11月16日(木) 午後12時。築地に、天むすの専門店があるというので向うが、車が大渋滞。このまま では、約束の時間に間に合わなくなるので、銀座三原橋の「米沢ラーメン愛愛」に初めて 入る。 米沢ラーメンはわかるが、何で「愛愛」なのかというと、米沢藩の祖と呼ばれる人が、 上杉景勝の宰相であった直江兼続(なおえかねつぐ)という人。関が原の戦いのときも、 徳川家康がいちばん恐れていた男と言われている。 その直江兼続が、兜(かぶと)の前のところ、専門用語でいうと、前立物(まえたても の)に大きく「愛」という文字をつかっているのだ。 戦国時代でも異彩を放つ兜なので、歴史ファンにはよく知られている。 そんな名前をつけたラーメン屋さんなので、入ってみたのだが、米沢ラーメンの特徴で ある、細い縮れ麺は守っているものの、凡庸な味。ちょっと期待外れ。 午後1時。築地のハドソン。 きょうは『桃太郎大全集(仮)』の打ち合わせ。 メンバーは、土居ちゃん(土居孝幸)、柴尾英令くん、ゲーム・ディレクターの国政修 くん、あとハドソン桃太郎事業部の梶野竜太郎くんが、出たり入ったり。 いよいよきょうからゲームの核心にせまる部分の取り決めに入るので、少数精鋭という か、首脳部会議となった。 ということは、いよいよ『桃太郎大全集(仮)』をハドソンと契約ることが決まったと いうことだ。と同時に、FA入団の柴尾英令くんを加えた新生桃太郎チーム最初のゲーム が、スタートする。 攻撃力、守備力、エンカウント率、アルゴリズム、命中率、コマンド、ウインドウが開 く順番といったものを、雑談を交えながら、決めて行く。さすがに百戦錬磨の兵たちなので、雑談で脱線しまくっても、いつのまにか本題に話を 戻して、決めるべきところは、決めていく。 私にとって、かつてないゲーム作りの会議に興奮する。 かつての若者が多く参加する会議と、まったく違う雰囲気に心底驚く。 たとえば仕様書について話をしていると押し黙っていて、たまたま、TVやプロ野球の 話をはさむと、とたんにその話題に入って来て、ずっと主導権を握り、仕事の話に戻さな いという若者が本当に多かった。 きょうのこのメンバーは、私が会議用に作ってきた叩き台の原稿に対して、ケチをつけ る。ケチをつけるけど、ちゃんとその理由をいう。 間違っても「僕的には嫌いですね!」「どういう風に嫌いなの?」「いえ、なんとなく」 とは言わない。 しかも、代案をしっかり出す。 14〜5年間ゲームを作ってきたけど、こういう会議をしたかった! そんなごくあり ふれた会議の風景じゃないですか?という人もあるだろう。その考え方は正しい。 ただし、かつての私のチームの会議の環境は、まったく劣悪で、私が作ってきた原稿を ろくすっぽ読まずに「いいんじゃないですか?」しか言わないような人たちだらけの会議 の連続だった。 だったら、私は会議に出席せずに、家で原稿書いていたほうが、仕事が早く進んでいい よと、いつもつぶやいていた。 おっと、あまりこういう話はよくないな。 とにかく理想型で、会議が進んでいる。この調子で、念願の極めの細かい戦闘のあるR PGを完成させたいものだ。 午後7時。今朝行けなかった、築地の天むすの専門店を探し出して、たどり着くが、な んと! 本日、天むす売り切れました!だって。 くーやーしーい! 仕方がないので、ハドソンに来たときは恒例のお寿司屋さん「太老樹(たろうじゅ)」 に行く。だんだんお店の人とも顔なじみになってきた。 なってきて始めて気がついたんだけど、このお店の名前は、「太老樹(たろうじゅ)」 ではなくて、「太老樹(たろうき)」と読むようだ。 ずっと読み方を間違えていた! あいかわらず、回転寿司の値段で、本格的なお寿司屋さんより、はるかに美味しいお寿 司を食べさせてくれるお店だ。 午後8時。もう少し仕事を進めましょうと、全員でハドソンに戻って、さらに会議。 桃太郎シリーズのファンにとっては、とっても魅力的な話題がぽんぽん登場して、たち まちのうちに、いろいろなルールが決まっていく。 ああ! 抽象的な書き方しかできないなあ! 桃太郎、金太郎、浦島、夜叉姫、貧乏神、びろーん、風神、雷神、一寸法師、スリの銀 次、これが一体何を意味するか!? 言いたいけれど、言えないんだなあ! 午後10時。帰宅。 明日も、ハドソンで会議。
-(c)2000/SAKUMA-