12月9日(土) 「本日の私の日帰り小旅行はどこへ行くか当ててね!」という昨日の日記に反応が来た。 ヒントは、もちろん私が一度も行ったことがない場所。 新宿から、1時間17分の場所。 さて、このヒントだけで、まず最古のさくまにあ・戸田圭祐が予想して来た。 「日記に書いておられた、12月9日の行先ですが、中央線ですと、 特急あずさで、甲府のあたりになりますが、甲府は何度も行っておら れますよねえ。 『新宿から』ということを考えると、あとはJR以外の私鉄ですか。 西武新宿線は、それはもう、全線走破されてるでしょうし。 小田急も、江ノ島方面へ、何度も行っておられますし。 うーん、あとはどこが残っているかなあ。 あっ!意外な線で、JRの特急「スーパービュー踊り子」で、 新宿から熱海方面・・・いや、熱海は一緒に行きましたよね。 わかりません! 降参! でも、悔しいなあ」 ふっふっふ。さすがに絞込みが上手い! しかし戸田圭祐のように私について詳しい 者ほど、きょうの行き先は想像もつかない場所なのだ。 『ダビスタ』伝道師・成沢大輔くんからもメールが来た。 「突発的腰痛の成沢です。 で、明日っつーか,今日の行き先。 新宿から八王子に出て、八高線で福生! さくまさん的に意外だし、時間もそんくらいじゃないかと 思うのですがいかがでしょ。 でも、福生にうまいもんなんてあったっけな??」 うん。福生には美味しい物がないから行かないなあ。 うれしいねえ。こういう反応が来ることが。 さーーて、それでは、正解の発表で〜〜〜す! ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ! もう少し時間をくれ!という人に、時間をあげ ましょう! もう一度、ヒントをおさらい! あ、言っておきますが、きょうの日記は、こんな調子なので、長いです。時間のない 方は、先に用事をすませたほうがいいです。半端じゃない長さです。 では、ヒントをおさらい。 ●新宿から、1時間17分。 ●日帰り小旅行。 ●私がまだ一度も行ったことがない場所。 新宿というと、どうしても特急あずさで、信州方面というのが妥当。でも信州方面な ら一泊したいし、信州方面はかなり行っている。 あとは小田急線だけど、江ノ島、箱根行っていないのは、あまりにも旅好きにしては、 もぐり。西武新宿線は生まれ育った場所だから、全部の駅に乗り降りしている。 さて、もういいでしょう! 正解は、なんと! ドラムローーール! ダラダラダラダラダラダラダラダラッ、ジャーーーーン! 「成田空港!」 はっはっは。これは意外でしょう! この日記を読んでいる人なら、ほとんどの人が私の飛行機嫌いを知っている。だから 私が成田空港まで行くなんて想像するわけがない。だから昨日、わざわざクイズにして みたのですよ。 じゃあ、何で好きでもない成田空港まで行ったのか? 理由は、ちょっと複雑なので、 それは日記のほうで徐々に…。別に外国の友だちが来るから迎えに行ったとか、そうい う平凡な理由ではない。 昨日の扇千景大臣の「国際線は、成田じゃなくても、羽田にあってもいいじゃない!」 発言にからんだ話題のために行くのではない。 私にとっては、飛行機が成田から飛んでも、羽田から飛んでも用がない。できること なら、新潟から地下鉄をウラジオストクまで開通させてもらって、シバリア横断新幹線 でも建設してもらいたいものだ。 午前10時。嫁と、新宿駅南口の「みどりの窓口」へ。 「10時42分発の成田エクスプレス15号、成田空港まで。禁煙で2席お願いします」 「成田空港は、空港第2ビルと、成田空港の2つがありますが、そちらでしょうか?」 「へ?」 こっちは、一生成田空港なんてところには行かないかと思っていただけに、どっち? という予備知識も何もない。 