7月11日(火)


 昨夜、宮路一昭くんと、ひろたたけしは、午前5時まで飲んでいたらしい。
みんなまだ若くていいなあ。

 午前10時。私はついに、このところの京都ひとり合宿や、今回の長逗留
のせいで、洋服がなくなってしまった。
 ちゃんとした洋服は全部嫁に選んでもらっているので、ひとりで買うこと
ができない。
 ひとりで買うとしたら、ここしかない。
 京都駅の「手塚治虫ワールド」で、鉄腕アトムTシャツを買う。これで、
今週嫁が来るまで、なんとかしのげるだろう。昨夜、風呂場で1枚Tシャツ
を洗ってみたのだが、片手しかつかないので、シャツを絞ることができない。
ちょっとわびしい。

 午前11時30分。昨日とまったくおなじメンバー。土居ちゃん(土居孝
幸)、宮路一昭くん、『御神楽少女探偵団』のプロデューサー・ひろたたけ
し、ディレクターの国政修くん、放送作家の福本岳史くん。
 国政修くんを除いて、全員デブ!

 そのデブ軍団にふさわしいお店に行くことにした。
 京都市役所近くの「アローン」だ。
 ここのオムライスがめっぽう美味しい。
 でも、難点がひとつ!
 でかすぎる! でかすぎるにも、ほどがある。

 なんと、国政修くんの顔より大きいのだ!
 でも福ちゃんの顔より小さい! 
アローン アローン う〜〜ん、縮尺が狂う!
  「これは巨大なカニ玉だね!」 「うん。あんかけ風のケチャップがいいなあ!」
アローン
   どうせひとり1人前ずつは食べきれないと思ったので、オムライスは4人前 に、ほかの料理を2品頼んだ。  私が注文したポーツカツレツも非常に美味しい。  しかも土居ちゃん(土居孝幸)が、ナイフとフォークで、私のポークカツを 切ってくれる。なんてやさしいんだ!  土居ちゃんの「こういうことすると、日記に載る?」には、みんな大爆笑。
アローン
   宮路一昭くんが、オムライスを半分まで食べたところで、苦しそうな表情に なる。そのころには、すでに福ちゃんは、オムライスをたいらげて、私のポー ツカツレツを一切れ食べ、ひろたたけしのカツカレーにまで手を伸ばしていた。 恐るべし!  宮路一昭くんが、本当に苦しそうだ。 「ダメだなあ、宮路くん! デブの風上に置けないなあ!」 「『TVチャンピオン』の脱落寸前の選手みたいな表情だぞ〜!」  みんな、いいかげんなことを言っている。 「ボクは、がんばるぞ〜!」と、土居ちゃんも苦しそう。
アローン
   けっきょく、宮路一昭くんはリタイア。  この大きさと、味で、580円は、超満員の店内がうなづける。  ただ、ひろたたけしが、このオムライスに「大」があるというのを小耳に はさんで、次回に意欲を燃やしていたのが、デブの鑑である。  午後12時30分。マンションのエレベーターに乗ったときのことだ。この エレベーターは、9人乗りである。乗ったのは、6人だ。  ブザーが鳴ったのではない。アナウンスが流れた。 「大変混雑しております。しばらくのあいだ、ご辛抱ください!」 「おおっ! エレベーターがしゃべった!」 「大変混雑だって! デブばっかだからって言えばいいのに!」 「辛抱してるのは、エレベーターのほうじゃないのか!」 「がははははは! わははははは!」  デブたちは、一向気にとめない。  こんなアナウンス、このマンションに来てから初めて聞いた。  マンションで、打ち合わせ開始。  デブのみなさんも、お仕事中は、真剣。  新作『桃太郎電鉄』に登場するカードのすべてをチェックして、どういう演 出にするかを議論していく。今回から、ひろたたけしが、目の前で、演出の絵 コンテを描いてくれるので、非常にわかりやすい。カードをつかったときの効 果をお互いが、口だけで言って、分かり合うのは、年齢も違うわけだから、困 難を極める。  だから、ひろたたけしのような、アニメ畑の人がいるのは、心強い! 大規 模CDロム・ゲームというのは、こういう風にたくさんのスタッフで作らない といけないから、本当に商売的に効率が悪い。おかげさまで、うちのゲームは 多大なる支持をいたたいているからいいけど、弱小メーカーや、初めてのタイ トルのゲームには、つらい時代だ。  そういえば、『ファイナルファンタジーIX』をちょびちょび始めたんだけ ど、今回のグラフィックは温かみがあっていいね。ただ家庭用の14インチT Vで、あのグラフィックの細部を見ることができるのだろうか。 『1』から『6』までをクリアして、『7』『8』と途中断念しているだけに、 今回はひさびさにクリアしたいなあ!  午後6時30分。途中、近所の「レッドラバーボール」で、コーヒーブレイ クを入れたものの、ぶっとおしで会議をしたおかげで、117枚のカードすべ ての演出が決定した。  あっ。しまった! 次回作のカード枚数が117枚に増えてること、バラし ちゃった! 秘密ぽろりは、いつものことか。わっはっはっは! カードも増 えるけど、演出も増えるよ!  さすがに根をつめすぎたので、頭がふらふらになる。  福ちゃんの顔もけわしい。太っていても、まだ27歳だ。10歳以上のベテ ラン陣にまじって、奮闘するのは、大変なことだ。  午後7時。6人全員で近所の「柳屋本店」に行き、私のお勧め、はもおとし セットを食べる。前回の京都ひとり合宿のとき、ひとりだけで行ったお店だ。
柳屋本店
   2日目にして、みんなようやく京都風の料理が食べられたので、喜ぶ。ひろ たたけしが、鱧(はも)の梅肉(ばいにく)が入ったお猪口を手にとって「梅 肉(ばいにく)、はもは切らせています!」のだじゃれがおもしろかった。    午後8時30分。私を除く5人は、飲み会に。  私は極力、体力を消耗しないように、マンションに戻る。  この2日間で出たカードの直し原稿だけで、気の遠くなるような枚数なので、 今から少しでも始めることにした。  書き直しというは、誰でもつらい。  でもつらいなかにも、二通りある。  ひとつは、相手の能力が低くて、こっちの要求通りできないための手直し。 撤退みたいなもんだ。  もうひとつは、もっといい演出にできるようになったための手直し。今回の 手直しは演出が増大したための手直しなので、やりがいがある。ちょっと多す ぎるけど。ふへへ。  そんなわけで、今からまたお仕事!  がんばりまっしょい、しょい!
 

-(c)2000/SAKUMA-