4月12日(木) 午前11時。嫁と築地のハドソンへ。 きょうは『桃太郎02(仮)』の音楽チェック。 桃太郎チームの音楽スタッフが勢ぞろい。 サザンオールスターズのベーシスト・カズ坊(関口和之)。池毅(いけ たけし)さん。宮路一昭くん。ティーズ・ミュージックの角岡義行さん。 ゲーム・ディレクターの國政修くん。わざわざ午前中から集まったのは、なんと全65曲の音色を整える作業 をするため。1曲ずつ聴いて、ベースの音色を変えてほしいとか、リバー ブをもっと深くといった細かい指定をして行く。 いったい何時に終わるんだろう。午後10時くらいかなあ? 作曲のダメ出しのときは、私が全曲にあああでもない、こうでもないと 注文をつけていくのだが、きょうのように音色の段階になると、ほぼ作曲 家のみなさんにお任せなので、珍しくハドソンの会議室で、気分だけはゆ ったり。 午後2時。土居ちゃん(土居孝幸)が到着。 2日前に、電話で「土居ちゃん、京都で決定したキャラなんだけどさあ。 ほかのデザイン浮かんじゃったんで、変えてくれないかなあ!」と無理な 注文を出していたのだ。 その打ち合わせを始める。 土居ちゃんも、MacG4のノート・タイプを持って来て、その場でデ ザインを直してくれる。 「へ〜、ついに土居ちゃん、その場で絵を直しちゃうんだ。すごい時代に なったもんだねえ!」 「うん。きょうはペン・タブレットも持って来たからね!」 「うん。土居ちゃん。そうそう。そんな感じ」 「さくまサン、色は岩っぽい、灰色がいいのかなあ?」 「う〜ん。思い切って、クリーム色みたいのにできないかなあ! このキ ャラって、プリンみたいだし!」 「こんな感じ?」 「そうそう。それ、それ! 目の前で直せるのは、便利だなあ! 國政く ん、出来たよ! 完成! 完成!」 「じゃあ、土居さん! それをボクのほうに送ってください!」 「あれ? どうやって送るんだ? まだG4で送る方法、知らないよ!」 「これだよ! 土居ちゃん、あいかわらず笑わせるなあ!」 音楽チェックのほうは、ティーズ・ミュージックの角岡義行さんががん ばってくれたせいもあるんだろうけど、次々にOKサインが出て、順調! 順調! 唯一、手間がかかったのは、おなじみ「ましらのテーマ」。 あの音痴っぱずれの曲なんだけど、どうも最近演奏が上手くなって来て しまっている。はっはっは。それをもう一度音痴っぱずれの音に戻すのに 苦しんだ。変な悩み方。 「ましらのテーマ」以外は、順調そのものなので、午後4時を過ぎたあた りで、音楽チェックは終了。 「うひょ〜! こんな早く終わると思ってなかったあ!」 「早かったですねえ!」 「いいことだ!」 引き続き、『桃太郎電鉄X(仮)』の新曲を依頼する。 『桃太郎電鉄X(仮)』も、『桃太郎02(仮)』に続き、音楽スタッフ は、関口和之+池毅+宮路一昭の表記の豪華3人勢ぞろいで、作曲しても らうことになった。ふっふっふ。豪華でっせ、ホントに。 午後6時。嫁が本で見つけた穴子寿司の美味しそうなお寿司屋さんが銀 座にあるというので、カズ坊(関口和之)と私と嫁の3人で行く。 このお店、その本には、電話番号は載っていたものの、住所をわざと載 せていないという変わったお店。別に一見さんお断りのお店というわけで はなさそう。 というわけで、銀座の「福喜鮨」というところへ行く。 こまかい場所は、お店の方針に従って、きょうは書かない。 お寿司屋さんというのは、うちの場合、「おけいすし」、「喜(き)寿司」、 「鮨金」の先発3本柱がしっかりしている上に、大リーグ級の「兼定(か ねさだ)」まで控えていて、最近すっかりリリーフ・エースにのしあがっ た、築地の「太老樹(たろうき)」までいるので、はっきり言って、これ 以上ピッチング・スタッフはいらないというくらい充実している。 だからこのレギュラー陣に割り込むのは、並大抵ではない。 先日アリtoキリギリスの石井正則くんが、TVに出ていて、銀座「九 兵衛」でお寿司を食べていた。あのお店は日本有数の老舗のお寿司屋さん なのだ。あのお寿司屋さんが、うちのお寿司先発陣に入っていない。それ くらいうちのお寿司スタッフはすごいのだ。 そういう状況のなかで、「福喜鮨」のお寿司を食べる。 困った…。非常に困った…。 この「困った…」という表現は、我が家のグルメ評価のなかでは、最大 級の賛辞なのである。 「困った…。美味しい。美味しいということは、ここにこれから何度も来 ないといけないから、困った…」という「困った…」なのである。 豪速球の「鮨金」。豪速球+変化球の「喜(き)寿司」。多彩な変化球 の「おけいすし」のどれとも違う、いわば変則投法の味なのである。 巨人の岡島投手のように、腕が地面すれすれまで落ちてから、腕を振っ て、どろ〜〜〜んと大きく曲がるカーブのような味といったらいいのかな あ。ダイナミックな味だし、キレもいい。 鯵なんか、紫蘇(しそ)を巻き込んで、逆海苔巻風にして出てきたりす る。白身魚はどれも昆布でしめたような風味がうっすら加わっている。蛸 はやわらかく煮込んであって、その蛸をスライス状に切って開き、あいだ にご飯をはさみ込む。変わった握り方でしょ。 自慢の穴子寿司の美味しさといったらない! アリtoキリギリス石井正則くんの奥さん・穴子マニアの石井愛(かな) さんにさっそく教えてあげなきゃ! 「詰めが甘い!」という言い方があるけど、お寿司の場合「ツメが甘い!」 という言葉は、絶賛の言葉だ。お寿司で、「ツメ」というと、あの穴子に つける甘いタレのことだからね。 とにかくこんな美味しい「ツメ」は、いまだかつてない。 せっかく先週京都で、筍を食べて重量オーバーしてしまった体重を、1 週間がかりで減らしたのに、絶対また増えてしまったぞ。もうお腹パンパ ンになるまで食べてしまったからなあ! ああ! 困った。 間違いなく「福喜(ふっき)鮨」は、先発メンバーに加わってしまうぞ。 どのお店をローテーションから外せばいいんだよう! 贅沢な悩みだよ〜! 食後、カズ坊(関口和之)も苦しそうなので、喫茶店でちょっと休む。 あまりのお寿司の美味しさに、まったく仕事の話ができなかったので、 喫茶店でようやくカズ坊(関口和之)と仕事の打ち合わせ。 午後8時。帰宅。 テレビ神奈川で、横浜ベイスターズのお粗末な守備を見て、呆然とする。 1日で再び、最下位に逆戻りか。 今年の横浜ベイスターズは前途多難ですなあ。 でもファンであるかぎり応援し続けますぞ。勝てなくなったらファンを やめたり、選手に罵声を浴びせるのは、いちばんみっともないことだから ね。 ああ! 敗戦濃厚なままTV中継が終了してしまった。 過渡期だ。いまの横浜ベイスターズは、過渡期なんだ。常勝球団になる ための過渡期なのだ!と、自己暗示をかけて、きょうもDVDを見る予定。
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