12月12日(火)

 いやあ、よかった、よかった!
 新庄選手が、ニューヨーク・メッツに行ってくれて!
 横浜ベイスターズに来たかぎりは、応援するのがファンの務めだけに、いやあ、はっは
っは。本心を曲げながら忠誠を誓うのは無理だと思っていただけに、よかった、よかった。
 それにしても、横浜ベイスターズとヤクルトは弄ばれたものだ。阪神もか。

 新庄選手獲得のために用意したお金を、ローズ選手に回してくれんかねえ! すでに新
聞では球団側は「あえてそういうことはしない!」と、こういうときだけきっぱり! 
いいじゃないねえ! 余ったんだからさあ。駒田選手の年棒も浮いたはずだしさあ。

 午後12時30分。家族3人で、新橋の「おか田」へ行く。牛かつのお店だ。一度だけ
食べに行って、このお店の牛かつを日記で見た娘がずっと執念深く覚えていて、ことある
ごとに「あのお店行かないの?」とばかり言っていた。
 いつも「おまえは学校だろ!」と逃げるのだが、きょうから中間テストで家に帰ってく
るのが、早い。
 そういえば、娘とおなじように、土居ちゃん(土居孝幸)もこのお店を日記でチェック
してたなあ。最近土居ちゃんの味覚が、どんどんうちの娘とおなじ感性になってきている
ようで、恐い。
 前回とおなじ、牛かつの上に、ソースとマヨネーズで細い格子模様が描かれた、牛かつ 丼、950円を食べる。  お肉も消しゴムよりも小さく切ってあるので、食感がかわいい。  これ以上細くなりようがないくらい細かく切られたキャベツも、さわやか。本来、牛か つに、たっぷりのソースという食べ物だから、こってりしていないといけないのだが、な んともライト感覚。    夜にもこのメニューがあることを聞いたし、夜になるとこの牛かつの肉の質も上がると 聞いては、土居ちゃん(土居孝幸)も誘って食べに来なきゃ!   でも土居ちゃんは明日、歯医者だしなあ。会議の日程を決めるときに、土居ちゃん(土 居孝幸)は、歯医者でダメというのがあって、脱力する。なんか脱力するのだ。土居ちゃ んぽくて。  だいたい、毎回1日のど真ん中、午後3時に予約するなよなあ!  午後1時30分。家族と別れて、私は表参道の「ロイヤルホスト」へ。もちろん『桃太 郎大全集(仮)』のアイデア出し。最初順調も、すぐ失速。これはどうしたことだと思っ ていると、眠い! 眠くちゃあ、いくら縁起のいいお店でも、アイデアは出ない!  まだまだ疲れが、抜けきらないようだ。    午後3時。渋谷の「タントン・マッサージ」へ。いつもの岡崎さんにたっぷり1時間マ ッサージしてもらう。身体が最悪の状態からは脱出しているので、きょうはとても気持ち よく、眠れた。マッサージもあまりひどいときに行くと、痛いだけだからね。  午後5時。帰宅。 「えっ? 何だって? ホントかよー!」  今夜はこれから、バイオリンの朝枝信彦さんが演奏されるクリスマス・コンサートに行 く。  なのに、試験中のバカ娘も、コンサートに行くと言い出すではないか! 試験中に行く かあ?  私は子供の頃に、親が「勉強しろ! 勉強しろ!」といつもうるさく言っていたので、 子どもに「勉強しろ!」と言わない親になるのが夢だった。だから私は「ずっと勉強しろ!」 と言わなかった。  まさか娘がその私の教えを守って、小学校の頃、まったく勉強しないとは思わなかった が…。  しかし小学校6年生の10月。突然娘は、中学受験をしたいと言い出した。そのときの 10月は、38年ぶりの横浜ベイスターズ優勝がかかった大事な時期である。 「お父ちゃんの一生に一度あるかないかの大事なときに、受験するという冗談はよせ!  そんな話は、優勝後! 優勝後!」  横浜ベイスターズが優勝してる間に、どうせ忘れるだろう。  ところが、娘は忘れていなかった。  本当に急に勉強を始めて、受験し、なんと合格してしまったのだ。受験に失敗すること で人生を覚えさそうと思ったのだが、人生はぎりぎりでも間に合うという間違った人生観 を植え付けてしまった。  まあ、そういう間違えもそのうち、大きく失敗することで、覚えればいいや。    