「それでは、どちらも料金がおなじですから、成田空港駅にしておきましょう」 おお! 最近の「みどりの窓口」の人は親切だなあ。 かつて国鉄よ呼ばれていた頃は、本当に駅員さんが「おまえらに売ってやるんだから な!」というオーラが充満してたのになあ。やればできるもんだねえ、企業努力という のは。 発車まで少し時間があるので、「みどりの窓口」の近くにある喫茶店で、コーンポタ ージュにパン、コーヒーで小腹を埋める。 食べてるうちにあっという間に、発車時間になってしまって、コーヒーをほとんど飲 めないまま、駅に走る。 午前10時42分。新宿駅発成田エクスプレス15号で、成田空港に向う。実は成田 まで行くひとつめの理由は、この成田エクスプレスに乗ってみたかったから。何たって、新宿駅を出発して、東京駅に停まったら、あとは空港第2ビルまでノンス トップというのがすごいですよ。停車駅わずかに3駅。鉄道ファンとしては、ここまで 飛行機に媚を売る路線というのは、いかがなものかと思うのだが、これはもうプロ野球 でいうところの助っ人外国人みたいなもんである。 2月1日のキャンプインを、3月1日にしろ。二塁は嫌だ、外野にしろ! 年棒は5 億5000万円にしろ! って、たとえは無いが全部横浜ベイスターズのローズ選手の ことじゃないか! イメージのよかったローズ選手の印象が最近どんどん悪くなって行くよ〜! それより、新庄選手。今度横浜ベイスターズのヘッドコーチになる黒江さんが、 「新庄はいらない!」と失言したそうだけど、本音なんじゃない!? TVで見ていて も、新庄選手って、ヤクルトと横浜から獲得のオファーがあって、あきらかに浮かれて るんだもん。 久米宏さんが、スポーツ・コーナーに真中瞳さんが来ると、浮かれまくるのとおなじ くらい。新庄選手はわざと結論出すの遅らせて喜んでいるとしか思えない。 私から見ると、第2の駒田選手になるとしか思えないのだが…。 横浜ベイスターズには、長年、タイムリー凡打の帝王が住み着く癖があって、それで 長いこと優勝できなかったからねえ。 話がそれまくった。 成田エクスプレスの話。この路線は成田空港のためだけに作った特別優遇路線過ぎる よ〜!という話まで戻る。 新宿駅を出た成田エクスプレスは、山手線を走り、品川近くから、貨物線に入って、 地下鉄に入った模様。 東京駅までわずか18分。途中で駅に停車しないと、こんなに遠回りしても、たった 18分で新宿から東京駅まで着いてしまうもんなんだなあ。山の手線の内回りだと、30 分かかるからね。 車内で不思議なのは、座席が全部、対面式4席なこと。 昔は東海道本線などで、対面式4席があたりまえだったけど、今や一方向2座席が主 流。車輌が新しいのに、昔の電車みたいだ。ちょっと不思議。 でも車輌と車輌の間のデッキ部分に、大型荷物を置けるようになっているのが、いか にも成田行きという感じだ。 そうそう。車輌の壁に、この路線の電光マップが取り付けられていて、いまどこを走 っているのかを教えてくれる。ゲームのマッピング・システムみたいだ。これはけっこ う鉄道ファンには、そそるものがある。 列車が速いのはいいのだが、やけに揺れるなあ。 途中で男性用トイレに入ったら、がたんと吹っ飛ばされて、外に出てしまったほどだ よ。小用中にだよ。男性専用トイレって、最近鍵がかからないからね。こっちは足が不 自由で人より、踏み止まる力が無いのだ。バリアフリーよりも、こういう安全のほうに 力を入れてくれ! 午後12時。東京駅。東京駅でドッと人が乗り込んでくる。当たり前だが、みんな大 きな荷物を持って入ってくる。外国人も多い。 そんななか、見るからに下品そうな若い女3人が乗り込んできた。 いかにもこれから外国に行くんで、浮かれてますよ!という集団だ。運悪く、後ろの 座席に陣取ってしまった。 座ったとたん、バカ話を開始する。 