10月24日(火) きょうもまだ鼻がずびずび。風邪の一歩手前。 寸止めのまま、朝から『桃太郎大全集(仮)』の仕様書作り。 午前11時30分。嫁と、銀座の讃岐うどん専門店「さか田」で、生しょうゆ うどん。やっぱりこの店の讃岐うどんが、東京ではいちばんの味だなあ。いつか 本場讃岐のうどんを食べてみたいものだ。午後1時。築地のハドソンへ。 きょうから『桃太郎まつり』のテストプレイ。…だと思っていたら、ゲーム・デ ィレクターの国政修くんが、さらによい出来にすべく、改良を加えるための提案が ほしい会議にしたいと言い出すではないか。 もう十分おもしろいゲームになっているのに、まだまだ気になるところを改善し ようなどという事態は、ハドソンにおいては初めての経験なので、戸惑う。 この14年間というもの、いつも締め切りぎりぎりで、競馬のゴール・シーンの ように、どどどどどっ!となだれ込んで、はい、終わり!というゲーム作りばかり して来たので、驚くと同時にうれしい。 ゲーム作家なら、ぎりぎりまで自分のゲームを直し続けたいものだ。 さて、きょうのメンバーは、土居ちゃん(土居孝幸)、柴尾英令くん(ふっふっ ふ。しっかり桃太郎チームの一員になってしまったぞ。しめしめ…!)、ゲーム・ ディレクターの国政修くん、宮路一昭くん、ハドソン桃太郎事業部の石崎仁英くん、 武田学くん、放送作家の福本岳史くん。 『桃太郎まつり』のオープニングから、みんなでわかりにくいメッセージ、イベン トなどにケチをつけていく。 ケチをつけていくというと、すごく性格の悪いやつらのようだが、つまらないゲ ームのテストプレイだと、誰もが「いいんじゃない?」「けっこうおもしろいです よ!」「別に直すところはひとつもないんじゃないかな?」「ボクはおもしろいと 思ってますよ〜!」などと言い出すものだ。 こういったセリフが並び始めて、昨日見たプロ野球などの雑談が始まったら、お しまいである。つまらないから、誰も改善が浮かばなくなっている状態に陥ってい る証拠なのだ。 ちなみに「どこがおもしろかった?」と聞くと、答えに窮する。 「じゃあ、どこがよくなかった?」と聞くと、「全部良かったですよ〜!」と答え る。この抽象的な会話がいちばん恐いのである。 無反応は、最大の罵倒である。 これを見誤ると、出来の悪い作品を世に送り出してしまうものだ。 そういう意味では、きょうの『桃太郎まつり』のテストプレイは大成功。 次々に苦情が出る。しかも作品がよく出来ている上での苦情だけに、よい文句ば かりであった。 「村マップのここの人と、ここの人のセリフは、場所を入れ替えたほうがいいんじ ゃないですか?」というのは、ストーリーを把握した上での、提言だから<良い苦 情>なのだ。 「この○○○○というキャラは、ボクではなくて、オラと言ったほうが自然じゃな い?」 これもまたキャラをみんなが認識した上での、<良い苦情>である。 いちいちメモする国政修くんは、大忙しである。 私もメッセージの直しをその場で始める。 午後4時。ハドソン桃太郎事業部の梶野竜太郎くんが、1本のビデオ・テープを 持って、登場する。むむ? ひょっとして、そのテープは! そのまさかであった! ゲームボーイカラー版『桃太郎伝説1→2』のTV−CMのビデオ・テープであ る。そう! 私が出演しているやつだ。むひょひょひょ〜〜〜っ! 編集し終わった、出来たてのホッカホカのビデオ・テープだそうだ。 「見よう! 見よう!」 「見ましょうよ!」 「うわ〜〜〜! 恥ずかしい〜!」 けっきょく、全員で見る。 私が登場する。 げっ! こんなにどアップだったの? みんなが大爆笑する! 「さくまあきらが、ひらめいた!」 気がついたら、みんながこのセリフのときに、私が右手をふりあげるポーズを真似 しているではないか! すっかり、きょう1日、このポーズが流行してしまった。 