そんなわけで、試験中なのに、いっしょにでかけてしまうバカ娘であった。前回クラス 1位というありえない快挙に油断しているんだろうなあ。油断もまた勉強。社会に出て油 断したら、人生の致命傷になる。でも意地っ張りだから、こういうときにかぎって、いい 点を取ったりすることもあるからな。やな、ガキ!   午後6時。四谷の駅ビルで、軽く支那そばを食べる。「支那(しな)」という言葉は、 放送禁止用語ではないのかなあ。中華そばというより、支那そばと言われたほうが、美味 しく感じるから禁止用語になってほしくないけど。  午後6時30分。御茶ノ水の「カザルスホール」へ。  すぎやまこういち先生ご夫妻もいらっしゃる。  さっそく先生にご注進。 「先生! 叱ってやってくださいよ! このガキ、試験中なのにこうして、コンサート来 ちゃうんですよ〜!」 「いいじゃない! 朝枝さんのいい音楽を聴いたあとは、勉強がはかどるよ〜!」  ダメだ、こりゃ。叱ってもらう相手を間違えた。ははは。  さて、本日のコンサートは、クラシックの超一流の演奏家たちによる、クリスマス・コ ンサート。  浅学非才な私には、そのメンバーのすごさがわからないのだが、クラシックに造詣の深 い人たちのために、紹介させていただく。   ・今井奈緒子さん。パイプオルガン。   ・津堅直弘さん。トランペット。   ・朝枝信彦さん。バイオリン。   ・郡愛子さん。メゾ・ソプラノ。   ・河原忠之さん。ピアノ。  すごさのわかる人たちは「おお!」と叫んでください。  私は何度もパイプオルガンのあるホールに行ったことはあるけど、生演奏を聴くのは初 めて。中学生の頃、知識もないのに、バッハのパイプオルガンもののレコードばかり買い 漁っていた時期があるので、感激、感激! これが生の音なのかあ。  しかも、パイプオルガンに、トランペットという組み合わせにも、驚く。一応、私はス ペクトラムという日本を代表するブラス・ロックのバンドの作詞を担当した時期があるの で、生のトランペットはよく聴いているだけに、津堅直弘さんの素晴らしさはわかったぞ。  音色がとにかく丸いのよ。やわらかいのよ。  これはすごいことなのよ。    続いてすっかり家族ぐるみでファンになってしまった、朝枝信彦さんが登場。  聴けば聴くほど、朝枝信彦さんのバイオリンに惹かれていく。  もはや音楽浴といっていいほど、心が浄化されていく。  朝枝信彦さんといっしょに演奏した、ピアノの河原忠之さんもよかったなあ。大きな身 体で、あんなにやさしい音が出るなんて。  メゾ・ソプラノの郡愛子さんの全身が楽器のような声と、およそクラシックの世界の人 と思えないような、気さくさにも驚く。  本当にすごい人たちなのが、ようやくわかった。 「先生! やっぱりこれは、クラシックの世界の紅白歌合戦みたいなメンバーなんですか?」 「うん。実力派のね!」  なるほど実力派のね。NHKの『紅白歌合戦』は人気だか、コネだか、情実で出るのか わからない人たちが出るもんね。  やっぱり、娘が試験中でも、来た甲斐のあるコンサートだったよ。 「さくちゃん。試験はいつでもあるけど、このコンサートは二度とないよ!」 「そりゃまあ、そうだけどさ!」  めげないガキだ。  午後9時。駿河台の「古瀬戸珈琲店」で、コーヒーとシュークリーム。シュークリーム のお皿がかわいかった。
 このお店は、かのグルメ文豪・池波正太郎さんが通ったお店の系列店である。  午後9時30分。帰宅。  明日の会議のために、『桃太郎大全集(仮)』の仕様書作りを少々。  ペースダウン週間なので、無理はしない。  年末はちょっとの疲労が、身体に響くから気をつけないと。    TVを見ると、いよいよ田中康夫長野県知事が、県議会議員たちの攻撃を受け始めた ようだ。  最初の攻撃で、クリティカル・ヒットを打ってご満悦の、石田治一郎という人。これ からちょっと注目。第2の名刺折り曲げの人になる素質充分!  やっぱりいま、政治が野次馬的にいちばんおもしろいなあ。
 

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