うるさい。 しかも本当にこれから外国に行くという気分に、舞い上がってしまっている。どうせ このあと本当に空に舞い上がるのだ。今から舞い上がってどうする! 「ボンジュール、マドモアゼーール〜?」と語尾を上げて言っては、ワッハッハッハ! と笑うな! キャハハではないのだ、本当にワッハッハ!と男っぽく笑うのだ。 車内販売のお姉ちゃんが来たときなど、英語っぽい言い方で「オレンディジューーース?」 とまたまた語尾を上げている。しかも名詞を英語っぽく言ってるだけだ! センテンス でしゃべれ! ああ〜、下品な女たちだ。 こんなやつらが日本の恥を世界に撒き散らしに行くのか。まあ、エコノミック・アニ マルと警戒されるより、世界中の人たちを油断させるのには、よいかもしれない。 千葉を過ぎて、田園が広がる頃に、バカ女たちの携帯に電話が入った。着メロは、案 の定ミーシャの「エブリシング」。こういうことには情報が早いんだよなあ、バカ女た ちは。 しかしこのあとが笑わせる。 「あ〜、今ねえ、山ん中だからさあ、途中で携帯切れるかも!」 ここは関東平野! 日本最大の平野を走ってるの! 地図だと緑色が広いの! てめえら、外国行く前に、日本をもっと旅しろ! 午前11時56分。成田空港駅着。 どうせ飛行機に乗るわけではないので、空港第2ビル駅でもよかったのだが、成田エ クスプレスに乗ったかぎりは、終着駅まで行くのが、鉄道ファンだろう。 広い駅だなあ。 案内板が全部飛行機に関することで埋まっている。当たり前なのだが、すでにもう空 港にいる気分。 行く当てがないので、とにかく出口に向って行く。 改札を出ようとすると、パスポートを見せろ!という。何じゃい、それは! 「何か身分を保証できるものでもけっこうです!」 おいおい! こっちは、空港を見に来ただけだよ。 「見学ですか?」 見学といわれると、なんだかしょぼい小旅行のような気がして、悔しいなあ。 免許証を見せて、空港の中に。 どこに行ったらいいかもわからない。ショッピング街とかないのか? とりあえず 「北ウイング」と書かれた方向に行く。 昔、中森明菜の『北ウイング』という曲が好きだったからという理由だけである。 北ウイングに着いた。 出口がある。 出口を出ると、東京方面行きのバスだらけではないか。 到着して、10分で戻るんかい。 もう二度とここには来ないかもしれないのだから、もう少しゆっくり見学したいぞ。 しかしかつてこれほどまでに、予備知識がないまま来た場所も珍しいぞ。私は本当に 飛行機は嫌いなんだなあ!と、自己分析してる場合じゃない。 えっ? ショッピングモールは4Fにあるの? せっかくだから行ってみよう。 おお! 不二家もあるのか、ええ? ローソンもあるの? お約束のマクドナルドは ちゃんとあるなあ。ありゃりゃ、三越まで? なんだかすごいなあ。広いし。 見学ロビーとかいうのがあるぞ。行ってみるか。 おお! 外に出る。 きょうは暖かいなあ。気温16度もあるの? 暑いわけだ。風もない。 金網越しに、飛行機が離発着しているではないか! そうか、そうか。全世界から飛行機が来るから、いろんな航空会社の飛行機が並んで いるので、色とりどりなわけだ。 ほう。「虚勢(キャセイ)航空」に、「ルフト煩雑(はんざつ)航空」かあ…って、 古いギャグを言ってみた。 飛行機は嫌いでも、だじゃれは職業だから、いつでも言える。 ブリティッシュ・エアラインの機体とかきれいだなあ。 空港に来たら、飛行機に乗りたくなるかとも思ったのだが、全然思えないところが、 私は執念深いなあ。 へ〜。金網越しに、航空マニアたちがずらりと並んで、望遠レンズで写真を撮ってい る。よくしたもんで、金網の一ヶ所の網が抜いてあって、望遠レンズが入りやすいよう にしている。空港側も味なことをするもんだねえ。 それにしても航空写真ファンの多いこと。 