10月18日(水)

 カタカタ…。カタカタ…。カタカタ…。カタカタ…。カタカタ…。
 急げ! 急げ!
 カタカタ…。カタカタ…。カタカタ…。カタカタ…。
 早く文章を打って、プリント・アウトしてもらって…。
 カタカタ…。カタカタ…。カタカタ…。カタカタ…。
 午前10時56分発のあさま511号で、軽井沢に行かないと…。

 …というペースで、我が家の朝は進んでいたのだ。
 食い道楽夫婦は、なんともふとどきなことに、お昼ご飯にちょいと、軽井沢で
おそばなんか食べて、コーヒー飲んだら、さっさと夕方ぐらいには、東京へ戻って
きてしまおうという日帰り旅行を計画していたのだ。

 しかも、いまのいままで、東京駅に向っていた。
 タクシーのなかから、軽井沢のおそば屋さん「東間(とうま)」に電話したのだ。
 以前、柴尾英令くん、成沢大輔くんといっしょに行った軽井沢の一軒家のおそば
屋さんだ。成沢大輔くんからお昼もやっていると聞いて、いてもたってもいられな
くなっていた。
 ところが「この時期は、お客さんの予約が入らない場合は、お店を閉めてます。
少なくとも前日までに予約してほしい」と言われて、が〜〜〜ん!

 いきなり思い立って、軽井沢までそばを食いに行こうと思う夫婦もバカだが、不
定休で対抗するお店の根性も見上げたもんだ。

 しかもこの話にはまたしてもみなさんを喜ばしてしまうような裏話がある。
 実はうちのグルメ貞子には、軽井沢行きを内緒にしていたのだ。
「明日は遅くとも午前10時には家を出ないといけないから…」と嫁と話している
と、「えっ? 明日どこ行くの?」
「いや、おそば屋さんだよ!」
「ふ〜ん…」
 どうもこの「ふ〜ん…」で、すでに呪ってやるオーラが作動していたようだ。
 言えば、絶対学校を休んじゃうから、言えなかったのになあ。 

 午前10時30分。「あの〜、運転手さん、予定変更です…、東京駅じゃなくて、
銀座で…」。
 そんなわけで、タクシーのなかで軌道修正。とりあえず、銀座で降りる。急きょ
「銀ぶら」と、あいなった。
 家具屋さんやら、熊本物産館を覗いたりしながら、ぶらぶら…。

