8月22日(火)


 ロシアの原子力潜水艦は残念だったねえ。映画が吹き飛ぶような感動のシーンを
期待して、ずっと見てたんだけど、プーチン大統領とか、取り巻く空気が悪いほう
へ悪いほうへ行ってるときは、いい結果にならないものだなあ。
 映画『Uボート』みたいに悲しい結末になってしまった。

 昨夜見たDVDは、ジャッキー・チェンの『フー・アム・アイ?』。
 あのオランダの斜めのビルを滑り落ちてしまった映画だ。
 あいかわらずジャッキー・チェンのお客さんを楽しまそうという努力には、頭が
下がるしかないねえ! もはや「努力」などという言葉では語れないものがスクリ
ーンに漲(みなぎ)っている。
 1本や2本の映画なら、人生の絶頂期にトランス状態になって出きるかもしれな
いが、何10年何10本という作品でこのボルテージを発散し続けるのは、神業と
しかいいようがない。

 それにしてもジャッキー・チェンほどおもしろい映画はないのに、映画評論家た
ちはジャッキーに対してまったく沈黙する。
 もともと評論家というのは、小難しい芸術映画をアクセサリーにしたいから、大
衆芸能の極みであるジャッキーの映画を賛美する言葉を持たない。ジャッキー映画
を本当に分析できる評論家はいないものか。

 午前6時30分から、新作『桃太郎電鉄』の仕事をちょこちょこと。
 まだ寝足りないので、ベッドに横たわる。
 ところが午前8時を過ぎたあたりから、断続的に電話が何本もかかって来て、眠
りを妨げられる。私は直接電話に出ないことにしているので、どこからの電話だか
わからなかったのだが、あとで嫁に聞いたら、銀行に、間違い電話に、不動産屋だ
ったそうだ。

 おかげで、午前10時を過ぎたあたりで、本格的な二度寝に入ってしまって、起
きたら、午後12時。これではもう日帰り小旅行にもでかけられない。なんとも悔
しい醜態である。

 午後1時30分。嫁と南青山「パパス・カフェ」に行き、放送作家の福本岳史く
んと待ち合わせる。昨夜からiモード・ゲーム『さくま式西遊記』に関するメール
が福ちゃんから何本も入っていたので、緊急事態発生かと思って会うことにしたの
だが、問題はなかった。
 確かにいくら躍進めざましい福ちゃんといえど、ゲームにおいて緊急事態が発生
するような重要な部分の仕事はまだ任せていなかった。
 問題点といえば、ほとんどが福ちゃん得意のペースト・コピー・ミスであった。
 ときどき福ちゃんは、ペースト・コピーの間違いで、桃太郎チームに「怪文書」
を送って、みんなを悩ませる。
「ゲーム・マスをみなさんSS、スリの銀次の発生確率を…」みたいなやつだ。
 いわゆる前の文章をちゃんと削除せずに、部分的に削除したものをおっちょこち
ょいなので、そのままメールして来てしまう。
 おそらく小学生のとき、「テストの答案は必ず見直すように!」と先生に言われ
て「はい!」という元気な返事をして、その後も見直さなかったタイプなのだろう。
旺文社の全国模試なら「ケアレスミスをなくしましょう!」と言われるやつだな。

 午後2時。渋谷区出張所。住民登録など入手。今朝ほどの電話に対する対処であ
る。

 午後2時30分。前から来たかった、NHKサービスセンターのまん前にある小
さなお店「NHKビデオ」。10坪もないような小さなお店なのだが、これがNH
Kから発売されているビデオばかり売っているお店!
 興味のない人にとっては、退屈きわまりないお店だろうが、私のようなものにと
っては、子供が目隠しされておもちゃ屋さんに行き、何でも好きなだけ買っていい
よと言われたようなお店!

 もう! 興奮しまくりの買いまくり!
 こんな興奮は、横浜関内駅前にある横浜ベイスターズ・ショップを初めて訪れた
とき以来の興奮だ。
 何たって、司馬遼太郎さんの『街道をゆく』のビデオ全24巻が揃っている。N
HKで放送された歴史特集のビデオが並びまくり。
 日本各地を取材したビデオ。新幹線の車窓から写した映像。NHKのお家芸であ
る『名曲アルバム』も何10巻と揃っている。もちろん落語全集もある。
 これは本当にすぎいですよ〜!
 温泉掘りに言って、石油が出てしまったようなものだ。
 見たい! ここにあるビデオ全部見たい!
 そんな時間ない!

 BBC放送製作のミュージック・ヒストリー物もずらり。ヤードバーズ→クリー
ム→エリック・クラプトンという、出世魚っぷりが一度で見れてしまう貴重なビデ
オが手に入ってしまった。ついでに柳田国男の『遠野物語』の特集に、陶芸家・高
内秀剛さんのビデオまで購入。
もちろん司馬遼太郎さんの『街道をゆく』全24巻がめあてだったので、購入。
 しかし宅配してもらうつもりだったので、買いすぎるにもほどがあった。ビデオ
の値段が昔に比べて安くなっているので、つい油断した。
 値段をいうのは差し控えたいぐらいの金額だ。
 都内2DKの家賃だ!くらいに留めておこう。相当豪華な2DKだ。

