9月11日(月)


『ドラゴンクエストVII』をプレイしたいのをガマンして、朝から『桃太郎まつり』の
メッセージの直し。

 今回の『桃太郎まつり』は、国政修くんとの共同作業みたいな感じなので、よもや
そんなにメッセージの量は多くないと思っていたら、さにあらず!
 バラエティRPGと銘打っているものの、中身はアクションゲーム+アドベンチャ
ーゲームだ。まさか本当にRPG並みのメッセージ量が入っているとは思ってもみな
かった! 

 なにしろ、私が作るゲームは、簡単そうで、難しいこと、この上ない。
 貧乏神の口調にはルールがあって、こういう場面では、「…なのねん!」を入れな
いとか、ここでは「…なのねん」ではなく、「なのね〜ん!」だとか、けっこう細か
い。
 仙人も必ず「ウヒャヒャ…!」というとか、キングボンビーの「グエッヘッヘ!」
は「ヘ」が2つだとか、とにかく他人が代わりに書くことができないゲームだ。
 おまけに、浦島太郎は、桃太郎に対して、「桃太郎さん!」というけど、金太郎は、
桃太郎に対して、「おい、桃太郎!」と呼び捨てにするという風に、やたら見えない
ところでの取り決めが多い。

 そんなわけで、最後は私がメッセージをチェックしないことには、ゲーム作りが完
了しない。まあ、誰でも代われるようなら、私の仕事は何なんだってことになるから
ね。

 午前10時。早朝から働いていたので、お腹が空いた。
 嫁と喫茶店「らぴす」さんで、モーニング・セット。「らぴす」の渡辺さんと、鎌
倉の話をしているうちに、ますます鎌倉の家がほしくなる。
 しかも最初の内は、湘南に家を探していたのは、ゲーム部屋の移転という趣旨をす
っかり忘れきっていた。霊能者の岩崎摂さんが、「海だと、さくまサン、仕事しなく
なるからダメ!」といっていたが、本来は仕事部屋用なのだから、むしろ家があった
ほうがいいのだ!…という本分を、すっかり忘れていた。
 やっぱり、私の頭は、遊ぶことしか考えていないようだった。
 鋭いぞ、岩崎摂さん!
 私の心の奥底まで見抜くとは!

 午後1時。嫁と築地のハドソンへ。
 きょうは『桃太郎まつり』のメッセージの打ち合わせ。
 メンバーは、土居ちゃん(土居孝幸)、放送作家の福本岳史くん。

 いよいよ、ゲームボーイアドバンスの実機が到着した。
 土居ちゃんが「ちょっとやらせて!」とか言いながら、気がついたら、延々、たび
だちの村から、カチカチの村を越えて、ボンビー村まで進んでいた。
「これ、おもしろいけど、ボンビー村の謎解きがわかんないな!」
「土居さん、そこはまだできてないんですよ!」と国政修くん。
「あっ、そうなの! なんだあ!」
「いきなり、そんなところまで、進まないでくださいよー!」
 土居ちゃんは、ゲームの出来がいいときは、人の話も聞かずに、ゲームに熱中する
からいいんだけど、本当に会議の内容を聞いていない。
 しかも、あの8月中に完成するはずだった、イラスト100枚が、まだ終わってい
ない! あと20枚だそうだ。あげくに国政修くんに、「水曜日のお昼に取りにきて
くれる?」と宣言した手前、そのままそそくさと、帰ってしまった。
 このままここにいて、夕ご飯までみんなといたら、間に合わないと思ったようだ。
締め切りの日が決まったときの土居ちゃんの行動は敏速だ。
 しかし、よく考えると、結果的に土居ちゃんは『桃太郎まつり』のテストロムをや
りに来ただけではないのか!?

 さて、私のほうは、画面を見ながら、メッセージの直し。
 今回アクションゲームをやるごとに、「○段」という風に、段位がもらえる。これ
をたくさんクリアしていくと、合計100段になる。
 だからある場所で、10段になったら、20段になったら、メッセージを変える必
要がある。あらかじめ、国政修くんが、10段ごとの仮メッセージを入れていたんだ
けど、私がクレームをつける。
「3段とか、5段あたりにも、メッセージ入れないと、ふつうのプレイヤーは、なか
なか10段まで行かないんじゃないの?」
「え〜、10段までは、すぐだと思いますよ!」
 というわけで、ゲームが下手なことでは定評のある福ちゃんがやってみることに。
彼の場合、ゲームボーイアドバンスのように、小さいハードに対して、指が太すぎる
という難点がすでにある。

 結果、2つゲームやって、初段!
「やばいよ、国政くん!」
「う〜ん!」
「いや、あの、言い訳するようですが、この『○○○○○○○○』というゲームは、
ボク、本当に苦手なんで、データにはならないと思うんですよ!」と福ちゃん。
「本当かなあ、福ちゃんが得意なゲームを探すほうが大変だぞ!」
「やっ! やっ! いや! お願いですから、もうひとつ先のゲームをやらせてくだ
さいよ! こっちならボク、得意なんですからあ!」
 といって、やったゲームで、いきなり、7段を記録!
「おお! 福ちゃんのように太い指の人でも、楽しめるゲームなのか、『桃太郎まつ
り』は。これは、いい売り文句になるなあ!」
「こういうひとつでも得意なのができると、いい気持ちになれるゲームっていいです
ねえ!」ということになって、一件落着。

 それでも世間には、福ちゃんみたいに、ゲームが下手なのに、ゲームが好きな人は、
35人くらいいるだろうということで、3段、5段、8段のときに、ある場所に行っ
たときに、メッセージが変わるようにした。
『桃太郎まつり』が発売されたときは、いきなり高記録を出さずに、ぜひ3段、5段
のメッセージも読んでほしいものだ。

 午後6時。ふうっ。さすがに根をつめて、メッセージを直すので、酸欠状態になる。
これ以上だと、体力が続かないので、きょうのところはここまでにする。
 能・狂言の役者さんが、演技中は息をしないということは、学校で習ったが、数1
0年後、気がついたら、私もおなじように、メッセージを考えるとき、息を止めて書
いていることに気がつくから、人生とはおもしろいものだ。

 午後7時。嫁と福ちゃんの3人で、四谷の欧風カレーのお店「オーベルジーヌ」で、
シーフード・カレー。
 明日から、2泊3日で、福ちゃんと、京都、大阪に行くので、その打ち合わせなど
など…。

 午後8時。福ちゃんはこのあと、まだお仕事で、荻窪へ。私は帰宅。
『ドラゴンクエストVII』に手が伸びるのを、必死にガマンして、明日の準備をした
のち、『桃太郎まつり』のメッセージの直し。

 なにしろ、この『桃太郎まつり』が順調に完成すれば、来年3月21日のゲームボ
ーイアドバンスの発売と同時のソフトになれるので、がんばらないわけにはいかない!
 ハードと同時発売は、桃太郎シリーズでは初めてになるのだ。
 というわけで、明日からの関西出張に、『ドラゴンクエストVII』を持っていかな
い固い決意! う〜む。自分のことを誉めてあげたいぞ! 
 シドニー・オリンピックも近いなあ!

 それではまた明日でござる!
 

-(c)2000/SAKUMA-