11月4日(土)

 午前11時。のんきな家族は、天気がよくなった京都の麩屋町通りを北上中。
 新しくできたお店などを覗いて歩く。
 御池通りを越えたあたりの麩屋町は、住宅街でお店がほとんどなかったのだが、ぽつ
りぽつりと、料理屋さんとか、骨董品屋さんができていた。

 1軒の骨董品屋さん「びいしい」というお店に入る。
 できたてほやほやのお店なので、白木の店内が明るい。
 53歳の若い話好きの店主さんと話をしていると、京都相互タクシーの宮本さんから
電話が入る。

「さくまサン! 京都御所行かれるいうてましたけど、きょう特別拝観やってないよう
ですよ〜!」
 ええっ? この連休中は、予約なしでも拝観できると思ったんだけどなあ。まあ、宮
本さんの情報のほうが正しいに決まっているので、あとで車をお願いしますといって、
再び、麩屋町通りを北上する。

 う〜ん。残念だなあ。 
 何度もNHKの大河ドラマ『葵・徳川三代』で、京都御所の話がでていたので、一度
ゆっくり見てみたいと思っていたのだ。どうも11月の15日あたりから拝観OKらし
い。何でそんな中途半端な時期に。そうか。基本的に多くの人に見てほしくないんだな。
ふんふん。この辺が京都のいやらしいところだ。相手に気づかれないように、守備を固
める。