鉄道ファンのことを「鉄(てっ)ちゃん」という言い方をするけど、航空ファンにも 呼び名があるのだろうか。 午後1時。いいかげん、歩きつかれたので、「讃岐うどん屋」に入る。たしかナムコ の岸本好弘さんがヨーロッパから帰ってきて、このお店に入って日本の味だと喜んだお 店だったと思う。 ちゃんと、生醤油ぶっかけうどんもメニューにある。ただし、すだちではなく、レモ ンが入っている。讃岐うどんなら、すだちじゃなきゃ。私はさっきから妙に、おいなり さんが食べたくなっていたので、ざるとろろ定食を注文する。 何で「おいなりさん」が食べたかったというと、成田空港駅に着いてから、やたらと 看板で「成田山」の文字を見たからである。 「おいなりさん」と「なりたさん」である。 職業柄、だじゃれには敏感なのである。 おやおや。讃岐うどんはちゃんと、こしがあって、麺に弾力もあって、美味しいぞ! と言ったら、嫁が「こっちは美味しくない…」と言っている。 なんだ。ぶっかけうどんなのに、温かいのかあ。麺も緩いじゃないか。空港で本格的 な讃岐うどんを期待してはいけないな。 おいなりさんは、もっとまずかった。コンビニの味。 さ〜〜〜て。 私がわざわざ成田空港駅まで来た、第2の理由がこれから! 実は今から、佐原(さわら)という町に行く。 本当はきょうこの町に行くのが、最初からの目的。 ところが、この佐原(さわら)という町、電車だと滅法連結が悪い。千葉のほうまで 行って、成田まで行って、さらにJR成田線で、佐原までと、2回から3回も乗り換え ないといけない。 順調に来れたとしても、東京駅から2時間以上。連結が悪ければ、3時間近くかかっ てしまう。 一応、快速が走っているそうだが、その本数が地元の代議士さんが死んだら、昨年か ら減ってしまったそうである。やっぱりJRっていうのは、今も昔も政治路線なんです なあ。 それならと、大胆な仮説を立てたのが、きょうのこの行程。新宿駅から成田空港駅ま で、わずか1時間17分。この成田空港からタクシーで、佐原まで行こうという方法な のだ。佐原まで約20分。 空港で寄り道しなければ、1時間半ちょっとで、佐原まで行ける。 これは盲点でしょ!? 本当はバスが出ているのでは?と期待したのだが、物事はすべて上手くは進まない。 そんなわけで、20分ほどで、佐原(さわら)へ。 で、何で佐原(さわら)に来たかというと、日本全図測量の父・ 伊能忠敬(いのうただたか)記念館がこの町にあるのだ! 伊能忠敬(いのうただたか)! この名前は、さすがに説明などいらぬだろう。 『桃太郎電鉄』の作者としては、もっともっと早く訪れて、「ご尊顔を拝したてまつり、 恐悦至極に存じたてまつります」のひとことも銅像に声をかけねばならぬところである。 午後1時30分。佐原に到着。 佐原には、古い町並みや、蔵が立ち並んで、かつての江戸の雰囲気を伝える風情があ ると聞いてはいたけど、なるほど美しい! 利根川からの支流である小野川沿いに、古い町並みが並ぶ。 まるで倉敷のようだ。 はっきりいって、ショック! これほどまでの景観が、話題にもならずに残っていたなんて。いくら交通の便が悪い からって、観光地として栄えないのにも、ほどがある。そのくらい美しい。 このあと佐原絶賛の文章が続く予定! まずは、伊能忠敬旧宅を見学。 おお! あった! あった! 伊能忠敬さんの銅像だ! 「あなたが作った地図のおかげで、私はこうして『桃太郎電鉄』を作ることができまし た!」 …って、言ってから、ちょっと待てよ。 別に私は、伊能忠敬さんが作成した日本地図をもとに、『桃太郎電鉄』のマップを作 ったわけではなかったなあ。帝国書院の地図やら、ランドサットが撮影した地図から作 ったのだから、伊能忠敬さんは、あまり『桃太郎電鉄』に関係なかったかも。 