4月24日(月)


 朝から無理やり、新作『桃太郎電鉄』の仕様書作りを始めるも、
調子が出ない。カードの部分の原稿を書くのは、ひさしぶりなもん
で、登板間隔が開き過ぎて、コントロールが悪い。

 iモード・ゲーム『さくま式奥の細道』の原稿を書いて送る。
書いたあと『さくま式奥の細道』のテストプレイを始めるも、ま
だ数値が前のままなので、テストプレイが進まず。文章チェックだ
けする。
iモードの場合、テストロムが郵送されてくるのではなく、ふだ
んどおり、iモードを繋げると、変化した内容に変わっているので、
インターネットの更新を見るような感覚だ。

ハードが違うと、テストプレイの感覚も違うもんだなあ。

午前11時30分。恵比寿のガーデンプレイス。
     ガーデンプレイスの象徴のような有名なフランス料理のお店があ るが、昨日『ドゥリエール』でケーキを食べてしまったばかりに、 ついに警戒警報発令!  う〜、う〜、う〜。あわてないといけない体重になってしまった。  だもんで、デザートの出るフランス料理を敬遠。  今週いっぱいケーキを食べないつもり。  明後日、築地のハドソン桃太郎デブ軍団と仕事があるので、とて も危険なトラップだ。でもそういえば、明後日はたしか放送作家の 福本岳史(通称:ヘルシー福本)くんが仕事で来れないはずだ。ち ょっと安心。しかしボス・キャラの土居ちゃん(土居孝幸)は手強 い。  ガーデンプレイスの1Fに飲食店があったので、深く考えずに入 る。なんだ、「アフタヌーンティー」ではないか!  なんだかすっかりアフタヌーンティーの経営戦略にはまっててる 感じ。  食事中、柴尾英令くんから電話が入る。  柴尾英令くんが日記で宣言したように、きょうこれから病院に行 くというので、いっしょについて行くことにする。  午後3時。銀座。  私が毎月行っている、渡辺内科クリニックで待ち合わせ。  病院嫌いの私がこの病院なら、緊張せずに来れると勧めていたの だ。しかしあれだけみんなで、「病院に行け〜!」と言ったけど、 よく行く気になれたなあ! 私だったら、そうはいっても絶対行か なかっただろうから、柴尾英令くんは、えらい!  でもよく聞いたら、霊能者岩崎摂さんの「身体を大切にしないな ら、呪うよ!」が相当聞いたようである。  わかるなあ。何たって、私が倒れるときも当てた人だからねえ。  しかもいまだに、私がこの日記に書かないようなことの部分まで、 ずばりずばりと当てていく。  そんなわけで、病院嫌いの先輩として、きょうは思い切り先輩風 を吹かせることができるし、きょうは診察もないから、後顧の憂い まったくなしで、病院に行ける。こんな楽しい出し物はない。  しかも人の不幸ライブが見れるなんて、早々あるもんじゃない。  人の不幸は。蜜の味だ。  渡辺内科クリニックに入る。 「柴尾くん、ここに名前を書いて!」  そんなことは放っておいても、看護婦さんがいうことなのだが、 あえて私がえらそうに「柴尾くん、ここに名前を書いて!」という。  私の病院嫌いをよく知っている看護婦さんたちが、くすくす苦笑 する。 「さくまサンは、きょうは?」  へっへっへ。きょうは関係ないんですよねえ。 「きょうは、不摂生きわまりない友人を連れて来ただけです。血液 検査の結果も来月聞くことになっているし」  ふっふっふ。気分がいい。  どこも悪くなくて、病院に来たことなんて、一度もない。  しかも柴尾英令くんに先輩風を吹かせることができる。 「それでは、さくまサン、どうぞ!」  えっ? きょうは柴尾英令くんのほうですよ。まあ、いいや。と にかく柴尾英令くんを紹介しよう。 「このあいだの血液検査ですけどね。尿のなかに顕微鏡でしか見え ないような量ですけど、血が混じっていましたね」  ぎょうえっ。そんなことを急に!  きょうはただ、大酒呑みをつれて来ただけなのに。  けっきょく今度もう一度尿検査を受けるはめになってしまった。 「ほかの中性脂肪から、コレステロール値まで、全部OKですね。 それじゃ血圧を測りましょう」ま、ま、待ってくれ! 急に計ると 私はすぐ血圧が上がってしまうのだ! 「132−90」!  ふう。よかった〜。  ノーアウト満塁のピンチを0点で抑えた投手の気分だよ。  そして、いよいよ。柴尾英令くんの登場。  私はえらそうに、柴尾英令くんに付き添い、柴尾英令くんが先生 に嘘を言わないように、後ろに立ちはだかる。 「タバコはどのくらい吸いますか?」 「1日2箱以上ですね」 「お酒は?」 「かなり飲みます!」  