みんなでこのポーズをデジカメする。 「おもしろい! おもいしろい!」 「こりゃあ、おもしろい!」 「これはツッコミの入れやすいCMだあ!」 「さくまサン、名前がでかでかと出てますよ!」 「名前がCGで回転してますよ!」 「あっ、後ろにキングボンビーがいた!」 「いい出来ですよ、さくまサン!」 「次は土居ちゃんがCMに出ろ!」 「げげっ! それはやだ!」 映画好きの柴尾英令くんが、「すごい機材使ってそうですねえ!」という。さすが 見るところが違う。 「そうなんだよ! すごいよ〜! 劇場で流して十分耐えるフィルムらしいよ! 私 の演技は耐えられないけど!」 しかし、私がビデオを直視できないという、恐れていた最悪の状態ではなかったの で、ホッとする。最後の表情はやっぱりぎこちなかったけど。 このCMは、12月中旬から、来年の1月中旬くらいまで放映されるそうである。 見たらどんどんツッコミを入れてくれいっ! 再び、『桃太郎まつり』のテストプレイ。 ミニゲームが下手くそな福ちゃんがプレイしているさまを、みんなで見て、ああで もない、こうでもないと論議しているのだけれど、その福ちゃんが何度もおなじミニ ゲームをやっていくうちに、ぐんぐん点数がよくなっていく。この姿を見て、みんな で安心する。 ミニゲームというのは、プレイする度に、上手くなっていかないと、やる気がしな くなる。そういうゲームを作り、チューニングするのが難しいのだ。 午後5時30分。柴尾英令くんと、うちの嫁が、腹話術のいっこく堂のライブを、 見に行くため、退席。 本当は、ここでいつもなら解散なのだが、『桃太郎まつり』の先がみんな見たくて、 もうちょっとテストプレイしようよ!と、続行決定! いいムードだ。 出来がいいものだから、終いには、宮路一昭くんにBGMの変更を要求。 宮路一昭くんは、金曜日までに、最低3曲、新曲を書いてくれることになった。 これが決定した直後、宮路一昭くんの携帯に電話が入り、『にゃんだー仮面』の曲 を来週の月曜日までに、10曲という依頼が入った。はっはっは。仕事とは、重なる ときは、重なるものだと、みんなで大笑いする。 午後7時30分まで、テストプレイを続ける。今週は毎日誰かが来て、テストプレ イすることになっているので、この辺にして、また明日にすることに。お腹も減った。 午後8時。西麻布の「内儀屋(かみや)」に、土居ちゃん(土居孝幸)と福ちゃん の3人で行く。 「おや、男性3人で来るのは珍しいですねえ!」 「ええ、きょうはうちの娘に内緒で来てるんですよ。試験前でもここに来るといった ら、あいつ来ちゃうから!」 いつもこのお店の料理は美味しいので、つい食べ過ぎてしまうのだが、福ちゃんが いるので、たくさん食べずにすむ。 女主人の方も、福ちゃんが「お代わりを!」という前に、追加のご飯を持ってくる。 ナイス・ギャグである。 午後9時。西麻布「TeTe’s」でお茶を飲みながら、3人で『桃太郎大全集 (仮)』の打ち合わせ。 土居ちゃんとゲームの話をすると、次から次へとくだらないアイデアが出てくる。 『ジャンプ放送局』から『桃太郎伝説』『桃太郎電鉄』と、もう20年近く、いつ も冗談いいながらアイデア練ってるからね。ほとんど条件反射のようにアイデアが 出る。 特にきょうのはね…おっとっと! おもしろいアイデアが浮かんだけ ど、言っちゃいけない、言っちゃいけない! ガマン、ガマン! 先は長いぞ! 午後10時30分。帰宅。 さっそく、「TeTe’s」で出たおもしろいアイデアを、ワープロに記録して おく。へっへっへ! 早くここをみんなに見てもらいたいなあ! また明日もハドソンへ行く!
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