5月27日(土)


 昨夜、最古のさくまにあ・戸田圭祐に電話する。
「月末だから、戸田圭祐はまた土・日、出勤なんだろ? サラリー
マンなのに、大変だねえ!」
「いえ、土・日休みです!」
「へ?」
 しまった! 京都ひとり合宿がつらいものだから、おなじように
土日苦しむ人間を探して、少しでも優越感に浸ろうと思ったのに。

 午前10時30分。そんなわけで、京都駅で戸田圭祐と待ち合わ
せ。くやしいので、午前7時から、新作『桃太郎電鉄』の仕様書作
りに、没頭してきたので、後ろめたさはない。

 それより、雨がけっこう激しい。
 傘も持たずに、でかけてしまった。
 午前11時10分。のぞみ10号で、名古屋に向かう。

 車中。さっそく新作『桃太郎電鉄』で、煮詰まっている部分を戸
田圭祐に話して、相談する。
 相談するといっても、戸田圭祐がアイデアマンなわけがない。
「へ〜。それはおもろいでんなあ!」
「それは、ちょっとつまりません!」
 このふたつで答えるだけである。

 ところが、そんななかから、ふと戸田圭祐は「そのイベントより、
佐賀のバルーンフェスタのほうが何かおもしろくなるんとちゃいま
すか? もちろんわての頭では、浮かびまへんけど…」
 このひとことで、私に電流が走る。
「おっ! それだ! 戸田圭祐! 待っとれ!」
 ノートに、イベントのあらすじを書きなぐって、戸田圭祐に見せ
る。
「ひゃ〜はっはっは! おもしろいです!」
 膝を叩いて喜ぶ、戸田圭祐。

 これが実は、私がいつも戸田圭祐を、松尾芭蕉の門弟・曽良のよ
うに同行させる秘密なのである。
 前にも書いたように、触媒の役目をしてくれるのだ。
 きょうも連発で、いくつもいくつもキーワードを出して、その都
度私にいいアイデアが出た! 上々、上々! 重畳、重畳!

 午前11時46分。名古屋駅着。
 戸田圭祐が、すがきやのラーメンか、味噌煮込みうどんが食べた
いというので、エスカ地下街の味噌煮込みうどんのお店「山本屋総
本店」に行く。
 わざわざ名古屋まで来て、300円のすがきやのラーメンを食べ
る気はしない。すがきや自体の味はおもしろいのだが。

