていた。まさか、この 畳が新しくなったのが、改装箇所? どうもそうらしい。負けた。受付けのおばさんに、漫画『風雲児たち』(みなもと太郎・潮出版)を 置いたほうがいいと勧める。おばさん、この家の人なのに、『風雲児たち』 の存在をまったく知らない。前にも感じたけど、商売っ気がまったくない。 商売っ気がないのも、香川県の県民性らしい。 「漫画を読んで、ここに来る人も多いと思いますし、全30巻がいまはな かなか手に入らないので、ここで売ってると、それをめあてに買いに来る 人もいると思うので、いいですよ」 「はい」。 おばちゃん、「はい」と言いながら「その漫画何という名前ですの?」 と聞いてこなかった。ダメだ、こりゃ。 私は実は、『風雲児たち』のアニメ化という下心もあって来たのだが、 みごとな初球見送りであった。 今回の収穫は、展示品のなかに平賀源内さんが、砂糖の製造法も広めた ことを見つけたがこと。 『桃太郎電鉄』の高松駅の物件で、「和三盆(わさんぼん)工場」という のがあるのを知っている人も多いと思うが、この「和三盆」は砂糖なので ある。『美味しんぼ』でも、最高級の和三盆糖という名称で必ず登場する。 ひょっとしてこの「和三盆」も、平賀源内さんの影響で、今日に伝わっ たのでは? おばちゃんに聞くと、「はい、そうですね」とのこと。 このおばちゃんの「はい、そうですね」はちょっと怪しい。 その証拠に「和三盆を作ってる大川郡には、和三盆のお土産を売ってる お店って多いんですか?」と聞いても、「はあ…」である。 無駄なので、次に行く。 タクシーの運転手さんが「郷屋敷」という、江戸時代の与力を務めた家 に案内してくれる。料理屋さんになっていて、日本庭園が美しい。ただこ んな畑のなかの一軒家に近いお店が、どうやって商売を続けて行けるのか、 ちょっと心配。 高松は、御影石の産地として名高いそうである。 おっと、それは『桃太郎電鉄』で、「御影石工場」という名前で登場さ せられるかもしれないので、ぜひ案内してほしいと頼む。 なるほど、道の両側が、石材店だらけの地域があって、おもしろい。 世界的に有名な、イサム・ノグチさんの庭園美術館というのもあったが、 見学は予約制だった。残念。 「あっ、ちょっと運転手さん、あそこで停めてください!」 なんと、「石の市場」という看板が立っているではないか。しかも海鮮 市場ほどの大きさのお店だ。これは取材せねば。「石の市場」とは、また 面妖な。 なんのことはない。墓石やら、石碑、庭石、灯篭の展示場であった。 大きな石の数々をを置いているので、それを売る建物も大きくなるのは 当たり前で、それで海鮮市場ほどの大きさの建物と広さになっただけである。 しかし、どの庭石や灯篭の値段が、想像したより安い。これもまた香川 の値段に対して厳しい県民性かと思われたが、お店の人に「これは輸送費 抜きの値段ですから…」といわれる。なるほど、大きい石碑なら、クレー ン車も必要だ。 ガメラの墓石があった。仮面ライダーも。ミッキーマウスもある。こう いう墓石は、どんな人が注文するのだろうか? 私のお墓もキングボンビ ーにしようかな。ベイスターズと彫ってもらうのもいいなあ。 午後12時。高松市内に戻り、東急インで、東京から飛行機でやってき た土居ちゃん(土居孝幸)、ハドソン桃太郎事業部の石崎仁英くんと待ち 合わせ。 FMマリノの酒井秀樹くん、瀬戸内海放送の大隅勝利さんも到着。 いよいよ、今回の旅のメインディッシュが、これから始まる。 話は、私の3月2日の日記に遡る。再録してみよう。 3月2日の日記より。 午後2時。土居ちゃん(土居孝幸)の学生時代の友人であるSさんは、 私も一度会ったことのある人で、きょうはSさんからちょっとした頼 み事があるので、ひさしぶりに会いましょうというラフな話だったの だ。 ところが、これがとんでもなく、大規模プロジェクトの話だったので、 びっくりしてしまった。 とても、ここで書けるような内容ではない。 もしもこの話が本当に進むようなら、私の悲願が叶うような話である。 そのぐらい夢のような話なので、具体的に書くと、幸せが消えて行く ような気がするので、きょうのところは何も言えない。 でも近いうちに、おそらくこの日記で公開できるようになると思う。 『桃太郎電鉄』がらみの話である。 ここに登場する「Sさん」が、酒井秀樹くんである。 ちなみに、酒井秀樹くんは、土居ちゃん(土居孝幸)の大学時代の漫画 研究会の同級生だ。 