5月4日(木) 朝から、新作『桃太郎電鉄』の仕様書作り。 昨日、最古のさくまにあ・戸田圭祐に、九州マップ部分の物件駅 を見せた。 「さくまサン、この湯布院の辻馬車屋なんでっけど、5000万円 いうのは、値段高過ぎやおまへんか?」という。 「そうか?」 「だって、馬1頭だけで商売できるんでっせ! そんなに元手いり まへんよ!」 「そうか。だったら1000万円の物件にするか?」 「3000万円くらいですかねえ!」 「あいかわらず、こまかいなあ!」 戸田圭祐という業界人ではない人間が、いつも私の側にいて、不 思議と思う人が多いようだが、このこまかい、いわゆるアニメで描 くところの、そろばんを持った関西人の計算高さのおかげで、毎回 『桃太郎電鉄』の物件駅の値段が最終決定されていくのである。 戸田圭祐に物件駅の仕様書を渡しておけば、物件駅の値段と収益 率をパチパチパチと、たちどころに計算して、「この物件、10年持 っていても、1億円しか入らんのですから、臨時収入のひとつで出て もらわんと、かないまへんなあ!」 こういうときの戸田圭祐は、いつものおどおどした口調ではなく、 自信満々だ。 ちなみに、戸田圭祐の誕生日は、8月8日。そろばんの日である。 ちょっと出来すぎ。 午前10時30分。最古のさくまにあ・ニッポンの係長・戸田圭 祐がやって来る。 午前11時。京都相互タクシーの宮本さんが迎えにきてくれる。 家族3人+うっかり八兵衛の4人は、宮本さんの運転で、上賀茂 神社の東にある、おそば屋さん「くらら亭」に行く。 以前は「愛染倉(あぜくら)」と言っていたのだが、まったく お店はどこも変わっていなくて、お店の名前だけが変わっていた。 沙羅双樹の木が植わっている、美しい庭に、民芸風の家で、雰囲 気のあるお店だ。京都に居を構え始めたころ、やたらとよく食べに 来たものだ。 鬼うどんという、おいしい釜揚げうどんがおめあてで、きょうも ひさしぶりに食べたくなってやって来た。讃岐うどん風で、太い麺 なのに、しこしこコシのあるおいしいうどんだ。 ところが、鬼うどんは、冬限定のメニューらしくて、きょうはや っていないという。仕方ないので、もうひとつのおいしい「五色そ ば」を食べる。これも鬼うどんに劣らずおいしい。 こっちは、出雲そばのように、小皿を次々に食べ替えていくおそ ば。きょうのように暑い日には、さっぱりと喉越しさわやか、気持 ちがいい。嫁たちは、すぐき飯をくわえて「六色そば」にした。ついでに、単品で、「朝堀り竹の子」を食べる。 「朝掘り」というだけで、なにやらおいしそうである。 おいしい。 かなり大きい竹の子なんだけど、もっと大きい竹の子が食べたく なる。どうしてここまで最近私は竹の子好きになってしまったのだ ろうか? 自分でも不思議だ。 食後、上賀茂神社の前の社家の家・津田さん宅を訪ねる。 有名な「すぐきのなり田」の真ん前の家だ。 お店の名前は「ギャラリーショップ津田」である。津田さんの家 で売っている、すぐきと、千枚漬けは、正直言って、「なり田」よ りおいしい。知り合いなので、身びいきかもしれないが。 この家のいちばん下のお嬢ちゃんが、グルメ・バカ娘とおない年 だったことからなかよくなれた、京都で最初に出来た知り合いであ る。 グルメ・バカ娘がこの家に何度も泊まりに行ったりして、小学生 の頃、ずいぶんとお世話になっている。 時間がないので、ちょっとだけご挨拶。 午後12時30分。北山の和菓子屋さん「イシズミ」に行く。 宮本さん、お勧めのお店。 私はモンブランにコーヒー。モンブランのデザインがきれいだ。 さて、ここから小旅行。 三条通りから、大津方面に向かって車は走る。 午後2時。つつじと、紫式部で有名な、石山寺に着く。 お寺の前に、かなりの規模で、お土産屋さんが建ち並ぶ。 意外と大きな観光地のようだ。 ここまでとは知らなかった。 これはさっそく取材だ。 石山寺の名物は、しじみごはんだそうだ。 大津が近いので、大津名物「走り井餅」を売っているお店も多い。 私は、この「走り井餅」を「走り餅」と思い込んでいた。 何で「走り<井>餅」と、<井>の文字が入っているのか、不思 議である。 お寺への参道を歩く。 名物のつつじが、まだ1分から2分咲きで、ほとんど咲いていな い状態。これは残念。 その代わりに、お寺の新緑がみごとなまでに、きれいだ。 緑が、透き通るように美しく、クリスタル・グリーンと造語した くなるくらい、シャープな色合いだ。 お寺の境内に入る。 いきなり急な石段が目の前に立ちはだかる。 でも完全に舗装された、コンクリートの石段なので。思ったより 疲れなくてすんだ。 昨日の彦根城のように。かちわり氷のように、ふぞろいな石を並 べた石段がいちばんつらい。 石段を登りきると、目の前に、岩壁が広がる。 それも、中国の山水画に登場するような、岩壁が忽然と現れた。 