11月22日(水) 札幌滞在2日目。 土居ちゃん(土居孝幸)が期待した大雪は、本日も朝方ちらちらと小雪が舞った 程度で、土居ちゃんはその雪すら見なかったそうだ。よっぽど土居ちゃんは、雪に 嫌われている。 午前11時30分。ハドソン桃太郎事業部の梶野竜太郎くんが、ホテルまで迎え に来てくれたのち、平岸へ。 梶野竜太郎くんお勧めのラーメン屋さん「どんころ牛こつラーメン」に入る。 いつもなら間違いなく、塩ラーメンを食べるのだが、札幌だけは味噌ラーメンだ。 ゲーム・ディレクターの国政修くんも合流。東京でも札幌味噌ラーメンのお店は多いが、東京で味噌ラーメンはいくら食べて も美味しいはずがない。札幌のこの寒空の下で食べるからこそ美味しいのだ。 団扇のように大きいチャーシューに驚きながら、北海道特有の黄色い麺に舌鼓。 この黄色い麺を食べると、北海道に来た気がする。 食べて外に出たときに、味噌ラーメンが美味しかったことを満喫できる。ああ! 身体が暖かくて、外が寒くて、気持ちいい! と言っていたのもつかの間、歩いているとあっという間に冷たい風が吹いてきた。 やっぱり札幌は寒いや。 昨日から、かつて8〜13年ほど前、ファミコン版『桃太郎伝説』から、『新桃 太郎伝説』のときに、しょっちゅう通ったお店を見て歩いているのだが、平岸のハ ドソンに来たからには、ロイヤルホストに寄って行かないといけない。 午後12時。平岸の「ロイヤルホスト」へ。 このお店では、現在は『俺の屍を越えて行け』の作者として有名な桝田省治(ま すだしょうじ)と、『桃太郎電劇』を作り上げたことを思い出す。わずか2日間で、 シナリオを完成させた。 桝田省治にとっては、『天外魔境』のときに、毎日かかさず3ヶ月間、ずっとこ のロイヤルホストで食事をしたことのほうが、思い出深いかもしれない。 午後1時。ハドソンへ。平岸に何軒かあるハドソンのビルのうちのひとつに入る。 8Fの会議室に、『桃太郎まつり』のスタッフが集まる。 大きな部屋にずらりと、10人くらいの初対面の人が並んで、私と土居ちゃんは 思わず緊張してしまった。おかげで、今回『桃太郎まつり』をがんばって作ってく れたことに対するお礼をいうのも忘れてしまった。 いま、この場を借りて、お礼を言わせてください。 今までの私のゲームのなかで、いちばんアニメーションの演出が気持ちいい作品 に仕上げてくれて、ありがとうございます! おまけに、私は名刺まで忘れてきていたことに気づく。情けないなあ。最近名刺 はいつも嫁が持っているので、ひとりで仕事場に向うと、まったく仕事人として役 立たずだ。 CC事業本部副部長の井上佳典さんと、ご挨拶。 今回『桃太郎まつり』の企画の部分を担当してくれた川田忠之(かわだただゆき) くんとは、8年ぶりぐらいの再会だ。 彼とはおなじ飛行機嫌いなので、話はいつも電車の話。 それにしても札幌のハドソンに来ること自体、8年ぶりぐらいなので、知ってる スタッフがほとんどいない。 唯一、確実に知ってる人のはずの角谷みか(旧姓・佐々木みか)サンもいない! きょうは忌引きで欠席のようだ。 土居ちゃんと、「やっぱりオレたちが来るのを嫌がって来なかったのかなあ!」 と冗談を言ってると、佐々木みかサンが入ってきた。いやあ! なつかしい。佐々 木さん、全然変わらないなあ。シャイなところも昔のままだなあ。 デジカメを向けると、まんまと顔をそむけられてしまった。こういうところも昔 のままだ。 佐々木みかサンは、ファミコン版『桃太郎伝説』のときに、入社したから、もう 13年になるのか。今やすっかり、グラフィックのチーフとなって、『桃太郎まつ り』に貢献してくれた。 何だか『フィーリングカップル10対2』といった不均衡なお見合い状態のよう な会議にお互い照れながら、『桃太郎まつり』の最終イベントの打ち合わせをする。 打ち合わせのあと、ひさしぶりに製作現場を見る。 製作現場はかつて、ハドソン札幌に毎月来てた頃と雰囲気は想像していたより変 わっていなかった。 変わらないわけだ。ゲーム作りは、パソコンだから、パソコンの中身は大幅に変 わっているけど、部屋の雰囲気に流行というものは無いからだ。 引き続き、『桃太郎電鉄X(仮)』の統轄プログラマーである、飛田雅宏くんが 加わって、三上寛幸役員、国政修くん、梶野竜太郎くんと、今後のゲーム製作ライ ンナップの確認をする。 けっこう年平均2本のゲームを作って行くことになってしまいそうだ。ちょっと 忙しいかな? 飛田雅宏くんに、『桃太郎電鉄X(仮)』の製作状況を聞く。 