ありゃ? えらいなあ、柴尾英令くんは!  私なんか、病院で聞かれたら、嘘ばっか言っちゃうけどなあ。  その昔の私の病院での会話。 「タバコはどのくらい吸いますか?」 「そうですねえ。多い日で、1日1箱…(本当は3箱)」 「睡眠時間はだいたい?」 「1日8時間…(実は1週間で8時間)」 「血圧高いですねえ!」 「あれ? 変だなあ。いつもこんな高くないのに。緊張するせいか な? おっかしいなあ?」 「上が220もある人が、ふだんもっと低いといっても、180ぐ らいはあるはずですよ!」  どうして人間という動物は、あとでバレるような嘘をついてしま うんだろうねえ。って、それは私だけ? 現に柴尾英令くんは、ち ゃんと素直に答えてるじゃないかって? そうなのよ。  柴尾英令くんが、病院嫌いだって聞いていたから、これはいいネ タが拾えると思ったんだけど、思ったより全然緊張しないし、問診 だけできょうはあっさり終了してしまったのである。 「なんだか日記のネタになるようなことがなかったですねえ!」  やっぱり柴尾英令くんもライターらしい感想だ。  午後3時30分。あまりにも早く終わってしまったので、銀座三 笠会館1Fの喫茶店でお茶を飲みながら、世間話。 「いやあ、きょうはついて来ていただいて、本当に助かりました」 「いえいえ、こっちはもっとおもしろい物が見れると思って楽しみ にそいていたのに。私なんかいまだに、嫁がいっしょに来てくれな いと、病院怖いんだよ」 「一度行って、もう安心したんで、次からはひとりで来れると思い ます」  病気の先輩、緒戦にて、敗退。  インターネットにまつわる話をいろいろ。  ブックマークの話や、戸田圭祐のたった1日の日記に対して、た くさんの人が短時間で反応する即効性(速効性かな?)のすばやさ とか、言葉の裏に潜む温度が。どんなにごまかそうとしても、読む 人にバレてしまうとか、新しいメディアなだけに、いろんなことが 剥き出しに世間にさらされてしまう怖さがあるという話に。  インターネットでたくさんの人と知り合うことができる点が、非 常に素晴らしいと思うと同時に。狭い世界なので、一瞬にして、信 用を失ってしまうこともある。  そんなとき、いちばん大切なのは、デジタルとはいちばん縁遠い 「愛嬌(あいきょう)」というものだという結論になる。  少々失礼なことを書いても、愛嬌があると、許されるってことだ と思う。 「愛嬌」という点では、私の知る限り、柴尾英令くんは天才的愛嬌 の持ち主である。うらやましいほどだ。    ふと、きょうの水泳選手千葉すずサンのシドニー落選のニュース を思い出した。千葉すずサンの前のオリンピックのときの、暴言と 言われた言葉は知らない。  でもやっぱり今回もまた「日本で行われた五輪予選大会が目標で はない」という発言が、候補者を選ぶ側の人を怒らせてしまったよ うだ。  おなじことを言っても、落選しなくてすんだ人もいたのだろうに なあ。言葉遣いは難しい。文筆業がいまさらこんなことをいうのは、 情けないけど、言葉遣いは本当に難しい。  その気がなくても、言葉遣いひとつで、相手をおこらせてしまう ことがある。毎日こうして日記を書いていて、いつもドキドキする。   午後5時。なにはともあれ、「柴尾英令くん、ついに病院に行って 診察を受ける記念」で、新橋のお寿司屋さん「鮨金」に行く。  単に「鮨金」に行きたいがために、柴尾英令くんを出しにつかっ ただけのような気もするが。我が家のしきたりでは、病院の結果が よかったときには、お祝いで美味しい物を食べることになっている。  雨の中を傘もささずに、「鮨金」へ。  サーモンは、このお店くらいしか食べることができないので、忘 れずサーモンを食べる。ウニイカそーめんも、このお店だけなので、 ひさしぶりに食べる。
     やっぱりこのお店に来ないと食べられない味があるお店っていう のは、いつまでもいつまでもひいきしてしまうもんだねえ。  柴尾英令くんおかげで、美味しいお寿司が食べられて、幸せ。  午後6時。雨が激しい。  博品館でおもちゃを見ているうちに、雨がやむかと思ったけど、 さらに激しくなるだけ。    午後6時30分。雨の中、タクシーで帰る。洋服に雨の匂いがし みつく。 寒い。今朝はあんなに暑かったのに。 暑かったり、寒かったり、変な天気だ。 パニック映画の冒頭シーンのようだねえ。  今夜もこれからいろいろお仕事。
 

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