12月19日(火) 整備新幹線の予算が増えて、フル規格の新幹線が、長野から富山まで。九州は博多から 船小屋というところまでに決まった。 『桃太郎電鉄』の作者としては、喜ばしいかぎり。 でもその完成予定が、12年後と聞いて、脱力。 12年後、私は60歳である。 まだ60歳なら元気な身体で乗ることができるだろうが、札幌まで新幹線で行く夢は、 ますます難しくなってしまった。 札幌まで新幹線延伸に備えて、函館五稜郭に住居を構えたのが、10年前。昨年売り払 って正解だったのが、妙にくやしい。 2003年の八戸―盛岡間の開通を楽しみにしよっと…。八戸―新青森の開通も12年 後なんだって。もう少し早くならないのかなあ。 ゲーム業界とおなじで、完成が伸びることはあっても、早まることはまずないからなあ。 午前11時30分。嫁と。白金3丁目柴里病院並びのお蕎麦屋さん「三合庵(さんごう あん)」に行く。初挑戦。 このお店は、糸井重里さんの『ほぼ日刊イトイ新聞』で、応援してほしいお店として、 推薦していたので、新聞購読料代わりに行くのが使命と来てみた。 お店は、20席とやや小さめなお店だが、清潔感にあふれていて、うちの娘が最初にチ ェックする、爪楊枝も高級な素材をつかっていて、まずドラフト1位指名決定!天せいろ1枚、せいろ1枚を注文する。 すると、どこからか、水琴窟(すいきんくつ)のぴちょんぴちょん!という音が聞こえ 始める。不思議なCDを流すお店だなあ!と思っていると、どうもその音が、音色はいい ものの、正確なリズムを刻んでいるわけではないことに気づく。 むむ? ひょっとして!? この音は、うちの天せいろを揚げている音? こんないい 音色するの? もしもうちの天ぷらを揚げているなら、天ぷらが揚がり次第、この音は聞こえなくなる はずだ。 あっ。消えた。 消えてすぐ、白い和紙の上に、海老が乗せられた。 やはり天ぷらを揚げる音だったのか。これだけで、もうすっかり魅了されてしまった。 ドラフト1位指名から、開幕1軍ベンチ入りが決定! 天ぷらが来た。 せいろも来た。せいろが、テーブルの上に乗ると、同時に「すみません! せいろをも う一枚追加してください!」 せいろの色を見れば、最近どのくらい美味しいかわかるようになってしまった私は、お 代わりを待つのがもどかしい。 天ぷらは、ふわふわとやわらかくて、天ぷらの近藤のように、しゃきっとした食感とは また違う仕上がりなのだが、甘味があって、十分すぐるほど、美味しい。 せいろの麺も、上品で、それでいて鋭さがあって、頑固なところがいい! もう1枚、せいろが来た! ふたりでまたたくまに、平らげる。 「そば汁をお願いします!」とお店の人に頼み、そば汁が届いたときには「白玉ぜんざい を2つお願いします!」と最大級の賛辞に満ちた行動を取る。 そば汁がまた、甘酒のように、白くとろり、とろり、そのずしりとした存在感が、腹八 分目のお腹をプラス1割埋めてくれる。 白玉ぜんざいは、さすがに期待しすぎたせいか、それでも通常レベルを越えた味はキープ。 いやあ、いいお店だ。 また来るだろな、きっと。 先発ローテーション入りがほぼ決定! 満足感いっぱいで、築地に向う。 午後1時。築地のハドソンへ。 最初にまず、ファミ通WEBの取材。インターネット上で流れる映像だそうだ。 私、土居ちゃん(土居孝幸)、宮路一昭くんの3人が、「あけましておめでとうござい ます!」と言って、2001年の抱負を語る。 撮影開始と同時に、ちょうどハドソン桃太郎事業部の武田学くんが席を外してしまった ので「ぽろり」の限界がわからず、どんどん具体的な話題へと移って行ってしまう。危な い、危ない! この映像は、1月1日、2日、3日のファミ通ドットコムのほうで、流れるそうだ。 あ、そうそう。私が出演する『桃太郎伝説1→2』のTV―CMは、12月24日の SMAP×SMAPあたりからオンエアーするそうだ。そ、そんな視聴率の高い番組で 流さなくても…。 午後2時。特に名を秘す、えーと…。面倒なので『桃太郎02』という仮称をつかう。 『桃太郎02』の会議。 『桃太郎01』は、『桃太郎電鉄X(仮)』ということになるが、これとて仮称のまま、 正式な題名は決まっていないが、『桃鉄』ということはバレている。 メンバーは、私、土居ちゃん(土居孝幸)、ゲーム・ディレクターの國政修くん、宮 路一昭くん、ハドソン桃太郎事業部の梶野竜太郎くん、石崎仁英くん、武田学くん。 