3月2日(金)

 午前中、『伊吹童子(仮)』の仕様書作り。
 こんなに心躍らせながらゲームを作っているのは、ひさしぶりだ。

 しかし、こういうときにかぎって、メーカーはゲーム化に難色を示
したりするものだ。『桃太郎電鉄』のときもそうだった。『ジャンプ
放送局』の立ち上げもそうだった。
 反対者が多いものほど、ヒットするものだ。
 誰もが、よいと思えるものは、凡庸な人たちが想像できる範囲内の
奥行きのない作品だからだろう。たとえば『ドラクエ』に似てるから。
『FF』に似てるから。
『ポケモン』に似ているから。似ていれば、想像するのは、簡単だか
らね。

 午前11時30分。嫁と、銀座の讃岐うどん屋さん「さか田」へ。
 毎度おなじみ、生しょうゆうどんを食す。

 食後、東銀座の「茜屋珈琲」。
 銀座の珈琲屋さんは、ここが定番になりそうだ。

 午後1時。築地のハドソンへ。
 まずは、ソフトバンクの雑誌『ゲーム・スポット』の取材を受ける。
 ゲームボーイアドバンス用の『桃太郎まつり』について。
 取材する人たちが、『ジャンプ放送局』世代なので、途中から、貧 乏神の話になって、ついつい榎本47歳の話に脱線してしまった。  でも『ジャンプ放送局』の話は、私も大好きだから、楽しい取材で あった。  午後2時。土居ちゃん(土居孝幸)の学生時代の友人であるSさん は、私も一度会ったことのある人で、きょうはSさんからちょっとし た頼み事があるので、ひさしぶりに会いましょうというラフな話だっ たのだ。  ところが、これがとんでもなく、大規模プロジェクトの話だったの で、びっくりしてしまった。
 とても、ここで書けるような内容ではない。  もしもこの話が本当に進むようなら、私の悲願が叶うような話である。  そのぐらい夢のような話なので、具体的に書くと、幸せが消えて行 くような気がするので、きょうのところは何も言えない。 でも近いうちに、おそらくこの日記で公開できるようになると思う。 『桃太郎電鉄』がらみの話である。  午後3時。ゲーム・ディレクターの國政修くんと、『桃太郎電鉄X (仮)』の打ち合わせ。昨日、札幌から帰ってきた國政修くんが、ど っさり宿題をかかえて来た。  ひとつひとつの問題点を塗りつぶして行く。  相当、書き直しが多いことを覚悟していたのだが、多いのは、私が 書いた仕様書の演出を、もっと派手なものにしていいでしょうか?と いう打診ばかりであった。 「それは、大いにやってください!」  さらに、前回よりも、イベントの細部に対する質問だったり、要望 だったりするので、確実にゲーム作りが進んでいるのが、実感できて、 うれしい。  午後4時。柴尾英令くんが来て、数日前の柴尾英令くんの日記にあ った、マップ作りで、目がしょぼしょぼの原因になったマップを見る。 あの終日目がしょぼしょぼは、桃太郎チームのお仕事だったわけだ。  おお! きれいなマップだなあ。  この柴尾英令くんが作製して来たマップは、中座した『桃太郎大全 集(仮)』の代わりに立ち上がるゲームになるはずのものだ。
 一度、近いうちにハドソン桃太郎事業部の人たちと、今後どの順番 でゲームを作って行くのかを正式に決めないと、ちょっと本当にやばい。  私が作っている『伊吹童子(仮)』も、柴尾英令くんが書いてきた マップのゲームも、まだハドソンと契約していないものなのだ。    午後6時。土居ちゃん(土居孝幸)が歯痛のために、リタイア。 『桃太郎電鉄X(仮)』の九州マップ部分の大きいポカを解消して、 本日分のお仕事は、終了。  いつもながら、怒涛の勢いのわりに、緻密な作業の連続である。  来週以降のスケジュールを決めて、お開き。  午後8時。私と嫁と、柴尾英令くんの3人は、麻布十番へ。  お目当てのお店が、満員で入店を断わられる。 「たらふくまんま」に電話するも、ここも満員。  金曜日の夜だったんだよな、きょうは。  麻布十番に来たのだからと、声をかけた菅沼真理(通称:すがねま チャン)さんが合流して、初めてのお店「猿のしっぽ」に入る。  基本的に、焼き鳥屋さんなのかな? 紅虎餃子房(べにとらぎょう ざぼう)が、焼き鳥屋さんを経営したら、こんなお店を作りそうだな といった感じのおしゃれなお店。  いきなり、細かく刻んだ大根の上に、醤油づけの生卵が乗っている 突き出しが出て、これがうまいこと、うまいこと。  初めて入ったお店の、最初に出てくる料理って、重要だよなあ。  ゲームの最初の30分が、重要ってなもんだ。
 きりたんぽ鍋が出る。これまたうまい。  こんな美味しいものは、つい食べ過ぎてしまうぞ、どうしよう!  おっと、きょうは柴尾英令くんがいっしょだ。  柴尾英令くんに、たくさん食べさせて、過食を回避しよう。  土居ちゃん直伝の「柴尾くん、きりたんぽ、美味しいよ!」を繰り 返せば、日本酒でほろ酔いかげんになった、柴尾英令くんのチョップ スティックスが、蝶のように舞い、蜂のように刺す。  菅沼真理(通称:すがねまチャン)さんも、おもしろい人なんだけ ど、彼女のおもしろさを文章にするのが、難しくて、もどかしい。 「基本的に、クソ真面目で、かわいくて、変な人」というのは、なか なか絵が浮かぶ文章にしづらいものだ。  今後、もっと観察して、ぜひ彼女のおもしろさを公表したいもので ある。  このおもしろいメンバーと話していると、きりがないので、腰を上 げる。  この「猿のしっぽ」は、今後間違いなく、何度もこの日記に登場す るお店になることだろう。つくねが絶品だった。大好きな銀杏が、串 に5本もついてるのがいい。    う〜ん。それにしても、麻布十番だけで、美味しいお店ベストテン を作れるぐらい、美味しいお店が多いなあ。  午後11時。帰宅。
 

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