 午後3時。8月19日にオープンしたばかりの「代官山アドレス」に行く。お店
の名前ではない。大規模集合住宅地だ。知る人ぞ知る、代官山同潤会の跡地に立っ
た広大なショッピング&マンション群である。
代官山アドレス
   なにしろ代官山の猿楽町あたりから、代官山の駅まで、この「代官山アドレス」 が完成しただけで、なかで繋がってしまったのだ。織田信長の安土城が忽然と都会 に誕生したようなものだ。  もっとわかりやすくいえば、お台場みたいなのが、突然都内に誕生してしまった。 そんな感じ。36階建てのタワーマンションもある。見晴らしよすぎるだろうけど、 高所恐怖所の私にはちっともうらやましくない。  実はこの「代官山アドレス」、建設中から何度も来て、気になっていたのだ。私 としては仕事場として購入するつもりだったのだ。まだ見てもいないのに。  高い所はいらないんで、201号室がほしい。  実は私はいつも、101号室とか、201号室を購入、または賃貸する。  本当に高い所はいやざんす。  だからモデルルームができたときには、真っ先にでかるつもりだったのだが、そ の値段の高さといったらない! いまどき、1億、2億、あたりまえなのだ。  2DKくらいで! ビック・カメラじゃないんだからさあ!  3LDKで、3億円なんてのもあったな、確か。  まるで私が『桃太郎電鉄』の物件の値段を決めるときに、30億円にしようか、 いや45億円ぐらいでもいいんじゃないの?と気軽に付けているように、マンショ ンの値段を決めているとしか思えないような値段だ。  けっきょく、1億円も出して、本やビデオが入りきらないような部屋を買っても 仕方がないのであきらめた。ちなみに、帰りに覗いた不動産屋さんには、「代官山 アドレス」の2LDKの賃貸料・1ヶ月39万円と出ていた。楽しそうだな、この 野郎!  午後4時30分。「代官山アドレス」のカフェで、コーヒーだけ飲んで、帰宅。  さて、昨日見たジャッキー・チェンの映画をちゃんと評価する評論家がいないこ とに根に持って、いわゆる評論家たちが絶賛する芸術映画をこきおろしてやろう! と思い、自室の買いっぱなしのビデオ&DVDライブラリーを眺める。  まだ見ていない映画がたくさん並んでいる。  そういえば、『ニュー・シネマ・パラダイス』!  これは絶賛しまくりの評論家だらけで組み体操ができるくらいだった気がするな。 よし! これなら相手にとって不足はない! 尋常にいざ勝負!  フィーーーン(DVDが回る音ね)!  最近だいぶDVDの操作がうまくなってきた。  う〜む…。う〜む…。  相手に不足はなかったのだが、私に不測の事態!  ダメだ、こういう明るい画面で繰り広げられる切ない映画に、私はからっきし弱 いのだ! しかも1950年代の映画技師の話で、黄金時代の映画が次々に登場し てしまうなんて、多勢に無勢である! 『どん底』に『幌馬車』に『ジキル博士とハイド氏』。 『揺れる大地』に『素直な悪女』…。 『青春群像』に『ユリシーズ』…。  こういうオールド・オールスター物には、めっぽう弱いぞ!  しかし大衆娯楽作家を標榜する私は、極力アクション映画大好きを演じているの だが、本当のところはこういうじ〜〜〜ん!とする話に弱い。  呆然としたまま、食い入るように鑑賞。  午後6時30分。自宅で食事。テレビ長崎の山本耕一が東京に来る前に送ってく れた「角煮おこわ飯」中心の食事。長崎は最近この豚の角煮に力を入れているよう だなあ! 次回作の長崎の物件には「角煮まんじゅう屋」を入れておいたのだ。お いしい、おいしい!  午後7時。なんとも異例なことに、また『ニュー・シネマ・パラダイス』を最初 から見直してしまう!  ダメだなあ、作家として、暗黒面に吸い込まれてしまうよ!  この手の映画を3本くらい見ると、ギャグの仕事ができなくなってしまう。  このあとは『マタンゴ』か『1941』か『クレージー・デラックス』でも見て、 ギャグ魂を取り戻さないと!  くれぐれも私が『ニュー・シネマ・パラダイス』に感動したことは、ご内密に!  しかし映像よし! アングルよし! 俳優よし! セリフよし! 音楽極めつけ の困った映画だ!   嗚呼! ついに昔の映画少年だった頃を思い出して、いいセリフをメモりたくな ってしまった。ああ、メモっちまったあ!   「人にはそれぞれ従うべき星がある」 「村を出ろ! ここは邪悪の地だ!」 「ここにいると自分が世界の中心だと感じる。何もかも不変だと 感じる。だがここを出て2年もすると、何もかも変わっている」 「頼りの糸が切れる。会いたい人もいなくなってしまう。一度村 を出たら、長い年月帰るな!」  昔はこんなメモばかり取っていたなあ。  美しい映画にあこがれていたなあ…。  おっと、ほうらまた暗黒面に吸い寄せられてしまう。  いまの私に必要なのは、「キ〜〜〜〜〜ング、ボンビーーー!」だ。 「グエッヘッヘッヘ!」だ。「へっへっへ! 社長さんがそんなにお金を持ち歩い ちゃいけねえよ!」だ。  おっと、横浜ベイスターズの試合結果をチェックするのさえ忘れていたぞ!  0対2で完封負け? はっはっは。私も横浜ベイスターズも完封されちまったよ!  おあとがよろしいようで…。  さーて、もう1枚何を見ようかなっと。  ではまた明日!
 

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