その岩壁のまわりには、またしてもクリスタル・グリーンの新緑が 雲のように蔽っている。 これは奇岩な景観だ。 奇岩なわりに、思わずたたずんしまう美しさがある。 お寺にお参り。 紫式部の執筆室の復元があった。 狭い部屋で、『源氏物語』を書いていたんだなあ。私とおなじだ。 狭いことを自慢してどうする。 さらに菖蒲の池に行く。 これもまたあいにく時期が微妙にズレたのか、まだ咲いていない。 それでも緋毛氈の台に、ぼ〜〜〜とすわって、池を見ているだけ で、のんびりする。 こんなに美しい新緑というのは、初めてだなあ。 この新緑を見ていて、新作『桃太郎電鉄』のアイデアが浮かぶ。 私はいつでもどこでも仕事している。 アイデアが浮かぶと、嫁とか戸田圭祐にその場で話して、反応を 見る。机を前にして、うんうん唸っているときより、こういう風に して、森林浴をしているようなときのほうが浮かぶのだから、仕方 が無い。 帰り道、つつじの道を歩くと、えっ? つつじが咲いている。 そうか。きょうは暖かかったので、うちの家族が境内を歩いてい るうちに、咲いたのか。自然の脅威ですなあ。 石山寺のつつじは、3分先に昇格! 午後3時30分。石山寺を出る。 ゴールデンウィーク中というのに、道が空いている。 午後4時。あっというまに京都のマンションに着く。 昨夜に続き、戸田圭祐で『さくま式人生ゲーム2(仮)』のテスト プレイ。 きょうの戸田圭祐が選んだ職業は、戦国武将。 前回土居ちゃん(土居孝幸)が、戦国武将を選んで、大名の一歩 手前の部将の位まで昇進した。戸田圭祐だから、足軽からスタート して、足軽頭、せいぜい侍で終えたら、笑えるなあと言いながら、 始めたのだが、これが本当に昇進しない。 ずっと足軽のままで、ゲームの最後のほうまで、足軽のままであ る。 「ほんま、昇進しまへんなあ!」 戸田圭祐、本当にしょんぼりさせると、天下一品である。 ゲームの最後、あと6マスで、ついに足軽頭に昇進。 戸田圭祐のうれしそうな顔。本当に破顔一笑である。 『さくま式人生ゲーム2(仮)』のゲームのなかでは、足軽頭という のは、ちょうど係長とおなじである。 戸田圭祐、ゲームでも係長で、人生を終了。えっ? シャレにな っていない? 午後6時。嫁とグルメ・バカ娘は、おなじみお肉の「三嶋亭」に 行く。私は今朝食べた、朝掘り竹の子をもっと食べたい気持ちが消 えないので、戸田圭祐と宮本さんを誘って、京都の郊外にある「筍 亭(じゅんてい)」に行く。 「筍亭(じゅんてい)」。その名のとおり、竹の子がメインのお店だ。 車で2〜3分走り続けるくらいの竹林のなかにある。いわゆる政治 家さんたちが密談しそうな感じの日本家屋だ。 鴨の間に通される。 堀りテーブルになっていて、すわりやすい。 部屋から1枚ガラスの大きな窓を通して見える、竹林も美しい。 料理が出始めると、竹林がライトアップされて、さらに美しい。 いちばん豪勢な、竹の子づくしのコースを注文する。 さすがにすごいぞ! ・竹の子の木の芽和え・ 若竹煮・ 竹の子くず豆腐。 ・ 竹の子寿司・ 竹の子の粕漬け・ 竹の子のキンピラ胡麻風味・竹の子の田舎煮。 ・竹の子の田楽三種。はじかみ・ 竹の子の山椒焼き。 ・竹の子胡麻マヨネーズ和え・ 竹の子海老しんじょう揚げ・竹の子網揚げ。 ・竹の子の漬物仕立て、木の芽・竹の子ご飯・ライチのプリン。 これだけ食べると、もはや竹林の直径15センチの竹を丸ごと食 べてしまったような気分である。 間違いなく、3人で、太い竹1本分は食べたな。 ア〜、満腹&極楽、極楽。 これでしばらく竹の子を食べたいと思わなくなるだろう。 午後8時30分。天才テストプレイヤー・戸田圭祐大先生を京都 駅までお送りして、マンションに戻る。 戸田圭祐大先生はおだてあげると、必ずヘマをする。 きょうもテストプレイがよかったので、ホメ殺しをしてあげたの だが、ヘマをすることなく、大阪行きの新快速に乗って帰って行っ た。変だなあ。 しかし、マンションに戻って気がついた。 明日うちの家族が小旅行する予定の奈良のガイドブックを、戸田 圭祐が持って行ってしまっていた。帰る前に私に渡す予定だった本 である。 携帯に電話すると、はたせるかな。 「ぬわわわわわわわわわわわわわわわわ!」とうろたえている。 「えろうすんまへん! いま高槻の駅に降り立ったばかりなので、 いまから引き返して、返しに行きます! ぬわわわわわわわわわ わ!」 何じゃ? その高槻から引き返すというのは? よせ、よせ、そういう無駄なことは! 戸田圭祐のうろたえオン・ステージが聴けただけで、十分だよ。 マンションで、きょう上賀茂神社で買って来た、神馬堂のやき餅 を家族で食べる。 このあときょうのテストプレイの結果をまとめる予定。
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