『桃太郎02』のシナリオと、音楽の発注が中心。 あまりの曲の数の多さに、宮路一昭くん、泡を食う。 打ち合わせ終了後、「来年1月10日の締め切りまでに、いまから書いても書ききれ ないような量なので、家に帰って、作曲します!」と、柴尾英令くんとすれ違うように、 帰路に着く。 宮路一昭くんにとっては、この『桃太郎02』は、サザンオールスターズのカズ坊 (関口和之)、池毅(いけたけし)さんと、3人も作曲家をつかう豪華競演なので、負 けられない試合なのである。 ライバルが増えるということは、レギュラーから降格のピンチもあるわけだ。私だっ て、柴尾英令くんとの対決が待っている。 午後3時。今度は、通し番号でいうと、『桃太郎03』の会議。『桃太郎03』とい うのは、『桃太郎大全集(仮)』のことである。 前々から通し番号はつけたいと思っていたので、ここでおさらいをすることにする。 土居ちゃんのためにも。ははは。 ・桃太郎00………桃太郎まつり ・桃太郎01………桃太郎電鉄X(仮) ・桃太郎02………特に名を秘すゲーム。 ・桃太郎03………桃太郎大全集(仮) このあとに、『桃太郎04』も『桃太郎05』もすでに開発はちょびちょび始まって いる。こっちはさすがにまだ何もいえない。 しかし何で私はこんなにたくさんゲームを作っているのであろうか? 仕事が好きな んだろうなあ。 さて、きょうは柴尾英令くんが、泣けるシナリオを完成してくることになっていたの で、全員ハンカチを用意して来たのだが、柴尾英令くん! 昨夜から徹夜の挙句に、シ ナリオがまとまらず、話が広がったまま自爆! スタッフ全員に平謝り! 「もう泣く用意してたのに〜!」と、梶野竜太郎くん。 「桃太郎のおじいさんとおばあさんが…」と、作りかけのシナリオを朗々と朗読しよう とする柴尾英令くん。 「柴尾くん! ちゃんとテキスト形式で読ませてくれよ!」と、私は心を鬼にする。鬼 の話なんだから。 というわけで、柴尾英令くんは「今週の金曜日には…」と、自分の首を絞めるような 発言をしてしまうのであった。 このままずっと、柴尾英令くんは原稿を遅らせ続けると、「ザウルスを買っちゃ、2 時間で飽きて、翌日にGフォートなんか買うからだ!」と、ブーイングが出てしまうの だろうなあ。 最近はインターネットで、日記を書いていると、どの程度遊んでいるかまでバレてし まうから、文筆業にとって、なかなか原稿を遅らせづらい時代である。 午後7時。私、土居ちゃん、柴尾英令、嫁の4人で、西麻布の「内儀屋(かみや)」 に行く。 珍しく階下のカウンター席で食べたので、いつもより新鮮。 土居ちゃんがこのお店の料理が好きなので、「美味しい! 美味しい!」を連発し ていた。 最後にサイコロ状のステーキがちょこっとと、ご飯が出るので、満腹感は十分すぎ る。 午後8時。西麻布の喫茶店「ポエム」でお茶をして、帰る。 午後9時。帰宅。娘が期末テストが終わって、きょうと明日が、試験休みなので、 やっと柳沢健二(通称:ヤナケン)くんが送ってくれたゲーム『天空のレストラン』 を娘にやってもらう。 私はまだ手が不自由なので、こまかい動きが苦手。 ほう。イントロから、いい演出だなあ。 上品なメッセージだ。 やっぱり文筆業のいるゲームは、文章が読みやすくていいなあ。発売されているゲ ームの8割方は、イントロで何を言っているのかわからない文章ばかりである。 このゲームは、娘のように、食べ物が大好きやつにとっては、親しみやすい。いき なり、トマトと、パスタと、とらふぐを手に入れて、とらふぐのパスタという何とも ゴージャスな料理を完成させていた。さすが食の神様がついている娘だけのことはあ る。 ボードゲームで、食材を集めて、料理を作って行くという発想はおもしろいなあ。 少々、わかりづらい部分もあるが、これだけていねいに作りこまれたゲームはひさ しぶりである。 このレベルのゲームが、50万枚くらいのヒットにならないところに、今日のゲー ム業界に大きな歪みがある。 10万枚も行かないのかなあ? 行ってほしいなあ。 以前なら間違いなく10万枚売れたようなゲームである。 今夜も『桃太郎03』こと、『桃太郎大全集(仮)』の仕様書を静々と、イライラ と…。
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