4月22日(土)


 昨夜書いた『さくま式人生ゲーム2(仮)』の手直し箇所を全部送
って、朝からいい気分。
 外も日差しが強そうだ。

 午前11時。家族3人で、東京駅丸の内側に行く。
 うちのグルメ・バカ娘は、東京駅が好きだ。
 昔から東京駅みたいな家に住みたいとバカなことを言っていた。
 東京駅のどこがいいのかよくわからんが、東京駅のステーション
ホテルでも見せれば、気が変わると思ったが、古畑任三郎がいそう
な感じのホテルを見て、ますます気に入っている。
 こやつの趣味は、まったくわからん。

 1Fの中華料理店「桃花」で食事。
 今にも潰れそうな雰囲気のお店。活気がなく、ぼ〜〜っした女子
従業員が3人もいる。店内に流れる音楽は、ピアニカでモーニング
娘。の『恋のダンスサイト』。単音でこの曲弾かれると、わびしい
ぞ〜。
 注文したステーキ丼は、おいしそうとは思えないのに、なぜか食
が進む。グルメ・バカ娘も、ネギそばをすいすい食べている。やっ
ぱりそこそこおいしいのだろう。
 中途半端な気持ちで、食事終了。

 午後12時30分。三田4丁目のお寺「大松寺(だいしょうじ)」
に行く。親戚からこのお寺に、私の先祖のお墓があると聞いたので、
初めて来た。

 『さくまあきらの正体』でも、ちらっと書いたけど、小学校1年
のときに、おぞましい継母が来て以来、我が家では家系の話をする
のが、タブーとなった。
おかげでまったく私は、親戚が誰と誰なのかわからなくなった。
 高校生のときだったか、3軒先の親しいおばあちゃんの死に際を
看取ったことがある。子どもの頃から、「おばあちゃん! おばあ
ちゃん!」と慕っていたのだが、近所のただのおばあちゃんだと
ばかり思っていたら、そのとき本当の祖母だと知らされた。
 そんな調子で、40歳を過ぎてしまった。

 そんな40歳を過ぎたあたりから、妙に親戚のことを聞く機会が
増えて、このところやたらと親戚が増えている。
 何だかドラマの最後のほうになって、主人公の出生の秘密がわか
ったみたいで、なかなかおもしろいものである。
 手塚治虫さんの『奇子(あやこ)』という作品を思い出した。

 そんなわけで、このお寺でも新しい知識を教えてもらった。
 先祖もまた、後妻さんが入ってとか、親と仲が悪くてお墓を分け
た人がいると聞くと、いまの自分の生い立ちとちっとも変わらなく
て、因果というものを感じる。
 そう思うと、いまのうちの家庭がいちばんおだやかで、のんきで、
幸せに思えてきた。

 森さんという先祖累代のお墓をお参りする。

 お寺を出て、しあわせ家族は、気の向くままおもしろそうな建物
を求めて、散歩を開始する。

 慶應義塾高校から、綱坂へ。綱坂というのは、羅生門の鬼でおな
じみの渡辺綱(わたなべのつな)がこのあたりで生まれたからつけ
られた名前だそうだ。へ〜。
 さらに綱町三田倶楽部から、オーストラリア大使館へ。
 でかすぎるぞ、オーストラリア大使館!