いやいや、やっぱり日本全国を踏破した精神は、私のなかに生きていて、伊能忠敬さ んを真似て、日本行脚を始めたことは間違いない。 さらに今や、50歳からあの日本全国の測量を始めたエピソードは、壮年、老年たち のヒーローである。これからの高齢化社会では、もっと祭り上げられる存在になること だろう。 シルバー・ヒーロー伊能忠敬さんだ! 旧宅から、小野川沿いを歩く。 見事な景観と、天気のよさに、川をスケッチする人たちが、あちらこちらに20人以 上もいた。 ジャージャー橋と呼ばれる橋の上には、とくにたくさんの町の画家さんたちが並んで いた。何でジャージャー橋というかというと、この橋は「樋(とい)」で出来ていて、 本来は灌漑(かんがい)に水を送るためのもので、本来人間用ではない。だから不思議 な光景なことに、橋の下から、ジャージャー、水が音を立てて垂れている。 それで、ジャージャー橋と呼ばれている。こんなおもしろいものが平然とある。 いよいよお目当ての「伊能忠敬記念館」。 大きい! 蔵をいかしたデザインで、美しい。 設備もできたてホヤホヤのせいか、展示物がよくできている。最近完成の博物館はど こもよくできているのだが、ここはひときわ出来がいい。 とくに、CGアニメは、和紙の雰囲気をベースにしたアニメで、一見の価値あり。 精巧な日本地図を見て、早く私も『桃太郎電鉄』の地方編を完結させたいなあ!と思 う。 記念館はとても立派 午後2時。「伊能忠敬記念館」の前にある「遅歩庵(ちぶあん)いのう」で、コーヒー。 名前に「いのう」とあるように、伊能忠敬さんの子孫の方がやっているお店。お店の人 から、佐原の町の話や、記念館設立までの苦労話など聞く。 佐原は、6月のあやめの季節になると、渋滞ができるほど混雑するそうだ。この美し い小野川にあやめが咲いたら、さぞや綺麗だろうなあ。 伊能忠敬さんにあやかって、全国の観光地を測量している私としては、この小野川の 水をもっときれいにしてもらって、鯉を泳がせてもらいたい。 あと蔵をいかした喫茶店とか、せっかくの景観なのに、お土産物屋さんがほとんどな いというのが、あまりにものん気だ。 一度でいいから、こういう観光地で、お土産物屋さんをやってみたかった。ここなら 繁盛させる自信がある。 ただ最近は、儲かる人のところには、必ず悪巧みの上手い人が近寄ってくるので、も うそういう野心は燃やさないことにしている。 人生はほどほどの幸せがいい。今は十分すぎるほど幸せだ。 でも私が30代なら、この川の家を一軒を買い取って、お店を開いただろうなあ。 だって、あとでちょこちょこ、あっちこっちで、お土産物になるようなものを買って は、食べてみたけど、美味しい物ばかりなんだもん。とくに、千葉の名産・落花生をつ かった、ピーナッツ最中は絶品だったよ。試食用に1個だけしか買わなかったのが、す ごく悔やまれる。 このピーナッツ最中の名前、何ていったっけかな? そうだ。楽菓(らっか)最中だった。落花生の「落」という文字は縁起悪いからつか いたくなかったんだろうなあ。 『桃太郎電鉄』で、佐原を登場させるときには、ピーナッツ最中の表記にするつもり。 かなり歩きつかれているが、小野川沿いの蔵の民家を見てまわる。蔵がこれだけたく さんあるということは、江戸時代に相当繁栄した証拠。最後に観光案内所のお姉さんと ずいぶん話し込んだのだが、それはそれは栄えた町だったそうだ。 小野川から、近隣の名産品を船に積んで、利根川に出て、江戸までたくさんの荷物を 運んだそうだ。 いわゆる水運業で栄えた町だ。あと、この小野川沿いの景観は、やたらと映画のロケにつかわれているそうだ。宮尾 登美子さんの作品『蔵』とか『櫂』といった作品は本来、高知が舞台のはずだが、いず れもここで撮影したという。 高知じゃ制作費がかさんでしまうもんなあ。 映画の人たちっていうのは、上手い場所を探し出すもんだなあ。 