4月3日(月)


 世間では、有珠山だ、小渕総理の入院だ、と騒いでいるのに、ひ
とり京都で、時間が止まったように、新作『桃太郎電鉄』の仕様書
作りだ。

 午前11時。イノダ・コーヒ本店で、ハムサンドにコーヒー。
 食後、錦市場を散歩。
 朝堀り竹の子の真っ盛りだ。
 ここ数年で、竹の子が美味しいと感じるようになった。

 京都でいちばんの繁華街、四条河原町あたり。
 えっ? オーム社書店まで、閉店なの?
 このあいだ駸々堂書店が倒産したばかりだというのに。
 本は場所を取るから、もう本の時代じゃないのかもしれないな。
 子どもの頃映画で見た、未来の家は、真っ白い壁で、ほとんど家
具が内蔵されているような部屋だったけど、本当にああいう家にな
る日が近づいているのかもしれない。

 午後1時30分。1時間歩くと、急速に足が重くなってくる。苦
しくなってからの数10分が、リハビリになると聞くから、無理し
て足をひきずり、近所の喫茶店「レッドラバー・ボール」にたどり
着き、コーヒー。ふうっ。

 午後2時。マンションに戻り、ひたすら新作『桃太郎電鉄』の仕
様書作り。孤独な作業。
 ありゃりゃ。小渕総理の病名は、脳梗塞(のうこうそく)かい! 
そりゃ大変だよ! 集中治療室って聞くと、すぐ自分がそこで危篤
状態だったことを思いだしちゃうよ。
 なのに何で記者団は、入院してたのを22時間も隠してたって、
青木官房長官につめよるんだろうね。できることなら誰だって隠し
てたいよ! 大事(おおごと)なんだから!
 準備しないといけないことだって、たくさんあるんだしさ。 
 どうせ記者団だって、大変なこと知ってるんでしょ。集中治療室
に入るぐらいのレベルの人がどんなかを。
 武士の情けってもんがないのかねえ、記者団には。

 午後4時。嫁とグルメ・バカ娘が、東京から到着。
 さっそく私がこっちで買った花粉症の薬、プレコールが風邪薬用
だということを指摘される。やっぱりそうかあ! 薬の台紙の色が
違うから気にはなっていたんだけどなあ。私も外箱を見たことがな
かったので、つい薬局のいいなりになってしまった。
 まあ、風邪薬でも多少なりとも効いたみたいだけどね。

 さあて、どこか美味しい物を食べに行きたいと、いろいろ予約す
るも、めぼしいところはことごとく、満員。そろそろ桜のシーズン
で、どのお店も盛況になる時期ではある。ただし、桜のほうは、ど
こもまだつぼみのままだけど。

 午後5時。七条の漫画専門店「BIG BOSS」に行く。
 ひさびさに店長の石田さんと話す。
 最近自分が漫画界にうとくなり始めていることを痛感する。
 昔は誰よりも、漫画業界のことくわしかったのになあ。
 師匠の小池一夫さんの本やら、水島新司さんの本など買い込む。

 午後6時30分。けっきょく今夜は本当にひさしぶりの「鹿ヶ谷
山荘」に行く。いつも行く「忘吾(ぼあ)」の本店に当たるお店と
いったらいいのかな。系列店なのだ。「忘吾(ぼあ)」のほうが。

 実は、この「鹿ヶ谷山荘」のほうを先に知った。
 山の中腹にあるこのお店は、タクシーで登って行かないかぎり、
行けないような難所にある。なにしろ、京都市内が一望できてしま
うようなところなのだ。
 着いて、すぐ「月見台」と呼ばれる、屋根に連れて行かれる。  ここに連れて来られたのは、初めてなので、ここで食べるのかと 思ってしまった。さすがに夜の京都の、しかも小高い山の上のベラ ンダに当たるところで食べる気はしないぞ。  まあ、郷に行ったら郷に従うしかないと決め込んだところで、ま た階下へ案内される。  なんと、月見台へ連れて行ったのは、この山荘のもてなしだった ようだ。今まで何回か来て、こういうことは一度もなかっただけに、 面食らった。  さて、階下のほうは、カウンター席に案内された。  このカウンター席からも、京都市内が一望できる。夜だから函館 の夜景のように、京都市内の明かりが瞬く。  この席は、前から一度座ってみたかったところである。  いつもここから満員になって行くので、いままで一度も付くこと ができなかった。きょうはグルメ・バカ娘がいるせいの幸運か?
 以前から、ここの料理は美味しいと定評があった。  和風ベースで、ところどころ無国籍な作りを入れたりする。  きょうも、ひとつひとつはそれぞれ、まあまあの味だった。でも グルメ・バカ娘に言わせると、いずれも中ヒットとのこと。私もそ う思う。全体の流れを感じない。  どの料理も、巨人の仁志と、清水の繰り返しで、松井がいない感 じだな。  すっかり「忘吾(ぼあ)」の味になれてしまったせいか、私には 「忘吾(ぼあ)」のほうが美味しく感じられた。値段も「忘吾(ぼ あ)」のほうが、はるかに安い。  きょう「忘吾(ぼあ)」が定休日なのが悔やまれる。  やっぱり料理も、人の顔が見えていないと美味しさが半減するも のですな。お客さんに合わせた料理の作り方をする京料理は、お客 さんをほかに浮気させないためでもあるのだな。そんな気がした。 決してまずいわけでもないのに、「忘吾(ぼあ)」のほうがいいと 感じたのは、その辺にあるのでは。  午後8時30分。京都相互タクシーの宮本さんを呼ぶも、実車中。 しかしちゃんと代わりの人を派遣してくれるのが、宮本さんのえら いところ。井堀さんという方を読んで下さった。井堀さん。逆から 読むと、堀井さんである。こりゃ覚えやすい!    午後9時。マンションに戻る。グルメ・バカ娘が『ポポロクロイ ス物語2』をクリアしたと、自慢する。わざわざ持って来て、ハイ ライト・シーンを見せてくれる。何だかなつかしさのこみあげるア ニメだ。日本最初のアニメ『白蛇伝』を思わせる。うまい使い方だ な。  やっぱりそろそろ『桃太郎電鉄』でも、アニメをつかおうかな。  嫁とグルメ・バカ娘は、昨日私が録画しておいた『葵・徳川三代』 を見ている。どう見ても、関ヶ原の裏切り者の小早川秀秋の役者さ んは、イチローに顔が似ている。  さて、本来明日から、山陰地方へと旅立つつもりだったが、どう にも花粉症で、遠出する気になれない。日帰りできるところにしよ うと、家族でただいま検討中。  家族3人で、戸田圭祐の職場を訪問したら、戸田圭祐あわてるだ ろうしなあ…と思わせぶりなことを書いただけでも、ビビるだろう から、戸田くん、行かないよ。安心して、仕事に、お昼休みの昼寝 に邁進するように。    さて、明日はどこに行く。
 

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