8月23日(水) 柴尾英令くんの日記にも書いてあったけど、糸井重里さんの『マザー3』の開発 が中止になった。 昨夜嫁が糸井さんにメールを送ったら、もう返事をいただいた。 忙しい渦中にある人が、間髪いれず返事を書いてくれる。う〜む。達人ほどフッ トワークが軽いものだ。見習わなければ。ちょっと口先だけっぽいが…。 そんなフットワークのいい糸井重里さんが、製作を断念するところに、今日のゲ ーム事情が窺われる。N64で開発して、6年間。その間スーパーファミコンや、 DD向けに仕様を変更したこともあるようだ。 本当にゲームは、ハードばかり進化して、ゲームデザイナーたちはその進化に振 り回される。私にしても、スーファミになれてきて、スーファミの画面でどんな色 をつかうと美しく映えるかということまで熟知したところで、プレイステーション のスペックと取り組まないといけない。 研究した成果を、次のゲームに生かそうと思ったときには、そのハードが無くな っているといったことがあまりにも多すぎる。 ハードが進化して、何でもできるようになった分、ゲームデザイナーが表現した いものが、プログラマーさんに伝わらなくなることが本当に多い。こっちは、アン パンマンのような子ども向けの絵にしたいのに、プログラマーさんの趣味で、大友 克洋さんの絵にされてしまうようなケースは驚くほど多い。 私が『新桃太郎伝説』を最後に、新作RPGを作らなくなって、6年目。『マザ ー3』を作り始めて、6年目の中止。もはやあの頃からゲーム作りは難しい段階に 入っていたのだ。 ゲーム業界は『マザー3』の中止を本気で考えないと、本当にTVゲーム産業自 体無くなってしまうことを懸念しないといけない。 午前11時45分。嫁と新橋駅前ビルB1「おか田」に初挑戦。 ビーフソースかつ丼のお店だ。 ビーフに、ソースと聞いただけで、おデブさんは喉が鳴ってしまうよね。 真っ白いご飯の上に、細かく刻まれたしゃきしゃきのキャベツが、下地のように 敷かれている。その上に、コロモの薄い、焼きがミディアムレアのやわらかいソー スをたっぷり吸った牛かつが、乗っている。 しかもその牛かつの上には、デブ族の嗜好品であるマヨネーズが、タータン・チ ェック状に塗られている。 ああ、もう! このお姿だけで、美味しそう!ランチは980円 がぶり。はぐはぐ…。かりっかりっ。 牛かつの一切れずつが小さいの食べやすいし、レアな感じがわかりやすい。 新橋という土地柄から、もっとラードの匂いがぷんぷんする、下品な味を予想し ていたのだが、何ともお上品。これは病みつきになりそうな味である。 桃太郎チーム御用達のお店になる可能性大なお店である。 食後、第一ホテルでお茶を飲み、湿気の多い暑さなので、さっさと帰る。 このところ朝晩涼しくて、すごしやすくなったと思ったら、またこの暑さ。 お店のクーラーとの温度差が激しくて、身体がきしむ。 午後1時30分。帰宅。 きょう映画鑑賞。日本映画を1本見るが、あまりにも退屈なので、40分過ぎた あたりで、見るのをやめる。 ハリソン・フォードの『いまそこにある危機』を見る。 前作の『パトリオット・ゲーム』もよかったし、その前の『レッド・オクトーバ ーを追え』もよかった。ついつい今の時期なので、ロシアの原子力潜水艦を連想し てしまって、悲しい。 ハリソン・フォード、ブルース・ウイルス、ジャン・クロード・ヴァンダム、ト ミー・リー・ジョーンズあたりが、俳優で見てみたい映画だな。 午後5時30分。六本木サントリーホール「交響組曲ドラゴンクエストVII」コン サート。 すぎやまこういち先生が指揮する、クラシック・ファミリー・コンサート。 もう何度も見に行っている。今回も神奈川フィルで、すぎやま先生のおかげでフ ァンになることができた、朝枝信彦さんがまたまたコンサート・マスター。 この人のバイオリンの音色と笑顔を見るだけで、うれしくなる。 会場には、宮路一昭くんの家族や、堀井雄二くん、山名学くんも来ていて、あっ ちこっちでご挨拶。 私の席に、3歳のときに、ファミコンの『桃太郎伝説』をクリアしたという現在、 中学生か高校生の男の子が握手してきて、「新しい『桃太郎伝説』を作ってくださ い!」と言われる。昨日きょう、『マザー3』のことで深く考えることが多かった だけに、耳の痛い言葉だ。 ついでに「鳥山明さんですか?」という小学生も来た。あまりにも素直で、勇気 を出して言いに来たようなので、よっぽど「はいはい!」とかいって、思い切り下 手な悟空でも描いてあげればよかったかな。 ニコちゃん大王なら、描けるのだが…。 コンサートのほうは、まだ『ドラゴンクエストVII』の発売前だというのに、全曲 『VII』からという大胆構成。 でもまだ見たことのないゲーム用の曲だけに、ゲーム画面が無くても、十分以上 に魅了できることを見せつけられた気がした。押しかけ弟子の私がすぎやまこうい ち先生の曲を絶賛しても、説得力に欠けるのだが、本当に素晴らしい。 明日以降、宮路一昭くんとの新作『桃太郎電鉄』の作曲に対するリクエストが明 白になった。いい刺激を受けると、いいインスピレーションが沸くものだ。 本当にこのコンサートは、騙されたと思って、一度行って欲しい。 ただのゲーム・ミュージック・コンサートではない。 一流の人による、クラシック・コンサートなのだから。 それにしても、『ドラゴンクエストVII』の発売が毎度伸びたせいで、コンサート で早いうちから聴いていた『王宮のホルン』という曲を、ゲーム発売前に覚えてし まったぞ! コンサート後、『オリコン・ウィークリー』の上野くんともひさびさに会う。す っかり若者の容姿になっていたので、最初誰だかわからなかった。 午後9時。満足に夕食を食べていなかったので、どこかで食事をしなければ…と 思ったら、ここは六本木。お寿司の「兼定(かねさだ)」が近いことに気づいてし まう。こんなときにかぎって、グルメ・バカ娘もいっしょだ。あのお店はけっこう 満員のことが多い。 でも「グルメ・バカ娘がいるから、電話したら入れたりして!」などという冗談 など言わずに、予定通り、「なか卯」で牛丼でも食べて行けばよかった。 グルメ・バカ娘がいるせいか、ちゃんと席が空いていたのである。 あいかわらずグルメ・バカ娘のチョイ能力、健在なり。 そんなわけで「兼定(かねさだ)」。 きょうは平目のエンガワをあぶったやつが、カリカリパリパリしていて美味しか った。その他、芽ネギのにぎり、タコ、イカの煮詰め、いずれも美味礼賛。 このところ減量に成功し始めたことなどすっかり忘れて、お腹ふくるるまで食べ 尽くす。 しかし、私はやばいことを思い出した。きょうここでイレギュラーでお寿司を食 べてしまったが、明日の夜もお寿司を食べることになっていたのだった。ははは。 まあ、この家族は毎晩お寿司でも平気だからな。 午後10時。帰宅。 『さくま式西遊記』が風雲急を告げてきたので、毎晩、放送作家の福本岳史くんか ら、電話が入る。今回『さくま式西遊記』の仕様書を書く任務を与えているので、 福ちゃんも必死だ。新人投手の初マウンドは美しいものだが、ちょっと太りすぎ。 ここ1週間の流動的なスケジュールをまとめるべく『旅・王・国』を読む。また 旅行するんかい!である。電車に乗って、アイデアを出したくなっている。
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