彼こそ『桃太郎伝説』、『桃太郎電鉄』を作った男なので、今回もやっぱり斬新 なことを考えているようだ。私も今回の『桃太郎電鉄X(仮)』は彼が作ると聞い たので、けっこう無茶なアイデアを出している。 きょうも「さくまサン、あのイベントの5段階目って、チューニングが無茶苦茶 になりませんか?」 ふっふっふ。やっぱり見抜いていたか。 こういうリアクションが帰ってくる人のとの仕事は楽しい。 私もだんだんゲーム業界で、ベテランになってしまったので、私が書いた仕様書 は、まったく間違いのないものだと思われて、何も言われなくなってしまうことが 多い。そうなると、市役所に書類を提出しているようで、テンションはどんどん落 ちて行ってしまうものだ。 柴尾英令くんに、さらに成沢大輔くんを加えた新生桃太郎チームは、こういうキ ャッチボールができるメンバーばかりなので、ひさしぶりに刺激的な仕事ができそ うだ。 午後5時30分。国政修くん、梶野竜太郎くんが、きょうじゅうに東京に戻ると いうので、土居ちゃんとふたりで、ススキノの「氷雪の門」へ行く。 このお店こそ、蟹が食べたくて、ハドソンでゲームを作るきっかけになったお店 だ。このお店の「焼きたらば蟹」がなかったら、今もこうしてゲーム作りを続けて いたかどうかわからない。 あの頃は、テーブルに乗り切れないくらい蟹を並べて、ばくばく食べたものだが、 きょうは土居ちゃんとふたりで、焼きたらば蟹を1本ずつ、たらば蟹の天ぷらに、 蟹雑炊だけである。 ずいぶんと少食になってしまったものだ。 食後、大通り公園まで歩く。 道端に凍った雪が少しだけ残っていて、乗るとつるつる滑るので、ちょっと恐い。 「つるつるつるりんだ!」と土居ちゃん。 「土居ちゃん、その題名、『桃太郎まつり』のなかに出てくるゲームの名前だから、 誰もわからないぞ!」 「そっか。はっはっは!」 店を出てすぐだと、そんなに寒いと思わないのだが、こうして5分も歩いている と、じわじわ、そこはかとなく寒さを実感させられて行って、そのうち、ちょっと 耐えられない寒さになって行く。 テレビ塔のある大通り公園は、札幌ホワイトイルミネーションを開催中。かつて しょちゅう札幌まで通っていたときも、イルミネーションはあったのだが、当時は ライトアップの色も、黄色一色だった。それがきょう見ると、青やら、緑やら、ピ ンクまであって、カラフル、美しいこと、美しいこと! 土居ちゃんとふたりなの が、もったいない美しさだ。 ホワイトイルミネーションを見ながら、地下鉄大通り駅に向って歩いて行き、か つて必ず宿泊した「サンルート札幌ホテル」を探す。当時あれほど宿泊したホテル が見当たらない。無くなったはずはない。こっちが地理を忘れ始めているのだ。 函館と違って、札幌はどのお店も、ホテルも人の出入りが多いから、札幌ではお 店の人と、誰も知り合いになることがなかったなあ。 地理もまた人で覚えるものなのかもしれない。 午後7時。なんとか「サンルート札幌ホテル」を捜し当てて、季節のババロアと いうデザートを好んで食べた地下のカフェレストランに入ろうとしたら、目の前で 閉店にされる。午後7時までの営業だそうだ。あれ〜? こんなに閉店時間早かっ たかなあ? 当時の記憶がどんどん曖昧になっていく。 仕方ないので、昨日入った「109」の喫茶店に向う。 「土居ちゃん、なんだか昨日からずっと、オレたちの思い出の場所は、みんな変わ っちまったなあ!」 「見た感じ変わってないようで、どのお店も無くなっていますねえ!」 「いちばんこのあたりによく来ていた頃って、13年前だからなあ。10年ひと昔 より前なんだから、仕方ないのかもなあ…」 おじさんたち、ちょっぴり感傷的。 午後7時30分。「109」の喫茶店で、土居ちゃんと『桃太郎大全集(仮)』 の打ち合わせ。きょうはおもしろいように、敵キャラのアイデアがぽんぽん出た! このお店は縁起がいいぞ。 午後9時。ホテルに戻り、喫茶店で出た『桃太郎大全集(仮)』のアイデアをま とめる作業。 さて、明日嫁と娘が、東京からやって来る。 明日のお昼は、土居ちゃんとうちの家族で、ジンギスカン料理を食べる予定。 嫁が来るということは、この日記を更新することができなくなるので、またまた しばらく日記はお休みです。 おそらく、28日(火)あたりから、再開の予定。 これでいよいよ秋の暴飲暴食ツアーは、めでたく終了となる。 というわけで、私はもうしばらく北海道にいます。札幌とは限らないけど。では また!
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