2月12日(月)

 寒い。やっぱり2月の京都に来るものではないと、ちょっと後悔。
 北海道の寒さは、雪が積もり、風が吹き荒れて、見るからに寒い
から、こっちも南極越冬隊に近い格好をしていくが、京都は何気に
むちゃくちゃ寒いから、始末に悪い。
 たまたま草野球のメンバー募集をしたら、現役大リーガーが来て
しまったというくらい、寒い。

 そういえば、球春到来、各地のキャンプインも、中盤にさしかか
って、そろそろ鳴り物入りの新人たちが、プロの洗礼を受けて、人
生の岐路に立つ時期である。
 私も20年前ぐらいかなあ。もっと前だ。25年前。四半世紀前
じゃないか。

 当時、マスコミ業界に入ったものの、プロでまったく通用しない。
年収30万円のどん底で、必死に本を読み、映画を見て、劇画村塾
に入って、人に出会って、苦しみもがいた時期がある。
 よかったのは、私がマスコミ業界的に、ドラフト1位ではなかっ
たので、自ら2軍落ちしても、誰も気にしなかったことだ。
 24歳のときの、あのわずか1年の苦しみがなかったら、今日の
自分は無いと思う。若いときは、とかく結果を出したくなるようだ
が、私はドラフト1位の男じゃないんだから、3年後に1軍入りす
ればいいやと、最初から筋力トレーニングのようなことに没頭して
いたのが、よかった。

 午前中、札幌の「あわびの源太」さんに頼まれた原稿を執筆。

 午後12時。どうせ京都でひとりなのだから、変なことに挑戦し
ようと、「天下一品らーめん」の総本店に行ってみることにした。
 場所は、北白川と北大路通りがぶつかる交差点から、ちょっと南
に下がったところ。
 この「天下一品らーめん」は、ラーメン・マニアはとても有名な お店で、その味のこってり感が、いかにも粗野で、猥雑なので、天 下一品フェチになる人が多い。ゲームにたとえると、セガ・マニア みたいなものか。  私も10年前に、二条城の近くのお店に行ったことがあるのだが、 どうにもあの下品な味には、抵抗があって、以来まったく行ってい ない。  しかし、京都を代表するラーメン屋といえば、やっぱり「天下一 品らーめん」だし、地元の人たちに言わせると、本店の味はほかと 違うという。  ならば行ってみるしかない。  このところ、ふつふつと5年前から考えているラーメン・ゲーム が頭のなかで、まとまりそうになってきたせいもある。  3年ほど前、ほとんど着手寸前まで行ったのだが、勉強のために と、連日ラーメンばかり食べ過ぎて、気持ち悪くなり、断念したこ とがある。  さて、その「天下一品らーめん」の総本店。  お昼時だけに、行列ができている。  関西らしいのが、店の東西が道に面しているので、両側からお客 さんを入れてしまうところ。こういう合理性は、関西ならではである。  門構えは、ショウウインドウは、しっかり作らなきゃという意識 がまったくない。    その証拠に、お店の正面のガラスに、大きく天下一品らーめんの 由来が書いてある。正面は入り口でもあるけど、いちばん宣伝でき るスペースじゃないか!という論理なのだろう。  その文句もドラマチック。  ラーメン屋台から始めた初日の売り上げが、わずか11杯。  そこから「どうしたら、お客さんにもっと来てもらえるような味 を作れるんやろ」という思いで、必死に秘伝のスープを作り上げた そうだ。 「この味ではわざわざ来てもらえない」 「これもアカン、あれもアカン」と毎日四苦八苦しながらやっと納 得のいく味にたどり着いたそうだ。屋台を引きはじめてから4年目。 「いい材料を豊富に使って、自分が美味しいと思ったら、人も美味 しいと思ってくれる」  何の仕事にも、当てはまるような言葉だ。  混雑する店内で、ラーメンの並。こってり味を食べる。
 スープが、生ぬるい。どろどろしている。  10年前に食べたときよりも、性に合っているような気がする。  ネギが多いのもいい。  何だか、病みつきになりそうな味である。  天下一品の罠にはまったか?  たぶんきょうのように寒い日に、このこってりしたスープは合う のだろう。  北海道で、夏にみそラーメンを食べても美味しくない。  真冬に札幌で食べる、みそ味は別格の味だ。  それに近いものがあるのだろう。  東京成増の「究極Y‘sラーメン」の俗っぽさを思い出した。  あっというまに食べ終える。  スープまで飲み干すと、高血圧の人にとって、1日分の塩分の摂 取量を越えてしまうので、ここでストップ。  でも、スープを全部飲み干すと、どんぶりの内側に「明日もお待 ちしております」の文字が浮かび上がってくるそうだ。    社長の頭から、1日11杯の売り上げが消えることはないってこ となんだろうなあ。あざといけど、いい言葉だ。  食後、北大路通りを一乗寺のほうに向って歩く。  寒い。風は弱いものの、十分寒い。  あっちこっち寄って、疲れたら、バスに乗り、あてどもなく京都 市内を歩く。  烏丸三条に、「新風館(しんぷうかん)」というBEAMSとか 入った、大きなファッション・エリアが出来ていた。
 どうも最近、京都はどんどん原宿化してきているような気がする。  午後3時。イノダコーヒ本店で、コーヒーを飲んで帰る。  いよいよ『桃太郎電鉄X(仮)』の全面読み直し。  テストロムの進行が早いので、こんな時期から、刈り込んだり、 付け足す箇所を洗う作業。以前は本当に手直しする時間をほとんど くれなかったからなあ。  せっかく浮かんだイベントも、今回のゲーム内容に合わない場合 は、惜しげもなく削除する。幸い、『桃太郎電鉄』シリーズは続編 が約束されているので、練り直すとまたさらにおもしろくなって、 使える場合が多いので、安心して温存できる。  午後5時30分。ふうっ。『桃太郎電鉄X(仮)』のメッセージ 変更は気をつかう。たったひとつの単語を、漢字にするか? 平仮 名にするか? ここで改行するか? しないか? 大いに悩む。  悩んだ末に、テスト・プレイ中にもう一度また直す。  疲れたので、外出。    三条大橋のスターバックス・コーヒーに寄る。いま京都でいちば ん混雑しているのは、このお店かもしれない。何たって、ラテをも らうのに、レジでもらった領収書と照合しないともらえないシステ ムになっているくらい。それだけ混雑する。京都だけに、外国人の お客さんがめちゃめちゃ多い。お客さんまでイメージ・アップに貢 献してしまうんだから、すごいね。  午後7時。「とり市老舗」で買ってきた、あさりご飯で夕食。小 松菜とみそこんにゃくのお惣菜がおかず。    食後も、『桃太郎電鉄X(仮)』の手直し。 『ポケモン金』は、最後の戦いのところまで来たので、しばらくお 休み。1日1回しか戦えない場所で、戦闘して、木の実を取るだけ にして、お仕事! お仕事!
 

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