5月5日(金)


 きょうは、家族3人で、奈良県の桜井まで小旅行するつもりだっ 
たのだが、中止。
 昨日の日記でも書いたように、戸田圭祐が奈良県のガイドブック
を持って行ってしまったので、涙を呑んで、身を斬られる思いで、
断腸の思いで、歯軋りで奥歯を砕くような思いで、小旅行を中止せ
ざるをえなくなった。

 …と書くと、うろたえ星人の戸田圭祐が、この日記を読んで、「あ
わわわわっ」と、部屋でじたばたしてくれることだろう。
 グルメ・バカ娘に言わせると、「何で戸田くんは、いつもあわわわ
わわっ、と口に出してあわてるんだろう?」だそうである。
 わしもそう思う。

 昨日も、嫁が戻って来たとき、マンションのドアを閉めたときの
「ドン!」という音に驚いた戸田圭祐は、「うわわわわ〜〜〜っ!」
と腰を浮かして、驚きまくった。
 その姿を見た、私とグルメ・バカ娘がびっくりしたほどだ。

 まあ、これが戸田圭祐の憎めないところであるのだが。

 午前11時30分。イノダコーヒ本店で、ミックス・サンドイッ
チとコーヒー。お店に置いてあるスポーツ紙各紙を読み倒す。横浜
ベイスターズが首位に立ったんでね。
 でも最下位まで、3,5ゲーム。また下がると思うけど、首位に
立ったときくらい、よろこんでおかないと、もったいないからね。

 食後、今週のNHK『葵・徳川三代』の最後で、二条城を紹介し
ていたので、二条城まで歩いて行くことにする。

 イノダコーヒ本店から、二条城まで、歩いてすぐだと思っていた
のだが、けっこう距離がある。
 すでのもう疲れ始めている。
 二条城に着いてからも、見るところが多いから、さらにたくさん
歩く羽目になる。これはつらいぞ。
 そう思った、バカ家族は、二条城に向かうのをあきらめて、烏丸
通りを北上する。
 ゴールデンウィークだというのに、烏丸通りは空いている。オフ
ィス街だから、空いているのかもしれないが。

 午前1時。たどりついたところは、「クレーム・デ・ラ・クレーム」。
 わっはっはっは。京都にいると、必ず1回は登場する、シュークリ
ームの専門店だ、わっはっはっは!
 笑ってごまかすにかぎる!