 このあたりは、江戸川乱歩の世界のような家が立ち並ぶ。
 初めて見る、東京の景色だ。

 坂も登りきったようだ。ふう。疲れた。
 自動販売機でポカリスエットを買い、のんびり坂を降りていく。
 そのうちどこか知ってる場所に出るだろう。

 おおっ! 二の橋と書かれた交差点に出たぞ。
 これなら麻布十番に近い。
「そうだ、麻布十番行こう!」

 この家族がめざした場所は、やはり鯛焼きの「浪花屋本店」であ
った。創業明治32年の鯛焼き屋さんである。♪毎日〜、毎日〜、
ぼくらはテッピャンの〜の歌のモデルになったお店でもある。
浪花屋本店 浪花屋本店 浪花屋本店
     私は鯛焼き1枚に、小倉アイス。嫁とグルメ・バカ娘は、小倉の かき氷。 「ここのあずきは本当においしいねえ!」 「こんなにおいしくていいんだろうか!」 「幸せねえ!」   のんきな家族である。    午後2時30分。思い切り足をへばらせながら、帰宅。  映画『がんばっていきまっしょい』をDVDで観ながら、眠くな ったところで、仮眠。  起きてまた続きを観る。  よくできた作品だ。  いまの少年漫画雑誌に欠けているのは、こういう作品がないこと じゃないのかな。熱血漫画は好きではないという漫画家志望者が多 いそうだが、好きではないのではなく、描けないだけだろ!と言い たくなる。  こういうライト感覚の熱血漫画が読みたい。  午後7時。新宿伊勢丹7F「正月屋吉兆」に集まったのは、柴尾 英令くんと、ライターのあげこサン、成沢大輔くんに、わが食道楽 家族。  なぜこのメンバーが集まったかというと、話は1週間前に遡る。  ニッポンの係長・戸田圭祐主催のゴチ会があった。  この日の主役は戸田圭祐で、正式名称は「ニッポンの係長・戸田 圭祐が、虎の子の2万9800円出すから、あとはみんなのカンパ にしてね、大阪から来るんだから、ゴチ会」である。  このとき私はもし、カンパが少なかった場合は、うちが出す。も しみんなから多く出すぎたら、戸田圭祐が2次会でつかいなさいと 言っておいた。  ところが戸田圭祐の人徳か、カンパが集まりすぎてしまったのだ。  その金額10万円とちょっと。もちろん戸田圭祐が2次会でつか えばいい。    しかし、戸田圭祐はどこまで行っても、ニッポンの係長!   2次会で何人かをカラオケに連れて行き、しかも道端でもらった 割引券までつかって、1時間400円ですむような、倹約の仕方を してしまったのである。  しかも3次会は、テレビ長崎のアナウンサー・山本耕一とふたり で、原宿駅前の九州じゃんがららーめんを食べに行っただけである。 しかもご丁寧に、自腹でラーメンを食べている。  そして、翌日。 「さくまサ〜ン、昨日のカンパ金なんですが、こんなに余ってしま いましたあ。どないしたらええでっしゃろ?」 「何だよ、2次会でつかっていいって言っただろが!」 「へ〜。一生懸命つかったつもりなんですが…」 「困ったなあ。今回でゴチ会は、第一部・完で終了してしまったか ら、次に持ち越すということができないしなあ!」 「そうなんですわ〜」 「だいたい戸田圭祐、こんな大金あったら、悪い首脳部のおじさん たちが、『へっへっへ、そちも悪よの〜』とか言って、飲み食いし てしまうぞ!」 「それがええですよ! 今度さくまサンたち、首脳会議するいうて たから、ぜひみなさんでおつかいください! いつもみなさん、ゴ チ会の2次会のお金を出してるみなさんなんですから!」 「あのメンバーだ。一瞬にして酒に消えるぞ!」 「ええやないですか。わてがお役に立てることは少ないんですから」   どこまでも人のいい戸田圭祐である。  かくて、悪代官様たちは、戸田圭祐のおかげでこうして素晴らし い宴に集まったのである。 「それではニッポンの係長、戸田圭祐さん、ありがとうざいます!  かんぱーーーい!」のかけ声で、酒宴は始まった。 「じゃ、京都出身の戸田係長にちなんで、京都のお酒をいただくと するかな」 「へっへっへ。戸田さんは、本当にいい人ですね!」 「今度、戸田係長が東京に来たら、夜の東京にご招待しましょう!」  文字にして書くと、本当に悪代官たちの会話である。  一応、今後の「ゴチ会」新展開など打ち合わせる。  まず「ゴチ会」という名称をやめる。  じっくり話せるために、少人数にする。  新しい人を加えて行く。  京都か、福岡でやろうか?という話まで飛び出す。  放送作家の福本岳史くんが、計画している若手の会など、承認さ れた。ここまでは国際連合のような雰囲気であったが、ひとたび料 理が運ばれるや、さっさと会議終了。みんなで喉をごろごろ言わせ る。
