12月25日(月) 昨夜午後9時からの『SMAPシークレット・ライブ』で、私が出演した『桃太郎伝説 1→2』のCMが流れた。 「見ましたよ!」の第1号メールは、ユイ音楽工房の篠宮勝さんであった。第2号は、娘 の友だち。携帯にメールが入って「ゆりちゃんのお父さん、TVに出てなかった?」。 「娘よ! 『桃太郎伝説1→2』のCMに出てるのは、父ではなく、反町隆史だと言いな さい!」 さて、本日はクリスマス。 私は脳内出血5周年記念ということで、旅に出る。 また病気をギャグにしてと、みなさんに叱られそうだが、こうして生きているからこそ、 ギャグにもできるわけだ。 しかも5年たった今も確実に回復に向っているので、これはやっぱりめでたいことなの だ。しかも5年間地道にリハビリを続けてきたことに対してのご褒美でもある。 でも困ったな。 きょうから明日にかけて、日本海側は大雪の恐れだそうだ。 その日本海側にめがけて行くのだ。これから。 前回土居ちゃん(土居孝幸)と札幌に行ったときの空振り雪と違って、どうやら本格的 のようだ。 雪は期待していたのだが、通行止めになるほどの雪にならないことを祈る。 午前11時。嫁と東京駅地下の資生堂パーラーで、ビーフカレー。 最近旅立ちの拠点は、この資生堂パーラーと決めている。地下の中央口から新幹線のホ ームまでが近いから便利なのだ。 午前11時24分。つばさ103号。 ホームには早くも帰省客が多く、家族連れが多い。 今回の旅は、極力仕事はしないつもり。 いつものようにアイデアノートを埋めつくさないように、本を読む。『渡邉恒雄 メデ ィアと権力』(魚住昭・講談社)など読む。 車内販売のお姉ちゃんが来た。お水を買い忘れたから、せめてお茶でも買おう。おっと っと、おいおい! 車内販売のお姉ちゃんはさっさと素通りして行ってしまった。 その後も何度も来たが、あまりにもすばやく通り過ぎてしまう。 通常、車輌の自動ドアを開けたときに、いったん停止して、お辞儀をしてから「コーヒ ーにお弁当はいかがですかあ…」と始めるものなのに。毎度逃げるようなスピードでワゴ ンを走らせるのはやめてほしいものだ。 福島から、東北新幹線から切り離されたつばさは、奥羽本線を走る。沿線の山に、残雪 が見えるが、雪は降っていないようだ。午後2時4分。かみのやま温泉駅に着く。 小さな駅だ。 本来は「上山駅」と書く。「上山」と単純な文字でも「うえやま」「かみやま」「じょ うざん」といろいろ読み方があるだけに「かみのやま温泉駅」と平仮名で表記するように なったのは正解である。 駅の売店など覗いてみるが、こんにゃく、紅花と、いかにも山形市と米沢市の中間にあ る町らしく、この町特有のものはないようだ。 小さな町なので、タクシーでめぼしいところを回ってもらうことにする。 午後2時30分。斎藤茂吉記念館へ行く。 アララギ派の歌人。精神科医。北杜夫さんのお父さんとして有名なあの斎藤茂吉さん である。 高台にある記念館の真下には、JR茂吉記念館前という駅があった。まるでバス停み たいな名前だ。 山形新幹線ができてから、この路線はけっこうユニークな駅名に改名してるところが 多い。その筆頭は「さくらんぼ東根(ひがしね)」駅である。堂々と山形新幹線が止ま る駅として君臨している。 この斎藤茂吉記念館。平成元年に改築したというけど、じゅうたんふかふか、ピカピ カの木の壁と、まるで2〜3年前に完成したばかりのようなきれいさに驚く。 通路はみんなガラス張りで見晴らしのいい景色が見えるので、本当に気持ちいい。 最初にシアターで18分間の映像を見る。 斎藤茂吉さんの生涯をダイジェストで教えてくれる。 もうちょっと『知ってるつもり』風に、つっこんだ話を聞きたかったところだが、画 像もきれいだし、よく出来ている。 斎藤茂吉さんについては、あまりくわしくはないと思っていたのだが、映像を見るか ぎり、知ってることが多かったので、ホッとする。 最近旅をしていて、痛感するのは、どの博物館も非常にきれいだし、その展示品がよ く出来ていることだ。 わかりやすい上に、情報が多い。 この斎藤茂吉記念館でも、北杜夫さんの小説『楡家の人々』の自筆原稿の前を通ると、 作品の一節が朗読されるシステムになっている。昔の博物館のように、薄暗くて、かび 臭くて、コップに水を入れて加湿器代わりに置いてあるようなものは、本当に少なくな っている。 午後3時30分。上山(かみのやま)城へ。 山形といえば、最上義光(もがみよしあき)というくらい、最上一族の所領なのだが、 ここも最上グループが開祖のようだ。 ただ江戸時代にすぐ潰されてしまったので、あまり由緒というものはない。 お城を復元した人たちも、そのことがわかっていたのか、お城のなかに入ると、お城 のことにはちょこっとしか触れていない。 マルチスクリーンとか、シアターといったおよそお城らしからぬものばかりあって、 出羽三山の動物たちとか、蔵王の動植物、樹氷などを特集している。 これはこれで、十分楽しい。 でも、お城マニアの私としては、お城に来たのではなく、アミューズメント・パーク に来たようなものである。 