 私はヴィンテージ・シュークリームに、コーヒー。グルメ・バカ
娘は、子どもの日記念の、かぶとのプリンシュー。むむっ! 私も
このシュークリームを食べたかったのだが、くやしいなあ。子ども
の日記念と書かれてあると、食べづらいぞ。
シュークリーム
     けっきょく最後のひとくちを食べさせてもらった。  おいしい。  ♪何でこんなにおいしいんだよ〜! シュークリームという名の 甘い物〜。ちょっとハズレだな、こりゃ。  シュークリームはいつも通りおいしかったぞ。     食後、夷川の家具屋さん街を散歩する。  すると、京都相互タクシーの宮本さんから電話が入る。 「さくまサン、シュークリームのお店に行ってたんとちゃう?」  げげっ! 何でバレたんだ? 「空いてる烏丸通りを北に向かって歩いてたのを見たので、これは きっとシュークリームのお店に向かったなあと思ったんで…」  まったくその通り!  どこで、誰に見られているのか、わからないものだ。 「さくまサン、奈良に行ってたんと違うんですか?」 「へっへっへ。戸田圭祐がガイドブックを持って行ってしまったも んで…」と事情をおもしろおかしく説明する。 「はっはっは…」  戸田圭祐が、うっかり八兵衛だということは、宮本さんも知って いるので、大いに笑ってもらえる。  このあと、宮本さんに渡すものがあったので、夷川まで来てもら って、手渡す。  夷川で、滑車のついた洋服掛けを買って帰る。  グルメ・バカ娘がガラガラ引いて歩くので、うるさい。 「おい、うるさいから肩にかつげ!」 「は〜〜〜い!」  よしよし。 「さくちゃ〜〜〜ん! が〜〜〜ん!」  バカやろ、よせ! わざと洋服掛けを私にぶつけてくるのは!  子どもって、こういう行動好きだよなあ。  午後2時。夷川の喫茶店「Ts カフェ」でカフェオレ。  ようやくここで朝からずっと考えていた、新作『桃太郎電鉄』の もうひとつおもしろくならなくて困っていた箇所の打開策が浮かん で、ホッとする。まったく、ゲーム作りは、砂金探しのようだ。  午後3時。マンションに戻る。  歩きつかれたので、本でも読みながら少し仮眠することに。  しかし読んでた本に憤慨して、眠れなくなってしまった。 『ネット革命』について書かれた本なのだが、204ページ中、ほ ぼ1ページずつに、「アメリカでは…」という言葉が出てきて、 「日本人は、だからダメなのだ」とばかり書かれている。  著者は、日本人。  私は国粋主義者ではないが、ここまで畳み掛けるように、「アメリ カはいい! 日本はダメだ!」と、一段上から見下したように書か れると、胸くそ悪くなって来た。  昔はこういう書き方、言い方をする日本人は多かったんだけど、 ひさびさに出会ってしまった。  たまには建設的な意見も言っているのだが、どうにも物の言い方 が、尊大でたまらん。まるで第二次世界大戦後、進駐軍が来たとき、 通訳をする日本人が、居丈高に、日本人をいじめ抜くやつのようだ。  本当は、この本の名前をここに書いて、みんなで怒りを共有した いのだが、この日記では、おもしろかったものだけ、みんなに紹介 したいので、ガマンする。  こんな本をけなしたばかりに、売れてしまうことのほうが腹が立 つからね。  今後もこの日記に登場する本やゲーム、飲食店は、絶対おすすめ なので、何かのおりに心にとめてほしいものだ。  午後6時30分。京都郊外、桂離宮の先の「メスキート」という お店まで食べに行く。  このお店は、放送作家の福本岳史くんお勧めのお店…というより、 洋画家である福ちゃんのお母様のお勧めのお店。福ちゃんからこの お店の名前を聞いていたので来てみた。  しかし、来てみて、驚いた。  スモークハムのおいしいお店と聞いていたのだが、お店の看板に は、ステーキの文字が!  げげっ。私は昨日、竹の子だが、嫁とグルメ・バカ娘は昨日、近 江牛の「三嶋亭」である。その前の日も、彦根のステーキハウスで ある。 「娘よ! 3日連続お肉だぞ〜!」 「ええ!? いいじゃん!」 「太るぞ!」 「いいよ!」  ダメだ、このグルメ・バカ娘には何を言っても。    それでも、きょうもお肉というのはつらいので、ハムを中心にし た注文をすることに。  しかし、メニューに、ハムの文字が無い。  ひょっとして?    そのひょとしてだった。ステーキのコースに、ハムが組み込まれ ていたのである。  う〜む。こうなったら、覚悟を決めて、お肉を楽しもう。  お肉を食べられる人生は、それだけで幸せじゃないか!  ハムかつが、最大のごちそうだった頃を思えば、天国どころか、 須弥山ではないか。   最初に、ベーコンのスモークが出る。   う、うまい! もとより、ベーコンの大好きな私は、味はそのま ま、あの脂の薄いベーコンがあったら、最高だったと思っていただ けに、これにはまいった!  しかも、スモークの風味が、なんともいえない。  続いて、ハーブのスープが出る。  私はハーブが苦手なので、遠慮しようかと思ったのだが、どうに もおいしそうなスープの色なので、とりあえず置いてもらう。  おろろ。このスープ、アイスクリームみたいな風味がするぞ。か すかにハーブの匂いが漂うのだが、全然気にならない。  いよいよお勧めの、スモークハムが出る。  このスモークハム。グルメ・バカ娘がいたく感動! 「凍ったハムを口のなかで、す〜と溶けて行くときに、スモークの 香りが広がって…」と、親父が言えないような表現をして、味を噛 みしめているじゃないか! なんだか、くやしいぞ!  スモークサーモンも出た。  濃厚なスモークだあ。  最後に、特選ヒレステーキの登場。  えっ? ヒレステーキもスモークなんだあ。へ〜。スモークのス テーキなんて、初めて食べるなあ。  そのまま食べても、カボスと何とか(覚えとけよな)のタレにつ けて召し上がってもけっこうですと言われる。  スモークド・ステーキを食す。  むむむむむっ。こ、これは今まで味わったことのないおいしさだ。  スモークが鼻腔をくすぐる、くすぐる。  このお店、我が家の食い道楽ランキングを、今ものすごい勢いで、 急上昇している。 「さくちゃん! ここなら、すぎやま先生に紹介しても、平気なん じゃない?」  何っ? そこまで言うか?  我が家では、すぎやまこういち先生ご夫妻にお伝えしてもいいお 店という言葉は、最高級の言葉なのだ!  あのすぎやまこういち先生ご夫妻に気に入られた、青山「穂積」 ですら、10回以上通って、初めて進言したほどだ。  あのアリtoキリギリスの石井正則くんを驚かせた、近所の「おけ いすし」なんかは、そろそろすぎやまこういち先生ご夫妻にどうだ ろうか?と思いながらも、まだ言えずにいる。    そんな高いハードルなのに、グルメ・バカ娘は1回目で、禁断の 言葉をいうか?  まあ、たしかに、それほどのおいしさである。  ただ、私としては、どうも福ちゃんの紹介だとねえ…、いや、そ うだ。福ちゃんのお勧めではなかったのだ。福ちゃんのお母様のお 勧めだったのだ。しかも福ちゃんは、まだ一度も行ったことがない という。  それなら大手を振って、すぎやまこういち先生ご夫妻にご紹介で きるではないか!  デザートは、バニラアイスにコーヒー。  このバニラアイスがまた、さっぱりした甘味で、最後の最後まで やられたなあという感じだ。
メスキート メスキート メスキート メスキート メスキート メスキート メスキート メスキート
     午後9時30分。食い道楽家族は「しあわせ! しあわせ! お いしいものを食べて、しあわせ!」と言いながら、マンションに戻 る。  明日はまた、戸田圭祐といっしょに、福井へ小旅行だ。  また福井のガイドブックを戸田圭祐に渡すと、持って帰られそう である。うひゃひゃのひゃ!
 

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