映画『うなぎ』もこの近くのお寺で撮影したとか。来年は『長崎ぶらぶら節』のTV 版で、この町が登場するそうだ。 小野川の真中から、ちょっと駅寄りのところにある「正上(しょうじょう)」で、佃 煮などを買う。いかだ焼きと呼ばれるわかさぎの甘露煮とか、カリカリ梅とか、試食で きるだけに、ついついあれもこれもと買ってしまった。このお店の佃煮を食べられるご 飯屋さんがあればいいのになあ。 「お江戸見たけりゃ 佐原へござれ 佐原本町 江戸まさり」 なるほど、歴史の息づく町だ。 観光地として、ブレイク寸前の町と睨んだね。 おもしろいのは、この歴史的景観あたりの町名が、「佐原イ」ということ。このあた りだけ「イ」という文字がついている。なぜなのか聞くのを忘れたのが心残り。 午後4時。JR佐原駅まで歩く。しかし、JRには乗らない。すでに15分前に快速 が出てしまったのだ。 最近こういう地方都市の場合、高速バスが発達している。『桃太郎電鉄』の作者とし ては、鉄道を利用したいのだが、本数が少なくてはねえ。 駅前のバス会社に聞くと、この時間はここからバスはなくて、北口から東京行きの高 速バスが出ているという。しかも発車まであと15分しかない。断念するか? 「いや、北口に回ればすぐですよ!」 こういう地方の「すぐですよ!」に何度騙されたことか。 でも行くしかない。 佐原駅の跨線橋を渡って、北口へ! 跨線橋から見える鈍行列車のデザインがせつない。 遠くまで旅した気分にさせられる。 おいおい! 北口には、駐車場しかないぞ! ロータリーはないのか! お店はないのか! 広々とした道しかないぞ! あたり一面どう見たって、どこにも停留所なんてないぞ! 騙されたか!? 広い道を北上するしかないか。 まあ、きょうは急ぐ用事がないから、ダメなら、のんびり電車で帰ってもいい。 住宅街の道を嫁とふたりで、とぼとぼ歩く。 何の変哲もない場所に、ぽつんとバス停看板があった。まさかここから東京直行のバ スがでているのか? 東京駅八重州口と書いてあるぞ。でもベンチひとつない。町の循 環バスだって、こんな簡素なバス停はないぞ! 恐いなあ。 時刻表をしげしげと見る。 ・ 5時35分。 ・ 6時 なし。 ・ 7時00分。 ・ 8時46分。 ・ 9時 なし。 ・10時06分。 ・11時21分。 ・12時 なし。 ・13時 なし。 ・14時36分。 ・15時 なし。 ・16時16分。 ・17時06分。 ・18時 なし。 ・19時06分。 寂しいよ〜! 1日9本で、午後7時6分が最終だよ〜! 本当にバス走ってるの かなあ…。 午後4時15分。1分前になったら、どこからともなく乗客が2人くらい現れた。 おお! 大きなバスが来た。よかった。『となりのトトロ』の猫バスみたいのが来 たりしないだろうなと心配だったよ。 東京駅まで、1700円。 2分遅れで、発車。 バスの乗客は、10人ほど。 座席はリクライニング・シートになって、心地よい。 バスが走り出してすぐ、夕暮れが近づいてきた。高速までかなり距離があるようだ。 歩きつかれたので、寝る。 何度か目を覚ます。外は真っ暗。 高速道路なのに、停まっているぞ。すごい渋滞だなあ。土曜日の夕方だもん。こん なもんだろうなあ。 午後6時48分。かなり遅れたようで、乗客は運転手さんに文句を言っていたよう だが、東京駅八重州口に到着。 佐原から、2時間32分かあ。たしかに電車より時間がかかっちまったなあ。でも 乗換えが無いのは、やっぱり魅力的だなあ。 午後7時30分。大丸の地下でお弁当を買って帰る。佐原で買った佃煮を食べるため。 いやあ。小旅行にしては、充実の1日だった。 ま〜た、日記が長くなってしまった。
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