 春メニューに「竹の子とつみれ入りの味噌煮込みうどん」という
のがあったので、私はこれを。戸田圭祐は、名古屋コーチン入り味
噌煮込みうどん。
味噌煮込み
 ひさびさに食べる味噌煮込みうどんは、うまい!  歯ごたえ十分の固い麺に、食の進む味噌スープ。濃くなった口の なかを、浅漬けのお新香で、浄化する。  最後は、ほどよく余熱で半熟以上に固まった玉子を、ちゅるちゅ るっとすすって、「あ〜、おいしかった!」。  午後12時30分。雨の中、中村公園文化プラザへ。  1Fが、中村図書館になっている。う〜む。いかにも、町のそん なに大きくもない、図書館といった感じだなあ。  この2Fに「秀吉清正記念館」というのがあるので、わざわざ来 た。どうしても加藤清正関係の本がほしかったのだ。  でもとても、本なんて、売っていそうもないなあ。  だいたい、「中村公園の記念館」といったら、4コマ漫画家なかむ ら治彦くんのホームページ「なかむら記念館」を思い起こすに決ま っているではないか!  戸田圭祐が「なかむらサンのホームページの名前はここから取っ たですかね〜?」という。  そんなわけないだろ!  そんなわけだったら、どうしよう!   「秀吉清正記念館」に入る。入場料無料である。ますます公民館レ ベル。こんなところのために、わざわざ戸田圭祐と来てしまったの か? しかも雨の中。何だかわびしくなってきた。  展示物を見る。肖像画も、書状も、どれも、複製ばかりである。  私のような歴史好きにとっては、見知ったものばかりである。  何だか悔しいが、仕方あるまい。  ビデオ室なんてのも、あったけど、どうせしょぼい内容なのだろ う。歩きつかれたので、少し休むために、ビデオ室のイスに座るか。
手形 だれ? これはだれでしょう?
 適当にぼんやりビデオを眺めていると、何だか妙に内容が濃い。 歴史マニアには応えられないような、単語がぽんぽん出て来る。気 がつくと、引き込まれているではないか!  いずれも、6分、または13分の内容なので、とうとう4本全部 見てしまった。  ビデオの題名を紹介! ・ 絵解き関が原の合戦。 ・ 戦国の城。 ・ 信長のルーツを探る。 ・ 戦国那古野(名古屋)城  とくに「信長のルーツを探る」は、平氏の末裔であるといってい た信長が、藤原信長と書いた書状が多数見つかったという興味深い ものがあって、興奮する。  一気にこのビデオのせいで、この「秀吉清正記念館」に対する好 感度がアップしてしまった。現金なものだ。  午後2時。雨の中、記念館から100メートル先ぐらいの、妙行 寺に行く。「清正公誕生之霊地」と番書されている。「誕生の地」 と「誕生の霊地」というのは、どう違うのかと思ったが、別に違い は無いようである。
入り口 銅像
 雨の中、お参りして、清正公像を尊顔し、名古屋駅に戻ろうとし て、困った。どうもこの地は繁華街から離れているようで、タクシ ーがいない。仕方なく、バス停で待つ。20分過ぎる。15分で来 ると時刻表にあったぞ。25分過ぎる。来ない。やっと、バスでは なく、タクシーが来た。タクシーに乗る。バスはこれだから、嫌だ。  午後3時。名古屋駅に新しくできた、高島屋と東急ハンズのカッ プリング・ビルを覗いていく。これは新宿南口の高島屋と東急ハン ズのパターンとまったくおなじなのだが、東京に劣らず、ものすご い混雑ぶりだ。  もはや、名古屋には、東急ハンズが通用しないみたいな、県民性 は無くなってしまったかのようだ。  昔から、名古屋の人は、なかなか急に流行には手を出さないが、 ひとたび手を出すと、またたくまに大流行するといわれている。  どうやら、このビルは、大流行のようである。  さて、もっと名古屋に長居したいのだが、少しでも仕事をする時 間を捻出するために、京都に向かうことにする。駅前の観光案内所 のトヨタ自動車記念館のポスターがうらめしい。行きたかった。  午後3時29分発のひかり231号に乗ろうとした直前。  駅の売店に、私の名古屋イチ押しお土産品・八丁味噌プリッツが 売っている。 「戸田圭祐、この八丁味噌プリッツは、おいしいぞ〜!」 「えっ、ホンマでっか。ほな、会社のお土産に買って行きまっさー!」  戸田圭祐が、売店に向かっていく。  しかし、戸田圭祐が寂しそうに帰ってきた。  何があったんだ、戸田圭祐。  ヤッちゃんに、からまれたのか!? 「どうしたんだ、戸田圭祐!」 「へ〜。わての財布のなかに、あと1000円しかないんですわ〜」 「なんじゃ、それ!」  本当だ。戸田圭祐の財布のなかには、千円札1枚と、CD屋さん の100円割引き券4枚しか入っていないではないか! 「八丁味噌プリッツの値段が、1050円なんですよ〜!」  おいおい。ニッポンの係長は、八丁味噌プリッツも買えないのか。 それより、この男、大阪から名古屋まで、推定千円札2〜3枚で来 ていたということにならないか?  午後4時22分。京都駅着。  午後5時。少しでも仕事をする時間がほしいので、こんな時間か ら、戸田圭祐が大好きな「忘吾(ぼあ)」で食事開始。  まだ早い時間なので、戸田圭祐がお気に入りのお姉さんが、戸田 圭祐にお酒をお酌してくれる。このお姉さん、明るくて、人なつこ い。このお姉さんがいるから、戸田圭祐はここに来たいというくら いごひいきである。  戸田圭祐のデジカメで、ツーショットを撮影してあげる。
にへら
 見よ! 戸田圭祐の、この笑顔! にまにま。  お姉さんは、しっかり営業スマイル!  立派なプロ根性だ!  料理の献立が、はもおとしとか、小鮎の天ぷら、岩がきと、もう 夏がすぐ近くといった感じの食材になってきた。  日本食は、こういう風に季節を楽しめるから、いいねえ。
岩がき さくま はも 胡麻揚げ 原田さん 「忘吾」の原田さん。いい男でしょ?
 午後7時。戸田圭祐も大満足のまま、スターバックスで、キャラ メルマキアートを買って、マンションに戻る。  戸田圭祐は、キャッシュディスペンサーを探しながら、大阪に向 かったはず。  さっそく私は、新作『桃太郎電鉄』の仕様書作り。  戸田圭祐のおかげで、どうしても完成しなかったイベントが、ま ったく違った内容になって、実現しそうである。  さあ、新作『桃太郎電鉄』の仕様書作りのペースを、ピークに持 って行かないと!
 

-(c)2000/SAKUMA-