展示物もよくできているし、もし「かみのやま」に来たら、必ず訪れることをお勧め するくらいだ。 展望台までエレベーターが通っているのもいい。お城の人気がいまひとつなのは、5 階も登らせることだと思う。修験道の道を極めるわけではないのだから、どのお城も見 物しやすいように、エレベーターを設置してもらいたいものだ。 天守閣から市街地を望む どうやら「かみのやま」という町は、蔵王に近い町、出羽三山の入り口にあたる町の ようだ。かつて明治の廃藩置県のときには、「上山県」だったそうだから、栄えた町だ ったのだろう。 午後4時。上山城の入り口にある「かかし茶屋」に入る。 少し雪が降り始めた。 おばちゃんが、次々にこんにゃく製品を試食させる。 キムチこんにゃく、シイタケ昆布こんにゃく、細切りこんにゃくなど食べさせてもら ったが、どれも美味しい。いくつか買う。あと、玉こんにゃくを食べるが、なんと、お値段100円! 安すぎる〜! 熱々の 玉こんにゃくの美味しいこと! さて、ここで恒例の『桃太郎電鉄』に「かみのやま温泉駅」が登場したときの物件を 記しておく。 <かみのやま温泉駅> ・玉こんにゃく屋………1000万円・50%・食品 ・和紙工房………………3000万円・20%・商業 ・紅花畑…………………5000万円・10%・農林 ・紅花畑…………………5000万円・10%・農林 ・温泉旅館………………………1億円・ 1%・観光 こんな感じかなあ? 今のところ、全国編への登場は、ちょっと難しそうだなあ。ロ ーカル版では、間違いなく登場するだろうけど。ただ「かみのやま温泉駅」は表示が長 いので、「かみのやま駅」に変えるだろうなあ。 「かかし茶屋」を出ると、さきほど降り始めた雪が、絶え間なく降るようになっていた。 写真だと雪は見えづらいかな? タクシーの運転手さんが「これは今夜積もりますよ〜!」という。 こっちの人がいうくらいだ。相当積もるのだろう。 明日は尾花沢を予定していると、運転手さんにいうと、山形から北がとくに雪が降る という。それはまっただなかに向って行くようなものではないか。 先月土居ちゃんとの北海道旅行も、予報ではそういっていても、まったく雪無しの場 合もあるから、何ともいえないが。 そういえば、土居ちゃん(土居孝幸)は、11月に、出羽三山と雪が見たかったのだ から、こっちの旅行にいっしょに来たほうがよかったかも。 午後4時30分。かみのやま温泉郷の「H」に着く。 「H」とイニシャルにしたのは、ひどい旅館だったからではない。私たちがあまり得意 ではない、典型的な大型日本旅館だからだ。 こういう豪勢な旅館を好きな人もたくさんいると思うのだが、ちょっと私なりの独断 的苦言を吐いてしまうので、あえて「H」とさせていただく。 部屋も悪くはないのだが、「○○○○小学校の皆様、お食事の用意ができました。4 階の○○の間までお越しください!」と大音響で館内放送が思い切り聞こえてしまうの は、いただけない。 何も客室にまでスピーカーで流さずともいいではないか。 続いて、料理。 もともとこの宿に決めたのは、旅の本に載っていた写真に美味しそうなお肉があった からだ。 そのお肉は、上等な山形牛のしゃぶしゃぶで、非常に美味しかった。 でもほかの料理が、お刺身に、酢飯に、手まり寿司と、バランスが悪い。これではN HKの海外ドキュメントをお笑い芸人がルポするようなアンバラスである。 とどめは、大浴場。 露天風呂があるというので行ってみたけど、外にあるというだけで、空がほとんど見 えない。早い話、露天風呂ではなく、軒下風呂である。雪も急にやんでしまったし。雪 は別に旅館のせいではない。 「あちちちっ!」 熱い! なんだ、この熱さは! 露天風呂は、まずお湯をぬるめる蛇口がない。ってことは、この熱いままか。耐えら れないぞ。 とてものんびり、ほっこりするどころではない。弥次さん喜多さんの五右衛門風呂で ある。 さっき行ってきた上山城の展示室に、温泉の話題があって、「ぷく ぷく ぽこ ぷく」 という表現が書いてあった。 この旅館のお風呂で、この「ぷく ぷく ぽこ ぷく」の気分になることを期待して いたのだが、とても無理のようだ。 おまけに、湯上りのタオルが用意されていない。 最近はちょっと気のきいたホテルや旅館では、脱衣室に、タオルやバスタオルがふん だんに置いてあって、使い放題なのがあたりまえである。 というわけで、持って入ったタオルを絞って、身体を拭くしかない。しかし私はご承 知のように、手足が不自由なので、タオルを絞ることができない。 仕方ないので、そのまま浴衣を着て、部屋に戻って、身体を拭くことにした。要する に、気のきいていない旅館ということなのだろうな。 悪くはないが、よくはない。 こういう志の低い旅館がいちばん困る。いっそひどすぎるほうが、日記のネタになっ て楽しいと思うのが、文筆業である。 どうもまたどこかで、グルメ貞子が呪っているような気がしてならない。でも呪うな ら、あの山形牛を呪ったはずだ。 あ〜、どうにも中途半端な脳内出血5周年だぞ。
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