さくまあきらホームページ:仕事人裏日記




6月10日(土)


 う〜む。6月30日までに、新作『桃太郎電鉄』の仕様書を完成
させると宣言したものの、意外とやることが多いことに気がつく。
 こういうときは、一度にやろうとせずに、ひとつずつだ!

 午前11時30分。湯島神社の表鳥居のそばにある、「鳥つね」
に嫁と行く。いろんな雑誌に親子丼の美味しいお店と書いてあった
そうだ。

 おお! 何じゃこりゃあ!
 玉子の黄味の部分が、赤いではないか! 赤いというより、オレ
ンジ色だ。
鳥つね
   うほっ。とろけるような味だ。  あまじょっぱさがご飯にしみこんでいる。  鶏もやわらか〜い!  こりゃあ、んまい、んまい!  すべるように、ご飯が喉の奥に吸い込まれて行く!  ひさびさの大傑作!  ひさしぶりの初登場1位!  ひさかたぶりの豊潤!  親子丼の美味しいお店、ほしかったんだあ!  和風料理の一流店「青柳」でお昼だけに出る親子丼が、今まで食 べた親子丼のなかでは、最高の味だった。その親子丼を最近やらな くなってしまったので、ずっと寂しい思いをして来たのだ。  ほとんど、チャンピオン空位のままだってやつだった。  いやあ。いいお店を見つけた! うれしい! 『桃太郎電鉄』で、特急カードをつかって、一発で目的地に入れた ときのような気分だな。  現在次回作の『桃太郎電鉄』が頭のなかに、充満しているので、 たとえまで、『桃太郎電鉄』関連しか浮かばない。  食後、せっかくだから、湯島神社に寄って行く。  学問の神様として、有名すぎる神社だけど、実は私がここを訪れ るのは、初めてだったりする。  意外と小さいんだね。  東京だもんなあ。  地方に行くと、本当にどの神社も大きいと思う。
湯島天神
   菅原道真といえば、桃太郎のお話を作った人という説もある。  ちょうど神前結婚式をあげているカップルがいて、祝詞をあげて いるときに、お賽銭をあげるのが、ためらわれる。  お賽銭も5円がいいとか、割り切れる数字はよくないとか、本当 はどういうあげ方がいいんだろう。  土居ちゃん(土居孝幸)のように、持ってた小銭をジャラジャラ ジャラ〜ッと、全部入れて、辺りの人を驚かせるやり方は、素晴ら しいと思うのだが。    そういえば、このあたりに、和菓子の黄味しぐれの美味しい「藤 むら」というお店があったなあと思って、散歩がてら、本郷三丁目 に向かって、歩き出す。  こういうときの脚力は、急にレベルアップする。  湯島っていうのは、古いお店ばかりで、すっかり町に覇気がなく なってしまっているね。  吉田拓郎さんの歌『新しい船を動かせるのは古い水夫ではないだ ろう』を思い出す。  古い町並みを見ると、つい再開発のプランを考えてしまう。昔か らの癖だ。こういう仕事をしたかっただけに、『桃太郎電鉄』は、私 にとっては、天職なのだろう。  げげっ! 「藤むら」が、改装中!  そげなっ!
藤むら
   もはや唇が、黄味しぐれを欲しがって、待っていたのに〜!  がっくりんこ…。  午後1時。原宿に戻って、美容室「ヘアストリート」へ。  途中、鏡の向こうに来たお客さんが、エニックスのプロデューサ ーだそうで、ついどぎまぎしてしまう。  何で私は、ゲーム業界の人に会うと、あわてないといけないのか。  この美容室の従業員はみんな、私を『桃太郎電鉄』の作者と知っ てるもんだから、私のことをエニックスの人に言ってしまった。  ぎゃん!  情けないことに、私のほうが早く終わったので、つい会釈だけし て、逃げるように去って行ってしまった。何で、逃げるんだ、自分!  ゲーム作家のくせして、あんまりゲーム業界のこと知らないのが バレるのがイヤなのか。自分でも何でああいう行動に出たのかわか らない。 『ジャンプ放送局』のさくまあきらだと、全然恥ずかしくないのに、 何でゲームを作ってるさくまあきらは、恥ずかしいのだろう?  午後3時。自宅に戻り、新作『桃太郎電鉄』の続き。 『桃鉄研究所』も始めたけど、たくさんメールがたまっていて、こ れもまた大変だ。  ああ! 横浜ベイスターズは1イニング6点も取っておきながら、 阪神に負けてしまうし。6位に負けちゃいかんぞ〜。今年のペナン トレースは身体によくないなあ。首位と10ゲームくらい離されて もいいから、3位くらいに定着していてほしい。5位は身体によく ない。ストレスになる。  午後7時。家族3人で、西麻布の定食屋「たぬき」へ。  きょうのお魚は、いさき。いさきの塩焼きを食す。  ここの焼き魚とご飯は、本当に美味しいなあ。  賀茂ナスのいり出しも、美味しい。  壬生菜のおひたしも、美味しい。  玉子焼きも、美味しい。  きょうはお昼も夜も、美味しい物を食べることができて、これ以 上の幸せはない。あっというまに、10分間ぐらいで食べ終えてし まう。美味しい物を食べたときって、どうしてゆっくり食べられな いのかねえ、この家族は!  食後、あの悪魔のケーキを売っている喫茶店「ドゥリエール」に 寄る。きょうは絶対ケーキを食べないと、心に決めてから入った。  ケーキのショーケースも、背にして座った。  これで万全!  …と思ったら、グルメ・バカ娘が「ケーキが見えるから、つらい よ〜!」と言い出す。  何だ、おまえもつらいのか!  うひょ〜! こいつが自首しちゃうと、私も自供しちゃうぞ。  ふたりで、必死にケーキをガマンする。  グルメ・バカ娘は、明日プールに行くからと、必死にケーキをこ らえる。  日記のネタとしては、ここでふたりとも陥落して、ミルクレープ を浴びるように食べてしまうと、おもしろいのだが、ここはガマン!   なにしろ、私は九州旅行の食べすぎで、大病以来最高の体重を記 録してしまったので、血圧のためにも、絶対体重を下げないといけ ない。  熱いコーヒーを、ごくごく飲んで、とにかく「ドゥリエール」を 出る。お店を出て、「ホッ」として、どーする! ホッとするため に、コーヒーを飲みに行ったんじゃないのか!?  午後8時。帰宅。  ああ、まだ口の中が、甘い物をほしがってる。  ガマン、ガマン!  江戸時代の拷問、石抱きの刑よりも、ドゥリエールのミルクレー プおあずけの刑のほうが、私にはつらそうだな。  そうだ、最近VAIOを買った、アリtoキリギリスの石井正則 くんが、また私の日記を読むようになったと言っていたから、やつ あたりしてやれ〜。石井正則くんも、最近ダイエットに凝っている。 本当に痩せていた!  石井正則く〜ん! ドゥリエールのミルクレープを思い出すのだ あ〜! ほうら、ほらほら! ミルクレープが食べたくなる! 悪 魔のケーキだぞ〜! 舌の上に乗った、あの甘いクリーム! 思い 出せ〜! あの甘い香りを思い出すんだあっ!  し、しまった! 自分のほうが食べたくなっちまったあ!  ダメだ。うわあああああっ!  イノダコーヒ四条店で買った、コーヒーチョコでも食べよっと。  ああ! 何て甘いものに意志薄弱なんだ〜!
 

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