でもって、このところちょこちょこ日記に登場する、『桃太郎電鉄人形 焼』のプロジェクトが、この話なのである。 かいつまんでいうと、来月5月13日に、高松駅が全面改装されて、駅 一帯が再開発される。フェリー乗り場も高松駅の近くに移転する。 さらに5月24日から、駅前に20階建ての巨大ホテル・全日空ホテル クレメント高松がオープンする。 ここでやっと話が繋がる。 なんとこの新高松駅再開発の一貫で、JR四国と『桃太郎電鉄』がタイ アップして、『桃太郎電鉄人形焼』を売り出すことになったのである。 もともと岡山と高松に、桃太郎の伝説本家争いというのが長いこと続い ていて、岡山は、桃太郎通りを作り、高松には古くから、女木島(鬼が島) がある。鬼無(きなし)という町には、桃太郎神社もあるそうだ。 その岡山と高松が、いつまでも桃太郎本家争いをせずに、互いに手を取 り合って、瀬戸内を「桃太郎圏」と位置付けて、桃太郎を広めようという ことになったのだ。 で、JR四国としても、桃太郎で何かしなければと、探し始めたときに、 浮上してきたのが、『桃太郎電鉄』だったわけだ。JR四国のおえらいさ んたちは、社員のみなさんに「桃太郎電鉄というのがある」と言われて、 そんな電鉄会社は知らないぞといっていたらしい。聞けば、聞くほど、知 名度が高くて、びっくりしたそうだ。『桃太郎電鉄』も今年の年末で、 15年目である、『桃太郎電鉄』で育った人たちが、社会人になり始めた ようで、こういう企業での会議の席でも名前が挙がる時代に入ってきたよ うだ。 こうやって、仕事って広がっていくものなんだな。 というわけで、恐ろしいことに、このあと夜には、JR四国の社長さん とも会うことになってしまうのであった。 言ってみれば、『オールスターものまね歌合戦』に出場したお笑い芸人 が、1コーラス目を歌い終わったら、本物が出てきてしまったようなもの だ。まさか『桃太郎電鉄』という架空の電鉄会社のゲームを作っていたら、 本家のJRさんが登場するとは思わなかった。鉄道ファンだって、JRの 社長さんにはなかなか会えないぞ。 そんな大きな話に発展しているので、書きたい話題だらけで、きょう1 日が長いと、冒頭で言ったわけだ。すでにここまでで、いつもの日記の3 倍ほど書いている。 午後12時30分。酒井くん、大隅さん、土居ちゃん、石崎仁英くんの 5人で、讃岐うどんの「わら家」へ。2年前、すぎやまこういち先生ご夫 妻、「プティポワン」の北岡さんご夫妻といっしょに来た場所だ。 讃岐うどんの名著『恐るべきさぬきうどん』では、かつて「西の長田 (ながた)、東のわら家」と、うまいうどんの両横綱のようにいわれてき たとある。 ここのうどんの話をこまかく書くと、また長くなるので、先へ。 午後2時。全日空ホテルクレメント高松へ。 オープン前の巨大ホテルを見ることができるなんて、楽屋マニアの私に はこたえられないうれしさだ。なんとロビーに入るのに、スリッパにはき かえる。体育館の何倍もあるような巨大ホテルのなかを、すたすたスリッ パで歩くのは、けっこう楽しい。 瀬戸内海を一望できる眺望は、みごとだ。 さて、ここで「桃太郎電鉄人形焼」の最終打ち合わせ。 しかもこの最終打ち合わせを、瀬戸内海放送が取材して、ニュースとし て、今夜報道するという。私はバラエティ番組に出演することはあっても、 ニュースで流されることは、少ない男である。 さすが、JR四国、全日空ホテルといったビッグ・ネームが登場すると、 次々に大事(おおごと)になって行く。 名刺交換が始まるも、あっというまに、こっちの名刺が切れる。まさか こんなにたくさんの人に会うことになる思っていなかった。 きょう、名刺をいただいた方々を紹介。 ・梅原利之さん。JR四国社長。 ・宮本盛治さん。全日空ホテルクレメント高松総支配人。 ・一色努さん。全日空ホテルクレメント高松副支配人。 ・楢崎千賀子さん。全日空ホテルクレメント高松・営業企画室調査役。 ・後藤晃さん。全日空ホテルクレメント高松営業企画室室長。 ・松村正行さん。全日空ホテルクレメント高松ギフトサロン統括マネージャー。 ・間島賢治さん。株式会社オリコ社長。 ・加藤宏一郎さん。瀬戸内海放送社長。 ・加畑公一郎さん。瀬戸内海放送報道制作局長。 ・後藤祝さん。瀬戸内海放送報道制作センター・プロデューサー。 ・武田尚民さん。瀬戸内海放送営業推進室長。 ・下山英治さん。瀬戸内海放送営業部。 ・大谷卓司さん。FMマリノ営業課長。 ・大西卓さん。エーユー高松支店。 ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ。こうやって名刺を見ながら、転載して ると、とんでもない人たちに会ってたのが、今ごろになって、ひしひしと 伝わってくるじゃないの! はっはっは。ももたろ社長とか、きんたろ社 長じゃなくて、本当の社長さんだらけだもんなあ。 まったく私も土居ちゃんも、石崎仁英くんも普段着のままで来るなよなあ、 というような人たちばかりであった。作家でよかった。サラリーマンなら、 噴飯物だよ。あっ、石崎仁英くんは、サラリーマンだった。噴飯マンだ! ニュース番組用の会議風景を撮影開始。 首脳会談 まじめそうに会議してる姿が映し出されたけど、会議の内容は「人形焼」。 しかも人形焼のあんこを、何にするかでもめていた。 「人形焼」のあんこを、白あんにするというのだ。 白あんは、お子様たちが食べないでしょう! でも試作品を作ったら、味は白あんがいちばん美味しかったのだそうだ。 そうはいっても、お土産品は、まず買いたくなるものじゃないといけない と思う。 といったやりとりがあって、けっきょくカスタード味に決定する。 ぜひとも『桃太郎電鉄』で、キングボンビーにひどい目に会わされた人 は、キングボンビーの人形焼を頭からガブッと食べていただきたいもので ある。わかるかな? 午後3時30分。鬼無町の桃太郎神社に場所を移して、またまたニュー ス番組の撮影。こんなにちゃんとした桃太郎神社があるとは知らなかった。 一応、『桃太郎伝説』の作者として、桃太郎関係の本は、100冊以上読 んだけど、この神社の存在は知らなかったなあ。 愛知県犬山の桃太郎神社には行ったことあったけど、こっちのほうが大 きいし、ちゃんとしてた。もったいないなあ。宣伝がめっぽう下手な県民 性ならではだ。午後4時30分。瀬戸内海放送で、ひと休み。 なんだか、きょう1日だけは、売れっ子タレントのようである。 あまり寝ていないので、へばってきた。 よかった。『桃太郎02(仮)』のメッセージ直しが完成していて。 午後5時。今度は、高松の商店街にある、FMマリノのサテライトスタ ジオの番組に出演。 キングボンビーの着ぐるみに入った石崎仁英くんが、商店街を疾走する。 赤ん坊が泣き叫び、女子高校生たちが、キャーキャーいう。 午後6時30分。再び、瀬戸内海放送。 今度はテレビ朝日『スーパーJチャンネル』のローカル放送枠に、生放 送出演だそうだ。すでにきょうの全日空ホテルクレメント高松での会議の 様子、桃太郎神社での取材が、ニュース素材になっていて、それを見なが らしゃべることに。 しかしニュース番組。私と土居ちゃんが出演する直前の画像は、きょう のプロ野球各地の途中経過。広4―1横…。 横浜ベイスターズがまた負けてるじゃないの! そんな生出演の瞬間に、 こんなもの見せないでくれいっ! 午後7時30分。市内の割烹料理屋さん「歓中店」へ。 「歓中店」というから、中華料理屋さんだと思ったら、「歓(よろこび)」 というお店で「中店」は、渋谷店、新宿店といった、支店名の部分。 ここで、JR四国社長・梅原さんと、瀬戸内海放送社長・加藤さんを交 えて、懇親会。 JR四国に、桃太郎列車を走らせる計画やら、桃太郎人形焼をキヨスク で発売する話やら、桃太郎サミットの開催の話やら、桃太郎人形焼完成ま での特別番組の制作やら、お酒の席の上での座興話と思ったら、どうもど れもこれも本気で進んでいるそうだ。 けっきょく、この席で、5月13日の新高松駅オープンに再び、土居ち ゃんと来て、サイン会をやるという話がほぼ決定になってしまった。キン グボンビーの着ぐるみもね。 もしこのサイン会に来たいという人は、5月12日、13日の土・日を 予定しておいてください。高松で会いましょう。両日ともどこかでイベン トに参加する模様。岡山から1時間。意外と高松は近いよ。 午後9時30分。最後は、酒井くん、土居ちゃん、石崎くんの4人で、 スナックに寄って、東急インへ。 長い1日で、ございましたよ〜! いやあ。自分に対して「おつかれさま〜!」。 この日記は、とうとう午前3時に起きて、書いていたりする。 興奮連続の1日だっただけに、寝付けなかった。 明日も忙しいのかな?
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