 午前11時。スモークステーキのお店「煙事(えんじ)」の前に立つと、メニュ
ーに「ベーコンエッグ丼」という文字があった。何じゃ、それ!
 もとよりこのお店のスモーク料理が食べたくなっていたので、入る。
 ベーコンエッグ丼は、半熟玉子の目玉焼き2個に、スモークされたベーコンが5
〜6切れの丼物であった。
 味のほうは、スモークベーコンは、さすがに美味しいのだが、まあ、話のタネに 1回だけ食べることをお勧めする域を脱していない。もうひとつあった親子丼のほ うを次回食べてみたい。  ちなみに、ベーコンエッグ丼は、950円なので、話のタネのしゃれですむ値段 なので、興味のある人はどうぞ!  食後、さらに「銀ぶら」!  Adabat(アダバット)という私がよく買う洋服のメーカーさんがあったので、洋 服を衝動買い。続いて、よく買うカバンの「BREE」もあったので、またまた衝 動買い。しかもおなじ型のこのカバンを買ったのは、3回目だ。いつも写真で肩か ら下げているあのカバンだ。  今後、写真で見てもまったく変化がわからないはず。  午後1時。恵比寿に出る。予定変更ついでに、DCカードの会社に寄り、書式に 印鑑が足らないところを押しに行く。これでようやく我が家もやっとクレジットカ ードというものを持つようになる。  今ごろ初めて持つ私たちを笑ってくれい!  しかし、ダイナースにも、アメリカンエクスプレスカードにも拒否、または無視 されて、30分ほどは悩んだぞ。そんなに私は社会的に信用がないのか? 無いか もしれんが…。と思ってはいけない。  まあ、クレジットカード作ってもつかわないだろうな。  恵比寿の駅ビル「アトレ」2Fの「かね松」に寄って、バイトの佐藤友美さんと 「千疋屋(せんびきや)」でお茶。  そろそろ挙式だと思っていたら、数日前に挙式をすませたばかりで、新婚旅行が 11月下旬であった。  5年前、うちに武蔵野美術大学の学生さんとしてバイトに来ていた女の子が、就 職して、結婚するとは。  時の流れは、早いものだ。  午後3時。またしても「アトレ」5Fの有隣堂で、大量に本を買い込んで、帰宅。 最近買う本の量に、読む速度がまったく追いつかない。困ったものだ。1週間ぶっ 通しキャンプでもしないといけないかな?  午後3時30分。ムサシノ広告の伊東正義が来る。  例によって、来年の話をすると鬼が笑うというが、伊東正義はいつも鬼が笑うよ うな時期に、来年の話を持ってくる。  仕事の話を少々。あとは世間話。  大学の同級生だったふたりが、こうしていつのまにやら葬式の話しやら、子ども の話やら、病気の話やら。もう大学出てから、25年以上だもんなあ。  午後6時。柴尾英令くんが来る。 『桃太郎大全集(仮)』の京都合宿後の私の気持ちの変化を説明して、今後の予定 をすり合わせる。私の日記を見ただけで、私が実は今回のゲームをどうしたいのか を読み取っていた柴尾英令くんは、さすがである。  こういう好敵手と仕事ができるくらい、わくわくするものはない。  おや? もう娘が学校から帰ってきた。  きょうは遅いんじゃなかったのか?  なんと、嫁がiモードに「柴尾英令くんと夕食をいっしょにする」と書いただけ で予定を切り上げて、さっさと帰って来たというのだ。  いいたいこの執念はどこから生まれるのだろうか?  しかも私は、柴尾英令くんと「たぬき」か「たらふくまんま」を予定していたの に、娘が突然、中華料理の「SHEF‘S(しぇふず)」に行きたいと言い出す。   何でこの時期の「CHEF‘S(しぇふず)」が特別だということを覚えている んだ!  この時期、10〜12月まで、「CHEF‘S(しぇふず)」には、上海ガニが 入荷するのだ。その時期を覚えているのではなく、身体が欲しがることで思い出し ているのだ。恐ろしいガキだ。  午後7時。そんなわけで、柴尾英令くんとわが家族で、四谷三丁目近くの大木戸 坂下の「CHEF‘S(しぇふず)」へ。  お店の人が、2週間ほど前に、すぎやまこういち先生ご夫妻が見えられたことを 教えてくれる。実はひそかにこの日記で、先生方を悔しがらそうと思ったのだが、 先を越された!  今回の京都旅行では、桃太郎チームとお茶をごいっしょしただけだったので、こ こに来たことを聞くチャンスがなかった。  私はそんなに中華料理が好きではないのだが、ここの中華料理ははっきり美味し いと認識できる。  トマトを炒めて、かに玉の玉子のように美味しい玉子といっしょに食べる料理は、 とても中華料理とは思えない絶品の味である。    蒸しパンをカニみそをジャムのようになすりつけて食べる料理は、いくら言葉で 説明しても、説明しきれない。カニチャーハンの豊潤な味わいは何といったらいい かわからない。
 ここの料理は、基本的に家庭料理っぽい。ところがそのすべてが上品な作りと来 ているものだから、その美味しさを伝えづらい。上海ガニからして、小さいし、食 べるところが少ないから、こんなもののどこが美味しいの?と断言されると、説得 力に欠ける。たしかにタラバガニのほうが大きさを伝えるだけで、それは一度食べ てみたいと思わせるのが、カンタンだ。
 まあ、ねぎラーメンのスープを、まるで玉露のときのように、そ〜っと、そ〜っ と、真剣な眼差しで、飲むガキがいるってことで察してほしい。  お店のポスターに「味の頂点・上海ガニ」とある。  上海ガニを、グルメの頂点と呼ぶ人は本当に多い。まだまだ私はその域に達して いないが、毎年毎年、じわじわ、その頂点に向って、登山している実感だけはある。 いま、五合目ぐらいかな?  食後、新宿三丁目まで出て、「ぶらうに〜」で飲む。  柴尾英令くんと『桃太郎大全集(仮)』をどういう風に作って行くかということ を、さらにさらにすり合わせ。  セーブをどこでするか? すばやさの数値管理をどうしたら心地よいかという込 み入った話題にまで、話は及ぶ。その話を目をらんらんと輝かせて聞いている女子 中学生の視線はちょっと恐い。  気がついたら、午前0時にならんとしていた。  帰ろう、帰ろう。  この続きはまた今度!  ふっふっふ。柴尾英令くんとのセッションは楽しみだぞ!  あ〜、どんな内容になるか、ぶちまけたいぞ〜〜〜! 我慢、我慢!
 

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