 午前11時30分。麩屋町夷川上ルの洋食屋さん「HAFUU」に初挑戦。
 ここも最近できたばかりのお店で、新築の店内が気持ちいい。
 カウンター13席のお店だけど、狭い感じはしない。
 女性に大人気だというのがわかる清潔感だ。
「HAFUU」は「はふう」と読む。  どこかの雑誌に、カツサンドが美味しいと書いてあったので来た。  嫁と私は、カツサンド、1500円。  娘は、はふうステーキ丼、2000円。
 先に、カツサンドが来た。  はふはふ。熱い。  おや? 左から手が伸びてきたぞ。おっ、娘だ。カツサンドを取られた! 「こらっ!」 「さくちゃん、おいしいよ、これ!」 「答えになってねーぞ!」  でも、本当に美味しい。お肉がやわらかくて、トマトとタルタルソースのようなもの がはさまっていて、ちょっと食べづらいけど、抜群に美味しい。  これだけやわらかいお肉はけっこう珍しい。  気がつくと、カツサンドを半分、娘に食べられていた。 「半分取るかあ?」 「さくちゃん、おいしいよ、これ!」 「答えになってねーぞ!」  この娘は、美味しい物のときは、何をしてもいいと思っている。 「おまえのステーキ丼をがばっ!と食ってやるからな!」
 娘の、はふうステーキ丼が来た。  娘が食べ始める。 「娘よ、何風味なんだ?」 「……………」 「醤油味か?」 「……………」 「おい! 黙々と食うなっ!」 「さくちゃん、おいしいよ、これ!」 「答えになってねーぞ!」 「さくちゃんは、この味、好きだと思うなっ!」 「だったら、早くくれよ!」 「わ〜〜〜! おいしい〜! どうしよ〜!」 「くれ!」 「待って!」 「何で、オレが待つ必要あるんだよ!」  娘から奪って食べる。  おお! 胡麻風味だ。私が大好きな胡麻風味だ。  ご飯が美味しいなあ。  たまに、お肉は美味しいんだけど、ご飯が美味しくないお店があるけど、このステー キ丼のご飯はタレも染み込んでいて、美味しいなあ。  ボリュームたっぷりなのが、難点ぐらいで、あとは申し分なし!  マンションからも近いし、これはいいお店を見つけた。  料理人さんたちの面構えも、百戦錬磨といった感じの人ばかり。  日替わりランチも950円と、それほど高くない。カウンターだから、ひとりで食べ に来るには最適だ。  今後、何度も通いそうなお店を見つけたときは気分がいい。  食後も、麩屋町通りを北上、蛇行しながら、丸太町通りに向って、お店を覗きまわる。  ほう。ほかにもまだ、美味しそうな洋食屋さんがあるなあ。  この界隈はけっこう楽しめそうだ。  骨董屋さんと、陶器屋さんが増えてくる。  午後12時30分。京都相互タクシーの宮本さんが到着。  干菓子屋さんなどに寄ってから、宮本さんの車で出発。きょうは遠出しない。  午後1時。京都西陣の「サンムーン京都」に行く。自然染織優品生活とある。  染織家というのかなあ。その世界では有名な伊豆蔵明彦(いずくら・あきひこ)さん のお店。  1ヶ月ほど前、日本橋三越で、たまたまこの人が作った、染め織りのポーチを買って、 私は最近これがお気に入りなのだ。単行本くらいの大きさなんだけど、留め金の部分が、 足袋の留め金になっている。これがおしゃれで、おもしろくて、人に見せると笑いが取 れるので、うれしいのだ。  きょうもこのお店で、この染め織りのポーチを買ってしまった。京都に置いておく用 だ。ほかにも名刺入れなど買う。クレジットカードとか、JRカードを入れる。軽くて いいぞ。  西陣は、着物が衰退して、火の消えたようい、静かな町になっている。  でも伊豆蔵明彦のように、染め織りをつかった新感覚の洋服を作ったりする人が出て くると、また町が活性化するのでは。外国で大人気だそうだから、そのうち日本でも爆 発的にヒットするだろう。  本当に日本というのは、外国でヒットしないと認めない国だ。  自分の目でいいと思った物を、もっと他人に啓蒙しようよ!  このあと、家具屋さんに寄ってもらって、京都のマンション用のタンスなど買う。宮 本さんの顔が利く値段の安い家具屋さんで、さらに値引きしてもらう。まったく宮本さ んには、車を運転してもらう以上のことをいつもしてもらう。宮本さんのような才気煥 発な人がいると、戸田圭祐が「わての立場がありまへん!」と言っていたけど、仕方な いよなあ。  宮本さんは、人に尽くすことを常に考えている人だもの。  しかも思いついたら、結果を恐れずにすぐ行動に移すもん。    午後3時。私だけ、京都のマンションで降ろしてもらって、嫁と娘は買い物に。  仕事の続きがしたかったのだ。  昨日、薬師寺から、伊賀上野に向っている間に、娘と打ち合わせして、変更した『桃 太郎大全集(仮)』のシナリオを早く直したかったのだ。  よしよし。順調! 順調!  いいシナリオになって来たぞ。  イントロ部分は、前回の京都合宿とは、まったく違うシナリオになってしまった。ま あ、改善だからいいや。  午後6時。嫁が戻ってきて、料理の準備。  なんと、陶器の釜を買って来て、釜でご飯を炊こうというのだ。  それは楽しみ!  私はそのまま、『桃太郎大全集(仮)』の仕様書作り。    午後7時。娘も散歩から帰ってきて、食事。  頼んでおいた、若狭の柳かれいもある。卵かけご飯用の大きな卵もある。千枚漬けも ある。納豆もある。黒豆納豆もある。山芋もある。むかごもある。おぼろ豆腐もある。 あるある大事典か!? 「嫁さんよ、全部私が好きなものを買って来てくれたのは、うれしいけど、とてもじゃ ないけど、食べきれないよ〜!」 「ちょっと買いすぎたかもしれない」
 それでも、美味しいものだから、次々と食べてしまう。  お釜で炊いたご飯は、やっぱりふっくらしていて、美味しいやあ!  きょうは今週から来週にかけての、暴飲暴食ウィークの中日として、少食にして、お 腹を休めるために、マンションで食事という企画だったのに。  やっぱり食べ過ぎた。  ダイエットは、明日からではなく、ええいっ! 来月からじゃい!  食後も、ひたすら『桃太郎大全集(仮)』の仕様書作り。  明日、東京から3人来て、暴飲暴食ツアーもクライマックスに突入する予定。  さて一体誰が来るでしょうか?   ヒント。土居ちゃん(土居孝幸)と、カズ坊(関口和之)がスケジュールの都合で来 れなくなった。  さて、誰が来るかを想像して、明日の日記をお楽しみに!  もっとお楽しみは、月曜日!
 

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