吉兆 吉兆 吉兆 吉兆 吉兆 吉兆 吉兆 吉兆 吉兆
     さらに柴尾英令くんに集中砲火! 「病院に行け! 病院に行け! 病院に行け!」の大合唱だ!  ほとんどきょうの会合は、柴尾英令くんに病院に行かせるために 集まったようなものになってしまった。  喜ぶ、奥さん。 「本当にいくら言っても、病院行かないんですよ!」  「はい、はい、はい。私さくまも倒れる前は、いくら言われても病 院行かなかったからねえ! でもね。病気すると、本当にまわりの 人全部に迷惑かけるよ〜」 「さくまサンは実体験から言えるからなあ!」 「さあ、これを見なさい! 霊能者の岩崎摂さんから、病院に行か ないなら、呪ってやる!とまで書かれたメールだ!」  そのメールを柴尾英令くんに手渡す。  さすがの柴尾英令くんも「霊能者の呪ってやるという言葉はこた えますよね〜!」と、ほぼ撃沈状態になり、ついに「病院に行きま す!」を宣言。  病院に行って、検査の結果、血液などまったく異常がなかったら、 きょうのみんなを心行くまでののしっていいことに。悪い結果が出 たら、治せという結論が出た。  午後10時30分。気がついたら、とんでもない時間になってい た。とうに伊勢丹自体が全館閉店の時間だ。  正月屋吉兆さんの手引きで、なんと伊勢丹従業員専用のエレベー ターで帰ることになってしまった。  でも舞台裏マニアの私としては、大興奮。  積みあがった箱の山をすり抜けるように歩いて、いかにも貨物を 積むエレベーターに乗った頃には、気分はもうブルース・ウィルス である。  若い頃から、私は本当に舞台裏マニアで、ステージより、ステー ジの脇の緞帳を下ろすスイッチのあたりが大好きである。  生まれて初めて、日本武道館に仕事で行ったときも、ステージの 上より、控え室に入れた興奮のほうが何倍も大きかった。なんてっ たって、あのビートルズが本番を待っていた部屋である。  午後11時。そのまま全員で、新宿3丁目末広亭の前の飲み屋さ ん「ぶらうにぃ〜」に行く。  このお店は天才写真家アラーキーさんがよく通ったことで業界で は有名である。私もアラーキーさんの弟子の田宮史郎に誘われて通 い出してから、もう20年以上になる。  ここのマスターは昔のアラーキーさんの写真集などを見ると、よ く登場する変わり者である。
ぶらうにぃ〜
    「さくまサン、いろんなところ、しょっちゅう行ってるね〜.見て るよ〜!」  えっ? 私は最近TVほとんど出てないよ。  まさか、この店のマスターがインターネットを?  私より年上だし、このマスターくらい、ローテクな人はいない。 「ねえねえ、この子がグルメ・バカ娘?」  あっ。間違いない!  「ええ〜!!! マスターがインターネットやってるの???」 「うん。まだ指1本でしか動かせないから大変だけどね」 「ぎえ〜! マスターまでインターネットやる時代になっちゃった んだあ! これは大事件だ。恐ろしい普及率だねえ!」 「ボクもそう思うよ! ははは!」  恐ろしい時代になったものだ。  明らかにインターネットは、ラジオの規模を越えようとしている。  ここでこうして集まっているメンバーも、インターネットのおか げなんだから、その実績を証明しているようなものだ。  ここでやっとお仕事関係の話になるが、随所に「柴尾くん、病院 に行け!」の会話に引き戻す。 「ビタミン剤も、寝ない人には効かないぞ!」 「寝ていないやつほど、たまたま長時間寝たった1日を自慢する」  柴尾英令くんが思っているだろう、大丈夫論を次々に俎上に乗せ て、否定してあげる。
ぶらうにぃ〜 ぶらうにぃ〜 ぶらうにぃ〜
     午後2時。ありゃ、ここでも長居しすぎた。  このメンバーだと、会話がおもしろいから、いくらでも話せてし まうなあ。 「それじゃ、マスター! インターネット見てねー!」と言いなが ら、帰宅。お風呂に入って、寝る頃には、4時過ぎちゃうかな?
 

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